ようこそ非日常の溢れる教室へ   作:地支 辰巳

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今年もよろしくお願いします。


出逢うべきして出会う者

DクラスとBクラスの同盟が結ばれてから、数日経った日。この数日間、正臣は勉強会を決めた日居なかった人や勉強会に来ていない人、一人一人に会いに行っていた。そして、今日でその来ていない人と話すのは最後になる。それが、堀北鈴音と綾小路清隆だ。正臣はこの二人と話した記憶は無く、堀北に関して言えば自己紹介も居なかったはずだと記憶していた。

 

「綾小路と堀北ちゃん。ちょっとー用があるんだけど」

 

正臣は事前に堀北が堅物という噂を聞いていたので、とりあえず、取り合ってはもらえるように真剣そうな声音で話しかけた。その甲斐があったかは定かでは無いが、堀北はため息をつきながらも口を開いた。

 

「ええ、私もちょうど貴方に話したいことがあったの」

 

「そう?なら、よかったわー。あ、そっちの要件からで良いよ」

 

「今のところ、勉強会に来ていない人は誰かしら?」

 

この数日間での勉強会に来ていない生徒には高得点を取っている生徒や、高円寺なんかも含まれていたが、堀北がこれから言うことを大体察した正臣はそれらの人を含まずに話を進めることにした。

 

「池と山内が一回来たけど、その後は来てないかなー?後は須藤は部活が忙しくて来てねぇんだよな。来いって言ってるのによ」

 

「そう。なら、私がその三人に対して勉強会を開くわ。誰も手が空いていないのなら、構わないわよね?」

 

堀北の様子は普通の人からすれば威圧的と感じる他なかったが、正臣はそんな風に感じることは無く、いつも通りの態度で接していった。

 

「マジ助かるわー。ちょうど、どうしようか悩んでたって感じだったんだよね。俺からあいつらには声かけとくね」

 

「ええ」

 

「んじゃあ、貸し一ってことで、これからディナーを一緒になんてどうかな?」

 

「綾小路くん。後は頼んだわよ」

 

正臣からのお誘いを華麗にスルーした堀北は、二人の会話を黙って眺めていた綾小路に正臣を頼むと、席を立って何処かに行ってしまった。人と話すのことが少ない綾小路は正臣にどんなことを話そうかということを悩む。

 

「綾小路も堀北ちゃんの勉強会に参加する感じ?後、Bクラスとの合同の勉強会がさ、土日にあるんだけど来れそう?」

 

「堀北の勉強会には参加することになりそうだが、合同の方には参加出来るかは分からない。堀北は参加するつもりは無いとは思う」

 

「そうかー。まぁ堀北ちゃんは頭良いから問題無いか。綾小路も気が向いたら来いよな」

 

この会話の後、正臣は言葉巧みに山内と池を煽てると堀北の勉強会に参加させることに成功した。須藤も正臣が少し頼むと渋々ながらも承諾した。そして、それらの交渉の途中で、櫛田が堀北の勉強会に参加したいと言ったのを許可することともなった。

 

 

★ ★ ★

 

 

あっという間に、中間テストまでもう1週間というまで来ていた。Dクラスでは途中、茶柱先生がテスト範囲が変更されたという通達を言わなかったことがあったが、Bクラスとの合同勉強会のお陰で大火傷にはならなかった。そのおかげもあって、Dクラスの中間テストの勉強は上手く行っていた。

 

そんな中、この日美香はいつもは付き合いで参加している勉強会に息抜きということで参加しなかった。Dクラスでいつも一緒にいる女子達は今日も勉強会に参加していたので、美香は一人ゆっくりとケヤキモールで日用品を眺めていた。

 

「これにしましょうかねー?いや、こっちでも」

 

新しいお皿を選んでいた美香だが、いきなり自身の肩をトントンと叩かれた。反射的に振り向いた美香の視線の先には三人の男子生徒がニヤついた笑みで立っていた。

 

「何か様ですか?」

 

美香には全く見覚え無かった生徒でナンパの匂いもすごくしたので、美香は出来るだけ嫌悪感を出しつつ問いかけを投げかけて追い払うことにした。

 

「いや、何。君Dクラスでしょ?ポイント困っているなら払ってあげようかなと思ってさ。ほら、僕ら2年Aクラスだからさ」

 

やっぱりナンパじゃないですか。そんな言葉が美香の心の中で、すっと出てきた。これを逃げることも断ることも美香からすれば、簡単なことだろう。しかし、それでは粘ってしつこく来るだろうことも美香は直感で分かっていた。

 

「いえ、別にポイント困っていませんから。後、予定がこれからあるので」

 

美香は無難なナンパの断り方をしながら、上を見て監視カメラを探していた。だが、狙ってやったのだろう。ちょうど美香の位置はカメラの死角になっている位置だった。

 

「いやー嘘でしょ。そんな断り方をする子は予定無いって友達が言ってたからな」

 

男達は美香が乗り気では無いことに薄々感づくと、一人が美香の腕を掴んで来た。そして、残り二人は美香の姿が周りの人間から見えないように壁となっていた。

 

「いや、ですから。離して下さい」

 

いくら頭が良くて、身体能力が高い美香でも、この状況には本能的に恐怖を感じたのだろう。弱々しい言葉が出てしまい、体も上手く動かせ無くなってしまっていた。

 

「大丈夫だって。ちょっと遊んでくれるだけでいいからさ。もちろん、ポイントもあげるからさ」

 

「おい。お前ら何してるんだ?」

 

男の一人が下衆い発言をした直後、男達三人に向けて少し荒っぽい声でまた別の男の声が放たれた。男達が反応してそちらを向いたので、美香も釣られてその声を放った男を見ると、それは美香も知っている人で、一度合同勉強会で一緒になったことのある1年Bクラスの神崎隆二だった。

 

「見て分からないか?この子と楽しく談笑してたんだよ。お前一年だろ?こっちは忙しいからとっとと帰れよ」

 

「それは出来ない。これから俺は彼女と用事があるんだ」

 

「はっ!嘘つくんじゃねぇぞ。それとも、三人相手にやるのか?」

 

男達の強気な態度にも関わらず、神崎は冷静な態度を崩そうとしない。そして、そんな神崎を見ていて美香はまるで自身を助けに王子様が迎えに来てくれたようなそんな夢心地な気分になっていた。

 

「そんな必要は無い。俺は先輩達を見てからビデオを撮っていた。これを伴って学校側に訴えれば先輩達はクラスに迷惑をかけることになります。それでも、良いんですか?」

 

男達は全員がイラッとしているような顔をすると、神崎に対して舌打ちをして去って行った。神崎は安心すると美香の方へと近づいて行った。

 

「大丈夫か張間。何もされていないか?」

 

自分をナンパから助けてくれて、一度しか逢っていないのに名前まで覚えてくれていた。そんな神崎に対して美香は完全に夢中になってしまっていた。美香自身もこれが自分の良くない兆候だと言うことは分かっていた。しかし、この気持ちを抑えることも出来なくて、神崎こそが自身の運命の人だと美香は思わずにいられなかった。

 

「か、神崎くん。いや、隆二くん。ありがとうございます」

 

「あ、ああ無事なら良かったんだ。気をつけて帰ってくれ」

 

美香のいきなりの下の名前呼びに少し引きつつも、神崎は美香に異常が無いことを確かめると、安全に帰ることを促して自身は去ろうとした。

 

「あ、待ってください。一緒に帰ってくれませんか?」

 

「ああ……分かった」

 

しかし、美香の悲しそうな声で引き留められると、人の良い神崎はついつい了承してしまった。

美香が色んな話をしていってそれに普段から余り話す方では無い神崎が相槌を打つという風に二人は寮まで帰って行った。そして、ロビーに着くと神崎はお別れを言おうとした。

 

「じゃあ、また」

 

「待ってください隆二くん。私、隆二くんのことが好きなんです。付き合ってくれませんか?」

 

神崎を逃がさないとばかりに美香はしっかりと口調ながらも、捲し立てるように神崎に対して告白をした。その告白に対して一瞬呆気に取られていた神崎だったが、自身が告白されていたと気づくと考えて込んでいるようだった。

 

「すまない。俺は張間のことをまだよく知らない。そんな状況で付き合っても君の望む様な関係になれるとは思わない。だから断らせてくれ」

 

誠実。今の神崎の態度はその一言で言い表わせられることが出来るだろう。そして、そんな美香のことを気遣いつつもしっかりとした態度で断ることが出来る。そんな神崎の様子に美香はより深く深く神崎への思いを強くする。

 

「……分かりました。だったら、私のことをもっと知ってもらって、また告白しますから」

 

「分かった」

 

神崎自身、告白されたことは何度かあった。しかし、一度断ると大体の女子はまた別の男子にいつの間にか告白することがほとんどだった。だから、今回も彼女の一時の気の迷いだろうと自身を卑下しつつも軽い気持ちで捉えていた。

しかし、この程度で諦められるのならば、張間美香という人間はDクラスになど配属されてはいないだろう。

 

 

★ ★ ★

 

 

中間テストが当たり前のように無事に終わったAクラスは、多くの人間が親しい人と打ち上げようなことをしていた。それは、ここ坂柳有栖の部屋でも行われていた。しかし、打ち上げをしているにも関わらず、この部屋からは騒いでいるような声は全く聞こえることは無かった。

それもそのはずで、この部屋の中には部屋の主である坂柳有栖その人と、周りからは坂柳の両翼なんて言われたこともある神室真澄と園原杏里の三人しか居なかったのだから。

 

「神室さん流石です。この料理美味しいですよ」

 

三人が囲んでいるテーブルの上には形の整った綺麗なオムライスとサラダ、スープが三人分並んでいた。

 

「わざわざあんたが手料理を食べたいって作らせたんじゃない」

 

「フフフ、確かにそうでしたね。でも、園原さんも美味しいと思いますよね?」

 

「はい。私も見習いたいです」

 

そんな杏里の今にもため息のついていそうな態度に、坂柳は前回この三人で集まった時に、杏里の料理を食べた時のことを思い出して笑み浮かべた。杏里の料理は食べられないという類の料理では無い。しかし、美味しいとも言えない味なのだ。そしてそれは、神室がその日の内に杏里に対して料理を教えようと決意するほどのものだった。

 

「いえいえ、園崎さんには別の才能が多くありますから。それを生かしてくれればいいんですよ」

 

「坂柳さんは私をどんな所で使うつもりなんですか?」

 

「フフフ、聞きたいですか?しかし、期待している所悪いですが、友達の延長線でしか使いませんから」

 

しっかりと接して来た同年代の友達は、自身が寄生先と認識していた美香だけだった杏里には、坂柳の言う友達の延長線上というものが、分からなかった。だからなのか、首を少し倒していた。

 

「杏里。気にすることないから。坂柳の言う友達って多分歪んでいるから」

 

「真澄さん。私はここにいれるだけで満足だから、大丈夫です」

 

杏里と神室。その二人の仲はあの出会いからは考えられないほどに、良好だった。神室は杏里に庇護的な目線で見ていて、気を回すことを心掛けている。杏里は神室を達観していて所々さりげなく優しくしてくれることに良さを感じていた。なので二人の相性は存外良く、二人だけでいることも度々目撃されたりなんかもしていた。

 

「私だって仲良くしているつもりなんですけどね。それはそうと、お二人は寝る時の服持って来てくれましたか?」

 

「持って来たけど……泊まるとして、私と杏里はどこで寝ればいいの?」

 

「私のベッドですよ?一度並んで寝るというのをやってみたかったんですよ」

 

もちろん、この学校の寮は一人一部屋なので、部屋のベッドは一人用の広さしか無い。なので、三人で寝ると言うことは窮屈になることが確定していた。

 

「分かりました。先にお皿洗って置きますね」

 

「はぁ……分かった」

 

坂柳と杏里は二人とも頭が良い。しかし、一緒のベッドに寝るということのハードルの高さが分からない二人に、神室は頭を痛めながらも一緒に寝ることを了承するのだった。

 




ここから、張間美香の本領発揮です。



「園原杏里」 そのはら あんり

クラス 1年Aクラス

学生番号 S01T005711

部活動 無所属

誕生日 10月31日

【評価】
学力 A
知性 B+
判断能力 C+
身体能力 B+
協調性 D

面接官からのコメント
学生時代の成績は小学校、中学校共に最高評価ばかりで素晴らしいの能力を有している。性格面に関しては大人しく交友関係はそこまで広く無いが、常識を持っていて礼儀正しい。非の打ち所がない能力をしていてAクラスに相応しい人材としてAクラスに配属する。

担任メモ
交友関係も問題無く築けており、クラスのために行動しているのも確認して取れている。






カップル同士などの描写の深さについて

  • 仄めかしもやめてほしい
  • 仄めかす程度ならば問題なし
  • 軽い描写なら良し
  • 多少深くてもok
  • ギリギリまで攻めてよし
  • どれでも気にしない
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