出撃!第一部隊の隊長さん!!   作:夕陽に影落ち

5 / 5
放置してた悪気はなかった。
書く気力が湧かんかったん……許せとは言わん


それぞれの思惑

◇◇◇支部長室◇◇◇

 

 

 

捕食した素材をリスト化してターミナルで確認し、品薄になってきていた雷系素材が補充出来たことに満足しながら支部長室に入る。特務の内容を聞く時にいつも思っていたが、やっぱりいつも通り、パチパチカチャカチャしながら忙しなく指を動かしている榊支部長が居た。

地味にうるさい。

 

いつもその状態のまま淀みなく会話の受け答えができるのを見ていて、この人完全な並列思考出来てる説が俺の中にある。

 

「予想より382秒遅かったね。何かあったかい?」

「ツバキさんにカレルが説教されてるのを見てました」

 

ツバキさんの後ろから煽り顔で首から上だけ上下にぴょこぴょこしたり足腰の動きだけで回転運動したり『見よ!この!無駄の無い!無駄にイラッとくる無駄な動き!!』してたりとかしてました。

楽しかったです。

 

「……ああ、彼か。同情でもしたかい?」

「まさか」

 

おどけるように肩を竦めてくすりと笑う。

ゴッドイーターは、常にアラガミと命の奪い合いをする仕事だ。仮にも命をかけて戦っている俺らの仕事を賭けにした奴には同情する余地もなく。

というか博士、あんた支部長になってから権限増えて、今は監視カメラ自由に覗き見できるだろ。

そんな視線に気づいたのか、榊博士はくすくすとこちらを見て笑っていた。

 

ため息をついて首を振る。

それよりも本題だ。俺はどこに飛ばされるかなっと。

 

「で、榊支部長?俺は一体どこに向かうんで?」

 

おそらくは、しばらく帰って来れないような辺境の支部に飛ばされるだろうな、とか予想して榊博士に問いかける。

で、ポロッと俺が居ない間に何やるのか言ったりとかしてくれないかなー。

 

「ふーむ、こちらとしても色々と考えたんだけどね……君の経歴を振り返って見たが、やはり君には士気やリーダーシップ、単純な個の強さなど戦力的な意味で極東支部に強い影響力がある。そこで君の遠征の表面的な理由を覚えているかね?」

「えっと、確か……『アラガミに対抗しうるゴッドイーターの数が少数の、または実力が不足している支部へと赴き、現地のゴッドイーターの育成、指導による支援』くらいなら」

「うん、それが分かっていれば十分だよ。知ってとのおり極東のアラガミは、フェンリル本部が調査した限りどの支部よりも危険度が高い。まぁ要約するに、ここで戦い慣れている君にとっては、他の支部で戦うアラガミは取るに足らない存在だろうということだ」

「つまり?」

「率直に言うと、君に他支部で教官役の真似事をしてもらいたい。極東と違って至極簡単な任務ばかりで済むはずだし、君の休養にもなると思うが、どうかな?」

 

ははーん?なるほど?つまりそういう事か。

博士が言いたいのはこうだ。

『私がやりたいことには時間が掛かる。なので、育成や指導を指示することで時間を稼がせて貰うよ。その間に研究が進めば良し、完成まで至ればさらによし』

とこんな感じだろう。

 

「加えて、君の神機にも長期的なメンテナンスに入って貰うため、私とリッカ君で用意した実験機の使用をしてもらうことになる」

「長期メンテナンス、ですか。理由は?俺の神機は、毎夜リッカと格納庫で丁寧に手入れしているはずなんですが」

「知っているよ。君が最近、神機のオラクル工学にも手を出していることを含めてね。だが、異常が見られたのは神機の本体、心臓部とも言えるアーティフィシャルCNSなんだよ」

 

ああ、なるほど。それじゃ、まだオラクル技術学の浅い俺は手出しできない場所だ。理由付けにはうってつけだな。

 

それに、俺の強みは神機そのものにもある。戦力低下による長期滞在になることも見越しての事か。

ッチ、流石博士だ。厄介な条件をつけてきやがった。

それに、その実験機ってのにもなんか仕掛けありそう……

 

「ま、その程度なら引き受けますよ。神機の件も了解しました」

「うむ、ありがとう。そして君の休養先だが————ドイツにある中央ベルリン支部だよ」

 

めっちゃ辺境の支部じゃねえかよちくしょうが。

まぁ、やるようにやれば、なるようになる……かな?

 

 

 

◇◇◇榊博士side◇◇◇

 

 

 

「ふぅむ、やはり君は……」

 

私は、彼の出ていった扉を睨みながら(狐目なので眉間に皺を寄せている様にしか見えないだろうが)自分の思考を纏めていく。

 

「バイタルチェックの………… オラクルとの親和性……… しかし彼は…… いや彼の細胞は…… アラガミ化とはまた違う……ふむ、実に興味深い。興味深いが、実に危うい」

 

ここ数週間、彼のバイタルチェックの結果をパーソナルデバイスに表示する。

そこに出てくる数字は、まさに『異常』。

 

「瞬間的なオラクルの増強、回復自己強化の促進……麻酔も効きにくくなっているような……いや違う。投与された時点から捕食されているのか」

 

オラクル細胞というものはあらゆるものを『捕食』する。それは共存している細胞すらも捕食対象の範疇に入る。にもかかわらず、彼の体に取り込まれているオラクル細胞は、侵食行動を受けて食われた細胞の代替として人の細胞と同じ働きをする。

 

彼の体……いや、彼に限らずだが、ゴッドイーターという存在は、言い換えればオラクル細胞による侵食を受けている人間を治療法を模索しながら応急処置している状態と言っても過言ではない。

が、しかし彼のバイタル値そのものには異常は無い。

うーむ、実に謎だよ。いち研究者として解き明かしてみたいね。

 

「彼ならばあるいは……いや、人の身で神に至る、しかしてそれは神というものだろうか?疑問は尽きないが、彼が扉を開く鍵になってくれることを祈るのみ、か」

 

やはり、彼の体は実に興味深い。それと同時にとても危ういものでもあるのだがね?

 

ヨハン……もしかしたら、人が神に至るまでそう遠くはないかも知れないよ。

 

 

 

◇◇◇神機整備・楠リッカside◇◇◇

 

 

私は頭を悩ませる。

ん?何でって?そりゃあ、あの無理無茶無謀の三拍子をダッシュで駆け抜けてる彼がおかs、じゃなくて彼の神機がおかしいから。

 

「ふぅ……ブレード部分の侵食配列にも異常なし。残ってるので考えられるのは変形器官と本体部分なんだけど……」

 

んんん……何が原因なんだろう?

最近まで割りと大人しかった彼の神機が、いきなり大量のオラクルを欲しがるなんて……進化?っていうか強化されたがってるのかな?

でもこの子、これ以上の強化なんて出来ないしな……

 

「リッカさん、もう半日以上神機見てますけど」

「ぉふぁあ!?」

 

ちょぉぉぉぉい!?いきなり声掛けないでよ!!

考え事中に話しかけられるとびっくりするでしょ!!

 

「整備班の掟、第三項!」

「作業の途中で声をかけない……て言っても、あんたもう朝から9時間以上にらめっこしてるんですよ?他の奴らも心配してます」

「ふぐっ」

 

うっ、痛いところを突かれて言葉が出ない……

いや、うん、ちょっと夢中になっちゃっただけでね。

 

「俺が早番で整備班入る前からいるんすけど、集中したら時間も周りも見えねぇのまっっったく変わらないですね?」

「うぅぅぅ……」

「あんたココのチームリーダーなんすからしっかりしてください」

「ごめんなさい……ゆるして?ね?」

「可愛く言ってもダメっすよ!」

 

ちっ、整備4班のオジさんはイチコロだったのに。

 

「ほっほ、あんまりリッカちゃんをイジめなさんな若人よぃ」

「あっ、オジさん!」

「尾路さん、完全に孫を見る目でリッカちゃんを庇ってますけどこの人の生活サイクル知ってますか?」

「…………無理は、いかんよ?」

 

正論で殴られてしまった……

オジさん!あなたそれでも私のおじいちゃんなの!?

と、まぁ別に、コントはそこそこにしておいて。

 

「さて、揃ったね」

「お呼びされて来ましたよっと」

「ふぉふぉふぉ」

 

この2人を呼んだのは、他でもない私だ。

オラクル工学では私以上のキャリアと知識量をもつ、今は監督役として色々と助言やサポートをしてくれる尾路さん、そして神機の整備班からは私と同じ感覚を持ってる西治さん。

 

「まっ、リッカさんの頼みですし、やってやれないこともないでしょうよ」

「リッカちゃんから手伝って欲しいと聞いて、極東で手を貸さん奴なんぞおらんじゃろうよ」

 

本当、頼もしい2人だよ。

 

「それじゃあ始めようか。今回の課題は、毎度無茶ばっかりしてるあの人の神機の調整、及び、不調の原因の調査!正直、この子以上に気難しい子はいないから、心してかかるように!」

「「おうよ!」」

 

それにしても榊博士……私がコウくんと繋がってるの知っててこの依頼回してきたな。

ごめんなさいコウくん。榊博士が何かやってるのは分かるんだけど、調べるのはしばらく時間かかりそう。

それよりも、まずは君の神機をどうにかしないといけないから。

 

「さ、正念場だね。気を張って行こう」

 

両頬を叩いて気合いを入れ直す。

待っててね。

 

 

 

◇◇◇嘆きの平原◇◇◇

 

 

 

『はい、ということでリンドウさんが大型種を討伐したので、御原大尉には残った小型種の掃討をお願いしますね!』

 

はいよーヒバリちゃん。

リンドウさんの後始末に駆り出された俺氏、遠征に持ってく実験機の試用も兼ねて単独任務に出撃す。

 

「今更ながら小型種の相手って、他の奴らも手伝わせた方が早く終わったんじゃないの?」

『皆さん色々と忙しいですから……(コウさんが遠征に行くって話があるから、その分の仕事の穴埋めに奔走してるんですけどね)』

「皆さんお仕事熱心だことで。で、なんか本音漏れてた気がするんですけど?」

『いえそんなことありませんよ? そろそろ始めてください。他の小型種もミッション領域周辺に集まってきています!』

「りょーかいっ」

 

本心だだ漏れだよぉヒバリちゃん。ゴッドイーターの聴力舐めんな。

てか周りからも集まってきてるのか。それはいけない。余計な仕事は増やさないに限る。

 

「さて……」

 

と、一言呟いて神機……実験機を一、二度振り払って背筋を伸ばす。手に持つそれは、黒い配色を基調とした、おそらくサリエル原種を材料とした神機。

 

こいつは元々、第1世代のショート型神機でちょっとした曰く付き。その神機を榊博士がお祓いと称して新型にコンバージョンしたらしいが……うん。

実験機として作り直された今は、同種のサリエルから作ったスナイパー、タワーシールドを装備した神機として俺の手元にある。

 

「……お前も災難だな。また、戦場に駆り出されるとはな」

 

こいつの元の持ち主は、過去にアラガミ化したと聞いている……その末に辿った末路も、俺の権限でも詳しく調べることは出来た。

彼女の冥福は祈るが、感傷に浸る気は無い。ある日突然、呆気なく命を取り零して死んで当然、それがゴッドイーターだ。

 

『……時間です。任務を開始してください』

「御原コウ、出撃する」

『ご武運を』

 

その日、黒に染まった神機を振るい、千に迫るアラガミの全てを斬り伏せたゴッドイーターが、静かに哭いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー【また、同じ血の味……】

 

 

 

 

 

 

 

 







オリ設定集そのいち

・強個体アラガミ(強化・固有変異体)
通常のアラガミ(極東基準)が更に強くなっているやつ。
硬くてデカくてタフい。強個体のヴァジュラがタイマン張って第二形態になったピターの羽をもぐもぐしていくって言えば分かるはず?

ちなみに今の極東基準でオウガテイル通常種一体は他支部基準で中型種2体分くらい。強個体オウガテイル=他支部の大型種並の硬さとタフさというインフレ。ノヴァ許すまじ。

接触禁忌種の強個体?
普通にわいてくる接触禁忌種をおやつ代わりに食べてる化け物。ただし極東では日常茶飯事で主人公及び第一部隊を筆頭に狩られている。




▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。