ようこそ非日常の溢れる教室へ   作:地支 辰巳

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暴力と発展していく関係
何かを守る為に戦わなくてはならない


 特に事件も、トラブルも起きていない6月の後半。ここAクラスの教室では、ある男子生徒と女子生徒が会話をしていた。それだけならば誰も注目しないだろうが、その男子生徒が中立で有名な三好吉宗ならば話は別だろう。

 

「山村さん。今日は何処に寄って帰る?」

 

「……えっと。落ち着いたカフェとかがいいかな」

 

 山村美紀。Aクラスのどちらかというと中立派の人間。落ち着いているというよりは地味な子で、吉宗以外としゃべっているところを見られることがほぼ無いというのがAクラスの人間が抱く印象だった。

 

「うん、いいね。じゃあ行こうか」

 

 吉宗と山村が親しいのは吉宗がこの子はどちらの勢力が強くなっても、中立派のままだろうなと直感が働いたからだ。

 もちろん、吉宗は坂柳や葛城よりは派閥に拘りが無いが、このままのクラスの状態では、いつかAクラスは下に落ちるだろうと5月中旬に悟り、入学の時よりは派閥というものに多少の気遣いをしていた。

 そして、多少の打算ありで始まったこの関係だが、その関係は非常に良好で、吉宗と一番親しい人間は誰?と聞かれたAクラスの人間ならば、山村と答えるぐらい周りから見て親しそうに思えた。

 

「もしさ、葛城君と坂柳さんの二人しか派閥が無かったらさ、山村さんならどっちに入る?」

 

「えーと、クラスが統一されるまでは入らないと思う。人間関係が大変そうだから」

 

「山村さんの答えはそうなんだね」

 

「じゃあ、三好くんは違うの?」

 

「いや、僕はずっと中立でいるかな。派閥には入らないよ」

 

 ショッピングモールを歩きつつ、二人は会話をしていく。ほとんどはどちらかが話題を提供し、それに対してもう一人が無難に応答していくというスタイルだ。そんなスタイルでも二人の会話は途切れることは無いし、意見の相違もそこまで発生しなかった。

 

「あれー、あのカフェ。何か先輩がいっぱいいるね。他のカフェにしよっか」

 

「うん……そうだね」

 

 二人は周りを見渡しながら、そう口にする。二人がこのカフェに入るのを渋ったのはいつもよりも先輩が多く居るというのもあるが、それと共に誰かに付けられていると気づいたからだ。

 中立派である二人は毎日とはいかなくても、そこそこの頻度で付けられる。付けて来ている人物は毎回坂柳派の人間なので、今回も坂柳派の人間だと二人は結論づけると、歩幅を早め、撒くためのルートを通り、目に入った店に入った。

 

「はぁー、これは派閥に入るまで追いかけられる感じかなー」

 

「どうするの?どっちかの派閥に入る?」

 

「いや、入らないよ。もしこのまま二つの派閥が争い続けたら、いずれそれに疲れてくる人も増えてくるはずなんだ。その場合、中立派が増えてAクラスが統一されていくはずなんだ」

 

 吉宗は中立派を自ら謳っている以上、手荒な真似を使って、派閥の拡大をすることは出来ない。だからこそ、吉宗はAクラスのバランサーになることを決めた。吉宗の目標は、希望的観測なのかもしれない。ボスの器では無い吉宗には荷が重いのかもしれない。しかし、それでも吉宗はAクラスの未来を憂いて間を取り持つことを選んだ。

 

「難しいかもしれないけど……良い目標」

 

 

★ ★ ★

 

 

 吉宗と山村が決意を固める30分ほど前のこと。とあるカフェにDクラスのリーダーである紀田正臣とBクラスリーダーである一之瀬帆波が二人で食事をしていた。お互いがリーダーである人間が二人っきりで食事することは、実現が非常に難しいのだが、そこにはDクラスとBクラスが同盟関係にあることと、正臣が一之瀬をしつこく誘ったことにより実現が比較的容易に出来ていていた。

 

「えへへ、なんだか目立っちゃってるね」

 

「まぁ、引くて数多の俺と帆波ちゃんが一緒にいるなら、嫉妬でみんな見たくてなるんだろうなー。うんうん。分かるぜその気持ち」

 

「そういや、帆波ちゃんは生徒会に入ったんだろ?心からのお祝いを届けるぜ」

 

「いやいや、そんな私なんて、南雲副会長に拾ってもらっただけだから……」

 

「いーや、それこそ帆波ちゃんの力だぜ。その溢れ出る美貌で南雲って奴を手駒にしたんだからさ。でも、もし南雲先輩?に何かされたら、すぐに言ってくれよ?すーぐに助けてやるからよ」

 

 正臣は終始笑顔でいた。その笑顔には、学年有数の美女と居られて嬉しいというのもあるが、それに加えて、Bクラスが散々Cクラスのせいで疲れ切ったと帝人に聞いて、一之瀬の気分が少しでも良くなるようにという理由も含まれていた。

 

「南雲副会長はそんな人じゃないけど、うん。困った時は紀田君を頼らせてもらうね」

 

 何処か冗談臭く言う一之瀬。果たして本当に困った時に一之瀬は正臣を頼るのか。それは正臣には計りかねることだが、一之瀬は自身がするであろう選択に確信を持っている様子だった。

 

「あ、それじゃあ、私そろそろ行くね。クラスの子に勉強を教える約束してて」

 

「んじゃあ、次はその子も連れて来てくれよー」

 

「聞いてみるね。じゃあまた」

 

 総合して一之瀬と30分以上話した正臣は、ふと周りを見渡した。すると、カフェの外から見えるぐらいに先輩が段々と正臣の周りに集まって来ていた。集まっている先輩は見る限り男ばかりで、暴力沙汰かと警戒した正臣が席から立って構えようとすると、後ろから首に手を回された。

 

「おーい、何処に行こうとしてるんだよ。てめぇに話があんだよ。紀田正臣」

 

 正臣が席につき直したのを確認すると、その男は手を離し、さっきまで一之瀬が座っていた正臣の正面の席へと座った。

 

「てめぇら。下がってていいぜ」

 

 その男の号令により、男達は何処かに去って行き、その代わりに何名かの女子がその男の周りに椅子を持って来て座った。

 

「あんた、誰っすか?」

 

「俺は三年Aクラスの六条千景ってもんだ。男は大嫌いで、ハニー達をこよなく愛する男だ」

 

 自己紹介を受けた正臣には様々な疑問が湧き出てきた。警戒心ももちろんあるが、それよりも正臣は千景という男に自身と同じ匂いを感じていた。だからこそ、おふざけでは真剣モードに切り替えて応じることにした。

 

「それで……三年の先輩が俺に何のようっすか?」

 

「いや、何。俺だって本当はてめぇなんかに頼みたくは無いのよ?でもさーハニー達がどうしてもって言うからさ」

 

「もう、ろっちー。私たちのせいにしたらダメなんだからねー」

 

 真剣な交渉なのかと身構えたら、女とイチャイチャしながらこちらと会話してくる。正臣も自他共に認める女好きではあるが、ここまでのやりにくさを感じたのは初めてだった。

 

「まぁ、要するに俺はもう卒業するから、南雲の野郎から一之瀬ちゃんを守って欲しいのよ」

 

 簡潔で分かりやすいお願いだが、正臣はいまいち要領を掴み切れていなくて、様々な疑問点が湧いて出てくるようだった。

 

「質問いいっすか?」

 

「皆まで言うなって。お前の疑問点なんて分かってるからよ」

 

 そう言った千景の表情は清々しいほどの笑顔で、その笑顔にはこの学校で生き残って培った、頼り甲斐や強さが滲み出ていた。

 

「まず、てめぇに頼ったのは、女を守れる男気に溢れていると直感したからだ。次に、南雲の野郎は女の子へのリスペクトが足らねぇ。そして、その毒牙に次にかかる子は一之瀬ちゃんだ。だから、仕方なくお前に頼んだんだ。分かったか?」

 

 千景の意見と意志はしっかりと正臣に伝わっていた。女子が周りにいるのからこそ、千景が話したことが嘘とは思えなくて、自分から頼ることが出来なさそうな一之瀬を守るために、正臣はこの頼みを受け入れることにした。

 

「いいっすよ。その頼み承りましたよ」

 

「やっぱりな。お礼はいらないだろ?」

 

「可愛い女の子を守れるだけで、お礼っすよ」

 

 こんな得があまり無い頼みを受けるのは正臣ぐらいなものだろう。普通、お礼を要らないという言葉には裏があると疑ってしまうものだ。だが、千景はあっさりと正臣を信じることが出来た。それは、女の子一人の為に命を張れる男だろうと直感したに他ならない。

 

 

★ ★ ★

 

 

 千景から頼みを受けた日から数日経った7月1日。この日、大きな衝撃が一年中を襲った。それは、ポイント支給が大幅に遅れるという旨の報告が担任からなされたからだ。7月1日時点でのDクラスのポイントは87ポイント。少量の金額だろうが、支給されるはずだった。

 こうなっては、5月から一円も支給されていないDクラスにとって死活問題なので、リーダーである正臣は、ホームルームが終わってから茶柱先生にポイント支給遅延の原因であるトラブルの解決の手伝いを申し出た。

 

「さえちゃん先生。俺らのクラス、そろそろマジいんすよね〜。Aクラスに上がるモチベーションも下がっちゃうし、餓死しちまうかもしんないですよー。だから、トラブル解決のお手伝い出来たら良いなーって、どうっすか?」

 

 正臣としても、これが機械トラブルなどだったら諦めるつもりでいたし、多少の冗談も含めて言っていたのだが、茶柱先生はどうやら正臣の意見を本気で捉えたようで、にやっと嫌な笑顔を浮かべた。

 

「ほう。手伝いたいのか紀田。ならば、トラブルのヒントをやろう」

 

「うちのクラスには、不良が居たきがするな。なにもしなければいいがな」

 

 ヒントというには、あまりにもお粗末でほとんど答えを言っているようなものだが、茶柱先生はヒントということで最後まで通すことを決めているようだった。

 

「あのーそれって、須藤のことっすよね?」

 

「いや、どうだろうな。それは分からないな」

 

 茶柱先生のあからさまな物言いに微妙な返答しかすることの出来なかった正臣は、これ以上粘ってもヒントはもらえないだろうと察し、早急に須藤に対して、連絡を入れることを決めた。

 

「さえちゃん先生、ありがとーございました。俺問い詰めてくるんで、それじゃあ」

 

 須藤が何をやったか正臣は分かってはいないが、須藤の性格を考えると何かしらの暴力沙汰だろうなとは考えることが出来ていた。しかし、他クラスを巻き込んだ大きな出来事になっているとは、この時の正臣は考えてもいなかった。

 





デュラララのキャラとよう実のキャラで出来るだけペアやグループになるようにしています。

カップル同士などの描写の深さについて

  • 仄めかしもやめてほしい
  • 仄めかす程度ならば問題なし
  • 軽い描写なら良し
  • 多少深くてもok
  • ギリギリまで攻めてよし
  • どれでも気にしない
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