ようこそ非日常の溢れる教室へ   作:地支 辰巳

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カットするところはカットしていって、早く進んで行く予定


幸福とストレスは紙一重

 その日、朝から正臣は唸っていた。それは、バカンスに行けると担任に言われて何をしようかと迷っている訳では無く、中間テストで櫛田がテストの過去問を持って来たことが疑問だったからだ。過去問が無くても、Dクラスは退学者無しでいけるほど勉強の練度は高くなっていて、過去問は最後の一押しとしては良かったが、それはそれとして、正臣は疑問に思っていた。

 

「なんかーキャラじゃないんだよなー」

 

 正臣から見た櫛田は、明るく男子と女子どちらからも慕われるタイプの人だが、そんな人と密接に関わっているとしたら、そんな人は存在しない。だから、良くも悪くも一定の距離を人と置く人物なのだと考えていた。なので、ここまで手間をかけて人のために動くのだろうかと。

 

「どうしたんだい紀田君?」

 

「いやーなーんで、桔梗ちゃんは過去問を持って来てくれたんだろうなーってさ」

 

「うーん。そこまで深く考える必要は無いんじゃないかな?櫛田さんが親切だっただけだよ」

 

「それもそうだな!よし!バカンスのための体づくりでもするか」

 

 正臣は考えても仕方が無いと頭を切り替えて楽しいことを考えることにした。しかし、そこで正臣は今朝一之瀬から言われたことを思い出していた。

 

「そういや理由は聞かなかったけど、一之瀬からBクラスに今は来ないで欲しいって聞いたんだけど、平田は何か理由知ってるか?」

 

「いや、でも最近ピリピリしているらしいって言うのは聞いたかな」

 

「何かあったのか?」

 

「特には聞いてないかな。でも、本当に何かあったなら僕らの耳に入っているはずだよ」

 

 正臣は平田の言うことに一定の納得を示したのか、今はそれについて考えることをやめ、夜中ぐらいに帝人に対して連絡して聞いてみることを決めるのだった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 場所は変わって、Bクラス。ここは平田の聞いた通り、空気が少しピリピリしている。一眼見ただけでは、授業中と変わらない。しかし、今この教室では、一之瀬が壇上に立ち、他のクラスメイトは友達同士で固まったり、各々の席に座りながら一之瀬の言葉を待ったり、不満を言い合っていた。

 

「やっぱり、みんなCクラスに対してイライラしてるみたいだね」

 

「はぁー!竜ヶ峰お前も怒らなきゃいけないだろ。竜ヶ峰も被害者の内の一人なんだからよ」

 

 現在BクラスはCクラスの嫌がらせを受けていた。内容一つ一つは大したことは無いのだが、それがいくつも重なりあって、いくら温厚な人間が多いBクラスといえど、不満を吐露して対策をとる会議をするまでになっていた。

 帝人がやられた嫌がらせも、当たって来られて舌打ちをされるというものだった。それに対して、帝人本人は深く考えていなかったが、周りの人間はまるで自分がやられた時のように怒っていた。

 だが、いくら帝人といえど、何もこの件に対して考えていない訳では無く、何故Cクラスがこの嫌がらせをしているのかということに考察をしていた。しかし、考察しようにも考察する要素が少なく、結果的に帝人の中では答えはまとまらなかった。

 

「そういやよ。神崎なんか顔色悪く無いか?このまま会議にいるより帰った方がいいんじゃないか?」

 

 柴田はBクラスに居る人々の中でも、より一層顔色が悪く、クマが薄ら見えている神崎に対して心配の声をかけた。

 

「いや、問題は無い。頼むからここにいさせてくれ」

 

「神崎お前もしかして、最近一緒に居る彼女と喧嘩でもしたのかよー。羨ましなぁこのやろー」

 

「彼女では無い。だが……俺の方が折れることになるだろうな」

 

 どこか哀愁漂うその顔に、柴田は触れちゃ悪かったかと思い、そっとしておくことにした。その実、神崎はこの間から、告白を断ったはずの張間美香からストーカー紛いの熱心なアプローチを受けていた。そのアプローチは四六時中受けていると言っても過言では無い。そして、神崎が何処にいるかも、誰と居たのかも、何をしていたのかも、把握しているような素振りを美香はしていた。

 だが、神崎は心優しく誠実な男だった。自分がここで学校に報告してしまったら、DクラスとBクラスとの同盟に亀裂が入ると思い、報告や誰かに事情を話すことすら断念していた。そして、美香とは不自然にならない程度にコミュニケーションを取り、嫌とも言わない曖昧な態度を取っていた。

 そんな状況に、CクラスからのBクラスへの妨害。はっきり言って神崎の精神は限界を迎えようとしていた。

 

「隆二くんー!迎えに来ましたよ!」

 

 神崎の顔とは違い、笑顔満点な顔でBクラスに入って来た美香。側から見れば、彼氏を迎えに来た彼女なのだが、今彼ら二人が何を考えているかは本人達にしか分からない。

 

「すまない一之瀬。先に帰っても構わないだろう」

 

「うん。大丈夫だよ神崎くん。お幸せにね!」

 

 

 このままBクラスに美香が居れば、ただでさえ悪い雰囲気がもっと悪くなることを危惧した神崎は美香を連れて先に帰ることにした。

 そして、この半月以上同じように帰っている二人は今日も雑談をする。神崎にとっては変にストーカーをされるよりも、話は上手い美香と普通に雑談をする方が好きだった。

 

「なぁ、張間一つ聞いてもいいか?」

 

「なんでも聞いて下さいね隆二くん。私なんでも答えますから」

 

「何故俺なんだ?俺はただ君に絡んでいる先輩を追い払っただけだろ」

 

 その声は切実なものだった。ここで理解が出来ないような理由ならば、今日こそ嫌だと言うことにしようと思っての発言だった。

 

「好きになった理由なら、それだけでいいじゃないですか?それに、隆二くんはこんなアプローチしか出来ない私を嫌がらずに接してくれる。私の運命の人はそれじゃあダメなんですか?」

 

「それとも、私に嫌な所がありましたか?それだったら、言ってください直ぐに直しますから。隆二くんの言うことだったらなんでも聞きますから」

 

「なら、俺がDクラスを裏切れと言っても裏切れるのか?」

 

 神崎からしてみれば、これはほんの冗談のつもりの発言だった。少し迷うことはあれど、誰でも最後にはクラスを選ぶのだろうと。

 

「もちろんです!友達もクラスも大事ですけど、私は何よりも神崎のことが好きですから、裏切れと言われたら裏切ります!」

 

 即答だった。迷う素振りすら見せずに美香は言ってのけたのだ。神崎が自分の中で優先順位が一番高いということを。

 ここまで直球に自分が一番好きだと言われた神崎は、もう美香以上に自分を愛してくれる人は現れないんじゃないだろうかと考え始める。そして、元々自身を卑下しがちな考えを持っていた神崎は、彼女が自分をストーカーするのは、自分が彼女のことを好きになっていないのが悪いのだと思っていく。

 神崎の心は、精神は、遂に美香からのアプローチに折れることを選んだ。

 

「……張間。この間からの返事だが、了承する。付き合おうか」

 

「本当ですか!?嬉しいです隆二くん!!」

 

 美香は涙目になるほど嬉しがって、神崎に対して抱きついた。

二人の関係は、美香のアプローチから始まったかもしれない。恋人関係は、神崎があきらめることを選んだことから始まったのかもしれない。

 それでも、今の二人の顔はどこか幸せそうだった。

 

 

★ ★ ★

 

 

「ククク、やめだ、やめ。今からのBクラスへの嫌がらせは中止だ」

 

 どこか殺風景な龍園の部屋の中で、部屋の主はこの部屋にいる全員に向かって何の前振りも無く、これまで自身が命令して来た嫌がらせを止めると言ってきたのだ。

 

「どういうつもりだ龍園?始めると言ったのはお前だろ?」 

 

「本当なら、もう少し続ける予定だったんだがな。神崎って奴に尻尾掴まれたようだからな」

 

 そう言った龍園は自身のスマホを机の上に放り投げた。そこには、盗撮や盗聴されたとしか思えないが、Cクラスの人間が嫌がらせを意図的にしていたという証拠とこれ以上するならば学校側に提出するというメッセージが神崎から送られて来ていた。

 

「これじゃあ、男どもの努力は無駄な努力だったってことね」

 

「そうでもねぇぜ?金田、神崎に対する最近の情報があったよな?」

 

「最近は彼女が出来たともっぱらの噂だったようです。いつからは不明ですが、つい先日正式に付き合ったと公表したそうです。相手はDクラスの張間美香」

 

 石崎や伊吹にしてみれば、その神崎の恋愛状況が今の話に関係あるのか?という疑問が頭に浮かんでばかりだったが、幽は何かしらに気づいたようで、自身の考察を話始めた。

 

「嫌がらせによる罰せられるラインの見極めとBクラスの対応力を知ることが今回の目的だったわけか」

 

「ハッ、よく分かっているじゃねえか平和島。こいつの言う通り、今回の嫌がらせはラインの見極めとBクラスがどれだけやりやすいかを図るためだったが、思わぬ収穫があったぜ」

 

「思わぬ収穫が神崎が付き合ったていう情報なんて言いたいの?」

 

「ククク、俺の予想だとBクラスは何の証拠も得られないだったんだがな。それが、嫌がらせに多く被害にあってからの神崎のこの証拠の突きつけ。出来るなら少し遅いと思わねぇか?」

 

「でしたら龍園氏は、神崎氏は最近証拠の情報を得た可能性が高い。そして、それは先日付き合った張間美香の方に秘密があると睨む訳ですね」

 

 こんなにも少ない情報でここまで辿り着く人間はそう多くは無いだろう。だが、龍園がこの結論に達したのは、元々Dクラスの一部の生徒に対してある疑問を持っていたからだった。

 

「ああ。平和島、てめぇに任せていた案件が一つあっただろう?それを今報告しろ」

 

「紀田正臣。クラスのお調子者兼リーダー。普段はナンパばかりしているが、怒ると怖い。

平田洋介。真面目で優等生なクラスの調停役。誰にでも優しい聖人。

櫛田桔梗。学年ほぼ全員と友達な社交性が高い。この人も誰にでも優しい。

張間美香。社交性、勉学、運動能力どれを取っても優秀な人物だが、それ以外の特徴は無し」

 

 幽はまるでアナウンサーのように淡々とDクラスに所属する一部の生徒の名前と情報をあげていった。

 

「龍園が言っていた堀北と高円寺だけど、その二人は性格に難があるらしく、途中で、俺の判断で中止した」

 

「これが平和島に言ってた極秘任務ってやつっすか?」

 

「ああ。Dクラスに配属されるのは総合能力が低い不良品ばっかりだが、今、平和島のあげた奴はDクラスに配属された理由が不明奴らだ。今回の張間美香の例でいくと、そいつら全員Aクラス相応の能力は持ってることになるだろうな」

 

「そうなったら、私らのクラスが一番弱いことになるんだけど」

 

「ククク、俺がAクラスに上げてやるって言ってるだろ?Dクラスに一度煽りをかけてから、夏休みにある無人島試験と干支試験に挑むとするか」

 

 龍園は大体にも笑みを浮かべる。今回の調べで自身のクラスが弱いと分かってしまっても、なおも笑みを止めない。強敵に勝ってこその喜びが勝ると言わんばかりの心持ちを持って。

 

 




原作一巻の部分は一応終わりかな?



「三好吉宗」 みよし よしむね

クラス 1年Aクラス

学生番号 S01T004467

部活動 無所属

評価
【学力】B
【知性】B
【判断能力】B
【身体能力】C
【協調性】A−

面接官からのコメント
少々天然気味なところはあるが、それも少なからず影響して多くの友人に囲まれるような生活を送っていたようだ。勉学、運動能力は共に平均的。特技として機械いじりが出来るようで、小さいが実績も調べることが出来た。以上のことからAクラスへと配属とする。

担任のコメント
多くの友人に囲まれて忙しそうだが、楽しそうな生活を送っていることが見て取れる。








カップル同士などの描写の深さについて

  • 仄めかしもやめてほしい
  • 仄めかす程度ならば問題なし
  • 軽い描写なら良し
  • 多少深くてもok
  • ギリギリまで攻めてよし
  • どれでも気にしない
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