もしも炭治郎の下に義勇と実弥が来ていたら 作:レイファルクス
義勇の柱稽古参加を表明してから七日後、炭治郎の怪我が完治し、念願の柱稽古に参加した。
「よぉよぉ、久しいな!また上弦の鬼と戦ったんだってな?五体満足で生き残るったぁ運の強ぇ奴だ。ここで鈍った体を存分に叩き起こしな!」
炭治郎はまず天元の下で訓練をつけた。途中、昼休憩の時に天元の妻たちと再会し、食事に関しての情報交換などをしていた。
そして参加から十日後、炭治郎は天元の訓練を突破し、次の柱、無一郎の所へ向かった。
…
……
………
「そうそう!炭治郎、さっきより速くなってるよ!筋肉の弛緩と緊張の切り替えを滑らかにするんだ!そうそう!そうしたら、体力も長く保つから!」
炭治郎が無一郎の所に到着したのは、夜だったこともあり、その日は体を休め、翌日から稽古を開始した。
炭治郎は最初の内は無一郎の速さについて行けて無かったが、五日もすると、無一郎の速さと同等の速さになっていた。
「足腰の動きも連動しててばっちりだね!次の柱の所に行っていいよ炭治郎」
無一郎はにっこり笑って炭治郎の訓練終了を言い渡した。炭治郎はまだ五日した経過していないのに次の柱の所へ行く許可が出たことに驚いていた。
「だって炭治郎、僕が言ったことちゃんとできてるもん」
無一郎が許可を出した理由は最もな理由だった。
「あの…、俺たちも…。もう二週間いるので…」
先に稽古に参加していた隊士たちが許可を求めた。
「何言ってるの?君たちは駄目だよ。素振りが終わったら打ち込み台が壊れるまで打ち込み稽古しなよ」
しかし無一郎は冷たい眼差しで冷たく言い放った。隊士たちは炭治郎との落差に落ち込み、炭治郎は申し訳無さそうな気持ちになっていた。
…
……
………
「炭治郎君久しぶり!おいでませ我が家へ!」
「ご無沙汰してます!お元気そうで良かった」
炭治郎と蜜璃は門前で挨拶を交わした。
クンクン「養蜂してらっしゃるんですか?蜂蜜のいい香りがします」
炭治郎は蜂蜜の匂いを嗅ぎ取り、蜜璃に質問をした。
「あっ、分かっちゃった?そうなのよ!!巣蜜をね、パンに乗っけて食べると超絶おいしいのよ~~!」
蜜璃は嬉しそうに炭治郎に話していた。
「バターもたっぷり塗ってね、三時には紅茶も淹れて。パンケーキ作るからお楽しみに!」
蜜璃は炭治郎の手を繋いで道場に案内しながら説明をしていた。しかし当の炭治郎は聞き慣れない単語を聞いたため、ちんぷんかんぷんだった。
そして三時になり、蜜璃がパンケーキを振る舞った。
パンケーキは三段重ねになっており、一段目の上に固形バターと巣蜜が乗っかっていた。
(女性は平らげそうだけど、男性は見ただけで胸焼けしそうだな…)by作者
そして三時の休憩が終わり、炭治郎の訓練が開始された。
まず炭治郎は蜜璃からレオタードを渡され、それに着替えた。
その後、新体操さながらに運動をする。そして柔軟が始まるが、そこからが地獄だった。
何故なら、蜜璃は隊士の足を自分の足で広げるという"力技"だったからだ。それを受けた隊士たちは、次々に悲鳴を上げる。それは炭治郎も例外では無く、初日は股を無理やり広げられた反動で真面に歩くことすらできなかった。
しかし七日経過すると、蜜璃の力技の股割りにも慣れ、今ではすっかり股が開くようになった。
「炭治郎君合格!次の柱、師範の所に行っていいよ!」
「はい!ありがとうございました!」
こうして炭治郎は蜜璃の訓練を終えて次の柱、杏寿郎の下へと向かった。
…
……
………
「竈門少年、よくぞ来られた!」
炭治郎が炎屋敷、即ち煉獄家に到着すると、門前で杏寿郎が待っていた。
「煉獄さん、お久しぶりです!稽古、よろしくお願いします!」
炭治郎は杏寿郎に頭を下げる。
「うむ!しっかりと鍛えよう!だが、稽古は明日からだ!今日は体を休めるといい!弟の千寿郎も首を長くして待っているぞ!」
「分かりました!」
炭治郎の稽古は明日からとなり、炭治郎は煉獄家に足を踏み入れた。
「あっ、炭治郎さん!ご無沙汰してます!」
「千寿郎君!久しぶり!元気そうで何よりだよ!」
炭治郎は杏寿郎に通された居間で、千寿郎と再会した。
「むっ…、坊主…」
「あっ…、煉獄さんのお父さん…」
更には杏寿郎の父の槙寿郎とも再会した。
「あ~、その…、何だ。坊主、いつぞやの時は、すまなかった。この場を持って謝罪したい。この通りだ」
槙寿郎は炭治郎に頭を下げた。
「謝らなくていいですよ。俺はもう気にしてませんので」
炭治郎は気にしてないと言い、槙寿郎を許した。
「……ありがとう。坊主、お前さんは優しい。自分を罵倒した儂を許すなんて…」
槙寿郎は頭を下げたまま、涙を流した。
「儂はお前さんのことが気に入った!どうだ?良かったら儂の養子にならんか?」
槙寿郎は炭治郎を養子にしたいと申し出た。
「父上!竈門少年は俺の継子になる予定です!邪魔をしないでもらいたい!」
「何を言っとる!義理の息子になっても継子にはなれるだろう!」
杏寿郎と槙寿郎は炭治郎そっちのけで言い争ってしまった。
「炭治郎さん、お恥ずかしい所をお見せして申し訳ありません。穴があったら入りたいです…」
「あはは…」
千寿郎の謝罪に炭治郎は苦笑いをしていた。
…
……
………
それから翌日。炭治郎は他の隊士たちと模擬戦をしていた。
内容は『一対一の試合形式で、木刀を使用。一試合毎に相手を変え、先に十連勝すれば合格。しかし型は使用禁止で、使用したのを確認した場合、失格となり、戦績も
炭治郎は他の隊士よりもキツい訓練を義勇と実弥から受けていたため、呆気なく九勝まで勝ち上がった。
「坊主よ、十戦目はこの儂、煉獄槙寿郎が務めよう」
炭治郎の
槙寿郎は"元炎柱"だったこともあり、炭治郎に善戦していた。
しかし
「炎の呼吸 壱ノ型 不知火!」
熱くなった槙寿郎がルールを忘れて、型を使用した。炭治郎は木刀で何とか受け止めたが、槙寿郎の不知火の威力が強かったのか、持っていた木刀が折れてしまった。
「そこまで!元炎柱・煉獄槙寿郎の反則負けにより、勝者、竈門炭治郎!」
審判を努めていた杏寿郎の言葉に、槙寿郎は意外な顔をしていた。
「父上、この試合では型の使用は禁止となっています。木刀を交える前に確認をしたのをもうお忘れですか?」
杏寿郎は試合を始める前に改めてルールを述べ、双方が納得したのを確認していたのだ。
槙寿郎はそのことを思い出したのか、頭を押さえて座り込んでしまった。
「炭治郎さん、大丈夫ですか?」
「ありがとう、千寿郎君」
炭治郎は千寿郎の手を借りて何とか立ち上がった。
「竈門少年、先程の試合、父上が申し訳無いことをした。父上の反則負けによって竈門少年は十連勝となり、炎柱の稽古は終了となる」
杏寿郎は炭治郎に稽古終了を言い渡した。
「父上、俺が言うのも何ですが、熱くなり過ぎです」
「"炎"の呼吸だけにか?」
「父上…」
「すまん…。穴があったら入りたい…」
…
……
………
杏寿郎の稽古を終了した炭治郎は、直ぐに出立はせず、その日と翌日は煉獄家に泊まることにした。
「煉獄さん、ちょっとお聞きしたいんですけど…」
「どうした?」
居間で寛いでいた炭治郎は同じく居間で寛いでいた杏寿郎に質問をした。
「鋼錢塚さんが持ってきてくれた刀なんですが、それに煉獄さんが使っているのと同じ鍔がついていたんですが…」
炭治郎は刀の鍔のことについて聞いていた。
「あぁそのことか、それは俺からの細やかな贈り物だ。例え継子にならなくても、想いは同じと言う気持ちを込めてな」
杏寿郎は炭治郎の質問鍔について答えた。
「そうだったんですか。ありがとうございます」
炭治郎は鍔のお礼を言った。
「うむ。……おぉそうだ!竈門少年、"歴代炎柱の書"の復元がほぼ終わったそうだ!」
「そうなんですか!?」
杏寿郎の知らせに炭治郎は驚いた。
「うむ!父上も復元に加わって、もう九割近くは復元できたそうだ!もし良かったら、今から読むかい?」
「是非!」
杏寿郎の申し出に炭治郎は乗っかった。
「ならば今から千寿郎の所へ行こう!今も復元をしている筈だ!」
「はい!」
杏寿郎は炭治郎を連れて、千寿郎のいる部屋へと向かった。
…
……
………
「よもやよもや…だな」
「あはは…」
千寿郎の部屋から出た二人、杏寿郎は項垂れており、炭治郎は苦笑いを浮かべていた。
「仕方ないですよ。もう夜も遅い時間でしたし…」
そう、二人が千寿郎の部屋に来た時間はもう夜も遅い時間帯だったのだ。
千寿郎は就寝しようと布団に入ろうとしていた所に、炭治郎と杏寿郎が入って来たため、思わず叱ってしまったのだった。
「うむ、確かに夜遅くに来た俺たちが悪かった。では翌日、改めて訪れるとしよう」
「そうですね。では煉獄さん、おやすみなさい」
炭治郎は杏寿郎と別れ、用意されていた部屋に入り、床に着いた。
…
……
………
その翌日、炭治郎は改めて千寿郎の部屋に赴き、昨夜のことを謝った。千寿郎も怒りすぎたと反省しており、お互いに謝った。
そしてほぼ復元が完了した"歴代炎柱の書"を読むと、様々なことが分かった。
曰く『"日"の呼吸は全ての呼吸の元となった呼吸なり』
曰く『"日"の呼吸の使い手は漆黒の刀を使用している』
曰く『"日"の呼吸の使い手は"花札のような耳飾り"をしている』
曰く『"日"の呼吸の使い手は額に陽炎のような"痣"がある』
等々。
「炭治郎さん、これって、全部炭治郎さんに該当していると思うんですが…」
炭治郎と一緒に読んでいた千寿郎が、口を開いた。
「確かに、書いてあることは、全部俺に該当している。けど、俺の家は代々炭焼きをしている家系なんだ」
炭治郎は自分の先祖のことを話した。
「だとしたら、何故…」
千寿郎も日の呼吸の使い手のことに頭を悩ませた。
「炭治郎さん、僕はもう少し調べてみます。もし何か分かりましたら、兄の鴉に手紙を持って行ってもらうようお願いしますので」
「分かった。千寿郎君、無理はしないでね?」
「はい!」
千寿郎は日の呼吸について調べることにした。そして炭治郎はその日は千寿郎の手伝いとして食事を用意したりして、翌日に煉獄家を後にした。
…
……
………
「竈門炭治郎、俺はお前を待っていた」
炭治郎は小芭内の下に到着すると、既に小芭内が待っていた。
「よろしくお願いしま「黙れ殺すぞ」ええっ!?」
炭治郎が挨拶をしようとすると、物騒な言葉で遮られてしまった。
「甘露寺からお前の話を聞いた。随分とまあ楽しく稽古をつけてもらったようだな。俺は甘露寺のように甘くないからな」
小芭内は炭治郎を冷たく睨んだ。そして小芭内は炭治郎を道場へ案内する。
「お前にはこの"
小芭内の道場の中には、角材に
「この…、括られている人たちは何か罪を犯しましたか…?」
道場の様子にドン引きした炭治郎は、思わず小芭内に質問していた。
「…、まあそうだな。"弱い罪"、"覚えない罪"と上げられるが、一番は"甘露寺に色目を使った罪"だ」
小芭内は磔にしている隊士の罪を述べたが、殆んどが"個人的な怨み"だった。
こうして、炭治郎の太刀筋矯正訓練が開始された。だが障害物を避けながら刀を振るうのは至難の技である。訓練で使用しているのは木刀であったとしても、当たれば痛い。しかも小芭内の太刀筋はまるで蛇のように"うねる"ので、なお達が悪い。
しかし四日経過すると、炭治郎は何処にどう振れば当たるのか分かるようになった。
そして炭治郎は小芭内の羽織の裾を木刀で切ることができた。
「俺の訓練はこれで終わりだ。さっさと不死川の下へ行け。それと、馴れ馴れしく甘露寺と喋るなよ?」
炭治郎は最後まで小芭内に嫌われていた。
…
……
………
炭治郎は松右衛門の案内の下、実弥のいる風屋敷を目指して歩いていた。すると視界の下から誰かが現れた。
「うわあああああっ!?善逸!?」
そう、炭治郎よりも先に柱稽古に参加していた善逸だった。
「た、たた、た、たん、たん、炭治郎、頼む、後生だ、一生のお願いだ!俺を逃がしてくれぇぇぇっ!!」
善逸は炭治郎にしがみつき、助けを求めた。
「あっ…」
しかし炭治郎は気づいてしまった。
ガシッ
「選べェ、訓練に戻るか俺に殺されるかァ…」
実弥がすぐ側まで来ていたことに。
「実弥師範、お久しぶりです!」
「ん?おォ炭治郎か!久しぶりだなァ!見舞いとかに行けれなくて悪かったなァ。任務が立て続けに入っちまった性で行けれなかったんだわァ」
炭治郎は実弥に挨拶をし、実弥は炭治郎に気づいて怒った顔から笑顔に変わった。
「全然大丈夫ですよ!稽古、よろしくお願いします!」
炭治郎は見舞いに行けれなかった実弥を許した。
「すまんなァ。それと、その
「はい!」
炭治郎は善逸を拘束し、実弥の後を追った。
実弥の稽古は至って
しかし実弥も黙って当てられる訳では無い。勿論実弥も反撃はする。しかも型を使用しながら反撃するのだ。
『一撃を与えるだけでいい』。聞こえはいいが
柱の中でも上位に君臨する実弥に攻撃を当てるのは至難の技である。挑んだ隊士は悉く負け、反吐を吐き、失神する。
しかしながら実弥も鬼では無く、一人失神すれば、その者の目が覚めるまで全員が休憩を取れるのだった。しかし、目を覚ましても失神した"フリ"をしていれば、無理やり起こされ、稽古を続けさせられるのだった。
そして炭治郎も意気揚々と稽古に参加する…はずだった。
「実弥師範、食事の用意ができました!」
「分かったぜェ!よしお前ら、これから昼休憩だ!しっかり飯を食えよォ!」
炭治郎は稽古に参加せず、食事などを提供していた。
「悪ィな炭治郎。食事とかの家事を任せちまって」
「いえいえ!家ではいつもやっていたことばかりでしたので!これくらい苦ではありませんよ!」
家事を任せっきりの実弥は炭治郎に謝るが、炭治郎は笑顔で大丈夫と答えた。
「兄ちゃん、こっちの洗濯物全部終わったよ」
そこに玄弥が合流した。玄弥もまた炭治郎と同じく稽古に参加せず、家事をしていた。
実弥は元々大家族の長男であり、母親が仕事をしている間、玄弥と共に家事や弟、妹の面倒をしていたことがあるため、一通り家事はできるのである。しかし、稽古で隊士たちを相手している間は、どうしても家事の時間を削らないとならない訳で、少しだけではあるが、手付かずの状態が続いていた。
勿論玄弥も家事をこなしていたが、一人ではできる範囲は限られてしまうため、稽古に参加することができなかったのだ。
そこに自分たちと同じ境遇の炭治郎が来たことによって、玄弥の負担が軽くなったのだ。
「玄弥ァ、いつもいつもすまねェ。二人とも、今は昼休憩に入っているから、手を洗って飯を食いなァ」
実弥は炭治郎と玄弥の頭を一通り撫でると、飯を食いに移動した。
炭治郎と玄弥も井戸に移動し、手を洗い、飯を食いに移動した。
…
……
………
それから十日後、炭治郎は最後まで稽古に参加できないまま、実弥に次の柱の下へ行く許可をもらったのだった。
一度も稽古に参加していない炭治郎は、そのことを実弥に伝える。
「炭治郎、お前は自覚が無ェかもしれねェが、もうお前の実力は柱と同格なんだよ。だから俺とやると見境いが無くなっちまうかもしれねェんだァ」
実弥の説明に、炭治郎は驚きを隠せなかった。それもその筈、炭治郎の成長は凄まじく、短期間でその成長を見せる程だったのだ。
実際に無一郎や蜜璃、小芭内の稽古では、四~五日で合格となっており、最初の天元の稽古では完治直後だったこともあり、少し長い期間居た。(杏寿郎の稽古に関しては例外である。)
そして実弥は炭治郎の他に玄弥(と厄介払いの意味合いも含めて善逸)も次の柱への所へ行く許可を出したのだった。
…
……
………
「お前らが羨ましいぜまったく…。稽古に一回も参加せずに次の柱まで行けるなんてよ…。俺は何度も何度も反吐を吐いたり失神したって~のによ…」
移動中、善逸は炭治郎と玄弥に愚痴を溢していた。
「そんなこと言うなよ善逸。俺だって実弥師範の稽古を受けれずにモヤモヤしてるんだぞ?」
炭治郎もまた不完全燃焼なのか、善逸に愚痴を溢していた。
「二人とも、もうすぐ悲鳴嶼さんの修行場に着くぞ」
そこに玄弥が声を掛けた。すると遠くから滝の音が聞こえてきた。
そして炭治郎たちが滝の方に目を向けると、そこには伊之助を含む数人の隊士たちが、念仏を唱えながら滝に打たれていた。
「心頭…滅却すれば……、火もまた涼し……」
すると後ろから行冥の声がしたので振り返ると、そこには足下を火で焙りながら太い丸太を三本、しかも両端に岩をそれぞれ二つ括り着けた物を担いだ行冥がそこにいた。
「ようこそ…、我が修行場へ……」