ようこそ非日常の溢れる教室へ   作:地支 辰巳

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 これで夏休み編は終了です

 ベアーフォールさん誤字報告ありがとうございます。


時として鋭すぎる勘は一種の才能である

 

 夏休みも半分を過ぎ、既に後半へと突入していた。そのこともあって、特別に水泳施設が生徒たちに開放されていた。そんな青春真っ只中な施設に行かない人間はほとんどおらず、多くの人々がその施設に行っていた。1年Bクラスも例外ではなく、帝人を含む多くのBクラス生徒が遊びに来ていた。

 

「帝人ー。そっちボール行ったぞー!」

 

「ちょ、ちょっと待ってよー!」

 

 ビーチバレーをしている男子たちだったが、その中でも帝人はどちらと言えばドジのポジションで、ミスを重ねながらも楽しいんでいた。そして、全員がそれなりに満足したのか、プール側にBクラス男子が集まり、適当に雑談をしながら、今度は女子たちがしているビーチバレーをやましい目も含まれつつ見つめる。

 

「ちょっといいか、竜ヶ峰」

 

「どうしたの渡辺くん? 用って珍しいね」

 

「竜ヶ峰に聞きたいことがあるんだけど、いいか?」

 

 全員が平等に仲が良いBクラスと言えども、それぞれがいつも行動を共にする人は決まっており、帝人ならば浜口や柴田がそのポジションであった。なので、帝人と渡辺紀仁は喋るものの仲が特別良いという関係性では無かった。だからこそ、帝人は自分に用がある渡辺のことを疑問に思う。

 

「竜ヶ峰は機械とかネットに詳しそうだから聞きたいんだけど、例の掲示板に恋愛相談しても良いと思うか?」

 

 例の掲示板とは帝人が作り、運営している掲示板サイトのことで散々干支試験を掻き乱したあのサイトだった。それは学校が運営している簡素な掲示板よりも手軽さがあり、匿名性も高かった。それもあって、様々な話題が立ち、使う人間は一日に何度も使うことがあるほどだった。

 

「個人名さえ出さなければ、大丈夫じゃないかな? 個人を特定出来ることなんて出来ないと思うよ」

 

 まさか自分が作りましたなんて言えない帝人は無難なアドバイスを送りつつ、このサイトが盛り上がるように肯定的な意見を述べる。その時の帝人の態度が少々ぎこちないものであることは言うまでも無いことである。

 

「やっぱそうだよな。でも……いまいち不安なんだよな。もし女子たちにバレたら避けられるに決まってるだろ?」

 

 そこまでして、このサイトを使いたがる訳を帝人は聞かなかったが、一通り悩んだ末に画期的なアイデアを思いつき、渡辺に提供する。

 

「渡辺くんが女子の振りをして、全部逆の立場で聞いてみるのはどうかな? 良いアイデアだと思うんだけど」

 

「お! 良いアイデアかもな!! これでバレることは無いな!!」

 

 思いつく方も思いつく方なアイデアではあったが、渡辺は心の底からそのアイデアに感心し、苦戦するだろうが実行することを決めた。

 

「ありがとな竜ヶ峰。これまではさ竜ヶ峰のこと、ちょっと怖いなって思ってたんだけど、誤解だったみたいだ。ごめんな」

 

「うんうん、そんな良いよ。僕も渡辺くんと仲良く出来て嬉しいよ」

 

 何故、渡辺が竜ヶ峰のことを怖がっていたかは本人にしか分からないことだが、帝人は大して気にしていないのか、記憶の隅にしかその記憶は残らなかった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 何日かある水泳施設の特別開放日のある内の一日。そこに吉宗と山村も遊びに行っていた。干支試験での吉宗の立ち回りにより、Aクラスの中では吉宗の存在が少し浮いており、その一例として吉宗の周りには山村を除いて好んで近づく者は居なかった。

 

「……2人だとすることもあんまり無いね」

 

「それでも良いです……こうしてるだけで落ち着くから」

 

 2人はプールの縁に隣り合って座っているだけで特に何もしていなかったのだが、それでも退屈というのはしていなかった。その光景に周りにいた人たちは珍しいものを見る視線をしていたのだが、2人はそれを気にしていなかった。

 

「学校、始まりますね……」

 

「そうだね。でも、ちょっと不安かな。あんなにも強引な手を使ってしまったから」

 

「そんなことないです。三好くんはクラスのことを思って……行動しただけだから。坂柳さんや葛城くんだったら、こんな勝利は導けなかった」

 

「うん……そう言ってくれると嬉しいよ」

 

 吉宗が不安に感じていたのは新学期から始まるAクラス内での人間関係。もしかしたら、いじめなどもあるかもしれない。そんな風な漠然とした不安を吉宗は危惧していた。それは1人では到底抱え込めるものでは無く、吉宗は山村が居たからこそ、自分の道を進み続けようと思えていた。

 

「そろそろ行こっか。ついつい長居しちゃったし」

 

「はい。外で待ってて下さい」

 

 かれこれ2時間近くも会話を挟みつつもあの状態でいた2人は更衣室で別れる。先に着替え終わり、水泳施設の入り口に出てきた吉宗の前に少し小柄な人影が現れる。

 

「やっと来ましたか。話があります三好吉宗」

 

「……森下さん。僕に何か用かな?」

 

 その子は吉宗と同じAクラスの森下藍。所謂、変わっていると言われる部類の人であり、1人でいることがほとんどな女子。吉宗との接点は皆無と言えるものであり、吉宗も何故彼女が自分を探していたのか疑問に思うほどだった。

 

「もしかして、ずっとここに?」

 

「ええ。ここに入ったという情報を聞いたので、出待ちしてました」

 

「そこまでして、僕に会いたかった理由って何かある?」

 

 わざわざこんな場所で吉宗のことを待っていた。その事実に吉宗は森下のことを強く警戒し、何かしらの狙いがあるのか、じっくりと相手の出方を伺っていく。

 

「三好吉宗がこれからAクラスをどんな風にしていくのかを聞きたかっただけです」

 

「……僕はただ内部分裂もしない、ただただ良いクラスにしていきたい。ただそれだけなんだ」

 

「三好吉宗のせいでその内部分裂が加速している可能性もありますが、言いたいことは分かりました。これからどうするつもりですか?」

 

「僕はやるだけだよ。どんな手を使っても自分がやれると思ったことを」

 

 吉宗の強い眼差しが森下に向けられる。例え自分のやっていることがクラスの崩壊を招いてかもしれなくても、もう吉宗は後戻り出来ない。自分がやれることを最後までやり切るだけだった。

 

「よく分かりました。これからのAクラスに備え、色々やらせてもらいますね。では」

 

 吉宗が聞きたかった疑問も聞けることも無いまま森下は堂々した足取りのまま去って行く。そのタイミングで山村が出てきて、吉宗から去って行く森下について聞く。

 

「……今のは」

 

「これから表舞台に出てくる人かな」

 

 森下が森下の視点で吉宗のことを分析していたのと同じように吉宗も吉宗なりの視点で森下のことを観察していた。

 

 

★ ★ ★

 

 

 夏休み最終日。夏休み最後ということで遊びまくる学生や明日に備えてゆっくり休もうとする学生など様々な学生がいるが、ここにいる2人のように密会している学生はそう多く無かった。

 

「夏休みは楽しんだかな? 君はあまり人と連まない人間だから充実した夏休みを送ったか少し不安だけど、楽しんでくれたなら良かったよ。君にはこれから色々してもらわなくちゃならないからね」

 

「はい」

 

 前回と同じような構図で話す臨也と臨也と繋がっている一年。前回と異なっている点と言えば、ここが前回の臨也の部屋では無く、密会向きなまるでマフィアが会合で使うような中華料理屋という点だった。

 

「この構図はあの絵みたいですね」

 

「ああ、これが最後の晩餐に思えた? それは考え過ぎってやつだよ。最後の晩餐はイエスの他に12人の信者がいるけど、ここには君と俺の2人だけ。それにあの絵の中には裏切り者のユダが混じっている。君は俺にとってのユダになりえるはずがないから、似てないね。まぁ俺の名前からすれば最後の晩餐は……いいかこの話は」

 

 雑学を披露しつつ臨也ともう1人との会話は進んでいく。しかし、そのどれもが中身があるようで無いものばかりで、その内にテーブルの上からは食事がほとんど消えていき、残ったのは口直しの水だけだった。

 

「さてと、閉店時間も済んだし、ここからを本題にしようか。ああ、心配しなくても良い。店主にはポイントを支払っているし、事前に許可も取っている。君が心配することは何一つとして無いよ」

 

 いつの間にか店内に居た少ない客たちは居なくなり、ここにいるのは臨也とその生徒の2人だけ。臨也のことをよく知っているのか、店主は黙々と片付け作業を始め、まるで2人が居ないかのようにいつも通り作業をする。

 

「君の体育祭での動きだ。今更、俺なんかに行動を制限されるのも癪だと思うけれど、聞いてくれ。君はこれまで大した活躍をクラスの中では見せなかった。まぁ、君のクラスからすれば仕方ないのかもしれないけど、それは置いておこうか。ここで活躍すれば君のことを知る人間は多くなる。分かったかい?」

 

「分かりました」

 

 特に何の疑問を抱くこともなく、その生徒は臨也からの指令に頷きを返す。それを満足に捉えたのか、店主にお礼と頭を下げて店から出て行く。そこから数分経って、その生徒も店から出て行く。何とも言えない2人の関係はこれからも続いていく。

 

 

★ ★ ★

 

 

 同じく夏休み最終日。誰も居ない寮の部屋で自身の携帯を触り、掲示板を眺めていたBクラスの網倉麻子。彼女は元々掲示板を見る事を少なく、自分で何かをつぶやくことも無かったのだが、最近は趣味が合う人たちでメッセージを送りあうグループに入っており、そこで頻繁に会話していた。相手が男性か女性かも同じ学年かも分からない中で、趣味の話だけをするのはこの学校では中々ない体験で、網倉はその時間を普段の日常と同じぐらい楽しんでいた。

 

「あ、今日もログインしてる」

 

 そんなグループの中で網倉が一番仲良くしているのはハンドルネームが鈴木という人物。趣味が合う中でまるで網倉のことを知っているぐらい意気投合することが多く、個人的に掲示板上でメッセージのやり取りもしていた。そんな相手から網倉に対してあるメッセージが届く。

 

『そういえば、1年Dクラスの櫛田桔梗って子が誰かに脅されて何かをしてるらしいよ』

 

『え!? どういうこと?? き、櫛田さんが? そんなこと聞いたことも無いんだけど』

 

『どうやら裏で色々されているらしいんだ。でも、証拠は一つもないみたい』

 

 他クラスだけど、仲良くしている友人のピンチに網倉は驚き、助けなければならないと思い、色々な質問を鈴木にするもその答えはどれも芳しくなかった。

 

『櫛田さんはあまりこの事を知られたく無いみたいだから内密に』

 

『……分かった。私の方でも何とか助けになってみせるね』

 

 友だちである櫛田のピンチに網倉は何とか力になってみせようと陰ながら助けになることを決意する。しかし、この鈴木なる人物から似たようなメッセージが他数人に送られていることを網倉は知ること無かった。




 最後の場面はある人物の保険によるものです

 
 今回で折原のシンパ候補は出きりました。

 松下千秋 沖谷京介 椎名ひより 渡辺紀仁 森下藍

 の5人になっています。それ以外の4人も色々な考えの元、動き出そうとします。

 

原作からの説明などで役に立てる為のアンケートです。

  • デュラララの小説かアニメを見たことがある
  • よう実の小説かアニメを見たことがある
  • 両方とも見たことがある
  • 両方とも見たことが無い
  • デュラララの知識はある
  • よう実の知識はある
  • どちらの知識もある
  • どちらの知識も無い

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