朝の探索へと出かけているBクラスの帝人と柴田。足が速く、歩幅が広い柴田に帝人が頑張って着いていっているような光景だった。
「まってよー柴田くん。速いよ」
「帝人ー。そんなこと無いって。朝の運動ほど良いものはないだろ?」
「分かんないよー」
言葉では帝人の意見を否定しつつも、柴田は足を緩め、スピードを遅くする。そして、そんな同じぐらいの速度になり、食べられそうな植物を回収しながら雑談をしている二人の前に少女が二人現れた。
「ねぇ、Aクラスのリーダー知りたく無い?」
「教えます」
その二人は前日に正臣や堀北と会っていた神室と杏里だった。二人は朝にも関わらず眠気を感じさせない意思や目力をしており、眠たいながらも元気を出そうとして出している二人とは全く違っていた。
「え、ええ!?き、君らってAクラスじゃねぇのか?ど、どうするよ帝人」
「ぼ、僕に言われても困るよー。うーん、聞くだけ聞かない?」
無人島生活も折り返し地点に入ってきて、慣れてきた二人にこのような予想出来ない事態。そんな、日常とした雰囲気が漂っていた無人島に非日常が溢れるような情報。帝人はいつもと違いあまり考えることせずに、聞くことを決める。
「なんでも良いから、早くして」
「お願いします」
「よ、よし。聞いてやるぜ!」
帝人の積極的な後押しもあり、柴田も聞く体勢を取る。そんなやっと聞く体勢になった情けない男子二人に神室はため息をつきながらも、淡々と嘘一つ無いAクラスのリーダーの名を口にする。
「戸塚弥彦。それがAクラスのリーダーの名前。葛城の隣にいる腰巾着みたいな奴ね」
「あんまり口外しないでもらいたいです」
「分かったよ。神室さん、園原さん。は、はやく行こう。柴田くん」
そんな風に帝人が率先するように二人はこの場を去って行った。その背中を見ながらと役目を果たしたように二人は緊張感を少し解く。
「……私たち、あいつに名前名乗った?」
「いえ、名乗ってないと思います」
少量の疑問を神室と杏里に残しつつ。
★ ★ ★
「ククク、おいおいどういう風の吹き回しだ?」
帝人と柴田との邂逅を終えた二人がAクラスに帰ろうとしている途中、龍園が二人の前に一人で現れた。隈を少し持って現れた龍園の雰囲気はいつもよりも陰鬱としたようなもので、何からの疲れが溜まっていることはあまり面識よ無い二人からも見てとれた。
「何が?」
「とぼけんなよ。てめぇらがBクラスに情報を教えたことだよ。坂柳派なら、俺に教えるのが筋ってもんじゃねぇのか?」
対して親しくも無い二人に対しても高圧的に出る龍園だったが、何気に肝の据わっている二人は態度を変化させることも無く、会話を続ける。
「最初は私たちも龍園くんに情報を渡そうとしました。そっちの方が確実性があったので」
「でも、三好が頑張ってるところなんて見たら、やり過ぎとか思ったから、辞めた」
そんな適当に思える理由に龍園は嘘では無いのかという怪訝な目を向ける。しかし、二人揃って言うところから、嘘の可能性を少し下げつつも疑いは下げずに、そのまま話の続きを促させる。
「だけど、そんな私たちの元にある奴が取引をしにきた。だから、言ったまでだから」
「あ?お前らがあんな二人に言うことが取引って言うのか?冗談だろ?」
「残念だけど、本当。だけど、あんたが聞いていても、別に良い。どうせ、予想してたでしょ?」
「ククク、まぁな。どうせ、戸塚だとは思ったぜ。だが、根拠が無かったから、確信はしてなかったがな」
ここまで上手くいくのかと、龍園は一人でに笑う。本来の目的であったAクラスからの月々のポイントに加え、Aクラスのリーダーの情報を知れる。それに加えて、伊吹と幽の頑張りによっては他クラスからの情報も得られる。笑みが抑えられないのも仕方のないことだった。
「それで、取引相手っていうのは誰なんだ?それも教えてくれるのか?」
「それは出来ません。その人との約束で、絶対に名前を出さないことを条件にしています。それに……あの人も誰かの指示だったみたいなので」
「ハッ、お前達の為に言っておくが、そんな使いぱしりで信用出来ない奴との取引なんて辞めちまった方がいいぜ?」
そんな龍園の注意喚起とも自虐とも言える言葉に神室と杏里は呆れつつも、取引相手の印象に残っている言葉を思い起こす。
『二人の目的の為にもこの取引は乗っておいた方が良いと思うんだけど、どうかな?』
笑みを出しつつも言われたその言葉は説得力と得体の知れなさを同時に二人に味合わせるもので、その絶妙なバランスがより二人の頭に残らせていた。
「ククク、まぁいい。どうせ、いずれは情報ぐらい掴めるだろ」
「それよりあんた、こんな風に私たちと会ってていいの?目立つでしょ?」
「どうせ、目的も達して暇なんだ。バレたって問題はねぇ」
自分のスパイがバレていることなど、口が裂けても言わない龍園は余裕にたっぷりに笑う。そんな龍園のことを不気味に思った二人は昼ごろに差し掛かり、点呼の時間になることがそろそらかと思い、Aクラスの拠点の方へ向かう。
「ククク、可愛げの無い奴らだぜ。鈴音を少しは見習って欲しいもんだ」
★ ★ ★
点呼の時間に帝人と柴田から相談があると言われた一之瀬は神崎と共に、二人の元に赴き、4人で密談に集まる。
「そうなんだって、マジで言ったんだよ。Aクラスのリーダーが戸塚って奴だって。なぁ、帝人?」
「うん、間違いないよ。戸塚弥彦って言っていたよ」
柴田と帝人から事の概要を聞いた一之瀬と神崎は少々悩ませる。柴田と帝人が嘘を言っているという可能性は元から捨て、そのAクラスの二人が嘘を言っている可能性が一番高いとは疑うが、Aクラスの実情を思うと、ありえない話でも無いと二人は結論づける。
「無くは無いと思うが、どう思う一之瀬」
「うーん、何とも言えないよね。……どうしよっか」
一之瀬帆波は元来よりリーダーに向いていない人間である。それは自分で認めていることであり、鋭い推察のできる人間だったのならば察せられることでもあった。それは一之瀬の長所である優しさが原因であることが大きい。単純な話、一之瀬は他クラスへ非情になりきれなかったのである。
これが、二年のとある先輩ならば、Aクラスのリーダーへ密告して、その騒ぎを遠くから眺めるなどのことまでするが、そんなことを一之瀬は思いつきさえもしない。そんな人間性だった。
「何の話してるんですか?俺に手伝えることがあったら言って下さい!」
そんな疑えばきりの無い状況に来たのはCクラスを追い出された幽だった。演技中でもあり、明るい声であったが、他クラスの秘密の密談に入っていく状況であった為、四人全員から疑いの目で見られる。
「今、指示を出せる状況じゃない。他を当たってくれ。それと、不用意に俺たちに近づかないでくれ。次からはそれ相応の対応をさせてもらうからな」
「あ、はい。すみません」
いつもの愛想な無い表情を何十倍にも冷たくしたような表情で神崎は幽を近づかさせないように警告する。そんな対応を幽も分かっていたのか潔く下がり、誰も見ていない所で無表情へと戻ると、駄目かと口にして、木々を拾いに行った。
「話を戻すが、どうする?」
「……温存しておいた方が良いのかもしれない。何処に情報が漏れるか分からない以上、他言するのは危険だと思うから。も、もちろん、一之瀬さんの戦略に任せるけど」
「うん、うん。もしもの為の切り札として取っておいても良いかもね。Cクラスの戦略は分かっているけれど、Aクラスがリーダー当てにどれだけ重きを置いているか分からない以上は」
帝人の無難とも弱腰とも捉えれるが、一番王道でBクラスらしい意見に一之瀬は賛成の意を示す。それに追随するように柴田も神崎も肯定の頷きをする。そして、この場でこの情報を留めておくことにした一同は解散することとなった。
★ ★ ★
場所は変わり、学校の中の生徒会近くの空き教室。そこの教室を勝手に占拠して、自らの領域、商売の場所として利用している男。その男、折原臨也は珍しい来客に対して顔を綻ばせる。
「やぁ、新羅。こんなところに来るなんて珍しいじゃないか。暇つぶしに来るには辺鄙な場所だと思うけれど、まっ、ゆっくりしていってよ」
取引相手しか訪れないであろうこの教室に現れた少し大人びた眼鏡の少年、岸谷新羅は普段、臨也が他人から向けられていない笑顔を見せながら会話をする。
「いや、折原くんには似合ってると思うよ。生徒会に隣にあって、孤高の権力って感じでね」
「馬鹿にしてるでしょ?まっ、俺も不法占拠してるだけだから、文句を言われても仕方ない立場ではあるんだけど。それよりも新羅は俺とつるんでいていいの?あんまりやってると、南雲に目をつけられるよ」
いつの日と変わりなく手元で双六やダーツ、チャスの駒をいじりながらも臨也は会話を続ける。だが、その小道具達の下敷きになっている紙は表に出せない情報が書いてあるものではあった。
「そうそう、用はあったよ。古今東西何かあったら黒幕は折原臨也という格言に習って聞くけれど、これ作ったのは折原くん?」
そう言って新羅は学校の掲示板を利用して作られた会員制のホームページを見せる。そこには新羅が既にそのホームページにログイン出来ているとも示すものだった。
「そんな格言聞いたこと無いけれど、正直言って、俺じゃないよ。俺のところにもパスワードは届いていないし、これを運営するメリットは俺には無いからね」
「本当に?」
「本当だよ、本当。でも、これを作った人間は野心が凄いってことだけは分かるよ。わざわざ学校側に許可を取ってまでこれを運営して、ここが終わりだとは思えない。よっぽど、何かしたいんだろうね。誰だか知らないけど、ほんっと、面白いことしてくれるよ。暇があったら調べておくよ」
本当に楽しいことが起こったと分かる笑みを浮かべながら、臨也は淡々とこのサイトについて知っていそうな人物を生徒、教師関係なくリストアップしていく。
「そこまでして欲しかったわけじゃないんだけどね。あ、そろそろ、帰らなきゃ。それじゃあね、折原くん」
あるメッセージを見たと思うと新羅はドタバタとしながらも教室を焦ったように出ていく。そんな新羅の様子を微笑ましく見た臨也はここにある最重要資料達を持って自分も寮に戻ることにした。
ちょうど良いので、新羅と臨也を出しました。まだ本格的には出ません。
カップル同士などの描写の深さについて
-
仄めかしもやめてほしい
-
仄めかす程度ならば問題なし
-
軽い描写なら良し
-
多少深くてもok
-
ギリギリまで攻めてよし
-
どれでも気にしない