ようこそ非日常の溢れる教室へ   作:地支 辰巳

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 決着です


他の人間を侮った人間に成功は無い

 

 2日間、計4回のグループ会議を終えて、減ったグループは3グループと少なく、その内の2グループは吉宗によって当てられ、1グループはDクラスに当てられてたが、依然としてこの試験の空気は吉宗が手にしており、Aクラスが勝つのも時間の問題とも言えた。

 

「こんなやり方は聞いていないぞ三好。お前はもっと真っ当な勝負をすると思っていた」

 

 Aクラスが借りた大部屋。その部屋の中は半分に区切られており、一方には吉宗と山村、そして葛城。もう一方には他のAクラスが全員揃っていた。その間はあまり厚い区切りでは無く、誰かが大声を出せば聞こえる程度、小さければ聞こえない。そんな区切りだった。

 

「……誰のせいでこうなったと思ってる? 葛城くんと坂柳さんがこのAクラスを分断しようとしたからだよ。僕だって中立派として反抗して、頑張ったけれど、無駄だった。葛城くんは勝手に契約するし、坂柳派のみんなは葛城くんを落とす為にAクラスを裏切った。こんなの意味が分からないし、何の為のクラスなんだよ。だから、どんな手を使っても僕が、どれだけ向いてなくても僕がやらなきゃいけないんだ。このクラスを調和させる為に」

 

 吉宗の目は決意に燃えていた。けっして譲る気は無いと、静かな怒りを山村以外のAクラス全員へと向けながら。吉宗だって成りたくてこうなった訳では無かった。ただ、成らなければならないからこうなっていた。

 

「……お前の気持ちはよく分かった。完全に俺と坂柳の責任だ。俺たちはAクラスに要らぬ負担をかけていた。だが、三好、何故こんな回りくどいをする。Aクラスの仲間に干支の攻略法を教えるだけじゃ駄目なのか?」

 

「それは詳細を葛城くんに言うことは出来ない。僕が望んでいるものと葛城くんが望んでいるものは違うから」

 

 この干支試験は吉宗がAクラスを仕切ってきた。そんな吉宗はこの試験で勝とうが負けようが、彼が人としてレベルアップをし、新しい自分を得ることは確実だった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 Aクラスの会議から数時間経ち、また二つのグループが消滅した。ほとんどの人間があの吉宗からの誘いに乗ったと思ったが、果たしてそれをしたのが誰かをグループ内で探るのは優待者を探すよりと難しかった。そんな状況に何かを思ったのか、正臣、一之瀬、龍園は珍しく三人で一緒に居た。

 

「まさか、てめぇらとこんな風にいる日が来るなんてな」

 

「俺も思っても見なかったさ。龍園のことは嫌いなのによ」

 

「辞めようよ。この会議は3クラスが勝つ為に必要なことなんだから」

 

 一之瀬の静止に、お互いに矛を納める正臣と龍園。二人がこんなにも大人しく引き下がるのは全員が全員、これ以上Aクラスの勝ちを防ぐためとこれ以上吉宗の勝手にさせ無い為だった。

 

「この会議は俺らの中からのクラスポイントの配分を決めることだろ? さっさとしねぇと追い越されるぞ」

 

「俺も同意。三好がいつ仕掛けてくるかも分かんないしな」

 

「あと7グループだよね……うん。どうやって分けよう」

 

 この会議の目的はAクラスの勝ちを防ぐと同時に3クラスのどれかが抜け駆けを防ぐ為でもあった。それならば、この会議に参加せずに抜け駆けするという手もあるのだが、龍園がこの二人に情報を見せた時にこの会議の開催は決定されていた。

 

「簡単な話だ。既にDクラスは優待者を当ててる。それに加えて、てめぇらBクラスも右腕が黒幕に協力していた。Cクラスが6グループもらうのが妥当だ」

 

「龍園くん。それ、本気で言ってるの?」

 

「さぁな。案の一つとして提案しただけだ。嫌なら、他の案を出せばいい」

 

 龍園の考えは非常に不公平であり、平等では無いものだった。しかし、今回の騒動に関してはDクラスとBクラスに負い目があるのも事実で、吉宗の誘惑にかかる人間が少ないのもCクラスの可能性が高い。正臣と一之瀬の二人が目を瞑れば、ある意味で合理的な案だった。

 

「納得はいかない。俺自身は良いとしても、クラスの奴らから託されてここにいるんだ。簡単には頷けない」

 

「……分かった。じゃあ、全員で2つずつ取ろうよ。残った一つは残しておいてさ」

 

「その一つをAクラスにみすみすくれてやるのか? いや……そういうことか」

 

「うん。残すグループは辰グループ。辰グループにはほとんどがリーダーの人ばっかり。ここで裏切ってくる人はほとんどの確率で居ないし、三好くんにも伝わると思うんだけど」

 

 一之瀬の案は希望的観測が多かったが、ほとんどのクラスが得るクラスポイントが変わらず、序盤の方を吉宗に流れを握られていたことを考えると、得られるだけ充分とも考えられた。

 

「……ちょっと待ってくれ。何で吉宗はあんなことしたんだ。わざわざあんなことしなくてもAクラスのやつに法則を教えてやれば、こんな暇は無くないか?」

 

「ククク、良いとこつくじゃねぇか。確かに、それは怪しいな」

 

「確かに分からないよね。アピールの為かな」

 

 何故、吉宗があんなことをしたのか。あの時、あの瞬間、吉宗はAクラスの連絡グループにでも法則を載せれば良かった。それだけでこの勝負はほとんど勝てた。しかし、吉宗は掲示板にあの誘惑するようなメッセージを出した。勝ちたいというような欲を出しておいて、本当の勝ちを捨てる。彼の行動は曖昧だった。

 

「神崎くんと張間さんがいたからじゃないかな? 二人との契約もあるから」

 

「張間も神崎もちゃんとした契約は結んでなかった。ただの協力関係。三好が他の二人に遠慮する意味なんて無い」

 

「あいつはちゃんとした勝ちを狙っちゃないってことだろ。あの文言すらもブラフの可能性だってあるからな」

 

「そういうことか。あの掲示板に上げた文章はブラフ。俺たちを揺さぶる為にしたってことか」

 

 三人の頭の中でぴったりとピースがハマったように考えがまとまる。しかし、その答えはAクラスがもう既に4つのグループを自分たちで当てており、逆転が難しくなっていることを暗に示すようなものでもあった。

 

「決まりだ。CクラスとBクラスがAクラスの優待者を当てる。残るはDクラスが2人、Cクラスが1人、Bクラスが2人。てめぇらのどっちかがCクラスを当てて、それで俺が当てて終わりだ」

 

 二人ともどちらがCクラスの優待者を当てるか相談する内に龍園は自身の携帯を操作し、その直ぐ後にDクラスの優待者だったグループとBクラスの優待者だったグループが全て消滅したことが学校側から通知される。

 

「龍園……お前」

 

「ハッ、Aクラスに取られるよりマシだろ? 会議をすることに賛成したが、取らねぇとは言ってねぇからな」

 

 不敵でこちらを振り向くことなく龍園は部屋から出て行く。前回の無人島試験で苦汁を飲まされたのはAクラスだけでは無かった。それを勝者であったBクラスとDクラスは一瞬忘れていた。

 

「クソ! 龍園を信用し過ぎちまった!」

 

「……仕方ないよ。今回は龍園くんが上手だった。ずっと狙ってたんだよ。Aクラスの考えにたどり着いて、私たちが隙を見せるのを」

 

 悔しさを滲ませ、自分たちが龍園と吉宗にまんまとやられたことに後悔を抱く正臣。自分を責め、自分クラスやDクラスへの申し訳なさでいっぱいになる一之瀬。今回、吉宗と龍園に負けた形になったDクラスとBクラスだったが、皮肉にもその絆は一層強まっていた。

 

 

★ ★ ★

 

 

 最後のグループが当てられ、船上干支試験は途中にあった予想も出来ない展開とは裏腹に呆気なく、静かに終わった。そして、混乱が広がりながらも一日が経過した。

 

「会議を始めましょうか。今回、何があったかを突き止める為に」

 

 やっと落ち着いた空気でDクラスの反省会のようなものが始まった。メンバーは正臣、堀北、平田、綾小路、軽井沢、櫛田、美香。クラスの中心人物の会議だったが、それにしては人数があまりにも多く、大所帯となっていた。

 

「まずは情報整理でもしようか」

 

 子──裏切り者の正解により結果3とする

 丑──裏切り者の正解により結果3とする

 寅──裏切り者の正解により結果3とする

 卯──裏切り者の正解により結果3とする

 辰──裏切り者の正解により結果3とする

 巳──裏切り者の正解により結果3とする

 午──裏切り者の正解により結果3とする

 未──裏切り者の正解により結果3とする

 申──裏切り者の正解により結果3とする

 酉──裏切り者の正解により結果3とする

 戌──裏切り者の正解により結果3とする

 亥──裏切り者の正解により結果3とする

 

 以上の結果から本試験におけるクラス及びプライベートポイントの増減は以下とする。

 

 Aクラス……プラス50ポイントcl プラス200万pr

 Bクラス……マイナス100ポイントcl プラス50万pr

 Cクラス……プラス150ポイントcl プラス300万pr

 Dクラス……マイナス100ポイントcl プラス50万pr

 

 以上が結果発表の時点で学校側から送られてきたものだった。それを小さい携帯の画面から書き込みも出来る紙へと書き写したものをここにいる面々は各々の感情の元から見ていた。

 

「これでAクラスは1124ポイント、Bクラスは803ポイント、Cクラスは642ポイント。そしてDクラスは212ポイント。また大きく差がついたわね」

 

「……じゃあ、Bクラスともっと協力出来るんじゃないの?」

 

「確かに、軽井沢の意見は一理あると思うぞ」

 

 改めて今回の大敗を認識し、言葉も出なくなっていく中、携帯を触ってばかりだった軽井沢が気休めだが、確かな事実を能天気で言った。その言葉に綾小路も続き、平田や櫛田、美香の顔は少し微笑ましくなったが、堀北の顔は以前として険しかった。

 

「Bクラスとの協力が得られるのは嬉しいことよ。でも、Bクラスは大敗し、右腕が失脚するという出来事が起こったわ。以前までの士気が高いままで頼もしいBクラスで居てくれるかは不安だわ」

 

「ちょっと、隆二くんを失脚なんて言わないでもらえます?」

 

「元はと言えば、貴方が悪いんでしょ? 私からすればこの場に呼ぶことも嫌だったのだけど」

 

「まーまー落ちついてよ鈴音ちゃん。美人な顔が台無しだよ? 帆波とはお互いにこの先も協力し合うって約束したからよ。問題無いと思うぜ?」

 

 またも空気を中和するように正臣が間に入っていく。このような事はAクラスのリーダーやCクラスのリーダーには出来ず、一之瀬と正臣のような共和的なリーダーにしか出来ないことだった。

 

「ともかくよ。みんなで協力すれば何とかなるってことで、次も頑張っていこうぜ!!!?」

 

 士気を高めるように明るく振る舞っていく正臣。しかし、彼は怪しげな行動の多いDクラスのクラスメイトを見ていく中で、心の何処かで一之瀬や竜ヶ峰と同じくらい信用と信頼のおける人間をDクラスに作らなければならないと危機感を募らせていた。




 今回で干支試験自体は終わりましたが、補足回を1話挟んで、今章は終わりです。

カップル同士などの描写の深さについて

  • 仄めかしもやめてほしい
  • 仄めかす程度ならば問題なし
  • 軽い描写なら良し
  • 多少深くてもok
  • ギリギリまで攻めてよし
  • どれでも気にしない
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