ようこそ非日常の溢れる教室へ   作:地支 辰巳

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 高円寺くん何かすまんな


技術が進歩しても人のやることは変わらない

 

 櫛田が巳グループで自身の長所を遺憾無く発揮している1回目のグループの話し合い。それに比べて申グループの話し合いは一時間も時間があると言うのに、静かで他クラスで会話が起こるようなことはほとんど無かった。そのうちに1回目のグループ報告は終わりを告げ、一番静かにしていたと言っても過言では無い杏里も他の生徒たちと同じように部屋の外へ出ていこうとする。

 

「ちょっと待ちたまえ。アウトサイドガール」

 

「え、わ、私ですか?」

 

 部屋を出ようとした杏里に突然声をかけてきた高円寺六助。クラスの他の生徒からもその特異な性格から距離を置かれている彼。そんな彼の噂は学校中に広まっており、その噂を聞いたことのある杏里は話しかけられたという事実に警戒し、困惑する。

 

「そう、君だよ君。君は一体何なんだい?」

 

 全く持って要領を得なく、意味の分からない質問。しかし、その質問にも何かしらの思い当たる節があったのか、杏里は困惑の色よりも警戒の色をより一層顔に出す。

 

「私はAクラスの園原杏里です。自己紹介したと思うんですが」

 

「ノーそういうことじゃない。もっと根本的なそう、君は違う」

 

 いつもの高円寺の言葉も非常に理解しずらく、他の人々には通じないことが多いが、今の高円寺の口調はいつも以上に理解出来ないもので、本人も自覚するほどだった。

 

「はっきり言ってもらっても良いですか?」

 

「私も君のことを表現出来なくて困っているんだよ。これまで会ってきたどんなガールともマダムとも違う。何にも表現出来るものでは無い」

 

 平行線上の会話。その終わりの無い会話に何かしらの危機感を抱いた杏里は危機から逃げるように立ち去ろうとする。

 

「君のことをこの後知りたい。開けてくれないか?」

 

「困ります。私、この後用事がありますので」

 

 逃げるように去って行く杏里を追うような素振りを一瞬見せた高円寺だったが、今の彼女を知ることは出来ないと直ぐに察すると何もすることなく杏里を行かせる。

 

「君の全てを知ってみたいねぇ。まだまだ諦めるつもりは無いよ」

 

 しかし、この欲を諦めること気が全く無いのか、高円寺は狙いすますかのように杏里の背を見る。これまで多くの女性方を手にし、その外面、内面を隅々まで知った高円寺に訪れた、自身の観察眼を持ってしても得体の知れなさを感じさせられる園原杏里。その自身の知らないそれを求め、高円寺は杏里という少女ことを知ろうとしていく。それが如何に自分とは違う世界だと高円寺はまだ知らない。

 

 

★ ★ ★

 

 

 2回目の話し合い。1回目の話し合いから1日の中で数時間が流れたことで、各々のクラスの中では様々な会議がなされていた。グループの中では会議内容を出さないように気をつけているのか、会議していた面々がこのグループにはいないのか、子グループでは1回目とはあまり変わりが無かった。

 

「相変わらず会話がありませんねー。Aクラスは今は誰が指揮してるんですか?」

 

「そんな事答えられない。逆に聞いたら、答えてくれる?」

 

 暇になったのか、今のこの状況に飽きたのか、美香は煽りをかけるようにAクラスにいる神室に目線を送りながら問いをかける。他のAクラスも坂柳派ばかりだったので、美香が視線を送った通り、坂柳の片腕の神室が嫌々と言ったような声で返事をする。

 

「Dクラスは辰グループの3人がリーダーですよ? 共和制ってやつですね」

 

「良いよね、そっちは。こっちなんて碌な共和制じゃない」

 

 神室は頭の中に3人の顔を思い浮かべる。一人は傲慢で独裁的である強かな女性。一人は堅実な手を打ち、現状維持に対してその手腕を振るう男性。最後の一人は他の二人に比べればそこまで優秀では無いものの、覚悟は他の二人よりも何倍もある男性。3人は三者三様であるが、Dクラスのようにはならないと神室はつくづく思ってた。

 

「そうですよね。3人とも癖が強いですもんね」

 

 神室が何も言っていなくてもリーダーの情報のことを分かっているのか美香が口にする。その美香の分かっているかのような情報網に神室は一々疑問を抱くことをやめ、それ以上口にすることは避けた。

 

「何……これ……」

 

 しかし、黙ろうとした神室は携帯に送られてきていた画像を見て唖然とする。それは神室だけでなく、この部屋にいる誰もが時間差でその画像を見たようで、ある者はこそこそと隣の者などに囁き、ある者は携帯で連絡していた。

 

『優待者は神室真澄である』

 

「これ何ですか? 本当ですか?」

 

 美香からの問答にも咄嗟に答えられないほど神室は混乱していた。この最近学校内で流行っているサイトの部分を取ったような写真。誰が書き込んだかも分からないこの写真に信憑性なんてものは無かったが、この短時間でほとんどの生徒にこの画像とサイトの内容が回ってることによって一定の信憑性は出ていた。

 

「知らない。私が優待者という証拠が無い」

 

 神室は否定していたが、事実この子グループの優待者は神室であり、この事実を知っているのは坂柳と杏里、吉宗と山村だけだった。そのこともあり、神室は何処から漏れたのかを必死に考えていた。しかし、またそのサイトに新たな書き込みがされたようで、そのサイトの画像が直ぐにクラスのグループなどで共有される。

 

『優待者は園原杏里、町田浩二である』

 

 

★ ★ ★

 

 

「ククク、何したんだ将軍様よ」

 

「別に何もしてないよ。僕はただみんなに連絡しただけだよ」

 

「どうだかねー」

 

 同時刻、辰グループの部屋でも他のグループと同様の混乱が起こっていたが、他のグループよりもリーダー格ばかりが揃っているここでは他のグループよりも多くの混乱が起こっていた。しかし、それも先ほどの新しい書き込みから少し経つと、全員が落ち着きを取り戻し、お互いを疑いの目で見る。

 

「まず前提として……この話し合いで携帯を触っていたのは三好くん、葛城くん、龍園くん、神崎くん、そして紀田くんの5人ね。私はこの中にこの書き込みをした人物がいると思ってるわ」

 

「まっ、美少女の堀北ちゃんに疑われるのは悪くねぇけど、俺は無実だぜ」

 

「その前提すら間違っている可能性は無いのか? 他のグループの人がやった可能性もあるだろう?」

 

 議論することを拒否するかのような物言いをする葛城だったが、堀北の言葉には一定の説得力があり、この書き込みの事実を早く確かめたいと思ってる人が多かったことで、この議論は続行されることになった。

 

「事実として、クラスの人間が独断ですることとは思えない。こんなにも試験に関わることを」

 

「確かにそうだね。みんな、一言は言ってくれると思うから」

 

「ハッ、まぁリーダーの居ないクラスもあるがな?」

 

 龍園はまるでお前たちのクラスが怪しいと言わんばかりにBクラスの方をニヤニヤしながら見る。それを敏感に感じたり、心外だとでも言わんばかりに神崎も龍園を睨み返す。

 

「龍園。お前こそ怪しいんじゃないのか? お前が携帯を触っていたのも事実だ。何の為に使っていたんだ?」

 

「この事とは別のことだぜ? それがお前らと関係無いとは言えないが」

 

「良い機会だわ。触っていた全員は目的を言ってもらいましょうか。疑いを晴らすためにも」

 

 堀北が仕切っていることに各々が各々なりに不満を感じたりしていたが、容疑者ばかりがいる場所でのこの発言力は目を見張るものがあり、議論を促す目的でも大事な役割だった。

 

「俺は数多いる彼女との熱烈なラブレターの交換し合いしてただけってこと」

 

「俺は自分の友人と連絡を取っていただけだ。疑われるもやむおえないな」

 

「さっき通りだ。てめぇらを陥れる策をメモってただけだ」

 

「……張間と連絡を取っていただけだ」

 

「僕はクラスの優待者を探すので、連絡を取っていただけだよ」

 

 誰も彼もが疑わしい理由を述べていたことに容疑者とされている以外の他の面々は頭を悩ますが、そこに幸か不幸かチャイムが鳴り、2回目の話し合いは終わった。

 

「この話は終わりにしようか。次の時の話はその時に」

 

 平田の言葉に全員がある一定程度の理解を示したところで、その場は解散となった。Aクラス以外は自身のクラスにも同じことが起こらないことを願いつつ。

 

 

★ ★ ★

 

 

 2回の話し合いが終わり、夜も更けきそうになってきた頃、綾小路清隆は船内での散策のついでに一階にあるバーの近くに来ていた。そこにはAクラス担任、真嶋。Bクラス担任、星乃宮。Dクラス担任、茶柱。3人が仕事を忘れ、会話をしていた。その内容はとても生徒に聞かせるべきものでは無く、グループ分けの話や昔話をしていた。

 

「それよりも星乃宮。あのようなサイトはどうなんだ?」

 

「どうなのってどういうことー? 最近の子はこういうのが好きなの!」

 

「そういうことではだろ。あのサイトがこの試験のルールに反しているのかという話、Bクラスの生徒に許可を出したのはお前だ」

 

 綾小路にとってここにいることは意味は大きかった。綾小路もあの時間に誰がどうやってあのようなサイトの情報を広めたかを知りたがっていたので、管理者がBクラスの人間であるという情報は重要だった。

 

「うーん大丈夫じゃない? 時代とともに色々変化していってるだし、別に携帯の操作を禁止している訳でもないし」

 

「それもそうだな。これが禁止になるかどうかは来年以降に任せるという形で」

 

 管理者であるBクラスの人間。綾小路が馬鹿正直に聞いたとしても答えてくれはしないだろう。しかも、あの文面が送られてきた時間では一之瀬などの卯グループの人間はほとんど携帯を触っていなかった。綾小路は先ほどの情報を得ても尚、特定する事は不可能であると結論づけた。龍園のように強引な手を使わなければ。

 

「まずはサイトに登録することの方が……先決か」

 

 綾小路は未だにそのサイトに登録してはいなかった。そのサイトは他の人間からの紹介からでしか登録することは出来ず、知り合いの少ない綾小路は登録することは出来ていなかった。しかし、登録しなければ何かと不都合が起きてくるということを察した綾小路は自身の手駒の収集と並行して登録することを決める。




 色々と混沌と化してきてますが、今回は誰の手のひらで転がっているんでしょうか。

 主要人物の所属グループです。
 子 神室、張間 
 卯 綾小路、一之瀬、伊吹、竜ヶ峰
 辰 葛城、三好、神崎、紀田、堀北、平田
 巳 櫛田、平和島、聖辺
 申 高円寺、園原
 戌 山村

カップル同士などの描写の深さについて

  • 仄めかしもやめてほしい
  • 仄めかす程度ならば問題なし
  • 軽い描写なら良し
  • 多少深くてもok
  • ギリギリまで攻めてよし
  • どれでも気にしない
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