ようこそ非日常の溢れる教室へ   作:地支 辰巳

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場面によって空気感が違いすぎる


当たり障りの無い奴ほど危険度は高い

 刻一刻と須藤の裁判が迫るなか、Dクラスは目撃者探しに奔走していた。一年のクラスだけに留まらず二年、三年のクラスにも訪問をし、目撃者を探していたのだが、犯行が起こった現場が特別棟ということもあってか見つかることは無く勝訴への糸口が見えずにいたのだが、Dクラスの会議中、協力関係にあるBクラスが来て協力を申し出てくれた。

 

「紀田くん!暴力事件。私たちBクラスにも手伝わせてくれないかな?」

 

「いやいや。帆波ちゃんのお手を煩わせる訳にはいきませんよ。お部屋でごゆっくりとしていて下さいプリンセス」

 

 開口一番からの正臣の真面目に取り合わない態度に一之瀬は頬を少し膨らませると、よりDクラスのことを助けるという意志が固まった。そんな一之瀬の内心はつゆ知らず、一之瀬を危険から守ると約束した正臣はのらりくらりと一之瀬をこの事件から遠ざける言葉を紡いでいく。

 

「紀田君。相手は腐っても同盟相手なのよ?断る理由なんてあまり無いと思うのだけど?」

 

 会議に参加していた堀北が意外にもBクラスとの協力に対して賛成の意見を申し上げた。この場にいるDクラスの正臣、平田、櫛田、須藤、そして何故か堀北と須藤に連れてこられた綾小路、その全員が内心意外だと思った。

 

「堀北なら、反対の意見を申し出すと思ったんだけどな」

 

「相手が同盟を組んでいない相手なら私も断るわ。でも、すでに同盟を組んでいる相手であるBクラスなら、これからの関係を見据える意味でもこの辺りで一度手を組んだ方が良いと判断しただけよ」

 

 そのしっかりとした理由にのらりくらりと適当な理由を言っていた正臣よりもこの場にいる心に響いたことは確かめるまでも無い事実だ。

 

「えっと、堀北さんもこう言っていることだし、素直にBクラスと協力してといいんじゃないかな?」

 

「僕もそう思うよ。どうかな紀田君?」

 

 この場の空気は明らかに正臣にとって不利だった。約束を抜きにすればBクラスと手を組んでも良いと思っていた正臣は大きくため息をつき、もしものことがあるといけない為、裁判が終わるまでは一之瀬に注意を払っていくことを決意するして了承する。

 

「しゃーねぇな。んじゃあ、BクラスとDクラスのドリームチームと行きますか!!」

 

「それよりも、一之瀬さんの後ろにいる男子は誰かしら?名を名乗って欲しいのだけど?」

 

 いきなり名指しをされビクッとなったBクラスの男こそ、正臣の幼馴染である竜ヶ峰帝人だ。今回の会議は正臣が中心になっていると聞いた一之瀬によって招集されていた。

 

「Bクラスのりゅ、竜ヶ峰帝人です!!紀田君がいつもお世話になっています」

 

「ったく、何処目線で話してんだよ」

 

 悪態をつきながらも、クラスが離れてしまって交流の機会があまり無い帝人と協力が出来ることに正臣は頬を緩める。

 

「そういえば、今日は神崎くんはいないんだね。一之瀬さんと竜ヶ峰くんの2人で来てくれたの?」

 

「にゃはは、神崎くんは誘ってはみたんだけど、今日はお家デートの日らしくて、断られちゃった」

 

 神崎隆二と付き合っているのはDクラスの張間美香。これは平田と軽井沢ぐらいに知名度のあるカップルで、平田と軽井沢よりもデートを目撃されている回数が圧倒的に多かった。その事もあり、一之瀬の言ったこの理由には全員が納得した。

 その後も一之瀬と帝人を加えて、暴力事件の対策会議が続いていくことになり、学校の掲示板で情報を募集することや、ポスターで呼びかけるなどの有力な意見が出た一方、正臣は帝人と櫛田が今回の会議の中でよく喋っていたことに少しの違和感を抱いた。

 

 

★ ★ ★

 

 

 DクラスとBクラスの合同会議が行われていた日から数日が経ち、火曜日の須藤の裁判が行われてから、数時間後のその日の夜。学校寮の神崎の部屋に今日も今日とて美香はお泊まりの用意をしてお邪魔していた。

 

「やっぱり私の作った料理を隆二くんに食べさせてもらうのはこれ以上無い幸せですね!」

 

「それは良かった。美香の幸せな顔を見ると、俺も嬉しい」

 

 奇妙な関係から始まったこのカップルだが、ひと月以上も一緒にいると神崎もその関係に慣れて、恋人らしいことも一通り恥ずかしがること無く、出来ていた。すでに、パジャマへと着替えていた2人は雑談に興じる事にした。

 

「そういえば、裁判がどうなったのかもう聞いたか?」

 

「いやー聞いて無いんですよね。私って発言権があることは自覚してるんですけど、他の人に比べてあまり積極的に協力はしませんでしたから」

 

 美香が自覚している通り、Dクラスの中でカーストが高い正臣や平田、櫛田は積極的に目撃者探しや意見を出しており、あの軽井沢も平田や正臣に付き添ったりしながらも協力していた。それに比べて美香は神崎最優先であり、神崎の予定が無く、自分もすることが無い時だけしか暴力事件解決に向けて関わっていなかった。

 

「前から思っていたが、美香は少しDクラスへの関心が薄く無いか?」

 

「まぁ、そうですね。結局私って隆二くんと一緒に無事に卒業出来たらそれでいいんですよ。もちろん、Aクラスに上がれたら嬉しいですけど、それで隆二くんと敵になるんだったらAクラスなんていりません」

 

 美香は意志は固く、その目はどんな事があろうと神崎に対して敵対するような行為をすることは無いだろうことを神崎に悟らせるには充分だった。それほどの覚悟が自分にあるだろうかと思うことは今の神崎には無い。自分も美香の言うことに共感と少しの同意を示しているのだから。

 

「ありがとう美香」

 

「私の方こそありがとうございます!それで……一応聞いておきますけど、裁判ってどうなったんですか?」

 

「ああ。まず裁判には須藤の他に、綾小路と堀北が参加したらしい」

 

「綾小路くん?Dクラスでも目立たない人ですけど、何でその人が?」

 

「どうやら、紀田は一之瀬と裁判に勝つためにすることが出来たらしく裁判には出られず、その結果、弁論の強そうな堀北が裁判に立候補して認められたかららしい。綾小路に関しては俺も面識が無いからよく知らないが、堀北に関連してということしか分かっていない」

 

 何故綾小路が参加したのかに関しては神崎や一之瀬をもちろんのこと、Dクラスの人間ですらあやふやで、リーダーである正臣も色々腑に落ちない点は疑問に持っていれど、全てを把握をし切れてはいない。

 

「それで、結果はどうなっちゃたんですか?」

 

「明日に延期らしい。だが、一之瀬と紀田に必勝法があるらしいので、そこまで悲観することは無いだろう」

 

「え、そうなんですか?なら、ポイントも残りそうですね。流石にポイントが無いのは困りますから」

 

 その後も雑談を続けていたのだが、美香が自分の部屋に忘れ物を取りに戻って帰ってくると、神崎はソファーに座って眠ってしまっていた。その姿に美香は穏やかな笑みを浮かべると、小さい毛布を神崎にかけた。

 

「他人事みたいに語ってましたけど、私と会っていない時間は一之瀬さんやDクラスのことをサポートしていたのを知ってるんですよ?本当にお疲れ様です。でも、そんな隆二くんも私は好きです」

 

 その夜、神崎は美香に膝枕された状態で眠りの中にいた。

 

 

★ ★ ★

 

 

「失敗した?どういうことだ石崎」

 

「いや、紀田と一之瀬によって嵌められたんですよ龍園さん!」

 

 水曜日の放課後、鍵の閉められたCクラスの教室にいたのは龍園、アルベルト、伊吹、幽の4人と暴力事件の被害者である小宮、近藤、石崎の三人が裁判を受ける前よりも傷を負って教室の床に正座していた。三人は龍園によってこれ以上の制裁を受けるのを防ぐために必死になって何故こんな事になったのかを詳細に話した。もちろん、自分達贔屓な意見なのは拭えないが。

 

「ハッ、大体聞いていた報告通りだな。だが、てめぇら保身に走りすぎじゃねぇか?」

 

「報告?俺たちは今報告したばっかすけど」

 

「気づいちゃいなかったと思うが、お前らの行動の報告の為にこの何日もお前らの近くに平和島がいたのさ。命令したら、嬉々としてやってくれたぜ平和島わよ」

 

 龍園の言う幽の嬉々としている表情などここにいる幽も含めた全員がピンときていないが、他クラスには見られること無くとも一緒にいる時間がそこそこ多い龍園には段々と幽の表情が読めるようになってきたのだろう。

 

「じゃあ、俺たちが今報告した意味は」

 

「てめぇらの馬鹿さ加減と、裁判の内容を知る為だ。いくら、幽とは言え、生徒会に入ることは無理だからな」

 

 龍園は幽の報告と石崎の報告を聞いた上で、一体誰がDクラスで警戒すべき存在なのかを考察する。今回、しっかりと動いていた紀田はもちろんの事、弁論と強気の発言をしていた堀北。

 

「チッ、Bクラスとつるんでるのが気に入らねぇな」

 

 だが、Bクラスが大きくDクラスに協力したことで、Dクラスの人材を見極めるのに支障をきたしていた。

 

「幽。てめぇはDクラスで誰が臭いとみる?」

 

「不確定な情報で何か言うつもりは無い。だけど、綾小路清隆。彼からは兄さんに似た感じがする」

 

 綾小路清隆。龍園はその名前を裁判に参加していただけのDクラスとして聞いている。そのくらいの情報しか無く、他に特筆すべきことは何も無かった。そんな綾小路を幽と会うまでの龍園ならば特にマークも警戒もしなかっただろう。しかし、幽という無表情、無口だが、特異な精神を持つ人間を見てからは人畜無害な人間の方が分かりやすい天才よりも厄介だという意見を持ち始めていた。

 

「頭の片隅には入れといてやるよ。それはそうと、ミスったてめぇら三人には制裁をしとかねぇとな」

 

 今回の事でCクラスはDクラスに対して敗北を喫してしまったが、龍園は外面ほど怒ってはいなかった。何故ならば今回のことでポイントは動くことは無く、ポイントの動くことになる特別試験について自分達は名前だけだが情報を持っていて、他クラスよりも一歩リードしているからだ。そして、その試験が行われるのを龍園は名前からの推測だが、暇つぶしにいくつもの作戦を立てたりしながら首を長くしながら待っていた。

 

 

★ ★ ★

 

 

「そういえば、私は無人島に行く事が出来ませんので、Aクラスはお二人に任せました」

 

 全クラスで無人島へのバカンス旅行の日程が発表され、Aクラスでは坂柳の欠席が発表された日の夜。坂柳の部屋には普段と同じように神室と杏里が来ており、三人でババ抜きをしていた。

 

「見学とかも出来ないんですか?」

 

「ええ。この体では残念ながら行くことも出来ません。私も遊びたかったのですが……」

 

 この坂柳の遊ぶという言葉にはそのままバカンスを楽しむという意味では無いことは二人からしてみれば聞くまでも無く分かっていたことだった。その上で、無人島で何があるかを問う。

 

「それで?無人島で私たちに何を任せるっていうの?」

 

「もちろん、葛城くんの妨害に決まってるじゃないですか。橋下くんにも軽く言い含んでおきましたが、お二人にも多少は働いてもらおうかと思いまして」

 

 淡々と用件を話しながらも坂柳は順調に手札を捨てていき、二人が気づいた時には一番初めに抜けていた。

 

「具体的には何をするんですか?」

 

「連絡が取れれば、何か動きがあった時に連絡して下さい。他は葛城くんの不利になると思ったことをやってくれたらいいですよ」

 

 ババ抜きは最終決戦までもつれ込み、神室がジョーカーとハート8を持ち、杏里はハートの8を一枚持っている。神室は負ければ坂柳から何かを言われ、それ嫌がって、杏里相手に本気で勝ちにいくというのも大人気ないという理由で杏里に早く取って欲しがっていた。

 

「あ、……勝ちました」

 

「おめでとうございます園原さん。神室さんもう一度やりますか?」

 

 そんな迷いに迷っていた神室の内心など御見通しというように、坂柳は中々に悪どい顔をしながら、神室にコンテニューを持ちかけていた。

 

「やらない。私、もう寝るから」

 

 その言葉通り、神室はとっととベッドに中に入ると、すぐに眠ってしまった。それを見た坂柳と杏里もベッドの中に入って、習慣化してしまった三人での睡眠を今日もしたのであった。

 




これで原作2巻は終わりですね。早足で進めましたが綾小路ヤバい奴という印象は物語内でどんどん広まっていっています。

カップル同士などの描写の深さについて

  • 仄めかしもやめてほしい
  • 仄めかす程度ならば問題なし
  • 軽い描写なら良し
  • 多少深くてもok
  • ギリギリまで攻めてよし
  • どれでも気にしない
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