ようこそ非日常の溢れる教室へ   作:地支 辰巳

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 年が明けました。今年もよろしくお願いします。

 


相性の良い人間は初見では分からない

 無人島から遡ること1ヶ月前。早朝の寮と学校の間を走り込みをしている生徒、堀北鈴音。そんな肩を並べるようにもう1人の女子生徒が隣を走っていた。

 

「流石ね。前回よりもペースを上げたのだけど」

 

「そうですね。前よりも疲れたかな」

 

 2人は休憩も兼ねて、自販機が近くにあるベンチに座ったが、堀北が一息ついている合間に、もう1人の女子生徒が自販機で2人分の飲み物を買っていた。

 

「どうぞ、堀北さん」

 

「ええ、ありがとう。それで、もうすぐ夏休みだけれども、ランニングは続けるの?」

 

 いつもDクラスで見せているような冷たい表情では無く、Dクラスの全員が見たのならば驚きに包まれるような、そんな緩んだ表情の穏やかな様子で、その女子生徒に声をかけていた。

 

「……続けたいかな。クラスで浮き気味の私は堀北さんしか友達が居ないから」

 

 彼女の言葉に堀北は照れくさそうに目を逸らし、何て返せばいいのか迷い、堀北にしては珍しく次の言葉が出るまで時間がかかっていた。

 

「……友達……そうね、友達なのよね。友達だったら、それくらいするわよね」

 

「どうしたの?堀北さん」

 

「いえ、なんでもないわ。私もしようと思っていたから、丁度良いと思っていた所よ」

 

 たった1人、されど1人。何人かなんてことは関係無い、彼女が堀北にとっては初めての友達だったのだから。

 

 

★ ★ ★

 

 

「堀北。堀北」

 

「……ど、どうしたのかしら綾小路君」

 

「いや、紀田が呼んでたぞ。俺と堀北をご所望のようだぞ」

 

「珍しわね。何か考えがあるのかしら。行くわよ、綾小路君」

 

 少し過去の出来事に思いを馳せて、意識が飛んでいた堀北。そんな堀北を呼びに来た綾小路だったが、結局の所、堀北に置いていかれる形で正臣の所に向かった。

 

「鈴音ちゃん!一緒にビーチでバカンスでもどう?」

 

「いやよ。そんなことで呼んだのだったら、帰らせてもらうわ。あと名前で呼ばないでもらえる?」

 

「ま、待って。ちゃんと、用あるから」

 

 正臣のふざけた態度に堀北は帰ろうとしたのだが、正臣は情けない声を上げながらもそれを必死で止めた。そんな情けないリーダーに映る正臣だったが、その実、平田や櫛田といった求心力のあるDクラスの人間にしっかりと指示を出し、Dクラスの面々を動かしており、リーダーとして相応しい行動を取っていた。

 

「他のクラスの拠点とか見に行きたくないか?俺ら三人でさ」

 

「何故俺たちなんだ?平田や櫛田なんかの適任者がいるんじゃないのか?」

 

「チッチッチッ、あの2人にDクラス内の取りまとめを任しちゃってるしさ、綾小路と堀北ちゃんはBクラスとは暴力事件の時に面識があるでしょ?なに!より!帆波ちゃんと会いたいから!ね!」

 

 正臣のテンションの高い、ぐいぐいとした態度に引きながらも綾小路と堀北は了承する。三人ともそれぞれの思惑の元、このような結果になっていた。その思惑が果たしてどこまで自身のエゴを含んでいるかは全員が自分のことを理解していた。

 

 

★ ★ ★

 

 

 当ても無く歩き続ける三人。行くとなったのは良いものの、全員他のクラスの場所を知らないと言っていたので、仕方無く三人は森の中を彷徨っていた。

 

「そういえば、紀田くん。このクラスのリーダーが誰か聞いておきたいのだけれども」

 

「ん?ああー誰だっけなー。なんってな。まぁ、俺とその子だけのトップシークレットってことで、納得してくんね?」

 

「ちゃんと考えがあるのなら、いいわ」

 

 それっきり堀北は偶々発見したBクラスの拠点に着くまでの間、喋ることは無かった。それは堀北が少し疲れ気味にあるのだが、綾小路も紀田もそれに薄ら気づきおり、歩幅を地味に合わしたり、自身も喋る回数を少なくするなどして、2人共がプライドの高い堀北を気遣っていた。

 

「お!あれじゃねぇか?」

 

 自分達の居る場所から見えるか、見えないかの微妙な位置からBクラスの拠点を発見した正臣は脇目も振らずに走り出す。それを早歩きで追いかける綾小路。依然とした歩幅で堀北がその後を追う。

 

「だれーだ?」

 

 Bクラスの拠点内に入り、見知った顔である帝人を見つけた正臣は後ろから目を隠すような子ども騙しなことなことをしていた。

 

「え?その声、もしかして紀田君?」

 

「フフフ、当たりだぜ。帝人。遊びに来てやったぜ」

 

 そんなこんなで、ナチュラルに会話し始めた2人だったが、その空気を躊躇なく壊すように咳払いが聞こえた。

 

「紀田。同盟関係だといっても、この試験においては何の取り決めもしていない。そう易々と入らないでくれないか?」

 

 咳払いし、正臣に注意喚起をしたのはBクラスの右腕である神崎だった。神崎は朝から起きていたようで、目の下の隈がよく目立っていた。

 

「誰かと思ったら、うちのクラスの美少女、張間美香の彼氏の神崎じゃないか。羨ましいなーこの野郎」

 

 正臣がお調子者のテンションで、神崎の体を小突きながら揶揄う。そんなことをしてきた正臣に神崎は邪険にすることも特に反応することもしなかった。

 

「紀田君。やってることが柴田くんと変わらないよ?神崎君も飽きてるんだよ」

 

「あれ、そなの?じゃあ、いっか。帆波ちゃん。何処にいるか知らない?」

 

「知ってはいるが、俺もついて行く。念のためだ」

 

 念のために見張られながら、Dクラスの三人は一之瀬の元に行く。一之瀬の周りにはBクラスの生徒が多く固まっており、人気なことが伺えるが、その中に1人、Bクラスでは無い人が居た。だが、Dクラスの面々と神崎が来たことで、これから起こることが重大なことだと、察したのかBクラスでは無い1人含め、Bクラスの人も一之瀬から離れた。

 

「1人だけ、Bクラスでは見ない顔がいたけれど?」

 

「ああ、彼は平和島幽くんって名前で、Cクラスから追い出された所を保護したの。私の独断ってところが大きいんだけどね」

 

 その言葉を受けて、綾小路は考えを巡らす。自分たちのキャンプにもCクラスの人間を保護しており、嘘をついているだろうことが目に見える伊吹。そんな伊吹と同じくBクラスで保護されたCクラスの人間。これが偶然と見るにはあまりにも出来すぎているのだと。そして、このことに気づいていない正臣では無いだろうことにも。

 

「いやー、帆波ちゃんは優しいねー。まぁ、俺らの所にも一人いるんだけどよ。そんなことよりも、これからのこと、作戦会議しよーぜ」

 

「ちょっと紀田くん、同盟相手とは言え、情報管理が杜撰過ぎないかしら?」

 

「ははは、大丈夫だよ堀北さん。不用意に立ち入らないからさ」

 

 そんな心に余裕が見える正臣や一之瀬の主導によって、一之瀬、神崎、正臣、堀北、綾小路による会議が為された。綾小路は自分がいることに少々疑問を抱いたが、そんな事は関係ないと言うように会議は進んでいき、様々な盟約がされた。

 

「じゃあ、お互いのリーダーは指名しない。お互いのスポットは許可なく占有しない。リーダー情報を他クラスに流さない。て、感じでいいか?同盟関係だから、ガチガチでも問題ねぇとは思うけどよ」

 

「口約束で構わないのか一之瀬?」

 

「うん。Dクラスのみんなは信じられるし、Bクラスのみんなにも不安を抱いて欲しくないにはこれが一番かなって」

 

 無人島でのBクラスとDクラスとの関係は一之瀬、正臣などが中心となり、お互いにとって良い距離感となったことで、この二クラスでの会議の時間はここにいる全員にとって有益なものとなっただろう。

 

 Bクラスですることの終わったDクラスの三人はまた他クラスのキャンプへと向かう。今度はBクラスのキャンプを探すよりも、多くの時間がかかりながらCクラスのキャンプを探す。ようやく、探し出した頃にはもう日は傾いており、辺りが夕焼け色に染まっていた。

 

「あの、龍園さんが呼んでます」

 

 砂浜にあったCクラスのキャンプに着いた三人が見たのはバーベキュー用品を惜しみなく使う生徒、水着で思う存分楽しんでいる女子、などなどの他クラスとは全く違った生活をしていた。そんな、三人の元へ龍園から命令された石崎が来ており、石崎は三人を龍園の元へ招待していた。

 

「だってよ、どうする?」

 

「行くに決まってるじゃない。Cクラスには色々とお世話になっているのだから」

 

 吐き捨てたように言葉を言う堀北を筆頭に三人は龍園の元へと向かう。龍園は近づいてくる三人に気づくやいなや、ニヤニヤとした笑みを強め、ペットボトル以外何も無い机に肘を置く。

 

「よお。よく来たな。どうだ、俺のキャンプは。良い所だろ?」

 

「うーん、バカンスに女の子の水着姿。いやー美しい子ばかり見てると、目が疲れちゃうよ」

 

 ニヤつきながらも煽ってくる龍園に対して、正臣は飄々とした態度をしながらその煽りをかわしていく。その返しが気に入らなかったのか、龍園は正臣を無視して、堀北へと狙いを定める。

 

「どうだ、鈴音。こんな良いバカンスを満喫出来る俺のクラスへと裏切っていいんだぜ?」

 

「……いやよ。こんなことをしていたら、優秀な人間が腐ってしまうと思わないのかしら?あと、名前で呼ばないでもらえる?」

 

「ハッ!俺のクラスの優秀な奴なんざ、アルベルトや椎名、聖辺なんかがいるが、どいつもこいつも変わり者ばかりだ。腐っちまうぐらいが丁度良い」

 

「そう。なら、私はこのクラスに向いていないようだし、今回の試験でもお話にならないようね。せいぜい、高みの見物の真似事でもしておいてちょうだい」

 

「ああ、そうさせてもらうぜ。この試験、お前らに譲ってやるよ」

 

 龍園との会話が終わった三人は足早にこのキャンプを去る。堀北だけは何かを気にするように後ろを振り返っていたが。

 そして、綾小路は堀北への評価を密かに上げる。プライドの高い彼女ならば、とっとと、龍園に見切りにつけて、やる気が無いという評価を下していたかもしれない。しかし、今の彼女は一之瀬と正臣の意見に加えて、何度も振り返ることで、龍園への警戒を忘れないないでいた。そんな、堀北の行動から綾小路は堀北がDクラスで必要な存在なのだと実感する。

 

 

★ ★ ★

 

 二つのクラスのキャンプを巡っただけで時間を思ったよりも多く使った三人は一度Dクラスのキャンプへと戻り、Aクラスのキャンプへは明日へ延期することにする。

 

「あれ、堀北さん。もうご飯だよ。何処行ってたの?」

 

「……ちょっと休憩していただけよ」

 

 相変わらず櫛田との会話を最小限に留めた堀北は食事係から食事をもらうと、半分まで食べ進め、不意に手を止めた。

 

「堀北さん。どうしたの?」

 

「いえ、後で食べようと思っただけよ」

 

 櫛田を含めた全員から何かを悟られ無いように堀北は手早く夕食を持って自分のテントの方角へと向かっていく。その背中はいつもの自信に満ち溢れれた背中とは違ったように見えた。

 




第三者視点で書いてても、暗躍や密会は知らない体で書いてます

カップル同士などの描写の深さについて

  • 仄めかしもやめてほしい
  • 仄めかす程度ならば問題なし
  • 軽い描写なら良し
  • 多少深くてもok
  • ギリギリまで攻めてよし
  • どれでも気にしない
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