「あなた」だけが知っているウマ娘:「あなた」が主役の物語 作:ぴちかー党
風邪を引いてしまったあなたに、ライスは甲斐甲斐しく看病をしているようです
あなたはトレセン学園に住む少し病弱なウマ娘。正確に言えば、あなたは同室のライスシャワーより一歳年下。今はもう夜明け、というのは、既に校内マイクが起床放送をかけており、他の部屋のウマ娘達が慌ただしく起き始めている。
あなたも直ぐに身を起こそうとする。しかし、まぶたは重く身体中に感じる妙な倦怠感によって上手く身体を動かせない。あなたは、そんな状態のまましばらく夢うつつをさまよっている。そんなとき、不意におでこにひんやりとした誰かの手のひらが当てられる。
「熱は・・・まだあるよね?あっ、お、起こしちゃったよね。ご、ごめんなさい!!」
あなたに申し訳なさそうに謝る同室のウマ娘ライスシャワー。あなたのほうが年下だが何故か敬語で接している。勿論あなたが特段怖いからというわけでなく、どんなウマ娘に対しても彼女はこうである。
「ここに着替えと、スポーツドリンク置いておくね。あと、えっと他に欲しいものないかな?」
「ありがとう」あなたは、蚊の泣くような声でお礼をいう。そして、不意に今日が休日であることを思いだし、もう大丈夫だから気にせずお出かけしてきてといったニュアンスの言葉をライスに伝える。
「ライスは大丈夫、だよ?今日はお出かけの予定も断ってきたから。何か用があればいつでもライスを頼ってね」
あなたにとって熱発は珍しくもないこと。こんなことで彼女の休日を潰すのはしのびない。やさしいあなたはそう考え「大丈夫だから」と先ほど同じ言葉を彼女に伝える。しかし、彼女は頑なにあなたのそばを離れない。
あなたと彼女しばらくの間、「大丈夫」と「ダメだよ」のやり取りが何度も続けられる。そして、何度目かのやりとりのあと彼女にしては珍しく少し語気を強め、あなたにかたりかける。
「ダメだよ!そうやって無理して風邪が悪化したことがあるのライス知ってるんだよ。だから無理しないで、これはライス・・・お、お姉ちゃんからのお願いだよ!!お姉ちゃんのお願いは絶対聞かないと、ダメなんだよ」
あなたは思わず微笑んでしまった。
彼女の口からでた「お姉ちゃん」それは彼女には少し似つかわしくない、彼女なりに精一杯虚勢を張り、あなたを納得させるために選んだ言葉が、その言葉を言う彼女の恥ずかしげな態度が、妙に可笑しくそして微笑ましかった。
あなたは、彼女の強情さに負けてついに観念した。
そして、幾分か楽になったのだろう。あなたは彼女に・・・いやお姉ちゃんにお粥を、卵粥をお願いする。
彼女は嬉しそうに頷き「お姉ちゃんに任せて」と心強い一言ともに、キッチンへ駆けていく。そして、すぐに悪戦苦闘しているであろう彼女の困惑した声があなたの耳にも聞こえてくる。
「あっ・・・ど、どうしよう。卵の殻が一緒に入っちゃった~。あ、これお塩じゃなくて、お砂糖だ。どうしよう・・・同じくらいお塩を入れれば中和されるよね。多分」
そんな、不穏な言葉があなたの耳にも伝わってくる。あなたは少し心臓がドキドキしている。しかし、それは決して彼女の料理が悲惨な結果になるであろうことを今から予想しているからではない。
病弱なため心臓の動悸が収まらないのだとあなたは自分自身に言い聞かせている。
「で、できましたー。お姉ちゃん特性の卵粥だよ。さめないうちに召し上がれ」
見てくれは、文句の付け所がない。ライスシャワーが作ってくれた100点の卵粥。あなたは、先程の動悸が杞憂であることに安堵する。真っ白な蓮華で粥を一すくいし口に運ぶ。
がりっ、という何やら粥には似つかわしくない食感にあなたの蓮華は動きが一瞬停止する。ライスが心配そうにあなたの表情をうかがっているのが目に入る。
ここで、少しでも残してしまえばきっと彼女は悲しむだろう。
それがわかっているあなたは、極力そのお粥を租借せず。なかば飲み物のように胃袋に納めていく。「ご馳走さま」あなたは、精一杯の微笑みを浮かべ「美味しかった」と彼女に伝える。
「ほ、本当ですか・・・よかった~。あ、まだまだいーっぱいあるからおかわり持ってくるね」
彼女の言葉にあなたは「まって・・・」というも、既に笑顔でキッチンへ駆け出していった彼女には届かない。
そして、また土鍋に沢山詰められた粥をあなたのもとへ運んでくる。あなたは少し心臓がドキドキしている。しかし、それは決して彼女の料理が悲惨な結果になるであろうことを今から予想しているからではない。
病弱なため心臓の動悸が収まらないのだとあなたは自分自身に言い聞かせている。
次回は、エアグルーヴとあなたの新婚生活を作成予定ですので宜しければご覧ください