ようこそ非日常の溢れる教室へ   作:地支 辰巳

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 今更ですがこの章は登場するキャラに偏りがあります


どんな勝負にも勝てるカードなんて存在しない

 

 ペーパーシャッフルのペアを決定する重要な小テストを終えた次の日のBクラス。星乃宮先生から小テストの返却とペアの発表を受けた各々の顔は気難しいようなそんな顔ではなく、予想通りの結果になっただろうといった良い顔ばかりだった。

 

「みんなお疲れ様! 事前に予想した通りのペアになって第一段階は完了だね! それで、これからの予定を考えたいんだけど、時間は大丈夫かな?」

 

 一之瀬の労う言葉と会議をすることに対して全員が了承の声をあげる。ペアを決まる法則は一番点数の良い人間と悪い人間から組み合わせていくことだと早々に絞ったBクラスはDクラスにもそのことを確認するという万全の体制でこの小テストに挑んでいた。その結果は予想通りでの法則でペアになっていた。

 

「ここから決めたいのは誰が相手に出すテストを考えるかなんだ。本当ならみんなで決めていきたいんだけど、それじゃあ、自分たちのテスト勉強も足りないと思う。だから、その教科で一番の人に任せたいんだ」

 

 既に何度もテストを乗り超え、その度に結果を張り出されていたBクラスの面々は誰がどの教科で一番出来るかは理解していた。だからこそ、その人物たちに視線が集まっていく。

 

「みんなも予想していると思うけど、その人たちにテスト作成をお願いしたいんだ。私たちが勝つために。もちろん、負けてしまった時のことを心配してると思うけど、心配しないでほしい。その時に責任を取るのは私だけだから」

 

「一之瀬。お前が責任を取ることなんてない。お前はBクラスの中でかかせない存在だ」

 

「ううん、これは私の覚悟だよ神崎くん。絶対に負けないという覚悟の為だから」

 

 一之瀬だけに責任を取らせまいと神崎を始めとした面々が声を上げていくも、それを寄せ付けないように一之瀬は覚悟を持った目を教室中に向け、覇気の籠った言葉を吐く。

 

「みんな、一之瀬さんを信じようよ。私たちがAクラスに上がるために」

 

 一之瀬の覚悟をアシストするように千晶が立ち上がり声を上げる。その一之瀬を信じるという一見重いように見えて、軽い言葉にBクラスのほとんどは信じると何人も口にしていく。ここにBクラスはある意味で一体といった。

 

「狙うクラスなんだけど……やっぱりAクラスにしようと思う。ここでAクラスに勝てなきゃ、私たちは本当の意味でAクラスになったとは言えないと思うから」

 

 一之瀬がしっかりと考えた結果ならと、賛同していく多くの人たち。しかし、様々な可能性について考えていた一部の生徒は真正面に挑んで勝てるほどAクラスの実力は甘く無いのだという認識を捨てきれていなかった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 ところ変わってDクラス。ここでもBクラスと同じように望み通りのペアになり、想定通りに事が進んでいた。しかし、Dクラスの学力は四クラスの中で一番低く、挑むべきクラスは正臣が一之瀬と会談する前からCクラスだと決まっていた。しかし、学力がAクラスやBクラスに劣るCクラスに挑むとしても、Dクラスは相応の勉強能力を上げる必要があり、テストを作るもの学力上位数名で分担することになっていた。

 

「ここからは真面目に話すけど、俺たちのクラスは他クラスからポイントでは大きく劣ってる。ここいらでそれをぶち壊そう」

 

「やってやるぜ!!」

 

 普通ならばこんなにも離されているクラスポイント状況ではDクラスのテンションと士気は最悪であり、試験にも真剣に取り組めもしなかっただろう。しかし、このクラスにはリーダーである正臣がいる。正臣はその類稀なる明るさと大丈夫だと思わせてくれるような安心感があった。

 

「でも、今日のところはとりあえず自主勉強に励もうぜ」

 

 とりあえずの方針は決まったところで今日の会議は終了となった。各々が帰って行き、櫛田を付けるように帰って行く堀北や綾小路がいる中、正臣は教室に残り、ゆっくりとした息を吐いた。

 

「お疲れ様、紀田くん。今日の演説はバッチリだったよ」

 

「褒めてくれるなんて、俺にとっての天使は千秋だけだぜ全くよ。千秋がもっと応援してくれるなら、もっと頑張れるんだけどなー?」

 

「はいはい、馬鹿なこと言ってないで真剣な話どうするの? 櫛田のこともあるし、はっきり言って、私たちが真正面から挑んだとしてもCクラスには勝てないと思うけど」

 

 松下が話した櫛田の情報のことと、テストに関してのもっともとした指摘に正臣は頭を抱えるどころか、待っていましたというようにニヤッと笑う。

 

「大丈夫、大丈夫。櫛田ちゃんのことはとりあえずは後回しにしてるけど、テストに関しては一応の手は打ってるんだ。成功するかは分かんねぇけどな」

 

「……なら、安心。紀田くんが打つ手で間違うことなんて無かったから」

 

「……そんなことない。俺の行動で……俺がした事で……将来を潰されたやつもいるんだから」

 

 後悔を孕んだ瞳で遠くを見つめる正臣。彼の誰にも話せていないであろうその後悔まみれの過去に松下は踏み込むことも声をかけてることも出来なかった。それをしてしまっては自分の知らない正臣の闇に触れることになる。それがこのDクラスでの正臣の相棒という地位を得た松下にとっては今の自分の居場所を失ってしまうようで怖かった。

 

 

★ ★ ★

 

 

「何で櫛田が最優先なんだ? 沖谷や張間の方が危なくないか?」

 

「張間さんは前回でも動かなかったし、優先度は低いし、沖谷くんは折原先輩と繋がっていることはほとんど分かっていても、目的が分からない以上は対策の使用が無い。それに比べて櫛田さんは裏の顔を知っている私たちを退学させたいと思っていても不思議ではないわ。それを確かめるだけでも重要よ」

 

 あの天使とも評される櫛田の裏の顔。他者に対する鬱憤を裏で吐き、心の中で相手のことを罵りながら、笑顔を貼り付けながら人気を我が者にする櫛田。その本性を知っている生徒は少なく、同中である櫛田と偶然その場面を目撃した綾小路しか櫛田に知られている人物は居ない。そんな中で櫛田が二人に対して何かを企ていたとしても不思議ではなかった。

 

「早計すぎるじゃないか? 櫛田だって俺たちのことを気にしていないなしれないぞ」

 

「本当にそうかしら? 本当に彼女が何も気にしていないなら、4月の段階で何度も私に構ったりしなかったし、貴方に対してあのような方法であんなことはしないわ」

 

 櫛田が綾小路に場面を見た時にしたことは胸を触らせて指紋を残した上で襲われたと証言すると脅すことだった。しかし、綾小路はその事を堀北たちにそのまま伝えてはいない。名誉の為に胸の部分はカットして話していた。

 

「櫛田さん。少し良いかしら?」

 

「どうしたの堀北さん。声をかけてくれるなんて珍しいね」

 

「そうね。用が無ければ声はかけないわ。今日は貴方に聞きたいことがあってきたの」

 

 まだ本題に入っていないにも関わらず、ピリピリとした空気感が漂ってくるこの場。その味わったことのない空気感に綾小路は一瞬の感動を覚えつつ、二人の動向を見守る。

 

「何かな? 答えられることなら何でも答えるよ」

 

「そう。なら、端的に言うわ。貴方はあなたの過去を知っている私と綾小路くんを退学させたいと思っているの? 正直に答えてちょうだい」

 

 その堀北の端的とした質問に櫛田はわずかに動揺が見せたが、直ぐにいつも通りの顔に戻し、答えを30秒ほど考え込んだ末に口に出した。

 

「わ、私はもう何も思ってないんだ。でも、私の価値はそれしかないから、漏れる可能性は潰せって言われてるの」

 

 予想だにしていなかった櫛田の言葉。堀北や綾小路の予想では誰もいないこの場では櫛田は本性を多少は出してくるだろうと思っていた。しかし、今、櫛田はまるで泣きそうな顔で堀北と綾小路に何を訴えかけようとしてきている。堀北はこれが嘘だとは思えなかった。

 

「誰が貴方にそれを言っているの?」

 

「言えない。それは言えないよ。言ったら私も二人も退学させられるかもしれない。だから、絶対に言えない」

 

 櫛田のこの迫真の訴えを無視することが出来る人がいるだろうか。そんな人物が居れば、その人物はある意味で俗世とは違う考えを持つ異質な存在だろう。そして、綾小路はそうだった。櫛田のこの態度を疑い、櫛田の動向を伺っていた。

 

「櫛田。一つだけ確認させてくれ。櫛田はこの試験でそいつの指示で動くつもりはあるのか?」

 

「う、ううん。今のところはそんなことは言われてないよ」

 

「そうか。なら、その人物のことを出来る限り教えてくれないか? いつ知り合ったのか、男か女なのか、どのような連絡手段を取っているのか」

 

 矢継ぎ早に質問を飛ばしていく綾小路に櫛田は何と答えようか迷い、戸惑い直ぐには答えることが出来なかった。しかし、その態度こそが綾小路の見極めようとしている箇所。櫛田がその人物に本当に怯えているのかを判断する為に。

 

「連絡手段は電話だったり、掲示板の個人メッセージだったりだよ。それ以上は私も知らないの。ただ、私の過去を知っているってことで脅してきただけなの」

 

「そうか、分かった。なら、そいつに今日のことを伝えないでくれ。俺たちも狙われたくないからな」

 

「……そうね。綾小路くんの言う通りだわ。私たちもその人物のことを探ってみるわ。だから、その人には私たちのことは言わないでちょうだい」

 

「……うん、分かった。でも、二人も無理しちゃいけないよ。本当に危険だから」

 

 くれぐれも危ない行動をしないように堀北と綾小路に伝えた櫛田は足早に去って行く。そして、その櫛田が去って行ったことを確認し、周りに人気がないことを確認した堀北が口を開く。

 

「綾小路はどう思うの? 私は彼女が嘘をついているとは思えないのだけれども」

 

「今の時点では断定は出来ない。だが、櫛田はその人物に本当の意味で怯えは抱いていなかった。だとすれば、櫛田と繋がっている人物が居る人物は櫛田と対等に近い相手だろうな」

 

 綾小路の的確で説得力のある推理に堀北は何度も頷き、綾小路の推理を支持するように考え方を改める。

 

「……そうね。残念ながら、櫛田さんは裏切る可能性の高い人物ということに違いはなかったわね。でも、今回行動を起こすつもりは彼女に無いように感じたのだけど、貴方はどう思うの?」

 

「俺もそれには同意見だ。櫛田は今回で行動起こすにはあまりにもこちらの動きを探ってこなかったからな。試験とは関係ないところで動いている可能性は捨て切れないが」

 

「だとすれば、一旦は放置ね。張間さんや沖谷くんを当たりましょう。試験まで時間がないわ。テストも作らなきゃいけないから」

 

 堀北と綾小路は結論を出し終わり、歩き出す。綾小路と堀北はこのDクラスの早急な統一を目指し、一年の他の相手や2年の危険人物に対抗できるクラスにする。それが堀北学の意思を受け継いでいくに相応しいことだと信じて。




 現段階での櫛田に関することを誰が把握しているかのまとめです

 園原と神室 櫛田が誰かしらの指示を受けていることは知ってる

 三好と山村 櫛田が誰かしらから指示を受けているとは知ってる

 橋本 櫛田が誰かしらから脅されて指示されていると思ってる

 網倉 櫛田が誰かしらから脅されて指示されていると思ってる

 竜ヶ峰 櫛田が誰かに脅されていると嘘をついていると知っている

 金田 櫛田が誰かしらから脅されて指示されていると思ってる

 紀田と松下 櫛田が誰かしらから脅されて指示されていると思ってる

 堀北と綾小路 櫛田が誰かしらからと繋がっていることを知っている

 現時点でここまで判明してる範囲です。ここから多少は増えていきます。

カップル同士などの描写の深さについて

  • 仄めかしもやめてほしい
  • 仄めかす程度ならば問題なし
  • 軽い描写なら良し
  • 多少深くてもok
  • ギリギリまで攻めてよし
  • どれでも気にしない
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