ようこそ非日常の溢れる教室へ   作:地支 辰巳

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 無人島編ひとまずは終了です。

 torinさん誤字報告ありがとうございます!


ある道を決めることは何よりも勇気がいること

 

 大雨が後半何日も来て、遂に訪れた最終日。各々のクラスのリーダーは他クラスのリーダーを指名するかしないかを選び、その上で誰がリーダーかを当てなくてはならない。普通にしていれば、部の悪い賭けともとれる制度だが、今回に至っては1クラスを除いた全ての学級が指名することを選択していた。

 

『ただいま試験結果の集計をしております。暫くお待ち下さい。既に試験は終了しているため、各自飲み物やお手伝いを希望する場合は休憩所をご利用下さい」

 

 何日も無人島で過ごしていた生徒達。その生徒達にとってオアシスとも言える休憩所には全生徒と言っても過言では無い生徒達が集まっていた。生徒はそれぞれが当たり前のようにクラス別に分かれており、その中でもリーダーの周りに集まっていた。

 

「いやーホント疲れたよな。みんなで終わったらパーティーでもするってのはどう?」

 

 本人的に待っている結果に憂いが無いのか、正臣は軽い気持ちを持ちながら、もう打ち上げの提案をする。その試験終わりにも関わらず結果に対し不安を抱いていないのがリーダーとしての器が出たのか、Dクラス全体への士気の向上に繋がっていた。そのおかげもあり、Dクラスの打ち上げ参加人数は現在居ない堀北、高円寺を除いて、全員だった。

 

「もう打ち上げの話してるのー? 速いね」

 

「おー一之瀬じゃん。このクラスの花を増やすって意味でもうちの打ち上げ来ない?」

 

「うーん、流石に行けないかな。Bクラスもするかもしれないし」

 

 残念ながら振られてしまった正臣。そんな正臣の元へニヤニヤと笑いながら、幽を連れた龍園が来た。龍園の外見、その全てがサバイバルを終えた風貌であり、他の生徒達とはまるで緊張感、やりきった感が多大に出ていた。

 

「ククク、上手くやりやがったなDクラス。だが、誰1人として全貌にはたどり着けねぇだろうな」

 

 負けは分かっているのか負けを認めている風だった龍園だが、負け惜しみか本当に全貌というものを知った上で言っているのか分からない捨て台詞を吐き、去って行った。

 

「ったく、何だっただあいつ」

 

「僕たちを揺さぶる為のものだろうね。結果もまだ出てないことだし」

 

「そのままリラックスしていて構わない。既に試験は終了している。今は夏休みの一部のようなものだ、つかの間ではあるが自由にしていて構わない」

 

 拡声器のスイッチを使い、真嶋先生が生徒たちに労いの言葉をかける。もちろん、学校に対しての信用が無い生徒達は警戒を解かなかったが、それよりもこれからくるであろう結果発表の方に意識が多分なく向いていた。

 

「三好君……この結果で」

 

「うん、僕も覚悟を決めないといけないかもしれない」

 

「龍園」

 

「分かってる。重く受け止めてやるよ」

 

 全てのクラスが、その中心人物達がこれから先のことについて覚悟を決めていく中、真嶋先生によりお褒め言葉の後、ついに結果を発表されることとなる。

 

「ではこれより、端的にではあるが特別試験の結果を発表したいと思う。なお結果に関する質問は一切受け付けていない。自分たちで結果を受け止め、分析し次の試験へと活かしてもらいたい」

 

 誰がどこまで把握しているのか、龍園が言おうが、言おまいが、誰も分からない中、結果が発表されていく。

 

「ではこれより特別試験の順位を発表する。最下位は────Cクラスの0ポイント」

 

 各クラスの大多数が驚き、龍園の方を向く。しかし、龍園の表情は驚きでは無くニヤニヤとした笑みを浮かべており、自分が負けることを分かっていたようで、そんな龍園の姿は非常に不気味だった。

 

「続いて3位はAクラスの70ポイント。2位はDクラスの225ポイントだ」

 

 誰が何処まで想定していたかのポイント順位とポイント差。Dクラス内でも予想出来なかったこのポイントにざわめきが起こるが、分かっていたように正臣はキメ顔を一之瀬へと向ける。一之瀬も自分達の戦略が成功したことを確信し、正臣に手を振る。

 

「そしてBクラスは……240ポイントで1位となった。以上で結果発表を終わる」

 

 この結果に沸き立つBクラス。葛城を取り囲み、荒れるAクラス。このようになることを予想していたのか、教師達も何も言わずに距離を取り、生徒達の動向を見守る。

 

「どういうことだよ葛城!」

 

「まさか……全員に当てられたということか」

 

 葛城を批判するため、取り囲む坂柳派の人間達。しかし、一番この結果になるための貢献をしたと思われる神室と杏里は少し離れた所で喜びとも悲しみとも言えないような表情でこの荒れ具合を見守る。

 

「静かに!!」

 

 そんな誰が悪い、悪く無いの中、吉宗の叫びが響く。その何かの決意が溢れ出る目をしている吉宗にやいやい言っていたAクラスの面々は気圧されて黙っていく。

 

「今回の結果はもちろん重く受け止めなくちゃいけないよ。でも、葛城くんだって色々頭使ってくれたんだよ? そんなにも攻めるのは違うと思うよ」

 

「三好。お前」

 

 これまでそこまでクラスのことに表だって口を出さなかった吉宗の態度に誰もが戸惑い、葛城さえも何を言葉に出せばいいか分からないようだった。

 

「次の試験は僕が仕切るよ」

 

 そう言った吉宗は堂々とした足取りのまま、船の方へと帰って行く。その後ろには山村以外に着いていける人間は居なかった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 Dクラスの打ち上げ中、体調が良くなった功労者である堀北は夜風が良い感じに吹くラウンジへと出ていた。唯一の友達である彼女と会いに。

 

「待った? 堀北さん」

 

「そんなに待ってないわ。聖辺さん」

 

 堀北の唯一の友達である聖辺ルリ。Cクラスの生徒であり、堀北へとCクラスの情報を流していた張本人。彼女はキンキンに冷えたペットボトルの水を持ちながら、堀北の隣へと寄って行く。

 

「貴方のおかげでDクラスは大きな勝利を得ることが出来たわ。本当にありがとう」

 

「ううん。友達の役に立ちたかっただけだから、気にしないで」

 

 ただの友達というにはお互いに他人行儀だが、それでこそ、二人が一番落ち着いていられる距離感なのだった。能力とプライドが高く、兄のようになりたく、孤独になった堀北。生まれて時から人より何も出来たが、その特異まれなる肉体で孤独になったルリ。受動的、能動的な違いがあっても二人は孤独というものを理解していた。

 

「でも、龍園くんにバレてしまったら、貴方の立場が」

 

「大丈夫。龍園さんにも頑張れば勝てそうだから」

 

 堀北はルリの言葉を始めは冗談かと思ったが、彼女の並外れた運動能力から、あながち冗談では無いと思い直す。彼女自身は龍園相手には勝てないと痛感しながら。

 

「それで、お礼がしたいのだけれど何が良いかしら? 私、こういう時、何を送れば分からなくて」

 

「映画、一緒に見に行きませんか? 見たい映画があるんです」

 

 悩む堀北にルリは自身の好きな映画を見に行こうと提案する。彼女のほぼ唯一と言っていい、自信を持って好きだと言える映画を。

 

「そうね。じゃあ、そうしましょう。そ、それと」

 

「どうしたんですか?」

 

「これからも普通の友達でいてくれない? 今回みたいなスパイみたいなことは二度としないで。心配だから」

 

 目を逸らし、落ち着きなく手を動かしながら、堀北は照れた表情でルリにお願いをする。堀北がこんな表情もするんだと始めた知ったルリは初めに会った頃と変わったなと思いながら微笑む。

 

「もちろんです」

 

 二人はお互いのクラスで過ごしているだけ得られないものを得ながら、二人だけの時間を過ごしていた。

 

 

★ ★ ★

 

 

 のらりくらりと何故こんな結果になったのかという問いを正臣がかわしていた打ち上げが終わり、解散していく中、美香に声をかける者がいた。

 

「張間、少しいいか?」

 

 普段全くいっていいほど、絡みの無い男綾小路は美香に声をかける。他の人から見れば、このような事態に色恋沙汰を想像するが、美香は既に恋人がいる。それに加え、二人の間にそんな雰囲気は一切無かった。

 

「綾小路くん。いいですよ。私も話したいことがあったので」

 

「ありがとう」

 

 二人は特に隠れるようなこともせずに進んで行く。そして、行き着いた先はこんな夜には誰も居ないプールの近くだった。二人は一定の距離を保ちながら、探り合うように目を動かす。

 

「大体何か分かりますけど、話って何ですか?」

 

「今回の試験。お前、全部分かっていただろう?」

 

 バレてない。そんな自信があったのか、美香は自分の行動が分かられていたことに冷たいような瞳を綾小路に向け、笑みは深くする。

 

「紀田君にAクラスのリーダー情報を渡してただけはありますね」

 

 リーダー指名の直前、綾小路は自身が得ていた情報であるAクラスのリーダーを正臣にだけ共有していた。もちろん、このことは綾小路と正臣以外は知らないはずだった。

 

「今回の試験は色々な人間が動いてた。俺だって全てを知っている自信は無い。教えてくれないか今回の試験の全貌を」

 

 自分は知らない風を装っているが、綾小路もほとんどのことを知っていることは美香も察することが出来た。その上で美香は綾小路に暇つぶし半分に語ることにした。

 

「今回の試験は直ぐにBクラスとDクラスが組みました。伊吹さんを保護した辺りですかね? 紀田君と一之瀬さんが一芝居打つことにしたんです。Cクラスのスパイを混乱させる為に。AクラスはAクラスで内部分裂の末に色んなクラスにリーダー情報が回っちゃいました。結局の所はA、Cクラス対B、Dクラスの対決だったんです」

 

 何処から仕入れたか分からない情報を語っていく美香。その内容をほとんど予想していたとはいえ、綾小路は美香のその情報収集能力に関心、そして警戒心を抱く。

 それから先も美香はBクラスがリーダー情報を得た経緯、無人島のリーダーが正臣、龍園、一之瀬、戸塚だったことなど、様々なことを共有していく。

 

「悪かったな。色々と聞いて。もう、聞きたいことは無い」

 

 これ以上は知る情報は無いと悟った綾小路は会話を切り上げる。このまま、話続けると美香と敵対してしまう可能性を考え。

 

「そうですか。お役に立てたなら、良かったです。私、綾小路くんには興味ありませんけど、一つだけ答えて下さい。貴方は何なんですか?」

 

「俺は何でも無い。ただの事なかれ主義の平凡な学生だ」

 

 綾小路が気に入らなかったか、気に入ったかが分からないように美香はただ綾小路に向かってニコッりと笑って、去って行く。その背中からはこれから、愛しくの人に会うように軽く見えた。

 

「何故Dクラスなのかよく分かったよ張間。……お前は危険だ」

 

 恋人の為なら、クラスを裏切る可能性がある彼女。そんな彼女が持つ情報能力に綾小路はいつかは痛い目を見てしまうと思い対処することを決めた。

 




 次回でも多少の補完はしますが、軽く補足を。
 
 Dクラス リーダー紀田正臣。
      CクラスのリーダーとAクラスのリーダーを当てる。 
      堀北鈴音と高円寺六助がリタイア
 
 Cクラス リーダー龍園翔。
      BクラスのリーダーとAクラスのリーダーを当てる。
      龍園翔と平和島幽以外がリタイア
 
 Bクラス リーダー一之瀬帆波。
      CクラスのリーダーとAクラスのリーダーを当てる。
      リタイア者無し。
 
 Aクラス リーダー戸塚弥彦。
      確証が無く、リーダー指名はせず。
      坂柳が試験不参加。

カップル同士などの描写の深さについて

  • 仄めかしもやめてほしい
  • 仄めかす程度ならば問題なし
  • 軽い描写なら良し
  • 多少深くてもok
  • ギリギリまで攻めてよし
  • どれでも気にしない
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