体育祭で各々が裏でしていた様々なことです
体育祭から数日後。この体育祭で龍園が指揮したとは思えないほどに真剣に挑んだCクラス。一年の他クラスはそんなこともあるものかと思っている人がほとんどだったが、実際はそんなこともなく、龍園は龍園なりに色々と動いていた。
「どうだ? 被害は最小限になっただろ? てめぇとの取引通りだ」
「ああ、お前のお陰だな龍園」
龍園とアルベルト、幽が居るのは場違いという言葉がもっとも似合うであろう生徒会室。そこには現会長である堀北やその補佐である橘はおらず、龍園と相対しているのは南雲と2年Bクラスの桐山の2人だけだった。
「約束のポイントを渡してくれよ。羽ぶりが良いのを期待してるぜ?」
「色をつけるつもりはない。お前から持ちかけてきた取引だからな」
南雲から龍園に送られたポイントは75万ポイント。大したポイントが得られない体育祭では破格とも言えるポイントだったが、龍園はその金額を見ると、少なそうに舌打ちをした。
「おいおい、次期生徒会長っていうのは案外ケチだな。俺らがいたからこそ、あの情報屋が動き回らなかったって分かっているのか?」
「だが、お前がいても折原は行動をした。そして、その結果平和島が燃えた。それがあったにしては渡してるほうだ。しかし、お前もやることがえげつないな龍園。平和島と手を組むことで折原の敵だということをこっちに示すなんてな」
龍園が南雲と接触したのは体育祭の説明で来た体育館で静雄と手を組もうと言った日の内だった。そこで龍園は南雲に体育祭で臨也の企むを阻止する代わりにポイントをよこせと要求してきた。南雲はその時、冗談半分で静雄の許可を取ってきたら考えてやると言ったのだが、後日本当に龍園は静雄と手を組んできたことで、南雲はこの取引を了承していた。
「ククク、大したポイントも稼げねぇ体育祭で真面目にやる必要なんてねぇからな」
「……平和島の弟はそれで良かったのか? 兄貴が利用されているものだぞ?」
「……結果的に兄さんが無事なことには変わりないから、構わないです。龍園から聞いた時も了承しましたし」
それまで黙っていた桐山は心配するような言葉を幽にかけるが、幽はそれも織り込み済みで龍園に協力していた。いや、体育祭で起こりうる何かで静雄がやられるような事態にならないと分かっていたからかもしれないが。
「だが、取引はこれまでだ。お前らの頑張りは今回は楽しませてもらったからな。それで、次からは折原か平和島のどちらの味方をするんだ?」
「ハッ、あの情報屋は利用するだけ利用させてもらうだけだ。幽もいるからな、着くなら人間最強についてやるよ」
深かった笑みをより深くして龍園は笑う。今回の体育祭。一年での表の勝者はAクラスの尻尾を掴んだことで、満場一致でBクラスだろう。だが、裏の勝者は静雄とパイプが出来、ポイントも入手したというところから、間違いなくCクラスだろう。
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ビンとビンが反響する音がいくつも広がる。それは無事体育祭を制し、もうAクラスの背中が見えたBクラスの祝賀会の音だった。各々が好きなだけジュースやご飯を食べたり、カラオケをする。まさに勝利の宴と言うに相応しい空間だった。
「みんな! 体育祭は本当にお疲れ様! ここまでこられたのもみんなのおかげだよ。私だけじゃここまでこれなかった。私は本当にBクラスに配属されて嬉しい!」
一之瀬の明るく皆の心に響く言葉にBクラス全員からの絶え間ない拍手が送られる。それに照れながらも、一之瀬は輪の中に帰っていき、体育祭の苦労話を分かち合っていく。
「隆二くん。今回も活躍してたね。どう、彼女さんに自慢出来た?」
「ああ。美香も随分喜んでいた。明日も出かけようと約束している」
「ふーん、仲睦ましいね」
神崎の横に座ったのは今回の体育祭での立役者の1人である千晶。千晶と神崎は特別仲が良いというわけではなく、こんな風に一対一で話すことも初めてに近かった。
「今回の立役者の1人は五十嵐だ。俺なんかと話さず、もっと他の奴と話してきた方が良い」
「うーん、たまには隆二くんと話すのも悪くないかなってさ」
千晶だって何の魂胆もなく神崎と話している訳ではない。干支試験での神崎の行動が気がかりだったからだ。有り体に言うならば、千晶は神崎を疑っていた。今が一番Bクラスに大事な時期だからこそ裏切りを疑うのは必要なこと。しかし、それを言えば、Bクラスの協調を壊してしまうからこそ、千晶は誰にも相談せずに行動していた。
「千晶ちゃんも神崎くんもこっちにおいでよ!」
そんな今回の行動も同調圧力というものに押しつぶされたものの、千晶は諦めずにまたの機会を狙うのだった。
「帝人!! 俺の活躍でモテない訳ないよなーー」
「うん! 柴田くんはもう学校の中で一番活躍してたよ。でも、それが直接モテるのとは繋がらないよね」
「ストレートに言うじゃん。クソ! 俺にだってモテ期来てくれ!!」
男子だけで騒いでいるのは柴田や帝人などを中心としたメンバー。主に柴田のモテないと愚痴を言ってるだけだったが、この場の雰囲気も合わさって、全員が良い笑顔をしていた。
「帝人はどうなんだよ。俺に黙って付き合うんじゃないぞ!」
「付き合わないよー。親しい女の子も居ないんだよ?」
「櫛田ちゃんとかどうよ? 玉砕覚悟で行ってみるのもありだぞ」
「櫛田さんは無いかな。うん、無いかな」
「え?」
柴田の予想では帝人は照れながらも無理だよとか言ってくると予想していた。しかし、予想に反して帝人は一考することもなく、櫛田とは付き合うことがないと断言した。それを受けた周囲の奇妙な空気に気づくことなく、帝人はただただ純粋に楽しんでいた。
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その件の櫛田は同時刻、ある人物に声をかけられていた。その人物はAクラスの密偵橋本だった。橋本が人に声をかけることは珍しいことではない。いや、むしろ日課とも言ってよい。しかし、一言言うならば、橋本に声をかけられるということは厄介毎に巻き込まれていることを示すことでもあった。
「どうしたの橋本くん?」
「いや、別に大した用でも無いんだ。ただ櫛田が困っているっていう情報があったからな。それの確認に来ただけだ」
夏休みの終わり、橋本の元には網倉に送られてきたメッセージと同じメッセージが届いていた。橋本の他に届けけれたのはBクラスの網倉、Cクラスの金田、Dクラスの松下の計4人で、4人ともが大胆に行動を起こす人物ではなく、慎重に動きつつも不用意に言い触らすこともない4人で、人選という面では完璧と言えた。
「何の話かよく分からないよ。私そんなに困ってないよ?」
「……そうか、なるほど。よほど、そいつが怖いってことか」
橋本とて何の算段もなく、今、声をかけた訳ではない。本当に櫛田が誰かに脅されているのかをここ何週間も確かめていたのだ。その結果、櫛田は一日一回絶対に周りの人間と離れ、電話をしている様子を何度も橋本は見ていた。
「本当に何のこと? 私、別に誰にも何もされてないよ」
「聞いたんだ。櫛田が誰かに脅されているってな。話してくれないか?
櫛田の力になってやれるかもしれないからな」
橋本は初めから櫛田の力になる気はなかった。橋本にとって大事なのは櫛田の裏にいるかもしれない人物。それが1年の誰かなら、いち早く警戒して、Aクラスに勧誘することが出来る。もし、別の学年の人物なら不安定ながらも縁が出来る。橋本にとっては裏の人物を知ることはプラスになることしかなかった。
「……わ、私……ううん、駄目。橋本くんに迷惑がかかるから、何も話せないよ。じゃあね、私、もう行くから。これ以上、この話題には触れないでくれると嬉しいな」
いつも以上に感情のこもっていた櫛田は橋本に何か言うことをやめ、足早に立ち去って行った。そんな、櫛田にしては杜撰な終わらせ方に橋本の目は一段とぎらつく。
「あれは……黒だな」
櫛田の状況が噂通りの真実だと結論づけた橋本はこれからも櫛田の動向を気にしていくことを決める。それは橋本が生き残る為、Aクラスにい続けるために必要なことだから。
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周囲の心配するほどのことが起こらず無事に体育祭が終わったことで、みんながみんなが体育祭のことよりもこれからのことを考えている中、当の本人である臨也は自身の部屋に協力者であるシンパを呼び出していた。
「体育祭の時は助かったよ。君のおかげで静ちゃんを燃やすことが出来たからね。それで静ちゃんを前にしてどんなことを思った? いや、一般論でいうとビビってしまうだけどね。君はそうじゃなかったと思うんだ。……沖谷くん」
「……そうですね。僕はビビってはいないです。言うならば、憧れたというのが正しいと思います。あんな風に強く、強い人間になりたいって」
臨也が重宝している一年生のシンパの1人である沖谷京介。彼は臨也の問いかけに少し興奮したように静雄への思いを語る。その感情を面白さ半分、不愉快さ半分で臨也は笑っていた。
「やっぱり君は面白いよ。うん、すごく良い。静ちゃんのような人外に憧れるなんてのは感心しないけど、そんな風に自分の欲望に忠実なのは良いことだよ。普通の人は欲やエゴを抑え込めている。それを解き放つのが俺の仕事だからね」
臨也の言うことは合っているようで間違っている。臨也が相手の欲やエゴを解き放ったとしても、それは臨也の人間観察の副産物に過ぎない。人が人と行動するために必要なピースの一つに過ぎないからだ。
「それで、臨也さんはあれで良かったんですか? 周りの人たちはもっと臨也さんがヤバいことをするって思っていたみたいですけど」
「周りが俺をなんだと思っているのか分からないけど、そもそも静ちゃんをあんなんで殺せるとは思ってないからね。殺したとしても俺だと分かるし、あれが限界だよ。……それに目的は他にもあったからね」
一般論からすれば人にアルコールをぶっかけておいて、故意に火をつけたら、死んでもおかしくないのだが、臨也の理論は臨也と静雄だったからこそ、成り立っていた。そして、言われた仕事をした沖谷だったが、どのような目的でそれをしたのかは知らなかったので、臨也の目的という言葉に疑問に持つ。
「臨也さんは何が目的だったんですか?」
「例年さ、12月の中旬はイベント事が少ないんだ。そこで一つみんなで何か楽しいことをしようと思ってるんだ。もしかしたら、興奮のあまり退学してしまうほどの何かを。失望したかい沖谷くん?」
「……いえ、僕は初めての中間テストの対策会の帰り道に臨也さんに声をかけてもらってから、臨也さんのような強い人になりたいと思っています。だから、何処まで着いていきますよ」
「僕は君のような助手がいて幸せものだね。狙いは既に決めてるんだ。君が探ってくれた」
「櫛田桔梗にすることにするよ」
2人の会話はまだまだ続いていく。何処までも人を嘲笑うような臨也の策はまだ本番を迎えていない。いや、始まってすらいなかったのかもしれない。この2人のことも企みも完璧に気づいている人は誰1人居なかった。
この体育祭編で一年の各クラスへ2名ずつデュラララのキャラを配置出来たこともあって、そろそろ物語は一年生編の後半へと突入します。
五十嵐千晶 一年 Bクラス
学籍番号 S01T004742
【学力】B
【知性】C
【判断能力】C
【身体能力】B
【協調性】B
【面接官からのコメント】
受け答えもしっかりしている上に明るい声音を努めており、非常に優秀な生徒であることが分かった。勉学や運動能力も申し分なく、Aクラスに相応しい人材であろう。しかし、家出紛いの行動がたびたび見られたことから、様子を見る意味も込めてBクラスが相応だろう。
【担任からのコメント】
直ぐにクラスに馴染めて、真ん中過ぎず、外側過ぎない良いポジションをキープしています。事前に聞いていた通りの優秀な生徒です。
カップル同士などの描写の深さについて
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仄めかしもやめてほしい
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仄めかす程度ならば問題なし
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軽い描写なら良し
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多少深くてもok
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ギリギリまで攻めてよし
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どれでも気にしない