もしも炭治郎の下に義勇と実弥が来ていたら   作:レイファルクス

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第14話

 

 

季節は春。

 

 

場所はとある家。

 

 

座敷には一人の女性が横になっており、縁側に一人の侍が座っていた。

 

 

そこにおにぎりとお茶を乗せたお盆をもった人が現れ、侍の側にお盆を置いた。

 

 

侍の腕には赤ん坊が抱かれており、穏やかな寝息を立てていた。

 

 

侍はお茶を一口啜ると、お盆を持ってきた人を見る。その顔には額に炭治郎と同じ痣があり、耳にはこれもまた炭治郎と同じ花札のような耳飾りをしていた。

 

 

そして侍は立ち上がり、腰に刀を差し、家を去った。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

炭治郎はそこで目が覚めた。今まで見ていたのは炭治郎の夢だった。

 

 

今の炭治郎の姿は、両腕に点滴の管を刺し、頭を含む数ヶ所に包帯が巻かれていた。

 

 

バリンッ

 

 

何かが割れる音がして、炭治郎は視線をそちらに向ける。そこにはカナヲが立っており、足下には割れた花瓶があった。

 

 

花瓶の破片と一緒に水と花があることから、どうやらカナヲは花瓶に花を生け、炭治郎がいる部屋に飾ろうとして入室した所で、炭治郎が目を覚ましたことを知って、持っていた花瓶を落としてしまったようだ。

 

 

「…大丈夫?戦いの後、二ヶ月もの間意識が戻らなかったのよ」

 

 

カナヲから説明を受けた炭治郎はどれだけの間寝ていたのか分かった。

 

 

「目が覚めて…、良かった」

 

 

カナヲは炭治郎の顔を見て微笑む。そして部屋の片隅には、茶々丸がおり、二人の様子を見ていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

丁度その頃、隠の隊員の一人である『後藤』が(当時では)高級菓子のカステラを持って炭治郎の部屋へと向かっていた。

 

 

そして炭治郎の部屋の戸が開いてることに気づき、入室すると戸の側に割れた花瓶が散乱しており、それを箒とちりとりを持ったカナヲが片付けている所だった。

 

 

「あっ、後藤さん」

 

 

片付けの途中でカナヲが後藤に気づいた。

 

 

「後藤さん、丁度良かった。今炭治郎が目を覚まして、アオイさんたちを呼びに行こうと思ってたの。でも、花瓶を割ってしまって片付けている所だったの」

 

 

カナヲは炭治郎が目を覚ましたことを後藤に伝える。

 

 

「それで、後藤さんにお願いがあるの。私は花瓶の破片を処理するから私の変わりにアオイさんたちに炭治郎が目を覚ましたことを伝えて欲しいの」

 

 

カナヲは後藤にアオイたちに炭治郎のことを伝えて欲しいことを頼んだ。後藤はそれを承諾し、サイドテーブルにカステラを乗せた皿を置いてアオイたちを呼びに行った。

 

 

その後炭治郎の下になほ、すみ、きよの三人が先に到着し、炭治郎が目を覚ましたことに喜んで泣いていた。

 

 

すると廊下を走る音がしたと思うと、誰かが部屋に入って来た。

 

 

その人物は洗濯物が絡まったアオイだった。

 

 

アオイは洗濯物を放り投げ捨てると、炭治郎の側まで寄って泣いた。

 

 

どうやら自分のせいで炭治郎が意識不明の重症になったことを悔やんでいたようだった。

 

 

「ありが…とう……。他の…、みんなは…、大丈夫…、ですか…?」

 

 

炭治郎は心配してくれたことに感謝してお礼を言って、他のメンバーのことを質問した。

 

 

「黄色い頭の奴は一昨日だっけ?復帰してるぜ。嫌がりながらも任務に出てるらしい」

 

 

「はい。善逸さん、翌日には目を覚ましたんですよ」

 

 

「音柱は嫁さんの肩を借りてだけど、自力で歩いてたな。隠は引いてたな、頑丈過ぎて。凄い引いてた」

 

 

伊之助以外のメンバーの様子を後藤が語った。そして炭治郎は伊之助のことを質問する。

 

 

「伊之助さんも一時危なかったんです」

 

 

「伊之助さんすごく状態が悪かったの。毒が回ったせいで呼吸による止血が遅れてしまって…」

 

 

伊之助の状態をアオイたちが語る。

 

 

「そうか…。じゃあ…、天井に張り付いている伊之助は俺の幻覚なんだな…」

 

 

炭治郎がそう言って全員が天井を見上げると、そこには伊之助が張り付いていた。その状況に炭治郎を除くみんなが驚いた。

 

 

「グワハハハ!!よくぞ気づいた炭八郎!」

 

 

「俺…、あお向けだから…」

 

 

炭治郎が伊之助を見つけた理由を話すと、伊之助は炭治郎の上に降り立った。

 

 

「俺はお前よりも七日前に目覚めた男!そしてお前は軟弱だ!子分が親分を心配させんじゃねぇ!」

 

 

伊之助は炭治郎を指差しながら自慢をする。

 

 

「伊之助さんが普通じゃないんですよ!」

 

 

「そうですよ!炭治郎さん、これを見てください」

 

 

きよは炭治郎にとある本を見せる。それは『外国の動物図鑑』だった。

 

 

「『ミツアナグマ』っていう外国のイタチです!このイタチの皮膚は厚くて丈夫なので、獅子に噛まれても平気なんです。毒も効かないから毒蛇でも平気で食べちゃうんです」

 

 

きよは炭治郎に図鑑を見せながら説明をする。

 

 

それを聞いた伊之助は自分が最強だと勘違いする。しかしそれをアオイが否定する。何でも『毒は効きづらいけど薬も効きづらい』という理由だった。

 

 

しかも炭治郎は伊之助とアオイが騒いでいる間に睡魔に襲われ眠ってしまっていた。

 

 

未だに騒ぐ二人にカナヲが炭治郎が寝たからと言って注意をする。アオイとカナヲは炭治郎のためにお粥を作ることにし、その場を静かに去った。きよたち三人も二人の手伝いのためについて行った。

 

 

伊之助は後藤に引き摺られながらも部屋を出た。

 

 

それから一週間後、炭治郎は回復。同じ時期に伊之助も任務に復帰した。

 

 

後藤は隠の仕事があったため、手紙で炭治郎たちのことを知った。

 

 

「んー、悔しい。やっぱり体力が戻らないなぁ」

 

 

炭治郎は機能回復訓練を受けており、今は柔軟をしていた。だが、約二ヶ月もの間寝ていたこともあり、体がバキバキに固まっていた。

 

 

しかも炭治郎を心配していた義勇と杏寿郎も炭治郎の様子を見に来ていた。

 

 

「あっ、そうだ。俺が眠っている間に刀届いてない?刃こぼれしてしまったやつなんだけど」

 

 

炭治郎は刀のことを質問すると、彼の背中を押していたなほが動きを止める。

 

 

「なんだ竈門少年、刀が刃こぼれしてしまったのか!まだまだ修行不足だな!俺の継子になれば刃こぼれしにくくなるぞ!」

 

 

「煉獄、相手は上弦の鬼だったんだ。刃こぼれしてしまうのは当然だ。折れなかっただけでも儲けものだ。それと炭治郎は俺と実弥の継子だ」

 

 

杏寿郎は炭治郎を継子として勧誘する。だがそれを義勇が遮った。

 

 

「鋼錢塚さんからお手紙が来てますが…、あまり読まれない方が…」

 

 

休憩のためにお茶を用意していたすみが遠慮がちに言った。炭治郎はとりあえず鋼錢塚からの手紙を読むことにした。

 

 

『お前にやる刀は無い』

 

 

『呪ってやる』

 

 

『憎い』

 

 

『ゆるさない』

 

 

「………」

 

 

「「「「「………」」」」」

 

 

鋼錢塚の手紙を読んだ全員が言葉を失った。

 

 

「刀が破損することはよくあることらしいのですけど…、鋼錢塚さんはちょっと気難しい方ですね…」

 

 

きよは首を傾げた。

 

 

「そうだ竈門少年!"里"に行ってみるのはどうだろうか?」ボリボリ

 

 

「そうだな。お館様にご相談すれば返事を送ってくださるだろう。それに丁度"人手"が欲しかった所だったからな」ボリボリ

 

 

義勇と杏寿郎はお茶請けとして用意されていた歌舞伎揚げを食べながら炭治郎に話を持ちかけた。

 

 

「人手…、ですか?」

 

 

炭治郎は義勇の言葉に疑問を持った。

 

 

「ああ。実は二ヶ月程前なんだが、俺の下に猗窩座が現れたんだ。そして彼が言うには近々刀鍛冶の里が襲撃されるらしい」

 

 

「そこでお館様からのご命令で俺と冨岡が増援として抜擢され、里に向かうことになったのだ!」

 

 

義勇の話を遮るように杏寿郎が話した。

 

 

「煉獄、他人(ひと)の話を横取りするな。まぁ、先程煉獄が言ったように、俺と煉獄が里に向かうから、それに同行する形であれば、お館様も許可してくださるだろう」

 

 

「そうだったんですか…。なら、お願いしてもよろしいですか?」

 

 

炭治郎は義勇に里への同行をお願いする。

 

 

「わかった、お館様にご相談しよう」

 

 

「お願いします!」

 

 

義勇は炭治郎の刀鍛冶の里への同行を手紙に書いて鴉に届けてもらった。そして耀哉は炭治郎の同行を許可したのだった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「はじめまして。お館様から貴方を里にお連れするよう仰せ(つかまつ)りました」

 

 

数日後、蝶屋敷に女性の隠の隊員が訪れた。因みに義勇と杏寿郎はこの日の二日前に里へ出立しており、その後を炭治郎が追う形となった。

 

 

女性隊員は炭治郎に目隠しと耳栓を渡した。何でも鬼の襲撃を防ぐために里の場所は柱を除く極一部の者と鴉しか知らないとのことらしい。

 

 

炭治郎は鼻が効くという理由で更に鼻栓までさせられ、刀鍛冶の里へと出立した。

 

 

「(ちょっと重い…)」

 

 

移動手段は徒歩であり、隠の隊員が炭治郎をおんぶする形で移動する。炭治郎をおんぶしている女性隊員は、移動速度が遅かった。

 

 

その理由は炭治郎と(小さくなってはいるが)禰豆子の二人をおんぶしているからであった。

 

 

そして女性隊員は仲間が待機している所へ到着し、炭治郎を引き渡す。そしてその仲間も他の仲間の下へ向かい、炭治郎を引き渡す。これを何回か繰り返したのだった。

 

 

「ありがとうございました!お疲れさまでした!よろしくお願いします!」

 

 

炭治郎は引き渡しの際に必ず連れて来てくれた隠の隊員を労い、案内してくれる隠の隊員にお願いした。炭治郎のこの行動に隠の隊員たちはほっこりした気持ちになっていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「目隠しを外しますよ」

 

 

耳栓を取られた炭治郎は続いて目隠しを取られる。するとそこには町並みが広がっていた。

 

 

「すごい建物ですね!しかもこの匂い…、近くに温泉があるようだ!」

 

 

炭治郎は初めて訪れる里に興奮していた。

 

 

「はい、温泉がありますよ。あちらを左へ曲がった先が長の家です。一番最初に挨拶をしてください。では私はこれで失礼します」

 

 

「はい!ありがとうございました!」

 

 

隠の隊員が里長の家の場所を伝え、炭治郎はお礼を言った。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

『ありがとうございました! ありがとうございました! ありがとうございました!

 

 

「ん?感謝の山彦が聞こえた。誰か来たのかしら?何だかドキドキしちゃう」

 

 

炭治郎の感謝の声は山彦となり、丁度温泉に浸かっていた蜜璃の耳に届いた。

 

 

そしてその温泉の近くには、温泉の効能が書かれた看板が立っていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

『この温泉は"以下の症状に効きます』

 

 

『切り傷"、"火傷"、"イボ痔"、"切れ痔"、"便秘"、"痛風"、"糖尿病"、"高血圧"、"貧血"、"慢性胆のう炎"、"筋肉痛"、"関節痛"、"性格の歪み"、"思いやりの欠如"、"鼻炎"、"へその痒み"、"失恋の痛み"』

 

 

………

 

 

……

 

 

 

 

(いや"性格の歪み"や"思いやりの欠如"や"へその痒み"や"失恋の痛み"は関係無ぇだろ!?)by作者

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「どうもコンニチハ。ワシこの里の長の鉄地河原鉄珍(てっちかわはらてっちん)、よろぴく。里で一番小さくて一番えらいのワシ。まあ畳におでこつくくらいに頭下げたってや」

 

 

「竈門炭治郎です、よろしくお願いします!」ゴンッ

 

 

炭治郎は言われた通りに畳に額を着けてお辞儀した。

 

 

「まあええ子やな。おいで、かりんとうをあげよう」

 

 

「ありがとうございます!」ボリボリ

 

 

炭治郎は受け取ったかりんとうを食べ始めた。

 

 

「君のことは聞いちょる、刀が欲しいんやったな。けど堪忍な、君の担当の蛍が今行方不明になっとってな、刀を渡すことができんのや」

 

 

「蛍?」

 

 

「そうや、"鋼錢塚蛍"。ワシが名付け親」

 

 

炭治郎は今初めて鋼錢塚のフルネームを知ったのだった。

 

 

「可愛い名前ですね!」

 

 

「可愛すぎ言うて本人から罵倒されたわ。あの子は小さい時からあんなふうや。すーぐ癇癪起こしてどっか行きよる。」

 

 

里長の鉄珍は火男(ひょっとこ)の面を着けたまま、ため息を一つ吐いた。

 

 

「いえいえそんな!俺が刀を折ったり刃こぼれさせたりするから」

 

 

炭治郎は鋼錢塚を庇うが

 

 

「いや、違う。折れるような(ナマクラ)を作ったあの子が悪いんや」

 

 

鉄珍が威圧感たっぷりに言うと、炭治郎はその威圧感に圧倒され言葉を失った。

 

 

「見つけ次第取り押さえて連れて参りますので、ご安心ください」

 

 

鉄珍の側に控えていた連れが、腕を振りながら物騒なことを言った。

 

 

「君はまだ鬼狩りに行ける程体力が回復しちょらんと聞いとる。うちの里の温泉は弱った体によう効く。蛍が見つかるまでゆっくりしていきなさい」

 

 

「それまでに蛍が見つからなかった時には、別の者を君の刀鍛冶(たんとう)にするから」

 

 

鉄珍はそう言って、連れを率いて部屋を退室した。そして炭治郎は案内人に連れられて森の中にある階段へとやって来た。そこには所々に"湯"と書かれた看板があった。

 

 

「この坂の上に温泉がございます。階段を登って頂ければ迷わずに着けます。私は下でお食事の用意をしておきますので、ゆっくり浸かっていってください。尚、本日の主食は松茸ご飯となっております」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

炭治郎は案内人にお礼を言って階段を登り始めた。そして中腹辺りで誰かが上から降りて来た。

 

 

「あーっ、炭治郎君だ!炭治郎く~~ん!!」

 

 

「えっ!?甘露寺さん!」

 

 

降りて来たのは蜜璃だった。しかし、蜜璃は浴衣姿で階段を駆け降りているため、乳房(やま)が激しく揺れていた。

 

 

「気をつけてください!"何か"が零れ落ちそうですよ!」

 

 

炭治郎は言葉を濁しながら注意するが、蜜璃には聞こえておらず

 

 

「聞いてよ聞いてよ~!私今そこで無視されたの~!挨拶したのに無視されたの~!」

 

 

炭治郎に涙目になりながらすがり付いてきた。

 

 

「誰にですか?」

 

 

「わかんないの~!だから名前聞いたのに無視なの!酷いと思わない?私柱なのに~!もうお風呂上がりのいい気分が全部台無し!」

 

 

炭治郎は蜜璃に誰に無視されたのか質問をするが、蜜璃はそれが誰なのか分からなかったらしい。挙げ句の果てに蜜璃はめそめそ泣き出してしまった。

 

 

「(どうしよう…、あっ、そうだ!)下でもうすぐご飯ができるそうですよ?今日は松茸ご飯だそうです」

 

 

「えーっ、本当!?」

 

 

泣いていた蜜璃は即座に泣き止み、炭治郎に確認する。炭治郎が頷くと、蜜璃は意気揚々と階段を降りていった。

 

 

「(煉獄さんから甘露寺さんのこと聞いて良かった…)」

 

 

炭治郎は刀鍛冶の里に来る前に杏寿郎から蜜璃のことを聞いていた。と、言うか、杏寿郎の方から炭治郎に蜜璃のことを話してしたのだった。

 

 

そして炭治郎は温泉に到着した。炭治郎はその温泉の広さに驚いていると、額に何かが当たった。炭治郎はそれを拾ってみると、それは"人の前歯"だった。

 

 

そして炭治郎は温泉の方を見ると、そこには実弥の弟の玄弥が温泉に浸かっていた。

 

 

「玄弥!玄弥じゃないか!」

 

 

「ん?、炭治郎じゃないか!お前、何でここにいるんだよ!?」

 

 

炭治郎は玄弥に声を掛け、玄弥は自分を呼んだ声がした方を向くと、炭治郎が手を大きく振っていた。

 

 

炭治郎は禰豆子が入っている箱を下ろし、服を脱ぎ、温泉の中を泳ぎ玄弥の側まで行った。

 

 

「俺は刀が刃こぼれして、二ヶ月前に修理に出していたんだけど、まだ届いてないから受け取りに来たんだ。そう言う玄弥こそ何でこの里にいるんだ?」

 

 

炭治郎は玄弥の質問に答え、今度は自分の番とばかりに玄弥に質問をする。

 

 

「俺はちょっとした"用事"があるから(ここ)にいるんだ」

 

 

玄弥も炭治郎の質問に答え、二人は温泉でのんびりした。

 

 

その間、禰豆子が温泉で泳いでいるのを見た玄弥が顔を真っ赤にし、炭治郎は玄弥が温泉で逆上(のぼ)せたと勘違いしてしまったりした。

 

 

 

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