漢がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:ぱんてー男爵

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5話

入店してきた集団に周りの客はにわかにざわめき出す。

 

「おい、えれぇ上玉じゃねえか」

 

「馬鹿、徽章エンブレムをよく見ろ【ロキ・ファミリア】だぞ」

 

「あれが巨人殺しの【ファミリア】か……」

 

「第一級冒険者のオールスターじゃねえか」

 

「噂のあの娘が【剣姫】か……」

 

それはオラリオにいるものなら知らないものはいない大派閥であった。

第一級冒険者の集団に驚きを隠せない。

切島はふとベルを見ると、ある一点を見つめ、顔を赤くしていることに気づく。

ベルの視線をたどると美しい金色の髪をもった女性に行き着く。

 

(ベルのやつあの人に惚れてんのか、つまり、ベルを助けてくれた人って訳だな。)

 

この結論に至るのは容易だった。

それほどまでにはたから見ても分かりやすかったからだ。

 

「おいベル、お前あの人に惚れてるんだろ?」

 

「え、そ、そんな、………う、うん。」

 

切島には茶化すような様子はなく、真剣な表情だった。

その表情に押され、ベルも誤魔化すことをやめ、観念したように白状する。

 

「で、でも話したこともないし、一方的な片思いだから。」

 

「?助けられたんだろ?お礼とか言ってないのか?相手も流石に覚えてるはずだろ。」

 

「恥ずかしくて、お礼言う前に逃げ出したというか……。」

 

お礼も言っていないとは思っていなかった切島は驚く。

今もまだモジモジしているベルの背中を押すことにした。

 

「おい、そんなの漢らしくねーぞ。モジモジしても始まらねーだろ。それに、まだお礼してないなら言わねーとダメだろ。」

 

「確かに助けてもらったのにお礼をしないのはダメですよベルさん。」

 

「う、ごめん、」

 

2人の正論に何も言えなくなってしまい、ベルは体を縮こませる。

そんなやり取りをしている間にも向こうでは宴会が始まっていた。

 

「団長、おつぎしますね。どうぞ。」

 

「ああ、ありがとう、ティオネ。だけどさっきから僕は尋常じゃないペースでお酒を飲まされているんだけれどね。僕を酔い潰した後、どうする気だい?」

 

「ふふっ、他意なんかありません。ささっ、もう一杯どうぞ」

 

「本当にぶれねえな、この女……」

 

切島は何気なく宴会の方を見ると見覚えのある褐色肌の姉妹が目に入る。

偉そうにベルに注意していた自分もまだお礼ができていないことに気が付き、恥ずかしく思う。

それと同時に、ベルと自分が用事のある人が同じファミリアであることにチャンスだと思い始める。

 

「ベル、すまねぇ、俺も助けてくれた人にお礼できてなかった。同じファミリアらしいから後で一緒に行こうぜ。」

 

「うん!」

 

切島が付き添ってくれることになりベルは多少の自信がでてきた。

そんな2人で のやり取りにシルは少し面白くなさそうに頬を膨らませている。

すると、一際大きな声が聞こえる。

 

「そうだ、アイズ!あの話をしてやれよ!」

 

「あの話……?」

 

アイズから二席離れた斜向かいに座る獣人の青年。

その顔は美形と言える顔であり、男らしさも兼ね備えていた。

 

「あれだって、帰る途中で逃したミノタウロス! 最後の一匹、お前が5階層で始末しただろ! そんで、ほれ、あん時居たトマト野郎!」

 

彼の言葉を聞いたベル心臓が、跳ねる。

先程まで熱に浮かされたような気分はなくなり、顔からは血の気が引いていた。

そんな様子のベルに切島とシルは心配そうに声をかけるが、ベルの耳にはもはや聞こえていないようだった。

 

「ミノタウロスって、17階層で襲い掛かってきて返り討ちにしたら、集団ですぐ逃げ出していった?」

 

「それそれ! 奇跡みてぇにどんどん上層に上っていきやがってよ、俺達泡食って追いかけてったやつ! こっちは帰りの途中で疲れてたってのによ~」

 

「それでよ、いたんだよ。いかにもひょろくせえガキが!」

 

それはまさにテーブルの席で羞恥している少年であった。

切島はそこでようやく獣人の言っているトマト野郎というのがベルだということに気がつきフォローをする。

 

「おいベル、あんな話気にするな、あの場面なら逃げるのが1番なんだ」

 

切島のその言葉にベルは逆に羞恥を加速させる。

そのミノタウロスを撃破した切島の言葉は最悪なことに逆効果であった。

 

「ほんとざまぁねえよな。ったく、泣き喚くぐらいだったら最初から冒険者になんかなるんじゃねえっての。ドン引きだぜ、なぁアイズ?」

 

その場にその被害者がいることも露知らず、話は続いていく。

 

「抱腹もんだったぜ、兎みたいに壁際に追い詰められちまってよぉ! 可哀想なぐらい震え上がっちまって、顔引き攣らせてやんの!」

 

「ふむぅ、 それでその冒険者どうしたん? 助かったん?」

 

「アイズが間一髪ってところでミノを細切れにしてやったよ、なっ?」

 

会話のなくなってしまったテーブルではシルが必死に慰めようとしている。

 

「それでそいつ、あのくっせー牛の血を全身に浴びて……真っ赤なトマトみたいになっちまったんだよ! くくくっ、ひーっ、腹痛えぇ……」

 

耳を塞ぐことも出来ず、ただただ堪えているベルの様子を切島は苦しい顔で眺めることしか出来ない。

 

「それにだぜ? そのトマト野郎、叫びながらどっかいっちまってっ………ぶくくっ! うちのお姫様、助けた相手に逃げられてやんのお!」

 

「……くっ」

 

「アハハハハハッ! そりゃ傑作やぁー! 冒険者怖がらせてまうアイズたんマジ萌えー!」

 

「ふ、ふふっ……ご、ごめんなさい、アイズっ、流石に我慢できない」

 

「…………」

 

「ああぁん、、ほら、そんな怖い顔しないの! 可愛い顔が台無しだぞー?」

 

 

『雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ』

 

その言葉を聞いた瞬間ベルは店から出ようとする。が、切島の腕によって止められる。

 

「無茶はすんなよ。お前に何かあればヘスティア様も悲しむからな。ここは俺が払っておく。」

 

「ありがとう」

 

切島にはベルがこれから何をするかが予想できていた。

ベルは無茶をするなと釘を刺されるも止めない親友に感謝をしつつ、店を出る。

 

「鋭児郎さん、ベルさんは………っ。」

 

シルはそんな切島の行動に文句を言い欠けるがその表情を見て言葉が詰まってしまう。

あの温厚で活発な少年からは想像ができないような顔だった。

額には血管が浮き上がり、感想の昂りで無意識のうちに発動されたスキルの硬化が現れる。

切島はブチ切れていた。

確かに自分たちはLv1で、第一級冒険者にとっては雑魚かもしれない。

それでも親友がバカにされたことだけはどうしても許せなかった。

 

「お会計お願いします。お釣り入りません。」

 

近くに座っているシルに少しばかり多めのお金を渡し、そのまま獣人の元へ向かう。

 

 

 

 

「そこの犬。俺とタイマンはってくれよ。」

 

 

 

敬語はなく、侮蔑を含みながらタイマンを申し込む。

いかにも駆け出しという見た目の少年があの『凶狼』に喧嘩を売る様子に周りは静まり返った。

フィン、リヴェリア、ティオネは見知った顔に驚愕を隠せない。

ティオナだけは驚きながらもどこか期待したような視線を送っていた。

 




次回、ベートとタイマンはります!
コメントしていただいた方とても嬉しいです!やる気が出るぅ!
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