録画開始
ーーーーランプ点灯よし。作動は問題なさそうだ。
……回っているんですね。
ーーーーそうだ。だから早く座りたまえ。
……はい。えっとでは、自己紹介から。マンハッタンカフェです。
タキオンさんに言われてこれを記録することにしました。
ヒトの記憶というのは曖昧で時間が経てば忘れてしまうことが多いから。後世に記録として残しておくのが良いらしいです。
私はそんな必要ないと思いましたが仕方がありません。
……さてどこから話したら良いでしょうか?少し悩みましたが全部話すことにします。
ことの始まりは食堂です。
基本誰かと一緒に食べるということをしない私は終始無言であることが多く、それゆえに周囲の話し声に耳を傾けてこっそり聞き耳を立てるのが食堂での日課だった。
……盗み聞きとはあまり褒められた趣味ではないな。
盗み聞きじゃないです。
「あ、いたいたカフェ!」
黙って食べていると大抵の人は道端の石ころか芝のように意識の外に置いていてくれるから誰も話しかけてこなくて静かでした。だけれどその静寂もあっさりとトウカイテイオーさんがきたことで打ち破られ数々の視線が一斉に私に寄ってきました。前髪の一部が白い茶髪をポニテにした、活発な、悪くいえば子供っぽい自信家。そして才能を持つそんな存在に私は声をかけることすらできず呆然としていた。ようやく出せた声もいつもより小さくボソボソしたものだった。
「……トウカイテイオーさん?どうしたのですか?」
「実はさ、ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけどいいかな?いいよね?」
「……きょ、拒否権は?とりあえずなにを手伝って欲しいの?」
「実はさ……ボク気になっていることがあってさ」
それは言ってしまえば怪談話。
「学園に幽霊が出る……」
よくある話だった。少しだけ興味があったからそう言った話はよく集めていたし自分でも少しだけ研究していた。あのタキオンも少しだけ非科学的要素の観測とかなんとか言って私を連れて霊障観測をしようと大真面目に夜の学園の使用許可を求めようとしていたくらいだ。
「……それほんと?正直そんな噂……信憑性ゼロなんだけど」
結論から言って噂で囁かれるものは大抵元のネタこそあれど9割型ただの創作怖い話でしかなかった。
「えー!ボク聞いたよ?」
トウカイテイオーさんは頬を膨らませて反論する。
幽霊と言われて心当たりはいくつかあるが決定的な証拠は私は知らない。
トウカイテイオーさんは暇なのだろうかなんて呆れそうになったがそんな話に熱を持っていた自分自身も否定しそうになったからその言葉だけは飲み込んだ。
最初は科学的な観測……もといカメラやサーモグラフィーなどで可視化すると言った方法を試したかったようだ。
絶対心霊番組見たせいだなんて一人思っていた。
「心霊番組だってあるくらいだから幽霊はいるよ!」
「ならエアシャカールさんにカメラ貸してもらえば…」
「断られたんだもん!」
カメラなどハウテク機器の申し子とも言えるエアシャカールに最初は頼み込んだらしい。子供っぽいテイオーの言うことだと真面目に取り合わなかったらしいです。
当然といえば当然だった。
「だからその道の専門家も呼んで説得しようとね」
「私心霊の専門家じゃないんだけど」
なぜ私なのか…これがわからない。
「え、違うの?心霊探偵じゃないの?」
「属性が増えてる」
「心霊探偵じゃないなら……あそうだ。ねえ、霊の存在って信じる?」
私としては霊の存在は私の中では肯定的な存在として認識していた。私自信存在しない誰かと間違えられることが多い。
だからなのだろうかその時つい迂闊にも否定はできないと言ってしまった。
多分ここで私も否定していればトウカイテイオーさんは諦めがついたのだろう。
だけれどその日の放課後の時間にエアシャカールさんを連れてくるくらいには彼女を本気にさせてしまった。
いつも怖そうな見た目で言動も荒っぽい人。それが今日はどうだろう、私に敵意を向けたまま会って早々早速睨みつけてきた。どんな説得方法をしたのだろうと聞き出す勇気すら奪われた。幽霊よりこっちの方が怖い。
「あの……」
「あ?なんだよ」
見た目だけなのかと思ったが話しかけた瞬間ドスの効いた声が返ってきて聞きたいこととか色々吹っ飛んだ。
「いえ……噂より貴女の方が怖い感じがして」
「……それは怖いのベクトルがちげえだろ」
「二人とも作戦会議するよ!」
そしてどうしてか私もまたトウカイテイオーさんの幽霊探しに加わってしまっていた。やめた方がいいのにと思ったけれど言ったところで彼女は止められない。
ーーーーどうして私を誘ってくれなかったんだね?
だって貴女高知にいたじゃないですか。
今回トウカイテイオーさんが気になると言っていたのはまあ言ってしまえよく聞くタイプの変哲のない凡庸で捻りがない噂話だった。
噂話、あるいは怪談話。学校の七不思議というべきだろうか?ある意味そう言った怪異にまつわる噂話というのは昔から相変わらず人の集まるところに存在する。
まるで人の影に寄生しているかのよう……
まず噂話について話さないといけませんね。
噂と言っても所詮はよくある学校の怪談というやつです。
あれよりも話のレパルトリーや発展性は大きく劣って大抵1パターンしかないけれど。
意外かもしれませんが、普通に学校でよく聞かれる七不思議や怪談は実の所このトレセン学園にも存在します。
何千人というウマ娘とその指導を行う教官やトレーナーがいるのだから当たり前かもしれない。
一種の閉鎖空間内で流行る噂という点ではその話は信憑性が最も低い話なのだけれどある意味では昔からその噂は変異をすることなくずっと語り継がれている。
その噂は話し方によって若干の変化は起こりますが、大筋をまとめるとトレセンらしいというそんな話だった。
いわくトレセンには夢を諦めた者達の思念が残っていて強い思念が他の場所から怨霊あるいはそれに準ずるよくない存在を呼び寄せてしまっている。その怨念とソレが混ざってしまい時々出るというものである。
出現方法やウマ娘を襲ったり襲わなかったりするなどの違いはあってもそこだけは共通していた。
つまるところ怨霊あるいはよくないものを呼び寄せる場所。所詮は噂だった。
そんな事実があるわけでもない。そんなこと言い出したら昔墓地だったところの上に学校を作った場所など霊障の巣窟だ。
そんな中でもトウカイテイオーさんが聞いた話は不調に苦しんでいたとある子が夜にこっそり特訓をしていたら隣を並走するウマ娘に気づくというもの。
いつやってきたのかそれはわからない。周りに他の子がいた気配はなく夜中に特訓しているのは今まで自分だけだった。
誰かがそれを見てこっそり特訓を一緒にしようとしているのだろう。その子はそう思います無言のまま走り続けた。
しかし寒気が強くなりコースの調子がおかしくなり始めた。隣にいた気配はいつの間にか後ろにいた。だんだん怖くなってきた少女はそれを振り切ろうとするがなかなか離せない。それどころかそのまま寮に帰ればいいはずなのに疲れ果てる頃までずっとこースを周回し続けていたという。
息が上がってきたところでようやく気配が消えた。巻いたのか?
後ろを振り向く気になったそのウマ娘が、後ろを振り向いた時、そこには誰もたってはいなかった。ただ、逆さまの状態になった白い人の輪郭にようなものが、あったそうだ。
目に当たる位置に真っ赤な窪みのようなものができていたという。
話としてはそこで終わりで、その後ろに逃げ帰ったとか追いかけられて食われたとか色んな創作がくっついていく。
だけれど食われた話に関してはそれが事実だとすればどうやってその話が広まったのかという致命的なミスがある。大抵体験者が死亡する話は嘘っぱちだ。
「そんでその噂話がどうしたんだよ馬鹿馬鹿しい。霊なんているわけないだろうが」
私もその意見に同意したかったが実際問題否定するほどの材料がなくむしろ肯定的な方が増えるような気がしていた。
「そんなのわからないじゃん!いるかもしれないよ?」
「あーもーうっせえな!」
一瞬足が震えていたように見えた。やっぱり怖いらしい。
ーーーー霊障を怖がらないのは君くらいじゃないかね?
どんなことないですよ。単純に怖いと思うほどのものでもないだけです。
「いるかいないかの証明はどちらも結論づけることはできない……」
「証明不可能、悪魔の証明だな。……そう言ったことは門違いだ、感情とかスピリチュアルなところで専門家ならタキオンがいるだろ」
「タキオンにも話はしたけど研究の関係で今高知に行っててさ」
あのタキオンのことだから興味自体はあるはずだけれど……
でも七色に光る薬作るくらいならフィールドワークくらい付き合ってあげてもいいのに。
ーーーー失礼だな。高知に行ったのは私が品種改良した野菜の農業試験の要地確認のために……
はいはい。
あのままではやはりエアシャカールさんは来そうにない。その事を理解しているトウカイテイオーさんだからこそ煽りを入れてけしかける方針を固めたようだった。
「怖いの?」
「怖かねえ!やってやろうじゃねえか!」
プライドは時に身を傷つける。
一度寮に戻った私たちは各々抜け出して校舎前で合流することになっていた。
やや早めに抜け出して待ち合わせの場所に行くとトウカイテイオーさんも既に来ていた。
トレセン学園には学校の七不思議などのようなものは実はない。
意外というかなんというかであるが学園であるからには七不思議のようなものがあるのではないかと言われるが実際のところ七不思議のような噂怪談は今私たちが調べることになったものくらいしかない。不自然と言えば不自然だけれど怪談話というのはそんなものだろう。一応他にもあるにはあるが大抵のものはデマと見間違えで証明されてしまっている。
トイレの花子さんや階段が増える減ると言った噂は妙に聞かない。ある意味それ自体が不思議なのではないだろうか。
などとその日合流場所でエアシャカールさんを淡々と待ちながらそんなことを考えていた。トウカイテイオーさんいわく噂話は怪談より競バの方が優勢らしい。怪談が負けた瞬間だった。
「そういえばどうして私を?」
「んー?だってこういうの好きそうだったし。体験してたりする感じがしたから」
正直心霊探偵などはもっと適任がいる。
「体験は私じゃなくて他の人がよくするみたいですけど」
結局それも噂話でしかない。いわく私と話していた時に後ろから私が現れて目の前にいたはずの私が消えていたとか。
「ドッペルゲンガーとかいうやつでしょ?正直怖い」
「随分とズバッというんですね」
「だってもしかエアシャカールが僕の隣にいるはずのカフェを連れてきてなんでカフェがそっちにいるのさとかそれはそれでもうホラーじゃん怪談だよ」
「大袈裟な……」
そもそもこれから怪異探索に向かうというのに自分で怖くしてどうする。しかもその元凶と一緒に行くとか精神的に大丈夫だろうか?
正直言って何もなく終わるのだろうけれど。
まあ、私にまつわる噂というのは実は二人いるのではとかドッペルゲンガーとかそんなものが多い。
実際経験談という形でいくつもの派生が生まれているのも知っている。
いい迷惑というやつだ。そもそもその噂をしている大半の生徒は私と話したことすらないというのにだ。
ただ心当たりがないわけじゃないのだけれど。
「一回お祓いでもする?」
「伝でもあるんですか?」
「お寺暮らしのTさんなら」
「Tさん万能……」
「い、いるんだな……」
エアシャカールが来たのはそんな時だった。
幸いにも?私がそばにいたとか私と私が見つめてましたという事態にはならなかった。
そんなこと頻繁に起こってたら私が怪異にされてしまうから困るけれど。
「なあ、マジでやるのか?」
昼間と違ってエアシャカールさんはどこか覇気が無かった。
「マジでやるから寮抜け出してきたんでしょ!ボク達共犯、逃げられないよ」
「あ、ああ。くそおなんでこんなことしなきゃなんねえんだ」
「……」
「オメーは嫌じゃないのか?」
「別に、こういうことは慣れてる」
たまにヒシアマゾンさんと一緒に回るくらいだ。にんじん2本のお駄賃はなかなか逆らえない。
今回はトウカイテイオーさんにコーヒーを奢ってもらうことで話をつけた。
「そういえば持ってきた?色々」
「ああ?持ってきたに決まってるだろ。夜間カメラと、電磁波測定装置とサーモグラフィーカメラと……」
完全移籍心霊ハンターだった。
「参考にできそうなのがこいつの録画していた心霊番組しかなかったんだよ」
心霊番組参考にするのか……
良いのかな……
そうこうしているうちに警備中のヒシアマゾンさんに見つかりそうになったり逃げるより隠れた方が効果的ということで隠れたりと一悶着があったものの私達は順調に校舎の中を通り芝のコースへ向かっていた。
何故わざわざ校舎の中を通ったのか、それは警備体制の問題だった。
普通に外を歩いて行けば良いが外は意外と監視カメラや人感センサーなどが張り巡らされている。その点建物の中は窓や扉にセンサーが付いているだけでそこさえどうにかしてしまえばあとはどうにでもなる。
実際どうにかしてあの時は建物の中に入った。
「……なあ、あそこで走っているのってただの夜抜けした生徒だよな?」
ダートコースが見える一度の窓から外を見下ろしていたエアシャカールさんが声を振るわせていた。普段の殺気だったような覇気は感じられない。トウカイテイオーさんも人がいない静かな暗い空間に慣れていないのか元気が萎んでいた。
「え?そうでしょ、結構夜抜け出して走る子多いみたいだし……」
夜走るのは気持ちいいから仕方がない。
「そうだよな……」
今のところカメラに異常は出ていない。今日は静かに終わってくれそう。そう思っていた。
私は自然と最前列でサーモグラフィ付きのカメラを回していた。
写っている映像は温度に合わせて赤から青と変化する。霊障が一体どのような色で写るのかはわからない。だけれど解析には役に立つのだという。
しかしそんなもので映るようなものなのだろうか?そういえばこの前の肝試しもよくない存在がいたとか居なかったとか……
芝のコースに着いたものの走っている生徒や出る出る詐欺な幽霊と言った存在は結局でなかった。最初こそ引き腰だった二人も十分もしたらつまらなさそうな感情とほっとした感情で完全に気が抜けていた。
「……うわ⁈」
急にスマホの着信音が鳴り響いたのはそんなタイミングだった。
恐怖というのは人の心の隙をついてやってくる。
「あ?……なんだメイショウドトウか」
エアシャカールさんのスマホだった。
「UINEですか?」
「ああ……抜け出したことがバレたみたいだ……ちくしょう黙っててもらわねえと」
「ちょっと待ってもらえます?」
首筋が少しだけピリピリした。嫌な予感というもの。直感だった。
またいつものやつだ。
「……んだよ?」
返答を打ち込んでいたエアシャカールさんの手を止めた。一見なんの変哲もない画面。だけれどどこか私の勘が嫌な予感を告げていた。こういう時は下手に何かをするのは良くない。そう思った私は咄嗟に声を強めていた。
「何か用かって打ってください」
「なんで指図されなきゃいけねえんだよ。ったく……」
渋々と言った……だけれど何かを察したのかエアシャカールさんは言われたとおりに打ち込んだ。
「これでいいか?」
「ええ……」
送信を押してすぐ、返答が来た。
「あ、返信きた。起きたら誰もいなかったからだとよ」
あいつ地味に寂しがり屋だからなあなんて呟いているけれどUINEの画面には異常が既に発生していた。
「普通だね。カフェ、どうしたの?」
「……なんで既読ついていないのに返信来るんですか?」
「あ?」
「え?」
普通返信するなら必ずグループの画面を開かなければならない。だから既読の通知は発生するはずなのだ。
「ほんとだ……」
「また返信……今どこ?うわッ⁈」
「え?なになに……なにこれッ‼︎やだボクに渡さないでよ自分のスマホでしょ!」
「ふざけんなッ‼︎怖いわこんなの!」
再び宙を舞ったスマホがわたしの手の中に収まった。
「あー……UINEには返事しない方がいいですね」
時刻表示は25時71分となっていた。
完全に機械が変調をきたしていた。
「なるほど……怪異ですね」
「な、な、なんでおめえは落ち着いていられるんだよ‼︎」
「や、やっぱりッ!こういうの得意なんだよね⁈ね⁈」
「うるさいですね。そもそも怖がってもしょうがないでしょう」
恐怖というのは心の隙につけ入って感情を支配する。そしてそれは見えないうちに周りへとあらゆる手段を講じて伝播する。理屈を理解すれば制御も可能となるとはタキオンさんの言葉だったけ?結局そういうものだ。余計に怖がらなければあれらは無理に襲ってくることはしないと言えば何故かキョトンとした表情をしていた。
「な、なんでそんなこと、薄気味悪いわ」
「う、やっぱり専門家じゃん」
エアシャカールさんには呆れられてトウカイテイオーさんには驚かれた。
「……?」
驚くようなことなのかはさっぱりわからなかった。結局すぐに引き返すということになった。主にエアシャカールさんのメンタルが保たなかったようだ。
明らかに霊障と見られる現象が発生した以上少人数でいるのは危険だからだ。
特にそう言った空気が形成されつつあるのは危険の兆候だった。
この時にとっていた映像には何も写っていなかった。だけれど、耳裏に残る金属が共振するかのような、何回も高速でジリリリとぶつかるような不穏な音が断続的に入っていた。
「あれ?教室の扉が空いてる」
「トウカイテイオーさん気にしない方がいいですよ」
私が撮影していた映像やエアシャカールさんが持っていたカメラにはなんの異常も見られなかった。だけれどトウカイテイオーさんがそう言った時、たしかに廊下の扉は開いていた。
「そうなの?でも閉めておかないとまずいんじゃない?」
こういうのは知らないことがいい時もあるんですよ。そう言って諦めさせた。余計な事をするのはわたしの心情に反する。触らぬ神に祟りなしだ。
「あ、さっきのやついないかのか」
教室側に意識を持っていきたくなかったらしいエアシャカールさんが反対側の窓に目線をやっていた。
「流石に帰ったでしょうね。夜遅いですし」
「なんだよ……仲間なしかよ」
「……トウカイテイオーさんがいるんですしそんな心細くなってどうするんですか」
「し、し、仕方がねえだろ!ガチの怪異に出逢ってるんだから!」
「あー……」
私の感覚の方があの中ではおかしかったようだ。
だけれどその後は拍子抜けするほど呆気なく、私達は寮に戻ることができた。暗い寮の廊下を通り自室に戻るのがとてつもない恐怖だったのか二人は私に泣きついてまで同行を求めてきた。寮が違うのだから無理に決まっているのに。
エアシャカールさんはスマホの件があるからわからなくもないけれどトウカイテイオーさんは別に大丈夫でしょうになんてその時は思いました。
無理に二人と寮の前で別れた後どうやら何かあったらしいというのを聞いたのは日も明けた次の日だった。
どうも二人揃って寮室ではなく廊下で、トウカイテイオーさんの部屋の前で気を失っていたそうだ。
結局私は知らないのですがあれはなんだったのでしょうか?
ーーーー私が聞いた話にはどうやらあの後君がやってきて部屋の前まで案内したらしいがそこから気を失っていたようだ。
え?私直で帰りましたけど……
ーーーーどうもそのようなのだが二人ともその時は君だったと確信しているようだが話を聞いた頃には本人だったのか確証がないほど異様に顔が思い出せないそうだ。
……まあ良いです。
結局エアシャカールさんのスマホはそのあと電源がつかなくなって会えなく故障した。
カメラも音がとれた以外何も影響は受けていないし何もとらえていなかった。
特にこの話にオチというものもなく、あれはなんだったのか今でもよくわからない。
「レースでの恐怖はうまく使えば追い風になります。ですが日常の恐怖は、いつでも私たちに牙を向くという事を忘れないでくださいね」
報酬をもらった時のトウカイテイオーさんが少ししょんぼりしていたから私なりに励ましたくらいだろうかオチと言えるのは。
ただ、今回は運が良かったのだろう。そんな気がした。
私の話はこれくらいです。
ーーーーふむ面白い。非科学的な事象による科学的干渉か。もしかしたら私の理論も飛躍するかもしれない。
本気ですか?私は手伝いませんよ。
ーーーー良いではないか。今度コーヒーを淹れる。
いやそれタキオンさんは飲まないじゃないですか。
ーーーー良いではないか美味しいコーヒーくらい作れるさ。
お断りします。