漢がダンジョンにいるのは間違っているだろうか 作:ぱんてー男爵
今日は5階層まで来ている。
エイナさんからは禁止されているが、少し覗く程度ならいいよね?
鋭児郎は寝坊だ。
寝坊なんて珍しいなー、でもこれはチャンスだと思う。
鋭児郎の場合はステータスを刻んだ時点でスキルがあった。
全身硬化という力と耐久に高補正を与えるスキルだ。
スキルがあるのとないのでは天と地程の差が出る。
その時僕は理不尽だと思ってしまった。
だから鋭児郎が寝坊してる今、そな差を縮めるために頑張らなくては!
しかし………
そんな僕は今モンスターに背を向けて逃げ回っている。
(ミノタウロス!?なんでここに!5階層だぞ!?)
後悔した。エイナさんからの言いつけを守らなかった自分を責める。
敏捷には自信があるがミノタウロスはLv2相当なのだ。気を抜けば追いつかれる。
とにかくにげまわる。……が、
(いきどまり!?)
行き着いた先には大きな壁に阻まれていた。
振り返って見るとミノタウロスがジリジリも と近寄ってくる姿が見える。
(もうダメだ!)
そう思い目をつぶる。
風が吹いた気がした。
いつまでも来ない衝撃に目を開いてみると。
そこには細切れになって息絶えるミノタウロスと金色の美しい髪の女性がたっていた。
「あの……大丈夫ですか?」
(大丈夫じゃない。)
ベルはその女性に心を奪われてしまった。
そしてその恥ずかしさと緊張のあまり……
「ほわァァァァァァ!」
背を向けて逃げ出してしまった。
その場には手を伸ばしたまま固まっている金色の女性だけが取り残されていた。
「エイナさァァァァん!アイズヴァレンシュタインさんのこと教えてくださぁぁぁい!」
「きゃぁ!ベル君!?」
ダンジョンを出て無我夢中でギルドへ走っていたため自分がどの状態なのかに気が付かなかった。
その後、返り血で汚れてしまった頭などをまとめて洗い、エイナさんと向かい合って座る。
「まったく、それでどうしたの?ヴァレンシュタイン氏の情報が欲しいなんて」
「実は、5階層まで潜った時にミノタウロス「5階層!?」
「だめじゃないのっ、いきなり5階層まで潜るなんてそれに、鋭児郎くんは?いつも2人で潜っているはずでしょ?」
「鋭児郎は寝坊して………」
そこで思い出す。鋭児郎は自分を追いかけてるはずだ。その瞬間サーっと、血の気が引くような感覚に陥る。
もしかしたら、ミノタウロスと出会ってしまっているかも!強力なスキルを持っているとはいえ、Lv1が到底かなう相手ではない。
「……ル君?……ベル君!?」
「エイナさん!どうしよう!鋭児郎がダンジョンにいるかも!」
「え?」
エイナはそこで初めてベルからダンジョンで起きたイレギュラーを聞いた。
「わかった。ベル君は少し待ってて。」
表情を一変させ、どこか焦るような表情で情報を集める。
しばらく聞き回っていると、ある話が耳に入る。
「あー、赤い髪の少年ならロキファミリアに抱えられてディアンケヒトファミリアに連れてかれてるのを見たよ。」
「ベル君!もしかしたらディアンケヒトファミリアにいるかもしれないって。行ってみて。」
「ありがとうございます!」
そう言い残すとベルは教えられた場所へ走り出す。
エイナの内心は複雑だ。鋭児郎くんとベル君にはダンジョンの恐ろしさを伝えてきたつもりだ。
それにあの真っ直ぐな性格の鋭児郎くんが約束を破るはずがない。
きっとミノタウロスというイレギュラーに対して打ちのめされたのだろう。
エイナはひたすらに鋭児郎の無事を祈ることしか出来なかった。
「鋭児郎!」
ディアンケヒトファミリアへと着いたベルは鋭児郎の眠っている部屋へと案内される。
そこには既にヘスティアが座っていた。
眠り続ける鋭児郎の横で泣いているヘスティア。
ベルは最悪の事態を想定した。
(もしかしたら、目を覚まさないかも!)
意を決してそばにいる神様へと声をかける。
「か、神様、鋭児郎はどうなってるんですか?」
「えーじろー君は命に別状がないらしい。すぐに良くなるって。」
どうやら神様が泣いていたのは安心からだったらしい。
それを聞いてベルは全身の力が抜けた。
「良かった!良かった……」
本当に良かった。自分の変な意地のせいで大切な親友を失うところだった。ダンジョンに出会いはあったが親友を無くしてしまうのは釣り合わなすぎる。
「あれ!?君たちって赤髪くんのお友達?」
突然の声に驚き、振り返るとそこにはブロンドの髪を持った小人族と真面目そうなエルフ、目のやり場に困るような服装の褐色肌の女性姉妹がいた。
すると、おもむろに小人族とエルフがまえにでて頭を下げる。
「彼の主神様でしょうか。」
「あ、ああ、その通り僕が鋭児郎くんの神だけど?」
ヘスティアはいきなり目の前で頭を下げられるという実態にオロオロとする。
「申し訳ありません。今回、彼がこのような状態になったのは我々がミノタウロスを逃がしてしまうという失態を犯してしまったからなのです。」
いつの間にか褐色肌の女性姉妹も頭を下げており、ベルは戸惑う。
「そうか、君たちのせいなのか。」
ヘスティアの様子にベルは思わず声をかける。
「か、神様!この人たちのせいだけじゃありません!僕も鋭児郎が起きるのを待っていたら………それに」
「わかってるさベル君。ダンジョンではどんなイレギュラーがあるか分からない。全て自己責任になってしまう。この人たちは許せないけど、怒っているわけじゃないんだ。……こうして生きて帰ってきてくれたんだから。」
フィンたちは驚く。今まで見てきた神達は皆娯楽のために存在しているようなものだったから。自分たちの主神のロキも家族を愛しているが、こんなに慈愛の溢れた女神に驚愕を隠せない。
「ま、五体満足で2人とも帰ってきたんだ!湿っぽい話は終わりにしよう!」
ヘスティアの言葉に対してティオナも賛成のようで口を開く。
「私ティオナ!よろしくね!」
「姉のティオネヒリュテです。」
「ロキファミリアの副団長、リヴェリア・リヨス・アールヴです。」
「僕は団長のフィン・ディムナです。」
自己紹介をしていくとまたもやヘスティアの様子がおかしくなる。
「ろ、ロキってあのまな板のかい!?」
「どうしたんですか?神様、」
「どうしたも何も、僕の胸に嫉妬している悪神だよ!」
ベルは突然の罵倒に目を見開くが、フィン達はいつものロキから容易に想像できるその話に苦笑いを浮かべる。
「僕はヘスティアファミリアの団長ベル・クラネルです!そこで寝てるのが切島鋭児郎です。」
「僕はこの2人の主神のヘスティアだよ。」
とりあえず自己紹介を済ませ、ティオナは話を切り替る。
「鋭児郎って言うんだ!その子すごいね!なんたって単独でミノタウロスを撃破しちゃうんだから!」
それを口にした途端、ティオネとティオナ以外は固まってしまう。
「てぃ、ティオネ、今の話は本当かい?」
「はい!本当です!」
フィンにベタ惚れしているティオネが嘘をつくとは考えられない。つまり、本当に切島という少年はLv1にして単独で撃破したのだろう。
「信じられない、いや、有り得ない、、、だってえーじろーくんにステータスを刻んだのはつい半月前なんだよ。」
今度はその部屋のみんなが固まる。
信じられないだろう。Lv1の時点でミノタウロスの撃破は驚愕レベルなのだ。たった半月というのはもっと信じられないだろう。前代未聞である。
しかし1人、違うことを考える少年がいた。
(僕が逃げ回っていた頃、鋭児郎はあの恐怖に立ち向かっていたんだ。しかも見知らぬ他人を逃がすために?)
それはまさに"英雄"
ベルはまた広げられた差に悔しさと自分の不甲斐なさが襲ってくる。
(もっと頑張らなきゃ!)
切島鋭児郎の英雄的行動はある人には恋心を、ある人には尊敬の念を、ある人には驚愕を、そしてある人には、決意を抱かせた。
最近暑いですね、作者は夏休みを活用して裸で書いています。(変態
感想来たらペースが上がるかもG-WOOD様!感想ありがとうございます!(☝︎ ˙-˙ )☝︎ふぅー!