ようこそ非日常の溢れる教室へ   作:地支 辰巳

4 / 46
紀田君のコメディ感とシリアス感のバランスが難しい


非日常と競争の始まり
過去はいつだって俺を見ている


5月に入り、高度育成高校の生徒にとっては、楽しみであるポイントの支給がやって来た。

だがしかし、一年Dクラスの生徒の正臣は疑問に思っていた。この間いきなり平田と軽井沢が付き合ったことでは無く、なぜポイントが支給されないのだろうかということに。今の正臣のポイント残高は1万5000ポイントで、昨日から全く変わっていない。

 

それが虫の知らせのように思えたのか、正臣は直ぐに携帯で松下にメッセージを送り、帝人に対して電話をかけた。焦る気持ちが大きくなっていっている正臣の気持ちに応えるように、電話は直ぐにかかった。

 

『もしもし紀田君?こんな朝早くからどうしたの?』

 

『とりあえず、今日何ポイント支給されたか見てくれないか?』

 

『えっーと、ちょっと待ってね』

 

『昨日が5万5000ポイントで、今が12万ポイントかな。だから6万5000増えてるね。……紀田君は何ポイント増えたの?』

 

正臣は帝人の返事を聞いて、静かに自身の過去を思い起こしていた。なんだかんだ楽しい生活をしていたと思ったら、いきなりその生活にそれ以上の不幸なことが起こった時のことを。

 

『紀田君聞いてる?』

 

『あ、ああ。俺のポイントは1万5000で昨日から増えてないから、確認するために電話したんだ。帝人これって』

 

『うん……学校側のミスってことは無いだろうし、無料商品と無料メニューや紀田君の言ってたDクラスの様子を総合したら……クラス間で差をつけられてる可能性がありそうだね』

 

帝人の考えは当たっていそうだが、その声は段々と喜色を伴うような声になっていき、正臣からは帝人が嬉しそうにしているように感じた。

 

『帝人?どうしたんだ?』

 

『どうしたって、僕の考え間違っていたかな?』

 

自分の声が嬉しそうな声になっていること、そして自身の顔の広角が上がっていることに帝人自身は気づいていなかった。

 

『いや、なんでもない。俺は早いけど、教室に行って他の奴にも聞いて来るわ』

 

『うん。じゃあ僕もクラスの人に色々聞いてみるよ』

 

帝人との電話を切って、松下からポイントが増えていなかったというメッセージを受け取ると、朝の用意をとっとと終わらせて部屋から出た。

 

 

 

正臣が教室に着くと、早く来たこともあってかそこまでの人数はいなかった。これからどんなことが起こるのか、そしてどうすればいいのかということを柄にも無く考えながら、正臣は普段あまり喋ることも無い奴にもポイントが何ポイント増えたのかを聞いていた。結果は等しく0ではあったが。

 

正臣があらかたクラスの人間にポイントが何ポイント増えたのかを聞き終わり、松下に対して幼馴染との考えを話している時に、チャイムが鳴り、ポスターの筒を持って険しい顔をした茶柱先生が入って来た。

 

そこから正臣でも引くような冗談を池が言っていたが、茶柱は完全にスルーした。

 

「これより朝のホームルームを始める。が、その前に質問はあるか?気になることがあるなら今聞いておいた方がいいぞ?」

 

その周りくどく、試しているようにも、質問が出ることも分かっているように聞こえるその文章に、周りが挙手をする中、正臣は席を立った。

 

「どうした紀田?何か言いたいことがあるのか?」

 

「周りくどいことはやめて、なんで俺たちDクラスに0ポイント支給されたのかを教えてくれませんか茶柱先生?」

 

いつもは佐伯ちゃんなんてふざけて呼んでいる正臣だったが、今の正臣はいつものよりも数段声が低く、お調子者の雰囲気が漂う普段とまるで変わっていた。

そして周りの人間が正臣の発言内容に驚いている中、茶柱は笑みを浮かべた。

 

「ほぅ、いつもとは見違えるようだな紀田。お前の言いたいことも分かったから、一旦席にはつけ」

 

素直に座った正臣を見届けると、茶柱は時々煽るような言葉を織り交ぜながらも、学校のシステムについて説明を始めた。

クラスのポイントの減りは普段の授業態度や遅刻や欠席で減っていったということ。

 

持っていたポスターを貼ると、そこにはAクラス940ポイント、Bクラス650ポイント、Cクラス490ポイント、Dクラス0ポイントと書かれていた。これには正臣も何かを察したが、黙って最後まで話を聞くことにした。

 

ポスターの数字はクラスポイントと言って、1ポイントで100プライベートポイントに値していること。クラス分けにはAクラスから順番に優秀な人間が配属されていき、このDクラスは不良品が集まるクラスだということ。さらにクラスポイントは日々の支給額だけでは無く、クラスのランク分けにもなるという説明がされた。

 

また茶柱がポスターを貼ると、そこにはこの間行われた小テストの点数が書いてあり、赤点である32点未満である7人の生徒は中間・期末では退学だったことが茶柱から告げられた。正臣の点数は平均点60点前後のこのクラスで一番高い点数である高円寺や美香、他数名の90点に続いて、80点という高得点を記録していた。そしてこの学校の謳い文句である将来への道の約束はAクラスだけであるとも言われた。

 

「浮かれていた気分は払しょくされたようだな。お前らの置かれた状況の過酷さを理解できたのなら、この長ったるいHRにも意味はあったかもな。中間テストまでは後3週間、まぁじっくりと熟考し、退学を回避してくれ。お前らが赤点を取らずに乗り切れる方法はあると確信している。出来ることなら、実力者に相応しい振る舞いをもって挑んでくれ」

 

最後に茶柱は含みがあるとも捉えられるような言葉を残すと、教室を後にした。

 

その後の休み時間では、教室にいる誰もが不安な言葉をしながら、暗い表情をしていた。そんな中、正臣は混乱でギスギスしている教室の中、決意を固めると教卓に向かい、覚悟を決めたような目をして、教室の中に聞こえるように声を上げた。

 

「なぁ、みんな聞いてくれるか?これからのことを考えねぇか?」

 

「クラス分けの時点で納得いっていないんだ!」

 

幸村が声を荒げるが、その声に同意するかのように、クラスの何人かも頷いたり、同意の声を上げていた。

 

「言いたいことは分かる。だけどな、みんな不良品だと言われるような能力、生活、出来事があったんじゃないのか?俺は少なくとも……自覚は持っている」

 

一段と声が低くなり、いつもと違う真剣な様子とその後悔があるかのような悲しそうな表情、そして正臣の発言の内容に多少なりとも納得がいったのか、誰も反論することは無く、黙ってしまった。

 

「な、なぁ紀田なんかいつもとキャラ違くないか?」

 

沈黙に耐えられなくなったのか、池が全員が疑問に思っていたことを口に出す。

 

「ok、分かってる。つい色々考えちまってただけだから。今日くらいはこれからのために話をしなきゃいけねぇからな」

 

「まず、授業態度を良くしてマイナスを減らす。次に、ポイントを増やす行事があると思うから、それに備える。アンダースタン?」

 

この言葉に女子のほとんどと、男子の頭の良い人物達は賛成をしていたが、普段授業中に喋っていた男子などは難色を示したりしていた。

 

「わ、私は理解出来るし、賛成かな。紀田君の言ってることって、すっごく大事なことだと思うんだ。だからみんなで頑張ろう!」

 

櫛田が賛成の声を上げることで、授業中にしゃべってたりしていた男子からも賛成を得ることに成功をして、これで教室内のほとんどの人間からの了承を得られたことを意味していた。

 

「なんでそんなことしなくちゃならないんだよ。ポイントが増える行事が本当にあるかも分かんねぇのによ」

 

いまだに納得言っていないとばかりに、不良品だと言われたり、遠回しにバカだと言われてイライラしていた須藤が反論をしてきた。

 

「須藤。学校は公平を謳っているんだぜ?それなら、俺たちがこの三年間頑張っても意味ないって公平か?違うだろ?それに頑張ったご褒美として女の子と遊んだりしたいじゃん。そのために、ポイント欲くないか?」

 

「俺には関係ねぇ。お前らで勝手にやってろよ」

 

須藤は理解は出来ても、納得はしていないのか席を立ち、教室から出ようとする。

 

「逃げんのか須藤?逃げても結局一緒だしよ。自分だけ関係ないみたいな態度とらずによ、もっと現実見ないか?」

 

「うるせぇよ!チャラチャラ野郎が!」

 

正臣の煽りにも似た、須藤に向けているようで、自分に向けているようなその言葉に、ついに須藤の沸点を超えたのか、正臣に向かって殴りかかってきた。

それを見越していたように、正臣は一発、二発避けると、そのまま少ししゃがんで、須藤の腹に一発入れた。須藤は膝をつきながらも、正臣から目を離さなかった。

 

「自己紹介で言ったろ?喧嘩は強いって。まぁ、ついやっちまったけどよ。とりあえず、夏休みまででいいからこのクラスみんなで頑張っていかねぇか?」

 

笑顔で手を出してくる正臣に毒素を抜かれたのか、須藤は舌打ちをしながらも手をとった。

 

「チッ、分かったよ。喧嘩で負けちまったからな、夏休みまではやってやるからよ、バスケの時間だけは制限すんじゃねぇぞ」

 

不良特有の喧嘩で負けたら言うことを聞く的なことも作用しながらも、須藤は夏休みまでの協力を約束した。

 

「じゃあ、最後になんだけどよ。DクラスとBクラスで同盟を組もうと思うんだけど、どう思う?」

 

須藤との喧嘩を終えて、何事も無く教壇に戻ってきた正臣の提案は、全員さっきの正臣と須藤の喧嘩が衝撃過ぎて唖然としていて少しの時間を要してから、そのことについて考え始めた。

 

「僕は賛成かな。これから、クラス間でAクラスの座を取り合うのだとしたら、僕らの次の敵はCクラス。Bクラスと手を組むのは全然問題無いし、色々と情報共有も出来るからね」

 

他の生徒も平田の意見に対して、同調するかのように頷きが見られた。正臣は心の内では、帝人と争わなくてマジラッキーだぜなんてことを思っているが、そんなことをわざわざ顔に出してはいない。

 

「念のため、多数決とかとっておくかー。賛成の奴は手をあげてくれ。もし反対するのが女の子でも俺は無茶苦茶歓迎だから、どんどん俺んとこに意見ちょーだいね!」

 

正臣のテンションの違いに戸惑っていて、笑いなんて起きる訳も無いまま、多数決は取られたが、ほとんどの人間が手を挙げたことによってこの案は可決された。

 

この日Dクラスは一部を除いて一致団結が出来た。これはひとえに正臣が方針を積極的に決めていったことのおかげであるが、それによって、この日から正臣は単なるチャラ男のお調子者から、普段はお調子者だが真剣な時は頼りになるDクラスリーダーとして有名になっていくことになる。

 




軽井沢について補足ですが、紀田に初め声をかけたのはイメージする都会のイケイケ野郎だったから。平田と紀田で、最後までどっちにするか迷っていたが、彼女をいっぱい作りそうな紀田だと自身が大勢の中の一人となりそうなので、最終的に平田を選んだ。


「張間美香」 はりまみか

クラス 一年Dクラス

学生番号 S01T004812

部活動 無所属

評価
【学力】A−
【知性】B
【判断能力】B+
【身体能力】B
【協調性】B

面接官のコメント
当校に所属している生徒の中で比べても優秀な学力と身体能力を有しており、高いポテンシャルを持っている。それに加えて、友人を作ることも問題無く出来ている。性格も誰にでも公平であり、Aクラスは確定するほどの逸材だが、別途の資料に載っている事実が危険な範疇なものだと結論づけ、それの更生を望むものとしてDクラスへと配属することとする。

担任メモ
事前資料通りの優秀さで、別途資料のような事実があるように今のところ感じられない。経過観察を続けます。







カップル同士などの描写の深さについて

  • 仄めかしもやめてほしい
  • 仄めかす程度ならば問題なし
  • 軽い描写なら良し
  • 多少深くてもok
  • ギリギリまで攻めてよし
  • どれでも気にしない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。