ようこそ非日常の溢れる教室へ   作:地支 辰巳

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 今回で体育祭は終わります


自分と相手との関係値は誰でもなく自分が決める

 

 二人三脚まで終わり、残る種目は六種目となった。その種目たちは所謂、花形種目ばかりで、体力を多く使うだろうということから、学校側からの配慮で10分程度の休憩時間が設けられていた。しかし、そんな時であってもAクラスは二つと一つに分裂していた。

 

「……納得いきません」

 

「僕はこの編成で良いと思うんだけど」

 

「三好吉宗はそうかもしれませんが、私はもっと活躍したいんですが」

 

 葛城を中心とした葛城派が右に、坂柳を中心とした坂柳派が左に陣取る中、吉宗と山村は中央にいたのだが、そこに坂柳派の場所から抜け出してきた森下が吉宗と山村のところに来ていた。

 

「森下さんは手が器用じゃないから、坂柳さんが推薦種目はほどほどにしようって言ってたよ」

 

「それは本当ですか?! 坂柳有栖、やりますね」

 

 真実かどうかは分からないことだが、それを信じた森下は逆戻りして坂柳に詰め寄っていく。それに対して坂柳は慎ましく笑うだけで本気で相手をしているようには全く見えなかった。

 

「私……森下さんのこと苦手です」

 

「僕は面白い人だなーって思うよ。でも、山村さんが苦手なら、次からは気をつけるよ」

 

「……ありがとう」

 

 山村の嫉妬じみたものを感じ取っていない吉宗は思っていることをそのまま発していく。しかし、山村はそんな純粋な部分がある吉宗だからこそ、好いている部分があった。

 

「す、すみません!! ポイントはお支払いします!!」

 

 そんないつも通りという部分では平和なAクラスと違って、Dクラスでは偶々通りかかった静雄に対して、沖谷がバケツに入っていた液体をぶっかけるというトラブルが起こっていた。

 

「……あー……わざとじゃねぇんだよな?」

 

「そ、そうです。わざとじゃありません!!」

 

 先ほどのままの静雄だったなら、怒りで沖谷でのことを投げ飛ばしていたところだったが、今の静雄は何とか落ち着いている状態であり、ギリギリのところでセーフだった。

 

「なら、とっとと行け」

 

「ありがとうございます!!」

 

 足早に去って行った沖谷はDクラスのテントで何度も何度も深呼吸する。その一連の様子を見ていたDクラスの面々は沖谷を慰めにいこうとするも、いち早く駆け寄ったのは綾小路だった。

 

「大丈夫か沖谷?」

 

「うん、大丈夫だよ綾小路くん」

 

「……沖谷は何をかけてしまったんだ?」

 

「……あ、うん。スポーツ飲料をかけちゃったんだ。変な匂いがするだろうから、本当に申し訳ないことしちゃったな」

 

「そうか」

 

 何故かかけた液体のことを聞く綾小路に疑問を抱く沖谷だったが、綾小路はそのことさえ聞ければ満足だったのか、他に近づいてくるDクラスの人に紛れて、離れて行った。その頭の中で多くのことを考えながら。

 

 

★ ★ ★

 

 

 いよいよ始まった騎馬戦。先に行われるのは一年の女子からだったが、全ての組が正当法で挑みあっていき、正々堂々しながらも見応えのある決戦が繰り広げられた。最後まで残ったのはCクラスの伊吹が大将で、ルリが馬の1人をしていた騎馬とDクラスの堀北が大将を務める騎馬の2つだけだったが、伊吹の方が多くの騎馬を倒しており、実質的な勝者は伊吹に渡された。

 

「っしゃあ! 勝った」

 

「ククク、良かったな伊吹。てめぇのおかげで一歩俺の手柄に繋がったぜ」

 

「つまんないこと言ってないで、労いのジュース買ってきなさいよ」

 

「ハッ、俺が負けたらな」

 

 伊吹という勝者を一応讃えながら龍園は一年男子の対戦の場へと足を進める。その後ろ方を見た伊吹は妨害をすることなく真面目に体育祭に取り組む龍園に少しだけ本当に少しだけ好感を覚えることになった。

 

「おら! やってやろうぜ!!」

 

 騎馬戦という力が物をいう競技になって一番の気合いが入っている須藤に合わせるように正臣や他のDクラスとAクラスの面々は合意の声をあげる。前までの須藤ならこんなにも人を惹きつけることは出来なかっただろう。だが、須藤が何かをしでかそうとする前に正臣が矯正することで、段々と須藤の粗暴が落ち着いていった結果だった。

 

「よーし、それぞれ事前に決めたやつで行くぞー! 気合い入れてけ!」

 

 正臣が号令をすると同時に8つあった騎馬が二つずつに別れ、四つの塊になった。そのままその4つの塊が別々に攻めていこうとするも龍園が的確に指示を出していくことで、CクラスとBクラスの騎馬は固まっていき、巨大な壁となって混雑戦に持ち込んでいく。

 

「! 紀田君! このままだと」

 

「ここまで来たら引けねぇって!」

 

 もつれ込んだことで重要になるのは各ポジション取りと各々の力。その分では早々に守りに入った龍園たちの方が圧倒的に有利だった。それを正臣たちも分かっているが、今更引いても陣形を上手く組む事は出来ないと判断し、このまま突撃を決め込む。

 その結果は鉢巻によるポイントは半々といったところだが、最後まで残っていたのは龍園の騎馬だけであり、男女ともに騎馬戦を制したのはCクラスだった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 全学年が注目をしていると思われる2年の騎馬戦。というよりはCクラスには静雄がいることで、どうなるかというのに興味を持っている人たちがほとんどの勝負。

 

「南雲くん。本当に僕が騎手でいいんだね?」

 

「ああ。心配するな岸谷。お前が体力が無いのは知っている。もしもの為の保険だ」

 

 既に相手に静雄がいる時点で勝ちを捨てているのか、明らかに運動が得意ではないメンバーで固めている南雲だったが、その南雲はBクラスの大将騎に臨也がいるのを見つける。これまで何の競技に参加出来ていなかった臨也がいたことで、明らかに何かが起こることを察した南雲は大きくため息をつく。

 

「まぁあいつにしてはやった方だな。これから何が起こっても知らないぜ」

 

 始まりのピストルが撃たれると、事前に指示があったのか、早々に突っ込んでいく静雄。それに臨也の騎馬が追従していくが、静雄は競技に集中していて、臨也に気づいていなかった。そこから段々と近づいていく臨也に直前で気づいた静雄だったが、既に時は遅く、臨也の手の中にはライターが握られていた。

 

「ノミ虫野郎!! 殺す!」

 

「やぁ、しずちゃん。ご活躍のようで何よりだね。悪いけど、そのままお天道様の下で消し炭になってよ」

 

 火をつけた臨也の騎馬は逃げるようにフィールドの端っこで待機すると、静雄の体が燃え上がる。ただライターを当てただけでは絶対にここまでの炎が出ないだろうというところまで燃えていき、静雄の騎馬だった人たちはそれに怖がって、バラバラに逃げてしまう。誰もがこのまま静雄は燃え死ぬのだと思ったが、その燃えた体のまま静雄は臨也に向かって一歩一歩進んで行く。

 

「臨ーー也ーー!!」

 

「やっぱり化け物だよね。ここで殺しちゃったかったけど、無理そうか」

 

 はなから臨也だって静雄を殺し切れるとは思ってはいないが、まさか歩けるとも思っていなかった。だが、このままいけば、いくら静雄と言えども、何かしらの傷が残るだろうと思い、観察する。

 

「兄さん大丈夫?」

 

「予想通り動いてくれてありがたいぜ」

 

 そんな静雄に観客席から出てきて、布を被せる幽と龍園。しかし、それを受けても火は治るところを知らなかったが、何故か石崎が持っていた消火器で消火していく。

 

「……ありがとな幽と……龍園。死ぬところだったぜ」

 

「ククク……化け物だな」

 

 火の中から生存したにも関わらず、静雄の身体で変わっているところと言えば、体操服がいくらか燃えているぐらいで他には目立った違いは無かった。

 

「臨也!!」

 

「あーせっかく静ちゃんの死にかけた様子を見れると思ったんだけど。まっ、いずれ見られるだろうし、面白そうな人間たちも発見出来たから、今回はこんなところかな」

 

 静雄から狙われている臨也はとっとと逃げていき、それを追いかけてグラウンドから居なくなる静雄。一瞬にして当事者たちがいなくなったグラウンドは少しの間時間が止まっているような静けさが訪れる。

 

『えーただいまの騎馬戦は引き分けとして、5分後にまた2年生女子の騎馬戦から再開したいと思います』

 

 教師陣からと生徒会の落ち着いた対応により、その場は一度仕切り直されたが、そこから行われた騎馬戦は先ほどのような激しさは無いものだった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 段々と体育祭そのもののテンションを取り戻しながら、体育祭のプログラムは進んでいく。しかし、あっという間に体育祭の種目はもう残り少なくなっており、残るは最終種目の3学年合同1200メートルリレーだけだった。

 

「本当にアンカーじゃなくて良かったのか? 堀北兄と戦いたいんじゃないのか?」

 

「別に構わないわ。兄さんに勝てるとは思っていないから。それに私はそこまで兄さんに執着していないもの」

 

 そう言ってDクラスのテントから待機場所へと向かう堀北の後ろ姿に綾小路は少しの感心を覚えていく。綾小路は堀北が明らかに友だちの距離感でいるルリとの場面を見ており、その影響で前よりも自立した堀北になっているのだと理解していた。だが、他クラスの友だちからの影響でそうなった堀北に一抹の不安を持っていた。

 

「……いつかは対処しないとな」

 

 綾小路の不安も他所に合同リレーはどんどん進んでいく。Dクラスは平田や須藤を初めとして堀北や美香がメンバーとして登録されており、Cクラスは龍園にルリ、Bクラスは一之瀬に柴田、千晶。Aクラスでは鬼頭に杏里まで出場していた。

 

「今度こそ負けないわ」

 

「うん、負けないから」

 

 兄という圧倒的に上にいる人ではなく、隣にいるライバルであり友だちのことを見ている堀北はわざとルリと同時に走る。その2人の勝負は先ほどにあった勝負よりも熾烈を極めるもので、今日一番の注目を浴びた勝負であることは間違いなかった。

 

『それでは、これより本年度体育祭における勝敗の結果を伝える』

 

 終わってみればあっという間だった体育祭。そこで前に立った教師から今回の勝敗について告げられ、電光掲示板に勝利白組と点数が点灯する。ほとんどが静雄のおかげだとしても白組に属するクラスは火がついたように声を上げる。

 

『続いて、クラス別総合得点を発表する』

 

 1位 1年Bクラス

 2位 1年Dクラス

 3位 1年Cクラス

 4位 1年Aクラス

 

 その結果に一年Dクラス、Bクラスともに声をあげ、特にBクラスは組としてもクラスとしても勝利を収めたことでその声は何倍も大きかった。しかし、得点はほとんど変わらず、全クラスが僅差であり、何処かの順位が変われば、この順位も変わったといえるものだった。このことにより、クラスポイントはAクラス924ポイント、Bクラス853ポイント、Cクラス592ポイント、Dクラス112ポイントという結果になった。ほとんどのクラスが後退する中、Bクラスは持ち前の運動神経により、Aクラスの尻尾を捉えてみせた。

 

 そして、学年別優秀賞は一年が須藤、二年では静雄が取ってみせ、波乱が起きた体育祭は閉幕した。




 次回は体育祭編の折原関連と龍園関連の補足と次回への繋ぎです

カップル同士などの描写の深さについて

  • 仄めかしもやめてほしい
  • 仄めかす程度ならば問題なし
  • 軽い描写なら良し
  • 多少深くてもok
  • ギリギリまで攻めてよし
  • どれでも気にしない
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