ようこそ非日常の溢れる教室へ   作:地支 辰巳

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 遅くなってすみません

 試験説明が断片的で分かりにくくなっています。すみません。


カリスマは多種多様で自覚が無い方が恐ろしい

 

 船上という場所に慣れてきて、生徒達のムードも落ち着いてきたであろう時。何の前触れも無く、全生徒に対して一斉にメールが送られてきた。そのメールは酷く五月蝿い音共に届き、そのメールに気づくように放送までされた。ここまでして気づかない人は居ないと言えるほどのものであり、実際、珍しく長い時間睡眠を取っていた幽はこの音で目が覚めたほどであった。

 

「……朝か」

 

 学校から届いたメールの内容、繰り返される放送の中で事情を大体察することの出来た幽は寝癖など、身支度の済んでいない自身を最低限整えると、早歩きのまま龍園の部屋へと向かい、その扉を躊躇いも無く開ける。

 

「よぉ。てめぇにしては遅かったんじゃねぇのか? 幽」

 

「最短で来れるようには来たつもりだけど」

 

 龍園の部屋には既に石崎や伊吹、金田までもおり、このメールが如何に重要なもので、龍園の指示を仰ぐに値するものかを暗に示すようだった。

 

「これで来そうな人は全員来たのでは?」

 

「そうだな。椎名や聖辺は来るはずがねぇからな。さっそく、このメールに対するてめぇらの考察を聞かせてもらおうじゃねぇか」

 

 部屋の指定と時間の指定が指定されたメール。しかし、そんなメールのみではこのメールが重要だということ以外は何も読み取ることなど出来るはずが無かった。しかし、龍園クラスには事前に得ているヒントがあった。情報屋の折原から得た試験名というヒントが。

 

「そうか……干支試験」

 

「気づきやがったか。同じクラスでも時間と場所が違う。なら、このメールは呼び出される時間と場所が同じ奴と同じ干支のグループになるってことだ」

 

「ですが、干支試験と一口に言っても12個のグループになるだけとは言えないのでは? 干支に絡めた問題を解く可能性もあります。龍園氏の案には根拠が足りないように思えます」

 

 金田の言葉に一定の理解を示したが、その言葉を予測していたのか、龍園が携帯を操作すると、直ぐに全員の携帯から音が鳴る。

 

「何を送ったの?」

 

「俺に送られてきたメールを送れと送っただけだ。ククク、金田の言う通り、根拠は少ない。なら、根拠を増やすだけの話だ。だが、俺の予想が正しいなら、最大でも12のパターンしか存在しないことになるだろうな」

 

 龍園の提示する予想には今のところ大した根拠など存在していない。しかし、それでも、ここにいる全員にはその予想が正しいのではないかと思わせるほどの覇気と自信が龍園から感じられていた。

 

「でも、無人島試験であんたは大敗した。そんなあんたの予想が信じられるの?」

 

「てめぇからそのことを言うなんてな。まぁ、見てろ。今回は調子に乗ってるB.Dクラスの鼻を折ってやるからよ」

 

 他の人間の前では余裕のある様子を見せている龍園だが、その内には伊吹にも劣らない、他クラスを下してやるという心意気が燃えていた。それは年相応の感覚を見せない龍園という人間の中では比較的年相応な部分だった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 ある部屋が人々の声で荒れていた。いや、荒れているといった様子が正しいこの部屋。そこにいるAクラスの人々はある一人の男によって部屋に集められ、各々が文句や愚痴を言い合う声ばかりだった。

 

「静かに。そんなことじゃあ、いつかは他のクラスに追い抜かれるよ」

 

 その部屋の壇上に上がった吉宗は本人からすれば頑張って張った声でAクラスのこの荒れ具合を静めていた。その静まりようには吉宗の大きく張った声と共にその内容がAクラス全員に刺さったことが大きかっただろう。

 

「何でお前が仕切ってんだよ! 葛城さんが仕切るべきだろ」

 

「その葛城がミスったから、三好が仕切ってるんじゃないの?」

 

 神室の葛城への侮辱に対して、またキレるように発言する戸塚。そんな風な様子も相まってAクラスの団結は絶望的に見えていた。そんな中でも当の本人である葛城は落ち着き払っており、壇上に立っているいつもと様子の違う吉宗を観察していた。

 

「みんなも知っての通り、さっき部屋で干支試験の説明を受けたとは思う。その説明から察するに今回の試験は僕たちの協力が必要不可欠になる。協力出来ないかな?」

 

 先程までとは真逆のような声音の落ち着き払ったような声でお願いをする吉宗。そんな風にお願いされたことで、自分たちの今の状況をよく分かったのか、文句を言っていた人たちは静かになってしまい、この部屋には一時の静けさが訪れた。

 

「協力と言っても何を協力すれば良い? 一口に言っても色々あるだろう」

 

 そんな折、吉宗の意見を肯定するかのように葛城が意見を述べる。周りの人間もそんなことを言うとは思わなかったのか、葛城の方を向く。しかし、吉宗は葛城から来るかが分かっていたのか、冷静に物事に返答する。

 

「自分が優待者か優待者じゃないかそれだけを僕に言ってくれれば良いよ。他はどうしてくれても良いよ。でも、Aクラスの為にならないと僕が判断したら、行動を制限したりするかもしれないけど」

 

 段々とまたさきほどまでと違うような声で話す吉宗。その声は龍園とは全く違った方向性で人々の畏怖を誘い、声を失わせることとなった。そして、そのまま会議は終わり、部屋には吉宗と山村、葛城だけが残った。

 

「さっきはありがとう、葛城くん」

 

「いや、頼まれたことをしただけだ。そこまで礼を言われることでは無い」

 

「……なんで、いの一番に質問することを引き受けてたの?」

 

 そんな山村の純粋な質問に、葛城は静かに言い淀む。そこには葛城なりの龍園と独自に契約をした挙句、大敗してしまった申し訳なさからの了承だった。しかし、葛城はそれを素直に言う事も出来なかった。

 

「Aクラスの団結を少しでも促す為だと思ってな」

 

「理由はなんでも協力しただけでもありがたいよ。じゃあ、一緒のグループで頑張ろうね」

 

 葛城からすれば吉宗の見透かされているような言葉に少し呆然としながらも、二人は硬い握手を交わす。

 

 

★ ★ ★

 

 

「で、どんな感じですか今回の試験は?」

 

「干支になぞられた12のグループで、優待者っていう裏切り者が一人いるから、それを探す試験」

 

「干支のグループは10何人で一つのクラスから3.4人です。メールで今からグループ分けを送ります」

 

 身体の関係で学校に残っている坂柳に対して、神室と杏里によってメモられた干支のグループ表が送られる。そのグループ表は全てのグループのことが示されていたが、坂柳が注目したグループは少ししか無かった。

 

「中々興味深いグループばかりですね。お二人はどのグループが気になりますか?」

 

「やっぱり辰グループなんじゃない? 葛城に三好、龍園に神崎。紀田に堀北、平田。ほとんどリーダー格。警戒しない訳が無いと思うんだけど」

 

 神室の指摘通り、辰グループには教師達の思惑や考えよあり、クラスのリーダー格ばかりが集められているが、ここまでリーダー格が多い学年は稀であり、今回の学年の混沌具合が現れていると言えるだろう。

 

「ええ、もちろん。警戒しないわけにはいきませんね。園原さんはどうですか?」

 

「私は……卯グループが気になります。辰グループに行くべきの一之瀬さんがこのグループにいるのが少し気になってしまって」

 

「良い着眼点ですね。ですが、教師たちの思惑が多く混ざっているので、純粋に警戒することは出来ませんが」

 

 坂柳の読み通り、このような采配には教師達の思惑と興味の末にこうなったのだが、そのことを生徒達が知ることはこの先も無いことだろう。

 

「そういえば、まだこちらの試験のルールを聞いていないのですが?」

 

「忘れてた。結果は4つあるけど、一つ目と二つ目は試験期間の3日間が終わった後に全員が優待者だと思う人を指名して、全員合うか合わないかだったと思う。三つ目と四つ目は途中で優待者を見つけて当たれば3つ目で当たらなかったら4つ目。これでいい?」

 

「まぁほどほどですね。色々と少しだけ聞きたいこともあるのですが、また聞かせてもらうことにします」

 

 坂柳は軽く聞いた試験の構造とルールをしっかりと理解すると、少し思案をする。その思案にはこれからの坂柳派のことを考えると共にあるグループに配属されてしまった彼に対する思いを馳せていた。

 

「それで今回は何をすればいいんですか?」

 

「一応は三好くんの妨害を。ですが、三好くんの実力を測りたいので、ほどほどにお願いしますね」

 

「分かった。もう切っても良い?」

 

「ええ。それではご武運をお祈りしますよ」

 

 神室はしっかり電話を切ると、少しため息をつく。いかんせん慣れてきたとは言え、毎度毎度の隠密活動は疲れるということだった。その事を二人とも言葉にせずとも理解しているのか、お互いに目を合わせただけで仮眠することを決めた。そして、二人はそのまま目を瞑り、眠りにつく。

 

 

★ ★ ★

 

 

 いよいよ始まった優待者探す為の最初のグループの議論時間。誰もが始めということで緊張を隠せず、いつもと同じようなポテンシャルが発揮が出来ずにいる中、ここ巳グループの櫛田はいつもと変わらぬポテンシャルを発揮できていた。

 

「それで、みんなで自己紹介したいと思うんだ。これから、みんなで優待者を見つけるにせよ、同じ結果を目指すによせ、仲良くしないといけないと思うからね」

 

 強く訴えかけるような櫛田の声に感化されたのか、どちらといえばあまり話が得意では無い、このグループの面々も自己紹介をする気になっていく。

 

「もちろん、言い出しっぺの私から自己紹介させてもらうね。Dクラスの櫛田桔梗です! これから色々あると思うけれど、みんなと仲良く出来ると良いなあって思ってます。これからよろしくお願いします!」

 

 明るく元気な櫛田に続くように三宅明人を筆頭にした同じクラスのDクラスの人間から自己紹介をしていく。

 

「Dクラスの三宅明人だ。短い間だけどよろしく」

 

 その後もDクラス、Bクラス、Aクラスとつつがなく自己紹介は進んでいき、ついにほとんどの生徒がその悪評を知っているCクラスの番になった。

 

「平和島幽です。全力でこの試験に取り組もうと思っています。よろしくお願いします」

 

 無人島試験でBクラスに潜入していた頃とは全く違うテンションに戸惑うBクラスの面々だったが、特に幽自身がそれに言及することもせずに戸惑いは戸惑いだけに留まる。

 

「聖辺ルリです。私もみんなと仲良く出来たら思っています。よろしくお願いします」

 

 幽とタイプが同じようで違う、そんな無口な自己紹介だったが、ルリのその可憐さの際立つ顔に全員が一度はルリの顔を見て、こんな子がCクラスに居るんだと痛烈に記憶に残すことになった。

 

「じゃあ、自己紹介も終わったことだし、今日のところはみんなでお話しでもしよっか」

 

 ルリという可愛さだけで言えば学年一とも言える子がいながらも、櫛田はこのグループを自身の思うままに誘導出来ると心の奥底から思い、会話を引っ張るという苦労を負いながらもある種の満足感を得ていた。




 今回の章では今まで関わりが無かった者同士が関わることになります。

カップル同士などの描写の深さについて

  • 仄めかしもやめてほしい
  • 仄めかす程度ならば問題なし
  • 軽い描写なら良し
  • 多少深くてもok
  • ギリギリまで攻めてよし
  • どれでも気にしない
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