もしも炭治郎の下に義勇と実弥が来ていたら   作:レイファルクス

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第1話

 

 

時は大正、季節は冬、場所は雲取山(くもとりやま)

 

 

そこに住む竈門炭治郎(かまどたんじろう)は妹の禰豆子(ねずこ)を背負って下山している真っ只中だった。

 

 

ことの始まりは前日、炭治郎は麓の村まで炭を売りに山を降り、その帰りの中、途中の家に住んでいる三郎(さぶろう)と言う老人に止められ、彼の家で一泊した。

 

 

そして早朝、三郎の家を出た炭治郎は急いで家まで戻ると、そこには末っ子の六太(ろくた)を抱き抱えた禰豆子が血まみれで家の外におり、中は母の葵枝(きえ)と次男の竹雄(たけお)、次女の花子(はなこ)、三男の(しげる)が同じく血まみれで死んでいた。

 

 

炭治郎は禰豆子の体に触ると、まだ温もりがあり、生きていることが分かると、禰豆子を背負い、医者に見せるために下山を開始した。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

その頃、雲取山に鬼が出没すると言う情報を得た冨岡義勇(とみおかぎゆう)不死川実弥(しなずがわさねみ)は山の中腹辺りにいた。

 

 

「おィ、本当にこの山に鬼が出るんだろうなァ?」

 

 

「その真偽を確かめる為に来たんだ。その為に実弥に同行をお願いしたんだ」

 

 

二人は周囲を警戒しながら歩を進めていると、一軒の家を見つけた。

 

 

「丁度良かった。あの家で話を聞いてみよう」

 

 

二人は歩く速度を速めて家に近づく。すると血の匂いが風に乗って二人の鼻腔を擽る。

 

 

二人は『もしや』と思い、駆け出す。そして二人が目にした光景は惜しくも炭治郎が見た光景と同じだった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

(ひで)ェな、こりゃ」

 

 

実弥は死体を見て呟いていた。

 

 

「実弥、こっちに来てくれ!」

 

 

義勇が実弥を呼び、実弥は義勇の下まで来る。

 

 

「"これ"を見てくれ」

 

 

実弥は義勇が指を指す箇所を見ると、そこには足跡があった。

 

 

「足跡…か。大きさから見て大人じゃねェ、子供の(モン)だなぁ」

 

 

実弥は足跡の大きさからその主を推測する。足跡は家から離れて行く感じで付けられていた。

 

 

「俺はこの足跡を追う。実弥は家族を弔ってくれないか?」

 

 

「しゃ~ねぇなァ。一つ貸しだかんな?」

 

 

「感謝する」

 

 

義勇は足跡の主を追いかけ、実弥は竈門一家を弔うために穴を掘り始めた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「こんなもんかァ」

 

 

実弥は家族全員が入る程の大きさと深さがある穴を掘り終え、一息ついていた。そこに

 

 

生殺与奪(せいさつよだつ)の権を他人に握らせるな!!』

 

 

義勇の叫び声が響いた。

 

 

「今の声…、義勇か。アイツがあんな大声で叫ぶなんて、只事じゃねぇな。…仕方ねぇ、ちょっくら行ってみっか」

 

 

実弥は義勇が向かった方向へ駆け出した。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

実弥が穴を掘っている頃、義勇は足跡の主に追い付いていた。しかし、その光景に我が目を疑った。

 

 

その光景とは、『女の鬼』が少年を襲っている所だった。

 

 

義勇は少年、炭治郎を助けるために抜刀し、女の鬼、禰豆子に向かって刀を振るった。

 

 

しかしその刀は空を切った。何故なら、『炭治郎が禰豆子を庇った』からだった。

 

 

「なぜ庇う?」

 

 

「妹だ、俺の、妹なんだ」

 

 

炭治郎は未だに暴れる禰豆子を抑えながら義勇に説明をする。

 

 

それ(・・)が妹…か?」

 

 

義勇は再び炭治郎に近づく。炭治郎は禰豆子を庇おうとする。しかしその場に女の鬼は"いなかった"。何故なら『義勇が禰豆子を捕まえていた』からだった。

 

 

「動くな。俺の仕事は鬼を斬ることだ。勿論お前の妹の頚もはねる」

 

 

「待ってくれ、禰豆子は誰も殺してはいない!俺の家にはもう一つ嗅いだことの無い誰かの匂いがした。みんなを殺し…たのは多分そいつだ!」

 

 

「禰豆子は違う、どうして今そうなった(・・・・・)かわからないけど、でも」

 

 

「お前は知らないようだから言っておく。"人喰い鬼"には"始祖"と呼ばれる存在がいて、そいつの血を体内に注ぎ込まれるとお前の妹のようになる。そうして人喰い鬼は増える」

 

 

「禰豆子は人を喰ったりしない!」

 

 

「今のお前の言葉に説得力は無いぞ。思い出してみろ、お前の妹は何故お前を襲っていた?それはお前を餌としか見ていなかったからだ」

 

 

義勇は次々に炭治郎の言葉を論破する。

 

 

「違う!!俺のことはちゃんとわかっているはずだ!俺が誰も傷つけさせない!きっと禰豆子を人間に戻す、絶対に治します!」

 

 

「治らない。鬼になってしまったら、人間に戻ることは無い」

 

 

「探す!!必ず方法を見つけるから殺さないでくれ!家族を殺した奴も見つけ出すから!俺がちゃんとするから!だから、だから…」

 

 

義勇は炭治郎の言葉を無視して禰豆子に刀を突き刺そうとする。

 

 

「やめてくれ!!やめてください……。どうか妹を殺さないでください……。お願いします…。お願いします…」

 

 

炭治郎はその場で土下座をして禰豆子を助けるようお願いをする。

 

 

「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」

 

 

しかし義勇は炭治郎の姿を見て激怒した。

 

 

「惨めったらしく踞るのはやめろ!そんなことが通用するならお前の家族は殺されてない!」

 

 

「奪うか奪われるかの時に主導権を握れない弱者が、妹を治す?仇を見つける?笑止千万!!」

 

 

「弱者には何の権利も選択肢も無い!悉く強者に捩じ伏せられるのみ!」

 

 

「妹を治す方法は鬼なら知っているかもしれない、だが、鬼共がお前の意志や願いを尊重してくれると思うなよ!」

 

 

「当然俺もお前を尊重しない、それが現実だ!なぜさっきお前は妹に覆い被さった?あんなことで妹を守ったつもりか!?」

 

 

そして義勇は炭治郎に刀の切っ先を向けて

 

 

「なぜ斧を振らなかった?なぜ俺に背中を見せた!!そのしくじりで妹を取られている!お前ごと妹を串刺しにしてもよかったんだぞ!!」

 

 

その刀を禰豆子に刺した。その行動に怒った炭治郎は雪の下にあった石を義勇に投げる。

 

 

義勇はその石を刀の柄を使って弾く。

 

 

炭治郎は木々の間を走り、更に石を投げ、斧を持って義勇に襲い掛かる。

 

 

義勇は石を避け、向かって来る炭治郎を刀の柄を当てて気絶させた。その時、義勇は炭治郎が斧を"持っていない"ことに気づいた。

 

 

義勇へ斧が何処にあるのか探ると

 

 

「義勇、上だ!」

 

 

実弥の声が聞こえ、上を向くと、斧が回転しながら自分の方へ落ちてくる所だった。

 

 

義勇は首を傾け、斧が頭に刺さるのを防いだ。

 

 

炭治郎は木々の陰に入った時、斧を上へ振り投げ、あたかも斧を持っているように見せていたのだった。

 

 

義勇が呆気に取られているのを好機と思ったのか、はたまた、義勇の拘束が緩んでしまったのか、禰豆子が暴れ出し、義勇から離れ炭治郎の下へと向かった。

 

 

義勇と実弥は『少年(炭治郎)が喰われる』。そう思った。だが、二人のその予想は思わぬ方向で裏切られた。

 

 

何と禰豆子は『炭治郎を庇い、義勇に威嚇』していたのだ。

 

 

義勇はこの兄妹に"何か"を見出だしたのか、刀を納刀し、自分に向かって来る禰豆子に手刀を首筋に当て、気絶させた。

 

 

「義勇、大丈夫かァ?」

 

 

「実弥、俺は大丈夫だ。それとさっきは斧の位置を教えてくれて助かった」

 

 

実弥は義勇に駆け寄り、無事を確認する。義勇は実弥の質問に答え、助けてくれたことに礼を言った。

 

 

「気にすんなァ。……それより、コイツらどうすんだァ?」

 

 

実弥は義勇が気絶させた二人を一瞥する。

 

 

「実弥も見ていたと思うが、妹は兄を喰うどころか守ろうとした。もしかしたら、今までの鬼とは"何かが違う"のかもしれない。俺はそれに賭けてみようと思う」

 

 

義勇は炭治郎と禰豆子に感じたものを実弥に伝えた。

 

 

「コイツらが俺たちに"新しい風を吹かす"ってか?お前も物好きだねェ。なら、俺も賭けてみるか。義勇が感じた"何か"ってやつに」

 

 

「……感謝する」

 

 

義勇と実弥は互いの顔を見て笑っていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

義勇に気絶させられた炭治郎は母の葵枝の言葉で目が覚める。すると、目の前に竹でできた口枷を咥えさせられた禰豆子が横で寝ていた。しかも、体を冷やさないように羽織を着せられていた。

 

 

「起きたか」

 

 

義勇の声がしたのでびっくりした炭治郎は禰豆子を守るために抱き締める。そして視界の先に入ったのは、かまくらの中で餅を火鉢で焼いている義勇がいた。

 

 

狭霧山(さぎりやま)と言う山の麓に住んでいる鱗滝左近次(うろこだきさこんじ)と言う老人を訪ねるんだ。俺の名、冨岡義勇の名を言えばわかってくれる」

 

 

「それと妹を絶対に陽光の下に出すなよ?鬼は陽光を浴びれば灰になって崩壊する。妹を助けたければ、陽の当たる所へ連れ出すな」

 

 

義勇は再び火鉢で餅を焼き始めた。しかもよく見ると、餅の他にもおにぎりが焼かれていた。

 

 

「あの…、その火鉢は…?」

 

 

疑問に思った炭治郎は恐る恐る義勇に質問をする。

 

 

「この火鉢はこの先にある家から失敬してきた物だ。今俺の"親友"が家の者たちを丁重に弔っている所だ」

 

 

「………(この人、何勝手に俺の家の物を使っているんだ!?)」

 

 

義勇は炭治郎の質問に答えるが、炭治郎は勝手に家の物を使われていることに困惑していた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「よォ、待ってたぜェ」

 

 

炭治郎は気絶から覚醒した禰豆子を連れて家に戻ると、そこに実弥が縁側に座って待っていた。

 

 

「俺は不死川実弥、冨岡義勇の親友だ」

 

 

実弥は炭治郎が質問をする前に自己紹介をした。

 

 

「ではあなたが俺たちの家族を弔ってくれたんですね、ありがとうございます」

 

 

炭治郎は実弥に頭を下げる。

 

 

「気にすんなァ。あのままじゃ寒くて可哀想だったからなァ。家族の墓はそっちに作った。家を出る前に手でも合わせていきなァ」

 

 

実弥は墓がある方を指で差し、立ち上がる。

 

 

「おっと、忘れる所だったぜェ。おい坊主、"これ"を持っていきなァ」

 

 

実弥は懐から脇差し(極道やチンピラ等が持つドスのこと)を差し出した。

 

 

「俺や義勇が持っている刀と同じ"素材"で造られた脇差しだ。ソイツで鬼の頚を斬れば倒せるぜェ。まァ、"お守り"代わりとして持っときなァ」

 

 

実弥は炭治郎に脇差しを手渡すと、ヒラヒラ手を振って去って行った。

 

 

炭治郎は実弥から受け取った脇差しを見て懐にしまい、実弥が去った方を向いて頭を下げた。その後、家から必要な物だけを持ち出し、墓の前で手を合わせ、禰豆子を連れて家を去った。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「待たせたなァ」

 

 

炭治郎の家から去った実弥は義勇がいるかまくらの中に入った。

 

 

「そんなに待っていないから安心してくれ。それに丁度餅とおにぎりが焼き上がった所だ」

 

 

実弥が義勇の手元を見ると、丁度焼き上がった餅とおにぎりがあった。

 

 

二人はかまくらの中で餅とおにぎりを頬張り、食べ終わった後、後片付けをし、かまくらを崩して下山した。

 

 

因みに火鉢は雪で冷やした後、実弥が元あった場所に戻していった。

 

 

 

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