もしも炭治郎の下に義勇と実弥が来ていたら 作:レイファルクス
緊急柱合会議から更に一ヶ月後、炭治郎は任務に勤しんでいた。
その間、珠世から手紙が届いていた。
内容は猗窩座の妹分である零余子が珠世の所で働いていると言ったものだ。
零余子は愈史郎に代わり家事を担当しているらしく、掃除や洗濯、患者の食事作りをやっており、愈史郎は珠世の助手としての仕事に専念できて喜んでいたと書かれていた。
更には猗窩座の動向も書かれており、珠世の診療所を拠点に、他の上弦の鬼の居場所を探るため、旅をしているとのことだった。
しかも二人は珠世にお願いして珠世や愈史郎同様、血を少量飲むだけで満腹になるように体を弄くったらしい。それだけでは無く、珠世に治療の手解きをも受けているとのことだった。
猗窩座に関しては毒について学んでおり、当人曰く
「俺が毒を知ることで治療をすれば、
とのことだった。
それを聞いた珠世は感銘を受け、お互いの時間が取れる日には付きっきりで教えていたそうな。
因みにその手紙をしのぶに見せると
「姉の夢を叶える
と涙ぐんでいた。それからは、珠世宛ての手紙に二人の力になれればと思い、しのぶからの知識を書き込み、それを読んだ二人は更に医学に励んでいた。
そしてこの日は炭治郎が単独任務を終えて蝶屋敷へと戻っている最中だった。炭治郎が蝶屋敷の門前に差し掛かる所で、何やら騒がしい声が聞こえたので、疲れている体に鞭を入れ、走り出した。そして炭治郎が目にしたのは
「放してください!私っ…、この子はっ…」
「うるせぇな、黙っとけ」
天元がアオイを俵担ぎをし、なほを脇に抱えている光景だった。
「カッ、カナヲ!」
アオイはカナヲに助けを求めるように手を伸ばす。カナヲはコインでアオイたちを助けようか決めようとするが
『心のままに』
炭治郎がかつて自分に言ってくれた言葉を思い出した。そしてカナヲはアオイの手となほの服を掴まえた。
「地味に引っ張るんじゃねぇよ。お前は先刻指令がきてるだろうが」
天元がカナヲに手を放すように言うが、カナヲは手を放さなかった。
「何とか言えっての!!地味な奴だな!!」
痺れを切らせた天元が大声を出しながら歩く。だがカナヲは掴んだ手を放さず、引き摺られていた。それを見たすみときよも、天元に突撃し、足や頭に取り付いた。
「女の子に何をしているんだ!手を放せ!!」
そこに炭治郎が到着した。しかし炭治郎はアオイとなほを担ぎ、カナヲたちにしがみつかれている天元を見て、呆けてしまった。
「炭治郎さん、この人、人拐いです~!助けてください~!」
すみが炭治郎に助けを求めた。炭治郎は天元に頭突きをしようとするが、天元は回避した。その時にきよはカナヲが、すみは炭治郎が庇い、二人は怪我を負わずに済んだ。
「愚か者、俺は"元忍"の宇随天元様だぞ。その界隈では派手に名を馳せた男、てめぇの鼻糞みたいな頭突きを喰らうと思うか」
天元は門の屋根の上に逃げ、自分のことを話した。
「宇随天元ってあの"幼女好きの人拐い変態地味柱"の宇随天元さん?」
「ちょっと派手に待ちやがれ!!誰が"幼女好き"だ!?誰が"人拐い"だ!?誰が"変態"だ!?誰が"地味"だ!?言ってみろ!」
「「「「あなた」」」」ビシッ
「どはぁ!?」
天元は炭治郎たちに質問をすると、炭治郎、カナヲ、すみ、きよの四人が天元を指差し、天元は屋根の上からずっこけた。
その拍子にアオイとなほを手放してしまい、二人を炭治郎が自分の体をクッションにして救出した。その時に偶然にも、炭治郎はなほとキスをしてしまっていた。
「俺は"ド派手な音柱"だ!!"幼女好き"でも"人拐い"でも"変態"でも"地味"でもねぇ!!」
「「「「「「事実でしょう?」」」」」」ズバッ
炭治郎、カナヲ、すみ、きよに加え、アオイとなほまでもが天元を罵倒した。その口撃を受けた天元は
「ちくしょう…、俺は幼女好きでも、人拐いでも、変態でも、地味でもねぇのに…」
その場に蹲り、"の"の字を書いてしまった。
…
……
………
「粗茶です、どうぞ」ドンッ
「あっ…、ああ…、すまねぇ」
その後炭治郎たちは蝶屋敷に入り、天元の事情聴取を始めることにした。未遂に終わったが、誘拐されかけたアオイはまだ怒っており、湯飲みを天元の前でわざと音を立てて置いた。
天元は申し訳無さそうにお礼を言って湯飲みの中にあるお茶を飲んだ。
ズズッ「ブハァ!?、ド派手に"苦い"じゃねぇか!?」
アオイが天元に出したお茶は機能回復訓練で使用している薬湯だった。
「それで宇随さん、あなたは何故アオイさんたちを誘拐しようとしたんですか?」
炭治郎はアオイから受け取った"玉露"を一口飲み、天元に事情の説明促す。
因みにカナヲは任務に出ていった。カナヲはアオイとなほのことが気になって任務を放棄しようとしていたが、炭治郎がそれを止めさせた。そしてカナヲはアオイとなほをそれぞれ抱き締めてから出立した。
「ゲホッ、ゲホッ。お前は上弦の陸が遊郭に潜んでいること、俺の嫁たちが調べていることを知ってるだろ?実はここ数日、その嫁たちからの連絡が途絶えていてな。それで潜入してもらうために女性の隊員が必要だったんだよ」
天元はアオイたちを誘拐しようとした経緯を話した。
「それで継子では無い隊員だったら、胡蝶の許しをもらわなくていいかなぁ…と思ったんだが…」
天元はちらりとアオイとなほを覗き見る。アオイとなほは即座に炭治郎の背中へと退避し、炭治郎は頭を抱えた。
「宇随さん、なほちゃん、きよちゃん、すみちゃんの三人は隊員ではありません。その証拠に、隊服を着てはいないじゃないですか。それにアオイさんは鬼に対してトラウマを抱えている上に、蝶屋敷の"要"なんですよ?」ズバッ
「そういったことをちゃんと確認されましたか?四人の内、一人でも欠けたら蝶屋敷は機能しないんですよ?それすらも分からないのですか?あぁそっか、分からないから先程の暴挙をしたんですね」ズバッ
「そんなんだから"幼女好きの人拐い変態地味柱"なんて呼ばれるんですよ」ズバッ
炭治郎は天元の行動にズバズバと口撃をする。アオイたちは炭治郎に同意するかのように頷いた。
「そんな呼び方をするのはお前らが初めてだからな!?それに何度も言うが俺は"幼女好き"でも"人拐い"でも"変態"でも"地味"でもねぇ!見ろ、このド派手な姿を!」
天元は立ち上がってポーズを取りながら自分の姿を見せた。
「この姿、正に神に等しい!そう、俺は派手を司る"祭りの神"、音柱の宇随天元だ!」
天元はビシッとポーズを決める。しかしアオイたちは冷めた目で天元を見ており、炭治郎に至っては
「すみません。何を言っているのか、わかりません」
と口にしていた。
「お前ら…、俺への当たり、冗談抜きでキツくないか?」
天元は若干涙目で炭治郎たちに質問をする。
「「「「「幼女好きの人拐い変態地味柱のあなたにはこれで丁度良いくらいです」」」」」
炭治郎たちの息がピッタリ合った言葉に、天元は真っ白に燃え尽きてしまった。
…
……
………
その後、天元は炭治郎に土下座しながら協力をお願いし、炭治郎はそれを仕方なく承諾。同時に任務から戻って来た善逸と伊之助にも協力をお願いし、四人は蝶屋敷を出立、遊郭へと向かった。
その途中、天元たちは藤の花の家紋の家に寄り、準備を整えがてら、作戦会議を開いた。
「遊郭に潜入したら、まず俺の嫁たちと接触しろ。俺は遊郭の屋敷の外から鬼を探す」
天元の作戦に善逸が待ったを掛けた。因みに炭治郎は出された茶を啜り、伊之助はお茶請けのお菓子を貪っていた。
「ちょっと待った!嫁
「あぁ言って無かったな。俺は嫁が
「その方々はみんな俺たちより"
炭治郎が天元の嫁の年齢を聞く。
「お前、まだそれを引き摺っているのか…。歳は俺と差程変わらん」
天元が呆れ気味に炭治郎の質問に答えた。善逸が炭治郎の質問に疑問を浮かべていると
「宇随さんは"幼女好き"で、"変態"で、"地味"な"人拐い"だから」
炭治郎が善逸の疑問に答えると、善逸は汚物を見るような目をして天元から遠ざかった。
「もういい加減にしろよ…。とりあえず怪しい店は既に絞ってある。まず"ときと屋"、次に"荻本屋"、最後に"京極屋"の三件だ。ときと屋には"須磨"、荻本屋には"まきを"、京極屋には"雛鶴"が潜入している」
天元は炭治郎のディスりを無視することを決めた。そして怪しい店の店名と潜入している嫁の名前を伝えた。その後藤の花の家紋の家の者が天元に言われた物を持って入室し、遊郭へ潜入するための準備が始まった。
…
……
………
男と女の見栄と欲、愛憎渦巻く夜の街。
遊郭・花街はその名の通り一つの区画で街を形成している。
ここに暮らす遊女たちは貧しさや借金などで売られてきた者が殆んどで、たくさんの苦労を背負っているが、その代わり衣食住は確保され、遊女として出世できれば裕福な家に身請けされることもあった。
中でも遊女の最高位である"花魁"は別格であり、美貌・教養・芸事全てを身につけている特別な女性。
位の高い花魁には簡単に会うことすらできないので、逢瀬を果たすため男たちは競うように足繁く花街に通うのである。
ここは『ときと屋』。そこには三人の"少女"と一人の"男性"がいた。
「こりゃまた…、随分と不細工な子たちだねぇ…」
ときと屋の主人と奥さんの前には、女装させられた炭治郎たちがいた。しかし、その顔は相当酷く、まるで『初めて化粧をした子供』のような化粧だった。
三人を見ていたときと屋の主人は、四人に帰ってもらおうとするが、奥さんが頬を染めて『まぁ一人くらいならいいけど』と言った。
「じゃあ一人頼むわ。悪ィな奥さん」
無事に少女を売ることができた男性・天元が奥さんに礼を言った。因みに天元は今、化粧を落とし、素顔の状態を晒していた。その素顔は、誰もが見惚れる美形だった。
そしてときと屋の奥さんは真ん中の少女・炭子(炭治郎)を選び、残った三人はときと屋を後にした。
「ほんとにダメだなお前らは。二束三文でしか売れねぇじゃねぇか」
天元は猪子(伊之助)と善子(善逸)に向かって愚痴を溢す。善逸は『アンタとは口利かない』と言っていた。その理由が天元の素顔にあった。化粧を落とした天元の素顔は美形で、善逸はそれに嫉妬していたのだった。
「オイ!なんかあの辺人間がウジャコラ集まってんぞ!」
伊之助が指差した所を見ると、確かに人混みができていた。
「あ~、ありゃ
天元が人混みの理由を察した。
「あれは確か…、ときと屋の鯉夏花魁だ」
そこには左右を男女に囲まれた花魁が歩いていた。
「一番位の高い遊女が客を迎えに行ってんだよ。それにしても派手だぜ、いくらかかってんだ?」
天元は以前潜入した時に入手した"番付"を見ながら伊之助に説明をする。その時に善逸が鯉夏花魁のことを"天元の嫁"と勘違いをして、血の涙を流しながら天元に迫った。しかし天元は持っていた番付を善逸に見せながら善逸を殴った。
「歩くの遅っ。山の中にいたらすぐ殺されるぜ」
伊之助は耳をほじりながら感想を述べる。しかし、その伊之助を凝視している女性が伊之助の側にいた。
「ちょいと旦那。この子うちで引き取らせて貰うよ、いいかい?」
伊之助を凝視していた女性は天元に声をかける。
「荻本屋の遣手…、アタシの目に狂いはないのさ」
女性は目を狐のように鋭くし、笑っていた。
「荻本屋さん!そりゃありがたい!」
天元は渡りに船と言った感じで伊之助を売った。
「達者でな猪子~」
天元は荻本屋の女性に連れられる伊之助に手を振る。そして残った善逸を一瞥する。
「(ヤダ!アタイだけ余ってる!?)」
善逸は何故か女言葉を使っていた……。