ようこそ非日常の溢れる教室へ   作:地支 辰巳

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今更ですが、この小説の話では視点によって長さなどが変わるかもしれません


新入生は未来の自身を夢見る クラスA.C

一年Cクラスに入学してから、2週間ほど経ったある日。平和島幽(へいわじまかすか)は教室で起こっている光景に表情が一切変わることは無く、驚いていた。

 

平和島幽という人物は、感情を顔を出す行為が極端に死んでいると、人からよく言われるくらいには無表情な少年だった。そんな幽はなんの因果か、この一年のクラスの中で一番騒がしく、暴力的なクラスなCクラスに配属されていた。

 

まだ一ヶ月にも経っていないのに、Cクラスが他クラスと比べて暴力的と言われるのは、目の前に広がっている光景を見れば分かる。一人の男が堂々と立っており、向かって来る他のクラスメイトを暴力で蹴散らしているのだ。その男の近くにはチンピラ風の男と外国人の男が手を後ろで組んで、静かにその光景を見ているのが、特徴的だった。

 

「……すごいな」

 

もちろん喧嘩事などする人間では無い幽は、参加せずに傍観している数少ない人の一人だった。

こんな状況になった経緯は、堂々としている男の龍園翔が放課後になるなり、いきなり教室の前に出てきて、この来月に振り込まれるポイントがまだ決まっていないこと、俺がこのクラスの王になるから、不満がある奴はかかってこいと言ったことで、こんな状況になっていた。参加する気の無い、主に女子などは先に教室から出ていき、今はチンピラ風の石崎大地と外国人の山田アルベルトが出入り口を見張っていることで、入ることも出ることも出来なくなっていた。

 

そして一人また一人と倒れていき、今この教室で立っているのは勝者である龍園とその手下と認識されている石崎とアルベルト。傍観していた幽と眼鏡をかけた男子の金田悟。そして、今現在龍園によって打ちのめされた伊吹だけだった。

 

「ハッ、女のくせに見上げた根性だと思うぜ伊吹。特別に側近に迎えてやるよ。あとは……インテリ野郎と無表情野郎か。残ったのは雑魚ばっかか?」

 

龍園が交戦的な奴らを一通り倒したところで、ここまで残っていた金田と幽に対して獰猛で見極めるような目線をしていた。

 

「待ってください龍園氏。僕には喧嘩をする気は一切ありません。ただ新しい王の実力が気になって残っただけですよ」

 

「金田。てめぇは見る目はあるようだな。頭も良さそうだ。参謀として使ってやるよ」

 

「ありがとうございます龍園氏」

 

そして金田の値踏みが終わったのか、龍園の次の興味は幽の方は向いていた。幽からすれば、この状況に全く怯えることは無く、龍園が幽の心を読もうとしているように、逆に幽も龍園の心を読もうとしていた。

 

「生憎と俺は人に誇れるようなものは持っていない。部下にするなら他を当たってくれ」

 

淡々とまるで作業のように出てきたその言葉の数々に周りの人間はつい一歩引いてしまっていたが、龍園は引くことはせずに笑みを深めていた。

 

「ククク。気にいったぜ平和島。てめぇも特別に俺の側に置いておいてやるよ」

 

「どうかな。あんたは俺のことがよく分からないから、側に置いて監視しておきたいだけなんじゃないのか?」

 

「ハッ、俺の考えを読んでいるだけで、俺の部下に相応しいと思うがな。どうだ?今ならてめぇの望みを叶えてやれるぜ?」

 

願い。その単語に幽は確かに反応を示していた。幽がこのままクラスの一生徒として普通に過ごしていても、幽が望むような出会いなんて果たせない可能性が高かったからだ。だったらということで、幽は自身のこの無表情さを直す刺激、そして変えてくれるような人物との出会いが高まるであろうクラスの中核に行くことをたった今決めた。

後悔なんてものは幽には持っていなかった。ただ人間らしさが欲しかっただけだから。

 

「分かった。俺はあんたの下についてみることにする。よろしく」

 

「ククク、ああよろしく頼むぜ。しっかり働いてくれよ」

 

そして平和島幽と龍園翔は握手を交わしたのだった。

 

 

★ ★ ★

 

 

龍園による王宣言がなされる一週間ほど前、そして入学式から一週間が経った頃だろうか。Aクラスへと配属された園原杏里(そのはらあんり)は、未だに自身の立ち位置を決めかねていた。

 

園原杏里という少女は大人しく眼鏡をかけている、所謂地味な子と言われるような少女だ。そんないじめられる対象になる可能性の高かった杏里は、中学まではある少女に寄生して日常を送っていたのだが、この高校に入ってクラスが別れたことで、それも難しくなってしまっていた。

 

そんな杏里はそろそろ自身の立ち位置を決めようと思っていて、ふと放課後にコンビニに入ったのだが、そこで杏里と同じクラスの神室真澄が何か不審そうな様子なのが気になったのだ。

 

特に杏里は親しいわけでも無いので、何気なくバレないように見てしまっていたのだが、そこで神室がお酒をすっと取ったのが見えたのだ。それを他の誰も見ていなく、そのまま神室は何気ない顔をしながらコンビニから、外に出てしまおうとしていた。

 

そして神室が出た瞬間につい反射的に杏里は神室の腕を掴んでいた。掴まれた神室は杏里に対してひどく面倒くさそうな表情を抱いていたのだが、その一方で杏里は、何故自分がこんなことをしてしまったのか分からずに、少々混乱してしまっていたのだが、一旦息を吐いて落ち着いたのか、小さくも確かな声を出した。

 

「……よくないと思います」

 

「何?あんた私に何か用?」

 

「万引き……するのは良くないと思います」

 

二回目はそこまで大きくない声ながらも、はっきりとした口調で神室に聞こえるように言っていた。

 

「私が盗んだっていう確信でもあるの?」

 

「ええ、ありますよ。私も見ていましたから」

 

神室の質問に対して答えたのは、杏里では無く、突然現れたAクラスでリーダーになると宣言していたとして、神室と杏里の記憶に残っている杖を突いている坂柳有栖だった。

 

「盗んだなら何?二人とも学校にチクる?」

 

「いえ、そんなことはしませんよ。そうですね。どうですか?二人とも一緒に散歩でも?」

 

杏里はいきなりこんな状況になって少々戸惑っていたが、流れるままに三人で、人があまり通らない道まで無言で歩いて来ていた。

 

「お願いがありまして、二人とも私とお友達になっていただけませんか?」

 

杏里はお友達という単語に、なろうかなという気持ちとこの人の言っているお友達というのは私と思っているのと違うと言うことを感じ取っていた。

 

「あんたの言っているお友達に私はなりたくないんだけど」

 

「いえいえ、神室さんには元より選択肢なんてありませんから。私は何処か浮世離れしている杏里さんにも了承をいただきたくて聞いているのですよ」

 

杏里はこれに同意しようかと考えていた。例え杏里の思っているお友達と坂柳が思っているお友達が違う物であっても、お友達になれば園原杏里という人間は新しい日常を歩むことになると思ったからだ。

 

「はい。よろしくお願いします」

 

「大人しくも芯のある園原さん。冷たくても順従な神室さん。ええ、どちらも私のお友達に相応しいと思いますよ」

 

「ちょっとあんた本当にいいの?こんなやつの下につくなんて」

 

「大丈夫です。私だって変わらなきゃいけないって思っていたので」

 

杏里のその言葉を聞いた坂柳は、薄く微笑むと二人を連れてゆっくりと歩き出して行った。

 

 

★ ★ ★

 

 

その日もAクラスはいつもと変わらない様子だったのだが、一つだけ違うことがあった。それは放課後にクラス内の坂柳派と葛城派がどちらも派閥で食事会のようなものをするというものだ。

それがあることによって、この男三好吉宗(みよしよしむね)は憂鬱な気持ちになっていた。

 

このAクラスは二人のリーダーが争っているせいで、クラスがほとんど二分されている。そんな中、吉宗は中立派という名のどちらにも味方するけど、別にリーダーはどっちでも良い派の代表格みたいな扱いを受けていた。そのおかげで、今日の食事会にはどちらにも呼ばれていて、どうするか決めかねていたのだ。

 

「はぁー。どうしようかな……」

 

そんなことなら、両方行かなければ良いと言われるとは思うが、誘われた以上は行かなければと言う思いを抱いてしまうのが、吉宗と呼ばれる少年の気質だった。

 

幸か不幸か、食事会の時間はどちらの派閥とも時間が被っていて、途中で抜けたりして、もう一つの食事会に行くことが可能となっていた。吉宗はその方法で行くしかないと思って、放課後を待つことにした。

 

 

そして放課後になって、まず吉宗はイタリア料理店で食事会をしている葛城派の方にまず向かった。少しだけ時間を遅らせてから行くと、そこには遅れる予定以外の者は揃っていて、もう食事会が開催されていた。

 

「おおー!八代目。来てくれて嬉しいぜ!」

 

余談だが、吉宗は自己紹介の時に昔のあだ名は吉宗からの連想で八代目とかエイトとか呼ばれていたと言って、高校で呼ばれる時もほとんどそう呼ばれるようになっていた。

 

そして、葛城派のリーダー葛城康平をもっとも尊敬している男である戸塚弥彦に肩を組まれながら、吉宗は葛城の隣に座ることになった。

 

「忙しいのにすまんないな三好。遠慮せずに食べて行ってくれ」

 

「ありがとう。葛城君」

 

そこから少しの間、葛城派に所属している人たちと吉宗は会話をしながら食事をとっていた。

 

「でよ、八代目。そろそろ中立の奴らと一緒に葛城派に入ってくれないのか?」

 

「いやー僕が言っても、みんな言う通りには入らないと思うんだけど」

 

「そんなことねぇぜ。Aクラス全員と仲が良いのはお前ぐらいだからな。この通り。頼む!」

 

「うん。考えておくよ」

 

吉宗は時計を確認すると、丁度良いくらいの時間になっていたので、ここを抜けて坂柳派の食事会に参加するために、葛城へとお礼を言った。

 

「じゃあ今日はありがとう。美味しいものを食べさせてもらって」

 

「ああ。今日はわざわざ来てくれてすまなかったな。また機会があれば来てくれ」

 

 

店から出た吉宗は早歩きをしながら、坂柳派のいる日本料理が出る店へと向かった。店の中には、時間が経ったこともあって坂柳派の生徒が全員揃っていて、皆が思い思いにしゃべったりしていた。

 

「三好君。こっちですよ。お話をしましょうか」

 

店に入った吉宗を坂柳は自身のテーブルに誘った。坂柳の周りにはいつもいる神室と杏里の他には数名の生徒がいた。

 

「えっと坂柳さん今日は呼んでくれてありがとう」

 

「いえ、三好くんと仲が良い人たちも取り込めればと思っているので、お礼なんていりませんよ」

 

吉宗自身、自分が中々ヤバい立場になってしまったことは重々承知していて、それをここまでストレートに言われるとはなると、坂柳の強者の余裕のある笑みも相まって、恐怖を感じてしまうのも仕方のないことだろう。

 

「うん。もちろん考えておくよ」

 

「一応ポイントを支払っても良いとは思っているのですが、どうでしょうか?」

 

「そこまでしてもらわなくてもいいよ。僕自身色々と考えてみたいこともあるから」

 

「そうですか。すごく残念ですよ。ですが、いつでも待っていますから、お気軽にどうぞ」

 

それから、吉宗は周りを女子に囲まれながらも、聞き手に徹することで無難に過ごすことに成功していて、偶に来る橋本正義としゃべりながらこの時間を過ごした。

 

「今日は楽しかったです。またみなさんと交流を深めたいですね。三好くんもまた来てくださいね」

 

締めの挨拶をしている坂柳がいきなり吉宗の方を向くと、ほのかな笑みを浮かべながらも、次回への参加を促して来た。それに対して吉宗は今日の疲れからか、苦笑いしか返すことが出来なかった。

 

吉宗は一刻も早く、どちらかの派閥に肩入れすべきか決めた方がいいだろうなと思うのだった。

 




幽君に関しては原作から年齢が変更されています。
今考えてる一年でのメイン視点の人達は今回で揃いました。
次回はいよいよ5月に入ります。



「平和島幽」 へいわじま かすか

クラス 1年Cクラス

学籍番号 S01T009762

部活動 演劇部

誕生日 2月22日

評価
【学力】B
【知性】B
【判断能力】C
【身体能力】C+
【協調性】D+

面接官からのコメント
能力面に関しては、学力は問題なく平均よりも良い。運動能力は平均の域は超えないものの優秀ではある。
ここまででBクラス相応の実力はあるものと考えられるが、口数が少なく、無表情であることが懸念される。その影響もあり、友人関係も多いとは言えない。感情や表情のことなどの改善のためCクラスへの配属とする。

担任のメモ
クラス内では友達といるのが確認出来ました。このまま継続して友人関係を築いて欲しいです。



カップル同士などの描写の深さについて

  • 仄めかしもやめてほしい
  • 仄めかす程度ならば問題なし
  • 軽い描写なら良し
  • 多少深くてもok
  • ギリギリまで攻めてよし
  • どれでも気にしない
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