もしも炭治郎の下に義勇と実弥が来ていたら 作:レイファルクス
『炭治郎さん、十二鬼月と禰豆子さんの血を提供し、研究に協力してくださってありがとう。浅草で無惨に鬼にさせられた男性が自我を取り戻しました。禰豆子さんの血のお陰です』
『無惨の支配からも解放され、少量の血で生きていられる。禰豆子さんの血の変化には驚いています。この短期間で何度も何度も変化している。私はずっと考えていました。禰豆子さんが未だに自我を取り戻さず、幼子のような状態でいる理由を』
『恐らく禰豆子さんの中では、自我を取り戻すよりも重要で、優先すべきことがあるのではないか』
『炭治郎さん、これは完全に私の憶測ですが、禰豆子さんは近いうちに太陽を克服すると思います』
…
……
………
炭治郎は太陽を克服した禰豆子に近づいた。そして生きてくれたことに喜び、禰豆子に抱きついた。
その様子を崖から降りた玄弥が見ており、喜びを感じ、笑っていた。
…
……
………
その頃、憎珀天と戦っていた杏寿郎と蜜璃は、突如憎珀天が崩壊したことに驚き、そして炭治郎が本体を倒したことを察した。
…
……
………
ここは日本にあるとある屋敷。その部屋の一室で少年が本棚にある本を床にブチ撒けていた。
「遂に太陽を克服する
少年は喜びの余り、入室していた女性の首を"破壊"してしまった。
「これでもう"青い彼岸花"を探す必要も無い。クククッ、永かった…!!しかしこの為…、この為に千年…!増やしたくもない同類を増やし続けたのだ…!」
「十二鬼月の中にすら現れなかった稀有な存在…、選ばれし鬼!あの娘の鬼を喰って取り込めば、私も太陽を克服できる…!!」
少年は自分の体を変化させ、青年の姿となった。しかし、その口からは牙が見え、瞳も紅梅色で瞳孔が猫のような縦長となっていた。
そう、その少年の正体とは、鬼舞辻無惨が"擬態"した姿だったのだ。
正体を隠す必要が無くなった無惨は、屋敷にいる者全てを殺し、姿を消した。後に警察が到着し、犯人を探すために捜査を開始するが、犯人が見つかるはずも無く、事件は迷宮入りとなった。
…
……
………
炭治郎は遊郭の時と同じように禰豆子におんぶされた状態で無一郎と合流した。無一郎は小鉄に肩を借りていた。
そこに蜜璃が走って来て、炭治郎、禰豆子、玄弥、小鉄、無一郎を抱き締めた。
「よもやよもや、まさか竈門少女が太陽を克服するとは…」
更には杏寿郎も蜜璃に追い付き、太陽を克服した禰豆子を見て驚いていた。
「煉獄さん!助太刀、ありがとうございました!」
炭治郎は蜜璃に抱き付かれたままの状態で杏寿郎にお礼を言った。
「何これしきのこと、柱であれば当然のことだ!だがまぁ、礼は受け取っておこう!」
杏寿郎は炭治郎の礼を受け取った。
「さて甘露寺よ!皆疲れている、早く離して蝶屋敷まで運ばないとな!」
杏寿郎は蜜璃に皆を離すよう言い、一先ず里の母屋へと向かった。
後日、連絡を受けた隠の者たちが到着し、怪我人を蝶屋敷まで運んで行った。
…
……
………
「そうなんですね。もう拠点を移して…」
「"
炭治郎は蝶屋敷のベッドの上で見舞いに来た後藤と里について話していた。
「つーかよう、お前また七日も意識無かったのに、そんなに食って大丈夫なのかよ?」
炭治郎のベッドの上には、アオイが作ったおにぎりがあった。しかも、さりげなく旬でも無いのに、炭治郎の好物である"タラの芽の天ぷら"までもあった。
「はい!甘露寺さんもいっぱい食べるって言ってたんで!」
炭治郎は蜜璃の真似をするために、食事をたくさん食べるようにしていた。
「あの人はちょっと意外な気がするけどな…。恋柱様と霞柱様は二日眠ってその後三日でほぼ全快だったんだって?」
「はい。尊敬します」
「(いや、お前も段々と近づいてんだよ……。段々とな…)まぁ…、お前がそれでいいのなら、それでいいんだがよ…」
「???」
後藤の独り言に首を傾げる炭治郎であった。
「あっ、そうだ!これを一番聞きたかったんだわ。お前の妹、太陽を克服したって聞いたけど、大丈夫なのか?」
後藤は一番疑問に思っていたことを炭治郎に質問する。
「はい、大丈夫ですよ。太陽の下トコトコ歩いてますね。今までは夜にしか歩けなかったんで嬉しい限りですよ」
炭治郎は禰豆子が日中にいても大丈夫であることに喜びを感じていた。
「でもそれって、"人間に戻りかけている"のか"鬼として進化している"のか分からねぇんじゃねぇのか?」
後藤は誰しもが思うことを炭治郎に質問した。
「はい、なのでしのぶさんと珠世さんが一緒に調べるそうですよ」
「珠世さんって、誰だ?」
後藤は炭治郎の口から聞かない名前を聞いたので、質問をする。
「珠世さんは俺が浅草での任務の時に出会った人で、鬼ではあるんですが、医者でもあるんです。今、禰豆子の血などを調べて『鬼を人に戻す薬』の研究をされているんです」
炭治郎は珠世のことを後藤に説明した。
「へぇ~、そうか。因みにだが、その珠世さんって美人か?」
後藤は炭治郎に顔を寄せて内緒話をするように声を小さくして聞いた。
「美人ですよ。でも、色目はしない方がいいですよ?愈史郎さんが怒りますから」
炭治郎は注意をしながら後藤の質問に答えた。
「そっかそっか。あ、話はお前の妹のことに戻るけど、あの
後藤は話の路線を切り替え、これから起こるであろうことを話した。
…
……
………
「ギィィヤアアア(汚い声)!!」
後藤が懸念していたことが、今正に蝶屋敷の庭で起きていた。
禰豆子は普段自分の散歩や遊びの相手をしてくれているアオイたちを手伝うために、中庭で洗濯物を干していた。
その途中で善逸が任務から帰還し、中庭に出ると、禰豆子の姿を見た瞬間に甲高い汚い声を発したのだった。
「可愛い過ぎて死にそう!」
善逸は禰豆子に近づいて手を握り
「どうしたの禰豆子ちゃん喋ってるじゃない!俺のため?俺のためかな?俺のために頑張ったんだね!とても嬉しいよ俺たち遂に結婚かな!?」
「月明かりの下の禰豆子ちゃんも素敵だったけど、太陽の下の禰豆子ちゃんも堪らなく素敵だよ!素晴らしいよ!結婚したら毎日寿司と鰻食べさせてあげるから!安心して嫁いでおいで!」
ハチャメチャなことを叫んでいた。しかしこの後の禰豆子の発言で一気に空気が白けることになった。
「おかえり、"いのすけ"」
善逸の足下に枯れ葉が一枚、宙に舞った。
「あいつ今どこにいる?ちょっと殺してくるわ…」
善逸は怒りを露にしながら伊之助を探しに行った。
禰豆子が善逸を伊之助と言った理由は、任務で怪我を負った伊之助が、蝶屋敷に来た際に禰豆子に自分の名前を覚えさせたのが原因であった。
…
……
………
そしてこの日は、緊急柱合会議が産屋敷邸で開かれていた。
「刀鍛冶の里を上弦の肆・伍が襲撃。だが炎柱と水柱が里を防衛し、霞柱が伍を、炭治郎が肆を討伐…か。羨ましいぜ全く」
実弥は愚痴る感じで独り言を言った。
「愚痴愚痴言うな不死川。甘露寺と時透、その後、体の方はどうだ?」
小芭内が実弥の独り言を注意し、蜜璃と無一郎の容態を確認した。
「あっ、うん。ありがとう、随分良くなったよ。(キャ~、伊黒さんが心配してくれてる!嬉しい!)」
「僕もだいぶ良くなったよ…。まだ本調子じゃ無いけど…」
蜜璃と無一郎はそれぞれ返事をした。
「今は柱が一人欠けているだけで済んでいるが、これ以上柱が欠ければ鬼殺隊が危うい…。上弦相手に死なずに済んだことは幸いだ…」
行冥は数珠をジャリジャリ鳴らしながら二人を労った。
「うむ!上弦の肆は竈門少年が倒したが、時透少年は一人で上弦の伍を倒したことは実にめでたい!」
杏寿郎も行冥に習って無一郎を労った。
「それにしても、お二人の傷の治りが異常に早いですね。何があったんですか?」
しのぶは蜜璃と無一郎の傷の治りが早いことに疑問を持ち、質問をする。
「そのことも含めてお館様からお話があるだろう。それとしのぶ、もうすぐお館様がいらっしゃる。そろそろ離れたらどうだ?」
義勇はしのぶの疑問に答え、今のしのぶの行動を注意した。今しのぶは義勇の腕にしがみついている格好をしていたからだった。
「嫌ですか?」
しのぶは義勇の肩に頭を乗せ、上目遣いで義勇を見る。
「嫌では無い。寧ろ女性からこういったことをされるのは男として誇らしい。だが、あまり度が過ぎると、一部の隊士から嫉妬の眼差しを受けるんだ。それが辛い」
義勇はしのぶの色気に負けた。
「大丈夫ですよ。お館様たちが来られたら離しますから」
「ならいい」
どうやら二人の間で話が纏まったようだ。
「大変お待たせ致しました。本日の柱合会議、当主の産屋敷耀哉の代理を私、産屋敷あまねが務めさせていただきます。当主の耀哉が病状の悪化によって皆様の前へ今後出れなくなってしまったこと、深くお詫び申し上げます」
そこにあまねが現れ、耀哉が出れなくなったことを含めて挨拶をする。それと同時に柱全員が平伏した。
「承知しました…。お館様が一日でも早くその命の灯火を燃やして下さることをお祈り申し上げます…」
行冥があまねへの返事をし、柱合会議が開始された。
「ありがとうございます。既に御聞き及びとはございますが、日の光を克服した鬼が現れた以上、鬼舞辻無惨は目の色を変えてそれを狙ってくるでしょう」
「己も太陽を克服するために、大規模な総力戦が近づいています」
「上弦の肆・伍との戦いで甘露寺様、時透様の御二人に独特の紋様の"痣"が発現したという報告が上がっております。御二人には痣の発現の条件を御教示願いたく存じます」
あまねの"痣"という言葉に蜜璃と無一郎は首を傾げる。
「戦国の時代、鬼舞辻無惨をあと一歩という所まで追い詰めた始まりの呼吸の
全員の視線ぎ杏寿郎に向けられた。
「御意。我が家にあります"歴代炎柱の書"によりますれば、そのような記述が残されております」
杏寿郎はあまねの質問に答えた。
「俺は初耳です。何故伏せられていたのです?」
痣のことについて実弥があまねに質問をする。
「それについては俺が答えよう」
杏寿郎が実弥の質問に答えると言って、再び視線が杏寿郎に集まる。
「痣を持たぬ者が痣を発現せずに思い詰めてしまうということがあったそうだ。当時は今よりも医学が発達しておらず、痣の発現の条件が曖昧だったことも理由の一つとなっている」
「煉獄様の仰る通りでございます。しかし、ただひとつ言えることがございます。それは"痣の者が一人現れると、それに共鳴するように周りの者たちにも痣が現れる"と言ったことです」
柱の者たちは言葉を失った。
「痣を持つ者は柱の階級ではありませんが、竈門炭治郎様、彼が今この世代で最初に痣が現れた方です。ですが彼御本人にもはっきりと痣の発現の方法がわからない様子でしたので、御二人に御教示をと思いました。改めまして御教示願います、甘露寺様、時透様」
あまねは二人に対して頭を下げた。
「はっ、はい!あの時はですね、確かに凄く体が軽かったです!えーっと、えーっと…」
最初に蜜璃が説明をし始めた。しかし
「ぐあああ~ってきました!グッてぐぁーって、心臓とかばくんばくんして耳もキーンてしてメキメキメキィって!!」
蜜璃の説明は擬音ばかりで、説明にすらなっていなかった。柱のほとんどやあまねたちは目が点になり、小芭内に関しては分かっていたのか、頭を抱えていた。
「申し訳ありません。穴があったら入りたいです…」
我に返った蜜璃は恥ずかしさの余り、踞ってしまった。
「痣というものに自覚はありませんでしたが、あの時の戦闘を思い返した時に、思い当たること、いつもと違うことがいくつかありました。その条件を満たせば恐らく痣が浮き出ると思います。今からその方法を御伝えします」
今度は無一郎が説明を始めた。それと同時にしのぶが蜜璃にハンカチを渡していた。
「前回の戦いで僕は毒を喰らい、動けなくなりました。呼吸で血の巡りを抑えて毒が回るのを遅らせようとしましたが、僕を助けようとしていた少年が殺されかけ、以前の記憶が戻り、強すぎる怒りで感情の収拾がつかなくなりました」
「その時の"心拍数は二百を越えていた"と思います。さらに体は燃えるように熱く、"体温の数字は三十九度以上"になっていたはずです」
「!?そんな状態で動けますか?命にも関わりますよ」
無一郎の説明にしのぶが反応した。
「そうですね。だからこそ篩に掛けられる所だと思う。そこで"死ぬ"か"死なない"か。恐らく痣が出る者と出ない者の分かれ道です」
そこで無一郎の説明が一旦終わった。
「心拍数を二百以上に…、体温の方は何故三十九度なのですか?」
あまねが疑問に思ったことを無一郎に質問をする。
「はい。胡蝶さんの所で治療を受けていた際に、僕は熱を出したんですが、体温計と呼ばれる物で計ってもらった温度、三十九度が痣が出ていたとされる間の体の熱さと同じでした」
無一郎があまねの質問に答えると、蜜璃は今始めて答えを知ったような顔をしていた。
「"心拍数を二百以上"、"体温を三十九度以上"…か。かなり厳しそうだな」
「ああ。下手をすれば高熱で動けなくなり、鬼の格好の餌食となるな」
実弥のボヤきに義勇が返事をする。
「では痣の発現が柱の急務となりますね」
「御意…、何とか致します故、お館様には御安心召されるようお伝えくださいませ」
しのぶと行冥が話を締める。
「ありがとうございます。ただ一つ、痣の訓練につきましては皆様にお伝えしなければならないことがあります」
「何でしょうか…?」
あまねが痣についての注意に蜜璃が首を傾げる。
「もう既に痣が発現してしまった方は選ぶことはできません…。痣が発現した方は、どなたも例外なく……」
…
……
………
柱合会議が終わり、あまねは退室した。
「なるほど…、しかしそうなると、私は一体どうなるのか…。南無三…」
「悲鳴嶼殿、それは…「煉獄よ」む?」
行冥の呟きに杏寿郎が答えようとすると、行冥がそれを遮った。
「皆まで言うな。その雰囲気で大体は察した」
行冥は杏寿郎の出す雰囲気でどうなるのかを察した。
「すまないが、俺はこれで失礼する」
「えっ、あの、義勇さん?」
「おい待て義勇!!」
しのぶと実弥の制止を聞かず、義勇は退室してしまった。
「冨岡の奴…、柱としての自覚が足りんな」
小芭内は退室した義勇に愚痴を溢す。
「実弥さん…、義勇さんは…」
「あァ。あいつ、まだ"引き摺って"いやがるなァ…」
しのぶの困った視線に、実弥は後頭部を掻きながら答えた。
「不死川さん、引き摺ってるって…」
無一郎が実弥に質問をする。
「まぁ、これは当人がいない所で話す内容では無いんだがなァ。実は義勇の奴、"最終選別を突破してない"って言ってんだわァ」
実弥の説明に、しのぶを除く柱全員が驚いた。
「義勇が挑戦した最終選別なんだが、その時は異例の"死者が一人だけ"だったんだわ」
「聞いたことがあるぞ。確かその時の合格者は隊士になる者が少なく、殆んどの者が隠になったり、入隊を辞退したりしたとか」
杏寿郎も心当たりが合ったのか、その最終選別のことを話した。
「義勇は最終選別の初日に鬼に攻撃されて気絶してしまったらしくてな、気が付いた時は最終選別が終わった翌日だったんだってよ」
「亡くなったのは義勇さんと同門の錆兎って言う人で、義勇さんの兄的存在だったと聞いています」
しのぶが実弥から説明を引き継ぎ、説明を開始した。
「『最終選別を安全な所で過ごした自分は柱処か鬼殺隊にいることは出来ない』と以前、酒に酔った勢いで言っていました」
『………』
しのぶの説明に皆が言葉を失った。
「南無…、そのようなことがあれば、距離を取りたくなるのも頷ける…」
「冨岡はそう思っていても、実力は確かなもの。でなければ、柱になるのは難しい…」
「(冨岡の奴…、そんなことを抱えていたのか…)」
「冨岡さん、自信を持てばいいのに…」
「誰か冨岡さんを元気づけること、出来ないかな…」
柱は次々に思ったことを口にする。
「皆さん、このことは義勇さんには話さないでくださいね?義勇さん、結構気にしている節がありますので…」
しのぶは遠慮がちにお願いした。皆は各々頷いた。