ようこそ非日常の溢れる教室へ   作:地支 辰巳

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 いよいよ様々な人たちが動き出します。


多様な戦略と広がる暗躍
大空が広がろうと大海が広がろうと人の中身は変わらず


 

 穏やかな潮の流れに任せるように進む巨大な豪華客船。沈没する気配など微塵も見せず、ある島へと着々と進んで行く。その豪華客船に乗ってるのはまだまだ青臭い高度育成高等学校の一年だ。そんな彼らの一部は、景色なんて見ずに携帯に夢中になっていた。

 

「お前のところには来たのか?」

 

「いや、来てないけど、それ選ばれる基準とかあるのか?」

 

「分からん。だけど、ランダムに選ばれた人間にしか入らないサイトってロマンない?」

 

「厨二病かよ」

 

 彼らが言うサイトはある日を境に学校の掲示板を活用して突然現われたパスワードを入力しないと入れないサイトで、所謂会員制と言われるものだ。パスワードを入力して入れても特に特典などがあるわけでも無く、ただ自分の身元を知られる事無く、気兼ねなく会話が出来る場所というだけだ。それがクラス間の争いやクラス間の不仲で疲れ切り、固定された人としか会話することが無くなってしまったここの学生には大きく刺さった。そのおかげもあり、パスワードを受け取った人間はほとんどが利用していた。誰が開き、誰が運営しているかは知らないままに。

 

 

★ ★ ★

 

 

 何をするにもお金がかからないようになっている船内で各々が好きな食事を取っている中、Aクラスの吉宗と山村はハンバーガーを二人で食べていた。無料ということで高級料理やバイキングを食べている人が多い中、二人以外に客は店の中にいなかった。

 

「……おいしい」

 

「でしょ?山村さんがハンバーガー食べたことないって言ってたから、1度連れて来たかったんだ」

 

 吉宗の童顔から見せられるその人懐っこい笑顔は何処までも純情さが際立っており、他人のことをカッコいいとかカワイイとか思わない山村でもついそのどちらの感情を思い起こすほどだった。

 

「ありがとう。他に用はある?」

 

「うん。今回の無人島へは坂柳さんが来れなかったよね?それで、他のみんなは無人島でポイントを争う試験があるって言ってるだけど、そこで起こるであろう足の引っ張り合いを防ぎたいんだ。助けてくれるかな?」

 

 誰よりもAクラスの為を考えているのはこの男だと山村は確信する。葛城だろうが、坂柳だろうが、どちらともクラス全員のことを考えているようには山村の目から見ればそんな風には見えない。だからこそ、この男をAクラスのトップに立たせたいともつい思ってしまう。

 

「うん。私に出来ることがあったらなんでも言って」

 

「ありがとね。それじゃあ、頑張っていこっか!」

 

★ ★ ★

 

 豪華客船に備えられたプール。そこには様々なクラスの人間が思い思いに楽しんでおり、その一角でBクラスの男子の多くもワイワイ楽しみながら、水の中でボールを投げたり、浮かせたりしながら遊んでいた。

 

「竜ヶ峰!パスパス!!」

 

「柴田くん!!」

 

 チーム戦で戦っているということで熱くなっている柴田。それに合わせるように熱くなっていくBクラスの男子達。水球のような遊びは白熱し、夏の思い出の一つに残ることになる。

 水球が終わり、楽しさ半分、疲れ半分でプールを後にして、更衣室へと入っていくBクラスの面々。

 

「そういえばよ、竜ヶ峰。ポイントをもらったって聞いたけど、いくら貰ったんだ?」

 

「え、えーと、……5万ポイントぐらい」

 

「うげぇお前マジかよ!?それ、一之瀬は賛成したのか?」

 

「うん。なんとか頭を下げて、預けている多少のポイントをもらったよ。4月から一之瀬さんにお願いしたことは無かったから、快く了承してくれたよ」

 

 Bクラスのポイント管理システムは他のクラスよりもややこしくなっており、Cクラスと同様にリーダーである人物がお金を管理しているが、Cクラスの生徒が一定額を毎月龍園に渡すのとは異なり、Bクラスの生徒は毎月入るポイント全てを一之瀬に渡している。その後、神崎が日々の生活に必要な分を算出し、みんなに配っているというスタイルで、足りないなどの場合は一之瀬から許可が出れば集めているポイントからもらえる仕組みだ。

 

「何に使ったんだ?」

 

「うーん、先行投資かな」

 

 帝人は一之瀬にポイントが欲しいと言うのは初めてだが、何となく納得しずらい理由でポイントを欲したので神崎からは反対の意見が出たが、帝人の決意に満ちた目とこの間、Dクラスの暴力事件に協力してくれたということで、一之瀬が許可を出した。偶に借りる生徒はいるが、万を超える額をお願いした生徒は帝人が初めてだった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 船内から到着予定にある無人島の全貌を見る機会が与えられた後に、一年生は無人島へと降り立つこととなった。服装はジャージで、持ち物は携帯のみ。その携帯も結局は担任に預けることになり、楽観的に無人島へと降り立った生徒たちにも危機感や猜疑心を持つことになる。

 その不安を形創るように、一年生初である特別試験の開始がAクラス担任の真嶋先生からなされる。

 

 ・この試験のみで使えるポイントが300ポイント配られ、そのポイントを使うことでマニュアルから好きな物が交換出来るが、残ったポイントはそのまま2学期以降のクラスポイントに追加される。0からそれ以上減ることは無い。

 

 ・クラスで一人、リーダーとなる人物を決める。最終日にその人物を他クラスが指名すると、当てたクラスは50ポイントを得て、当てられたクラスは50ポイントを失う。

 

 ・体調不慮などでリタイアは可能だが、ポイントを30ポイント引かれる。

 

 ・無人島のいたる場所に拠点があり、リーダーの持つカードキーで制圧し、一定時間が経つごとに1ポイントがカウントされる。このポイントは試験終了後に加算される。リーダーを当てられるこのポイントは無効となる。

 

 クラスごとに分かれて担任から諸注意や詳しいルールが説明され、4クラスとも別々の場所へと歩みを進める。

 

「てめぇら全員、そこで待ってろ。伊吹、平和島。お前らはこっちに来い」

 

 Cクラス全員が太陽がギラギラ輝いて見えるビーチへと放置され、伊吹と幽のみが龍園に呼ばれるままに森の中に入って行った。

 

「それで?無人島の為にしていたサバイバル術でも他の奴らに教える?」

 

「ククク、残念ながらそいつは使わねぇな。お前らには他クラスに潜ってもらう」

 

 龍園は今回の試験の名前を知った段階から伊吹、幽、石崎の三人にはサバイバルの本を読ませた上で特訓を義務付けていた。そのおかげでもあり、相当なサバイバル能力を有した三人で、今回の試験に自信も持っていた。

 

「は?意味わかんない。この何ヶ月のやつは何の役にも立たないっていうの?」

 

「そう怒るな、いつかは役に立つだろうぜ。そんなことはいい。お前ら二人にはBクラスとDクラスに潜り込んで、リーダーの情報を盗ってきてもらう。幽、てめぇは演劇部だろ?問題ねぇよな?」

 

「ああ、構わない」

 

「じゃあ、決まりだ」

 

「私の意見は無視かよ」

 

 伊吹にとっては不本意が、幽にとっては本気で演じられることに喜びを。それぞれ異なる気持ちを持ちつつもこの試験に挑むことになる。

 

 

★ ★ ★

 

 

 一人でAクラスのキャンプへと足を運び、何らかの話し合いを葛城をした後、龍園は300ポイントをとっとと使い切り、伊吹と幽を除くクラスメイトをめいいっぱい遊ばせていた。

 

「お、あったあった。安藤早く来いよ」

 

「う、うん。危なくないか?」

 

「大丈夫だって、この辺は朝も来たから」

 

 それと同じ頃、Bクラスのキャンプの周りを散策しに来たのはBクラスの安藤紗代と柴田颯だった。柴田は暗くなったこの時刻でもテンションが高かったが、安藤はいつもと違うよそよそしい態度でテンションも安定していなかったが、持ち前の運動神経で柴田に着いていくのは容易だった。そんな二人の視線の先にジャージの間から傷を覗かせ、ボロボロになりながらも座り込んでいる幽が映り込んだ。

 

「おい、大丈夫か!?」

 

 柴田は座り込んでいる幽を見つけるとすぐに近づき、けが人に対しては少々強く肩を揺らしながら呼びかけた。

 

「た、助けて!!りゅ、りゅう」

 

 そこにいるのは外見は平和島幽であって、中身は平和島幽では無かった。何かに怯えたようにおぼつかない口調、少し荒い気味の呼吸。なにより、いつもは表情の変化が一切見られないようなものだったのに、今は生き生きとしている表情と顔をしており、同一人物とは思えないものだった。

 

「お、落ち着いてくれ。まずは話を聞くから」

 

「あ、ご、ごめん。俺、Cクラスなんだけど、龍園の勝ちを捨てたような戦略に反対したら、この様で」

 

 柴田はウッという声が出るような分かりやすい表情をしてしまった。そこには、よりにもよって試験中に仲の悪いCクラスの人間に出会ってしまったこと。それなのに、こんなにも困っている幽を助けたいと思ってしまったことにある。

 柴田は迷う。彼を助けるのか、助けないのか。そして、ほとんど時間をかけることを無く、彼は決意を固める。

 

「とりあえず、Bクラスの拠点で話そうぜ」

 

 柴田は幽に肩を貸して、Bクラスの拠点へと歩みを進める。安藤が手伝うと申しても柴田は断り、みんなに先に言って来てくれと逆に頼む。技術の無い人間が一人の人間に肩を貸すのは相当に大変なはずなのに、それを顔に出さずに安藤に別のことを頼む柴田に安藤、幽、共に人間が出来ているなと感心し、安藤は何度も振り返りながらも拠点へ先に戻った。

 

 

★ ★ ★

 

 

「ありがとう柴田くん。後は任せておいて!」

 

「いや、大丈夫だから!話ぐらいは俺も聞いていくぜ」

 

 最後まで責任を果たすということで残った柴田とクラスの顔である一之瀬、その補佐役である神崎に幽はことの経緯を話すことになる。

 

「俺らのリーダーが龍園だっていうことは知っていると思うんだけど、その龍園が今回の試験を放棄するみたいに300ポイント全てを使って、バカンスし始めたんだ。それに反抗した伊吹って子がいるんだけど、俺もその子が反抗するのを見て、勇気を出して一緒に反抗したら二人とも追い出されちゃって。本当情けないで」

 

 幽のキャラ設定は龍園が提案した気弱だが伊吹に恋していて、勇気を出した一般生徒になっている。伊吹は少し難色を示したが、この試験に限るということで、納得したようだった。その後も、幽はCクラスのキャンプの場所や龍園の性格などのBクラスが欲している情報を事前に龍園と吟味した上で話していた。

 

「よし!幽くん。外は危険だから、この試験の間はウチのキャンプで過ごしてよ。もちろん、色んな制限とかはかけちゃうことになっちゃうけど。どうかな?」

 

「おい、一之瀬。こいつは」

 

「分かってるよ。でも……ほっとけないよ」

 

「あ、ありがとうございます!感謝の言葉しかないよ!!」

 

 この日、幽にとっての7日間という大舞台の幕が開けた。

 

 




 金田くんの出番が減っている気がします。金田くんすまん。


 参考までにデュラララのキャラとよう実のキャラのコンビorグループ一覧です。

 紀田正臣と一之瀬帆波  竜ヶ峰帝人と櫛田桔梗  張間美香と神崎隆二

 神室真澄と園原杏里と坂柳有栖   龍園翔と伊吹澪と平和島幽

 三好吉宗と山村美紀

 追加する可能性あり。

カップル同士などの描写の深さについて

  • 仄めかしもやめてほしい
  • 仄めかす程度ならば問題なし
  • 軽い描写なら良し
  • 多少深くてもok
  • ギリギリまで攻めてよし
  • どれでも気にしない
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