ようこそ非日常の溢れる教室へ   作:地支 辰巳

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 Dクラスメインです

 ベアーフォールさん誤字報告ありがとうございます。


人を信用することは疑うよりも何倍も難しいこと

 

「そうよ。今回の試験。裏切らないでと言ってるの」

 

「それ、私だけに言ってるんですか?」

 

 体育祭でのクラスの方針が大体決まり、出場表を正臣と堀北、須藤と平田の4人で決めることになってから、数日。堀北は同じクラスの美香に放課後、残るように指示していた。

 

「わざわざその事を言う為に残れって言ったんですか?」

 

「ええ。貴方は前科があるのよ? あなたの自己満足で出場表を漏らされたら、困るのよ」

 

 船上試験での美香の立ち回り。それは美香の地位と好感度を大きく下げるものでは無かったが、美香がそんな大胆なことをするほどの人間とは認識される結果になり、堀北も美香が同じようなことをする前に釘を刺しておく必要にかられたのだ。

 

「やだなー。そんなことするわけじゃないですか。私はか弱い乙女ですよ?」

 

「私は真剣に話しているのだけど?」

 

 クラスでも話したことのない2人の会話はギスギスしており、何よりもお互いを牽制しあうように見つめ合う瞳が怖かった。美香も何かしらの決定をしないと逃げさせてもらえないと結論付けると、ため息を大きくつく。

 

「隆二くんに利益が無かったら、私でもそんなことをしませんって。前のやつもその方が隆二くんが喜ぶって思ったから」

 

「そう。なら、貴方は今後も神崎くんに危機が迫ったら、このクラスを裏切るのも厭わないってことね?」

 

「そうですね。私に隆二くん以上に大切なものなんてありませんから」

 

 そのクラスを裏切るという大きな決断を美香を何でも無いことのように即答で言い切る。その美香の態度に堀北は理解することが全く出来なかった。

 

「だったら、その神崎くんから貴方に言ってもらうようにしましょうか」

 

 その瞬間、堀北の首元に素早い手刀が繰り出される。武道の心得がある堀北であったからこそ、直前に殺気を感じたことで避けることが出来たが、これが堀北では無かったと考えるだけで恐ろしい事態になっていたであろう。

 

「あなた……人を殺す気?」

 

「神崎くんは何も知らなくていいんです。私が何をしているかなんて知らず、平穏に暮らすべきなんです」

 

「そっちがその気なら、私も受けて立つけれど」

 

 堀北は並の女性になら、勝てる自信があった。しかし、先ほどの手刀の早さを経験すると美香相手には簡単に勝てないないことは充分に理解していた。だからこそ、大きく深呼吸をして集中する。

 

「いえ、辞めておきます。クラスの中心人物と喧嘩したなんて噂が広まったたら大変ですから。でも、堀北さんを抑える方法なら思いつきました」

 

「何かしら? 私はあなたに説き伏せられる未来なんて見えないけれど?」

 

「聖辺ルリ。知り合いですよね?」

 

 咄嗟に知らない人間だと反論しようとする堀北。しかし、その言葉は出なかった。いや、出せなかった。堀北の心とも言える部分がルリを友達では無い。知り合いでは無いと言うことを拒否する。堀北だって、こんな経験は初めてだった。何故こんなにも言うことを拒否してしまうことは分からないほどには。

 

「やっぱり。私にあれだけ言っておいて、自分は他クラスの子と仲良くするんですか? 自クラスの子と仲良くしないのに」

 

 あれだけ好戦的に出ていた堀北が縮こまり、何も言えなくなっていく。それを好機と見た美香は畳み掛けるように携帯を取り出す。

 

「それに……この写真。2人が何かしらの取引をしていたって思われるても仕方ないですよ」

 

 見せられた写真はルリと堀北がベンチで隣り合っていて会話している場面の写真。確実な証拠に堀北は珍しく戸惑っていくが、急にすっと思考がクリアになったのか、顔を上げ、美香に目を合わせる。

 

「そうね……私はあなたの言う通り、聖辺ルリの友達よ。それをネタに脅そうとするなら勝手にすればいいわ。だけど、私はもうあなたにこれ以上の念押しはしないわ」

 

「そっちがそう言うなら私も脅しませんよ。私と隆二くんが幸せなら、私たちも何もすることはありませんから」

 

 互いに円満とは言い難いが、やった意味ぐらいは感じられるぐらいに終わった話し合い。今回のことで美香は堀北への評価を少し上げ、堀北は友だちに対する大切さというのを実感した。

 

 

★ ★ ★

 

 

 Dクラスとしての方針が決まり、Aクラスとのすり合わせがリーダー同士で行われている中、綾小路は寮近くにある茂み。具体的に言うならば、5月頃に綾小路と堀北学が初めて邂逅した場所でまたも堀北学と会っていた。

 

「こんな場所に呼び出して何のようですか?」

 

「お前たちが本来の通りの体育祭を送る為に大事なことを伝えておこうと思ってな」

 

 堀北は非常に重苦しそう言葉で話し始め、後輩にこのようなことを話すのも本音では無いだろうことを綾小路は堀北から読み取っていたし、綾小路は面倒事に巻き込まれるだろうことも予想がついていた。

 

「まず、お前は2年の折原臨也と平和島静雄のことを知っているか?」

 

「名前ぐらいなら」

 

 交友関係がほとんどない綾小路でも臨也と静雄の噂は耳にしたことがあった。直接は話したことはないものの、その噂から高円寺のような問題児なのだろうという印象を抱いていた。

 

「高円寺のような人間だと思っているなら、それは間違いだ。高円寺は自由人という印象だが、あの2人はそういったものの方向性とは違う方面での迷惑さだ」

 

「堀北先輩ほどの人間が言うなら余程のもんなんですねその2人は」

 

「あの2人は一人一人でも厄介極まりない人間だが、2人ともがお互いを嫌っているのが問題だ。そのせいでどれだけの人が迷惑しているか」

 

 あの生徒会長である堀北がここまでの評価を下す人間。それに未知のことを学んでいきたいと考えいる綾小路は少し興味を持つ。そこまでの評価をされる2人はどのような人間なのかということを。

 

「俺には関係ありませんが、後学の為に色々聞かせてくれませんか?」

 

「元々そのつもりだ。お前には龍園のように不用意に接触して欲しくないからな」

 

 堀北としても綾小路には色々と話と依頼をするつもりであったので、綾小路が興味を向けたのは好都合だった。堀北もここまで綾小路が乗り気になるとは思っていなかったが。

 

「まず、折原臨也について話そう。奴は一言で言うならば情報屋だ。引き換えとする情報やポイントを渡せばなんでも情報をくれる。入学した当初からこのようなことをしていて、2年や3年の中でも使っている人間がいるぐらいだ」

 

「問題にはならないですか?」

 

「ならないとは言い切れない。しかし、奴は教師陣の弱味も握っているとも言われていて問題にはならない。本当かどうかは分からないがな。そして、奴の何よりも注意しなければならないことはその性格だ。人間を愛してると謳っているが、実際には興味を持った人間の行動を引き出す為ならどんなことでもやってみせるやつだ。奴に目をつけられたら終わりだと思え」

 

「もう1人の平和島静雄だが、平和島は折原と違って普段は大人しいが、キレると周りのものを壊し、暴れる。それだけならまだいいが、あいつの能力は身体能力にある。人間とは思えぬほどの耐久力、攻撃力。どちらをとっても奴に敵う人間はいないだろう。俺も手合わせしたことがあるが、綾小路も勝てるとは思わない方が良い」

 

 静雄と臨也の情報を聞いてもなお、綾小路は具体的に想像がつかなかった。その2人の考え方と行動が。だからこそ、綾小路はそれを今回の体育祭で観察することによって、その2人がどれほどの人物か判断しようとしていた。だが、綾小路の頭ではその2人に勝つにはどうしたら良いかという思考が巡らされていた。

 

「それで終わりですか?」

 

「いや、本当に危険なのは2人が対峙した時だ。お互いにお互いを殺したいほど憎み合っていて、去年の体育祭では2人が喧嘩を初めたせいで、競技の段取りが大幅に遅れた。それに、折原の策略で平和島によって1人の生徒が退学したこともあった」

 

「……迷惑ですね」

 

「ああ、だからこそ、お前に頼みたい。俺が卒業した後に2人を止めて欲しいとは言わないが、抑止してほしい」

 

 堀北からしてみれば、自分と相反する思想を持った南雲に注意をするようにも促したい。しかし、他学年にまで弊害が出るのは南雲よりも折原と平和島の2人だと判断し、2人のことを今の段階で綾小路に忠告することにした。

 

「……お断りします。俺には堀北先輩がそこまで評価している人間を止めれる自信がありませんから」

 

「だろうな。だが、否応なくお前は巻き込まれる。あの2人には注意しておけ」

 

 予想通りの答えを綾小路からもらった堀北はその分、最大限の警告をして、去って行く。利用出来るものは利用して勝つ。その心情を改めて心の表面に浮かべた綾小路もまた寮へ戻っていく。

 

 

★ ★ ★

 

 

「どうしたの紀田くん? 最近、悩んでるじゃない?」

 

「ぜんぜーん大丈夫だぜ! って言いたいとこなんだけど……なーんか匂うんだよな。体育祭」

 

「ん? どういうこと?」

 

 カフェに2人で来ていた正臣と松下。正臣が女性と2人でデートをすることは何も珍しく無いのだが、体育祭が始まる前はもっぱら一之瀬が多かったので、その光景を知っている人からすれば、組み合わせとしては珍しいものだった。

 

「オレが知らないとこでどーも動いてる気がするんだよな。もっと積極的に俺に誘いをかけてくれてもいいのによ」

 

「まぁ紀田くんは人気者だから、誘いにくいんじゃないかな?」

 

「やっぱそうだよなー!」

 

 正臣が冗談めかして言ったことではあるが、松下は少し深刻に考えていた。Dクラス目線では体育館で平和島静雄に誘いをかけた以降の動向が分からない龍園に加え、いまいちやる気が感じられないAクラス。そして、ピリピリしているように見える上級生たち。正臣がきな臭く感じるのも当然と言えた。

 

「最近は帝人も付き合いが悪いしよー。どうすっかな」

 

「そこまで気にしなくていいんじゃない? ほら、紀田くんには私という優秀な補佐がいるじゃん」

 

「もちろん、聡明で美人な千秋ちゃんが居てくれてめっちゃ嬉しいぜ!」

 

 笑顔で恥ずかしがることもなく、直接的な言葉で松下を褒める正臣だったが、その内面には今もなお周りに対する疑念が渦巻いていた。そして、それを松下もある程度察しながら支えになろうとしていた。




 次回辺りにはようやく体育祭が始まると思います

カップル同士などの描写の深さについて

  • 仄めかしもやめてほしい
  • 仄めかす程度ならば問題なし
  • 軽い描写なら良し
  • 多少深くてもok
  • ギリギリまで攻めてよし
  • どれでも気にしない
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