ようこそ非日常の溢れる教室へ   作:地支 辰巳

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 色々と複雑になってきました。

 ベアーフォールさん誤字報告ありがとうございます。


誰も彼もが自分の手のひらの上だと疑わない

 

「ど、どうするんですか龍園さん!? このままじゃ俺らの優待者もバレるかもしれません」

 

「黙ってろ石崎。Cクラスの優待者は俺しか知らない。バレやしねぇ」

 

 辰グループの2回目の会議が終わり、まだあの掲示板での優待者暴露が話題として学年中の話題を掻っ攫っていた。その中でも龍園はまたも自身の側近たちを集めていた。こんな事で動揺などするなと発破をかけるように。

 

「ていうか、どうするの? その発した人物を突き止めないと私たちの優待者もバレるんじゃないの?」

 

「どいつもこいつもそればっかり言いやがって馬鹿馬鹿しい。そんなこそこそと掲示板で発信している奴の警戒なんて後でいい。優待者の法則を見つける方が先だ」

 

「だけど、その特定にはこの優待者情報も鍵になるんじゃないかな」

 

「ククク、流石、平和島だな。お前はこの掲示板を管理している人間を突き止めろ」

 

 自身の中で既に今回の試験に勝つ絵図が描かれているのか、龍園は即答して平和島に指令を出す。幽にしても自身の役割が分かっていたのか、深く頷いた。前回の失敗を取り戻すように。

 

「平和島には任務を出したが、お前らは各クラスのリーダーに接触してこい。優待者情報を交換しようってな。次の次の会議までだ。分かったな?」

 

 龍園の絶対とも言える命令に嬉々として頷く者、嫌そうな顔をしながらも頷く者、表情が変わることなく頷く者。その反応は様々だったが、総じて龍園の指示を聞き、部屋の外へと出ていく。その様子を見ていた龍園は満足気な顔で幽を見ながら、ある人間へと電話をかける。

 

「ああ、俺だ。聞きたいことがある。デッキまで来い」

 

「龍園、何の電話?」

 

「情報を握ってそうな奴への電話だ。お前が行ってこい」

 

 龍園の意図を読み切れなかったものの幽は部屋を出ていく。努力を嫌いそうな言葉ばかり使っている龍園だったが、実際には全ての事柄を警戒し、勝利の為の努力を一切惜しまない人間だった。

 

 

★ ★ ★

 

 

どのクラスも動き出している中、Dクラスもそれに負けぬようにと会議を開いていた。メンバーは正臣、堀北、平田の辰グループの3人に櫛田と綾小路という中々に異色な組み合わせだった。

 

「私たちのクラスの優待者がバレる心配は無いのよね?」

 

「どうやって相手が知ったかが分からない以上、確信しては言えないね。それにあの優待者が本当かも分からないし」

 

「どうなっちまうんだろうな。こんな試験じゃないと思うんだけどな」

 

 こんな風になってしまったことに何か嫌な感じを覚える正臣だったが、平田と堀北は優待者情報が洩れる可能性もあると考えた。櫛田と綾小路は少し別のことを考えているのか、何処か上の空だった。

 

「うーん、法則性が見つかってしまったら難しいかもね」

 

「その可能性もあるけれど、やはり優待者本人から洩れる可能性もあるわ」

 

「それはDクラスのうちの誰かが情報を売るって言いたいのかな?」

 

 堀北の可能性と言えどもその疑念は何よりもDクラスの平和と平穏を求め、導いている平田には看過出来ないものであったらしく、語彙を強めて堀北へと問いかける。

 

「可能性があるってだけだろ? 心配すんなって俺たちには乙女な女神達がついてるんだからな!」

 

 しかし、この空気感を壊すように頼もしい正臣が割って入ってくる。その正臣の不安を感じさせないような明るさに求めていた形では無いにしろ空気が改められる。

 

「そう言えば、貴方たち二人は何を考えているのかしら? 意見を出してちょうだい」

 

「え、うーん、何とかして他クラスの優待者を知るのが一番の近道じゃないかな?」

 

「俺もその方が良いと思う。Aクラスの優待者の真偽もはっきりしてないからな」

 

 櫛田の意見も綾小路の意見もどちらもが的を得ている発言であり、上の空だったとは言え、その意見は他三人の頭を回転させるものだった。

 

「なら、他クラスと交渉するかー。紀田正臣のお墨付きってとこでね!!」

 

 正臣の今後の方針を決定付けるような決定でこの場はお開きとなった。その数分後には子グループの終了を知らせるメールが全校生徒へ届くことになったが。

 

 

★ ★ ★

 

 

「付き合ってもらって悪いな。美香」

 

「いえ。隆二くんの為だったらこれくらい。火の中、水の中でもいけますよ」

 

 時を同じくしてBクラスの神崎とDクラスの美香。二人はある人物を訪問するためにその人物の部屋へと向かっていた。そして、何の隠し立てもされないように事前に連絡も入れてなかった。

 

「隆二くん。何であの人が犯人だと思ったんですか?」

 

「簡単な推理だ。Aクラスの優待者情報を知っている人間は限られる。そして、その中で今回のような行動して得をする人間はあいつしかいない」

 

「さっすが隆二くんです!! じゃあ、早くその人から吐かせましょうよ」

 

 物騒な言葉を美香が使うことに対して、いつものことと苦笑いをする神崎。そんな二人はその人物の部屋、三好吉宗の部屋へと到着した。いくら事前に連絡を入れていないとは言え、この部屋にいることは確認済みで、躊躇なく美香が扉を開ける。

 

「……カップルが僕の部屋に何の用?」

 

 いくら温厚な吉宗といえども試験中でピリピリしており、いきなり扉を開けられたのなら、言葉に棘が出てしまう。しかし、そんな言葉を受けたにも関わらず、美香は積極的に近づいていき、何か出来る距離にまで近づく。

 

「隆二くんが困ってるじゃないですかー? 貴方がやったんですよね? とっとと吐いてくれないと私たちの時間が無くなっちゃいますから」

 

 まるで一度目ではないかのように躊躇いなくハサミを吉宗の指の間へと刺す。流石にそこまでのことはやるとは思わなかったのか、神崎は呆気に取られ、言葉を失う。しかし、吉宗は表面上動じることは無く、覚悟が決まっている目を美香へと向ける。

 

「僕には僕の計画がある。脅されて簡単に自分の考えは話せない」

 

「でも、さっき咄嗟に携帯を隠しましたよね? 何か見られてはまずいものでもあるんですか?」

 

 何でもやりかねないと暗に伝えるように目のハイライトが消えた瞳で吉宗を睨み返す。だが、美香のこの行動は危険だと思った神崎は一度二人の間へと入っていく。

 

「もう辞めておけ美香。暴力で解決することは俺の流儀に反する。三好、すまなかったな。だが、こちらもそれ相応の覚悟と単独行動をしている意図を汲み取ってくれ」

 

 吉宗は神崎の言葉の意図を熟考する。その間はいくら熟考すると言っても長過ぎる時間で、痺れを切らした美香が詰め寄ろうとした時、吉宗が言葉を発した。

 

「入ってきていいよ」

 

 その言葉と共に外から入って来たのは吉宗の相棒とも言える存在の山村だった。山村は状況を理解しているようで、ゆっくりと吉宗のベッドへと座る。

 

「……電話か」

 

「うん。咄嗟に通話ボタンを押したんだ。入ってくるまで待機してもらってはいたけれど。でも、これで役者は揃った」

 

 吉宗のまるで全てが計画通りというような空気感に美香も神崎もこの後にどんな行動に出るのかという好奇心や未知への恐怖により、何も喋れなくなる。

 

「まず初めに言っておくけどね、あの掲示板に書き込んだのは僕だ。でも、全部じゃない。後に書かれた二つの優待者だけだよ」

 

 この場の雰囲気、主導権が明らかに吉宗に向いていく。それを実感し、畳み掛けるように吉宗は自身のキャラに似合わないと分かりつつも作戦を話していく。

 

「あの最初の書き込みは信憑性に関わらず、話題になりそうとは直ぐに分かった。だから、手を打ってAクラス二人の名前を書き込んだんだ。リスクはあったけどね」

 

「……どうしてそんなことを俺たちに話す? 自分の手をバラすようなものだ」

 

「僕は自分のところに初めてこの事を聞きに来たクラスに共闘を持ち掛けようと思ってたんだ。でも、二人は……」

 

 吉宗の展開予想ならばここに来るのは正臣か龍園だと思っていた。しかし、来たのは神崎と美香という別々のクラスの人間で、鬼気迫るように詰め寄ってくる美香。あの動揺の無さの裏にはそういった考えを巡らせていたのもあった。

 

「でも、もう無理ですよね? ここまで語ったんですから」

 

「貴方たちと手を組む為に三好くんはわざわざ言ったんです」

 

 山村も気のきいた言葉を使うことも出来ずに反射的に言ったことでこの部屋の空気感は暗くなったものに変わっていく。しかし、その空気感を良しとしないように吉宗は美香と神崎を座布団の上に促す。

 

「僕だって馬鹿じゃない。二人を能力があって、信用に足る人だと思ったから話したんだ。ここにもそれなりの根拠があって来たんだよね?」

 

「ああ。あの掲示板で上げられた3人の名前はどれも中立派が居なかった。優待者に中立派がいないと言ったらそれまでだが、奇妙だった。それに全員優待者のだったなら、あまりにもAクラスの情報が洩れ過ぎだ。後はAクラスの内情を考えてここに来た」

 

「一之瀬さんには確証が無いことは話せないってことなので私が来ました」

 

 美香と神崎の根拠なども自身の考えていたものと変わらなかったのか吉宗は何度も頷く。しかし、ここまで神崎という男が考えを回せることも改めて認識し、後学の為に脅威度を上げる。

 

「僕の想像以上だよ。二人がこんなにも優秀だったなんて。今回の試験、僕と手を組んでくれないかな?」

 

 ここまでの流れからも分かっていたことだが、神崎には迷いがあった。このまま自分と美香だけで手を組んで良いのだろうか。もしかしたら、Bクラスとして組んだ方が最適なのかもしれないと。

 

「うーん、分かりました。組みましょうか」

 

 その神崎の迷いを断ち切るように美香が早々に承諾した。その承諾の理由には一之瀬に神崎との時間を取られたく無いという嫉妬が大きな理由だった。そんな理由を露も知らない吉宗は了承と受け取って、話の続きを始める。

 

「僕たちの最初の目的は最初の神室という書き込みをしたのが誰だかということを突き止めることだ。このままあの書き込みが止まるとは思えない。誰が書いたかも分からないしね。後は法則性を見抜いてのプライベートポイントの獲得だね」

 

「そうなんですか。じゃあ」

 

 吉宗の話す内容から何かを察した美香は携帯を操作する。すると、直ぐにその場にいる全員に学校側からのメールが届く。

 

『子グループの試験が終了いたしました。子グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』

 

「これは! 美香」

 

「ううん、これで構わない。どうせ、いずれは誰かに当てられてたよ。それなら、共闘した二人に」

 

 吉宗の神室を優待者と認めるような発言だったことから、勝手に指名した美香だったが、吉宗にとってもそれは特段に悪いことではなかったようで、怒りもしなかった。

 

「でも、これで君たち二人は他の人よりも一歩リードしたことになる。僕たちに協力する義理があるはずだよね」

 

 義理。そんなものは今の時代には必要ないのかもしれない。しかし、これから先、卒業するまでの時間、吉宗との協力を仰げないのは神崎としてもデメリットばかりだった。

 

「分かってる。俺たちはお前ら二人に協力しよう。もちろん、こちらが勝つ為にも色々と協力してもらうがな」

 

「ありがとう。これから先の方針はまた連絡するよ」

 

 四人それぞれで連絡先を交換し合い、神崎と美香は外に誰も居ないことを確認して、出ていく。そして、二人が居なくなったことで緊張の糸が切れたようにベッドに寝転ぶ。

 

「あー疲れたー。まさか、あそこまで来るなんて怖かったなぁ」

 

「でも、これで三好くんの計画通りだね」

 

「うん。これで僕の勝利は堅い」

 

 自分のクラスの優待者が一人減ったにも関わらず吉宗は勝利を確信した。まるで、ここまでの流れ全てが自分の思い通りかと言うように。





 ここでグループが一つ減ったのは良い調子です

カップル同士などの描写の深さについて

  • 仄めかしもやめてほしい
  • 仄めかす程度ならば問題なし
  • 軽い描写なら良し
  • 多少深くてもok
  • ギリギリまで攻めてよし
  • どれでも気にしない
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