もしも炭治郎の下に義勇と実弥が来ていたら   作:レイファルクス

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第24話

 

 

『カアァッ、カアァッ!水柱・冨岡義勇、蟲柱・胡蝶シノブ、並ビニ鬼ノ協力者・猗窩座!上弦ノ弐ヲ討伐!討伐!』

 

 

『風柱・不死川実弥、岩柱悲鳴嶼行冥!上弦ノ壱ヲ討伐!討伐!霞柱・時透無一郎、不死川玄弥、重症二ヨリ戦線離脱!戦線離脱!』

 

 

『我妻善逸、上弦ノ陸ト遭遇!遭遇!重症並ビニ苦戦ノ末、上弦ノ陸ヲ討伐!討伐!』

 

 

鴉たちが戦闘報告を随時伝える。

 

 

ズバッ「鴉たちの情報共有の早さが異常ですね…」ズバッ ズバッ

 

 

ザシュッ「それはそうだろう。何せ愈史郎殿の"紙眼"を鴉たちに着けているのだからな」

 

 

炭治郎たちは襲い掛かってくる鬼を倒しながら無惨がいる所まで進んでいた。

 

 

炭治郎が情報の早さを気にしていると、猗窩座がその仕組みを説明した。

 

 

炭治郎は鴉に目を向けると、確かに以前浅草で愈史郎が自分に着けてくれた"札"を鴉の胸の辺りに着けているのを見つけた。

 

 

「愈史郎殿の紙眼は姿を消すだけでは無く、見たものを共有する力を持っている。だから誰がどの鬼と戦い、どうなったのか、随時分かると言う訳だ」

 

 

猗窩座の説明に皆が納得していた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

猗窩座たちが無惨の所へ向かっている頃、無惨を捜索していた部隊の第一陣が無惨のいる所へと到着した。

 

 

部隊の指揮を統括している産屋敷輝利哉は隊員をその場から離れ、待機の命令を鴉を通じて出す。

 

 

だが時既に遅し。そこに無惨が現れ、隊員を全て喰ってしまった。

 

 

無惨の姿は腕から手の甲、太腿から脛にかけて口のような物がついており、隊員の肉を喰っている最中なのか、モゴモゴと動いていた。

 

 

「鳴女、私を柱がいる所へ飛ばせ」

 

 

無惨は誰もいないのにそう呟くと、琵琶の音が鳴り響き、無惨は炭治郎たちの所に現れた。

 

 

「無惨…!」

 

 

「驚いたな…。童磨の視覚で見ていたが、まさかお前がそちらにいるとはな…、猗窩座」

 

 

無惨は童磨の視覚を共有して猗窩座のことに気づいていたらしく、猗窩座の姿を見てそう言った。

 

 

「ふんっ、貴様から此方に出向いてくるとはな。鬼舞辻無惨!今日、ここで貴様に引導を渡してやる!」

 

 

猗窩座は短刀を構え、無惨に言った。そしてそれが合図だったのか、次々に炭治郎たちが抜刀し、刀を構えた。

 

 

「"私を倒す"…。そう言われ続けて幾星霜…、誰もその目的を達成できずに私に喰われた。私は疲れた…。貴様らの相手をするのも…」

 

 

「なら今ここで貴様を倒せば全て終わる!大人しくその命を神に帰せ!」

 

 

「"神"…か。それは即ち、私"自身"のこと。貴様たちは考えたことがあるか?地震、雷、火事、嵐と言った天変地異。そのどれか一つでも復讐をしようと。誰もそんなことを考えた者はいない。私はその天変地異の一つに過ぎない」

 

 

「天変地異…、自然災害で命を落としても、誰も復讐をしようとは考えない。私に殺されると言うことは、それと同義なんだよ」

 

 

無惨はまるで自分が神になったかのように語る。

 

 

「無惨…、貴様は、存在してはいけない生き物だ…」

 

 

そんな中、炭治郎は静かに怒りを燃やしていた。

 

 

「ほう…?ならどうする?私は頚を斬られても、その直後に再生し、くっ付くから意味は無いぞ?」

 

 

無惨は自分の親指で自分の頚を斬るジェスチャーをする。

 

 

「それは「それは勿論決まっている!」えっ?」

 

 

炭治郎が答えようとすると、違う方向から"自分の声"が聞こえた。

 

 

「無惨、お前を倒す!"鬼幻術(きげんじゅつ)・鬼火"!」

 

 

すると炭治郎たちの後ろから白い体の鬼が炭治郎たちを飛び越え、口から"白い炎"のようなものを吐き、無惨を攻撃した。

 

 

「……誰?」

 

 

「何か、炭治郎に声が似てた気がするけど…?」

 

 

「感じる…、感じるぜ…!あの鬼の強さ、今まで会った鬼の比じゃねぇ!」

 

 

炭治郎たちは突如現れた鬼に戸惑いを隠せなかった。その間も、白い鬼は先端に宝玉を取り付けた二本の棒を巧みに扱い、無惨にダメージを与えていた。

 

 

「あ…、あいつは…!」

 

 

そんな中、猗窩座は白い鬼を見た瞬間、全身を震わせていた。

 

 

「猗窩座さん?どうしたんですか?」

 

 

猗窩座の様子が変わったことに気づいた炭治郎は、猗窩座の顔を覗きながら質問をする。

 

 

「炭治郎…、俺はお前と出会った当初、話したことがあるだろう?俺は"別の世界の炭治郎に倒された"…と」

 

 

「あっ…、はい。確か鬼に変身することができて、その鬼の時の名前が"輝鬼"…でしたっけ?」

 

 

炭治郎は猗窩座の質問に思い出しながらも答えた。

 

 

「そうだ。そして、今目の前で無惨と戦っているあの白い鬼。彼こそ、俺の魂を救ってくれた大恩人、"音撃の戦士・輝鬼"こと、『鬼殺隊・"鬼柱" 竈門炭治郎』なんだ!!」

 

 

「「「「ええええぇぇぇ~~~!!!?」」」」」

 

 

炭治郎たちは突然のことに相当驚いた。

 

 

「でっ、でででっ、でも、何で別の世界の人がここにいるんですか!?」

 

 

余程衝撃だったのか、しのぶは慌てながらも猗窩座に質問をしていた。

 

 

「それは俺にも分からない。とりあえずは、当人に聞かなくてはな」

 

 

猗窩座たちは今も戦っている輝鬼に目を向けてその戦いを見守っていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

輝鬼が無惨と戦い始めたのと同じ時、『上弦の肆・鳴女』と小芭内、蜜璃ペアの戦いは熾烈を極めていた。

 

 

二人が鳴女に近づこうものなら琵琶を鳴らし、障害物を作ったり、足下の障子を開いて踏ん張りを利かせなくしたりと、小芭内と蜜璃を近づけさせなかった。

 

 

どう攻めようか考えていると、蜜璃の肩を掴む者がいた。

 

 

「俺の名は愈史郎。鬼ではあるが、お前たちの協力者だ」

 

 

それは鬼殺隊服を着た愈史郎だった。

 

 

「今から俺が考えた作戦を伝える。まずお前たちは鳴女(やつ)の注意を向けさせて欲しい。その隙に俺は自分の血鬼術を使い姿を消す。そして奴に近づき、奴の視覚を乗っ取る」

 

 

愈史郎は蜜璃たちを囮にして鳴女の視覚を奪うと言った。

 

 

蜜璃は愈史郎の作戦に乗り、小芭内にもその作戦の内容を伝え、愈史郎の作戦が決行された。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「"鬼棒術・閃光弾"!」

 

 

輝鬼は自身が持っている"音撃棒・閃光"の先端に着けている宝玉から光の弾を生成し、無惨に向けて放つ。しかし無惨はそれを避けた。

 

 

「"鬼棒術・閃光剣"!」

 

 

だが光の弾は囮だったのか、無惨が移動した先に輝鬼が先回りしており、宝玉の先端から"光の刃"を生成し、無惨を斬った。

 

 

「無惨に一撃を与えた!」

 

 

「……あれ?無惨の斬られた所、再生が遅くなっているような…」

 

 

「いい所に気がついたな」

 

 

炭治郎は輝鬼が無惨に一撃を与えたことを喜び、カナヲは無惨が斬られた箇所の再生が遅くなっていることに気づくと、様子を見ていた猗窩座が説明を始めようとしていた。

 

 

「輝鬼は自分の攻撃に陽光と同じ力を無意識の内に加えているんだ。だから彼の攻撃は無惨にとっては"一番受けたくない攻撃"であり、輝鬼は無惨の"一番の天敵"なのさ」

 

 

猗窩座の説明に炭治郎たちは感心していた。

 

 

すると炭治郎たちの周辺が"揺れ始めた"。

 

 

「何ですか!?地震!?」

 

 

突然の揺れにしのぶは動揺する。

 

 

「落ち着け!この無限城は"異空間"に存在しているから地震は無い!これは、俺たちが立っている床が上に向かっているんだ!!」

 

 

「「「「「なっ、何だって~~!!」」」」」

 

 

猗窩座の説明にまたもや炭治郎たちは驚いた。

 

 

「愈史郎の奴、琵琶女の視覚を奪っただけでは無く、血鬼術までも操作して無惨を俺たち諸共地上へ放り出す算段か!?」

 

 

猗窩座の考えは概ね当たっていた。愈史郎は猗窩座と零余子と一緒に暮らすようになってから、二人のことを少しずつではあるが、気にしていた。

 

 

特に零余子に関しては自分と同じで、患者の世話や病人食、はたまた診療所の掃除や服の洗濯など、一緒に仕事する機会が多かったのだ。

 

 

それを分身ではあるが、無惨に攻撃されたことによって愈史郎の怒りは上がっていた。

 

 

そのため、無惨を陽光に晒そうと考えていたのだった。

 

 

そして炭治郎たちがいる足場は無限城の天井を突き破り、炭治郎たちは地上へと放り出された。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

『鬼舞辻無惨、地上ニ排出!地上二排出!夜明ケマデ一時間半!夜明ケマデ一時間半!』

 

 

炭治郎たちと一緒に地上へ出た鴉が状況報告と夜明けまでの時間を言った。

 

 

すると瓦礫の下から無惨が瓦礫を吹き飛ばして現れた。

 

 

「ほう…?夜明けまで私をここに留めるつもりか…。やれるものなら、やってみろ!」

 

 

無惨は両腕と背中から伸ばした"九本の管"を用いて瓦礫を吹き飛ばしたのだった。

 

 

「(まったく…、"この世界"の愈史郎さんは粗っぽいなぁ…)皆さん、夜明けまでまだ時間はありますが、俺たちが一丸となって戦えば、勝機はあります!諦めずに頑張ってください!」

 

 

輝鬼は既に集結していた隊員たちを鼓舞し、やる気を満たせた。

 

 

「流石、輝鬼だ!一瞬にして隊員たちのやる気を奮い立たせたか!」

 

 

猗窩座は輝鬼の鼓舞を聞き、自らを奮い立たせた。

 

 

「猗窩座!久しぶりだな」

 

 

そこに輝鬼が猗窩座の存在に気づき、挨拶を交わした。

 

 

「久しぶりだな輝鬼殿。いや、鬼柱・竈門炭治郎殿と呼べば良いかな?」

 

 

「炭治郎の名前を持つ者が二人もいるから、区別をつけるために輝鬼と呼んでくれ」

 

 

輝鬼と猗窩座は以前は敵同士だったと言うのに、今は和気藹々(わきあいあい)と楽しく話していた。

 

 

「私を無視するとは、とんだ余裕だな!!」ヒュガッ

 

 

無惨は輝鬼と猗窩座に向けて腕の鞭と背中の管で攻撃をする。しかし、二人は無惨の方を"見ずに"鞭や管を斬ってしまった。

 

 

『蛇の呼吸 参ノ型 (とぐろ)締め』

 

 

『恋の呼吸 弐ノ型 懊悩巡る恋』

 

 

『水の呼吸 捌ノ型 滝壺』

 

 

そこに小芭内、蜜璃、義勇の三人が無惨に攻撃をする。が、無惨は斬られた瞬間に再生をし、まるで何事も無かったかのように見せていた。

 

 

無惨は攻撃を繰り出すと、そこに輝鬼に鼓舞された隊員たちが柱を庇った。

 

 

「行けーっ!進めーっ!柱を守る肉の壁となれ!無惨と戦える者を一人でも多く助けるんだ!」

 

 

一人の隊員が鼓舞をすると、他の隊員たちが無惨を覆うように取り囲み、柱たちを一旦遠ざける。

 

 

しかし無惨は隊員たちを悉く斬り伏せるが、次々に隊員たちが集まり、また肉の壁となる。

 

 

無惨は遠ざかった蜜璃に狙いを定め、腕を振るう。しかし、その攻撃は"鉄球によって防がれた"。

 

 

鉄球を投げたのは行冥であり、その行冥は"囮"であった。

 

 

無惨の後ろから実弥が無惨を縦一文字に斬り、"何かの液体"が入っている瓶を、数個放り投げた。

 

 

無惨は即座に再生し、実弥を攻撃するが、実弥は寸前で避け、無惨の攻撃は瓶を割るだけに終わった。

 

 

だが、無惨は瓶の中身の液体を被ってしまい、実弥は火が着いたマッチを無惨に向けて投げる。すると無惨の体が炎に包まれた。

 

 

実弥が投げた瓶の中身は"油"であった。

 

 

「テメェにはこれすらも生温いぜェ。地獄への手土産、たっぷり受け取っときなァ!塵屑野郎!!」

 

 

実弥は左手の中指を立てて無惨を挑発していた。

 

 

「この世界の不死川さん、めちゃくちゃ無惨挑発してるなぁ…」

 

 

「流石の俺でも、無惨を挑発したりはしないぞ…。しかし、不死川殿は凄いな…」

 

 

「何が?」

 

 

猗窩座は実弥のことを称賛した時、輝鬼がそのことに疑問を持ち、猗窩座に質問をした。

 

 

「不死川殿は"わざと"無惨を挑発して、攻撃を自分"一人"に集中させているんだ。これ以上、仲間の死体を増やさないために」

 

 

猗窩座に言われ、輝鬼は改めて実弥に視線を向ける。確かに猗窩座の言う通り、実弥は無惨の攻撃を避けたり迎撃しながら無惨を挑発して、他の人に攻撃が行かないようにしていた。

 

 

「言われてみれば、確かに…。でも、あれじゃいつか体力が限界を迎えてしまう」

 

 

「だな。そこで…だ、今俺の手には"これ"があるのだが?」

 

 

猗窩座は輝鬼に数枚の札を見せる。輝鬼はその札を見た瞬間、猗窩座が言いたいことを察した。

 

 

「……なるほどね。乗らない訳には、行かないな」

 

 

輝鬼は猗窩座から札を一枚受け取ると、それを額に貼った。すると輝鬼の姿がみるみる内に"消えていった"。

 

 

「えっ!?き…、消えた!?」

 

 

「正確には"見えなくなった"が正しいな」

 

 

炭治郎が輝鬼の姿が消えたことに驚いていると、猗窩座が訂正した。

 

 

「この札を着けていると、周囲の人からは見えなくなるんだ」

 

 

「見えなくなると言うことは、同じ札を着けた人が攻撃の際に巻き込まれたりしません?」

 

 

"見えなくなる"ことの欠点をしのぶは看破し、それを猗窩座に伝える。

 

 

「同じ札を着けた人同士なら、お互いの姿を見ることができる。寧ろ危ないのは札を着けた人が札を着けていない人の攻撃を喰らうことだな。けどそれは札を着けた人が攻撃を避ければ問題ない」

 

 

猗窩座はそう言って、炭治郎たちの額に一枚ずつ札を貼った。すると、無惨を挟んで実弥と輝鬼が戦っているのが見えた。

 

 

義勇が試しに額に着けた札を外すと、輝鬼がいた所には誰もおらず、実弥一人が戦っていた。そしてもう一度札を着けると、実弥の反対側に輝鬼が戦っているのが見えた。

 

 

「なるほど。こいつは便利だな。気づかれるまでの時間がある分、無惨に攻撃を仕掛ける機会が多く取れる」

 

 

「そう言うことだ。俺は輝鬼の加勢に加わる。札の配布は任せてもいいか?」

 

 

猗窩座はどこから出したのか、大量の札を炭治郎たちに渡した。そして炭治郎たちが頷くのを見ると、猗窩座は札を額に張り付け、姿を消した。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「鬼さんこちら、手の鳴る方へ~!」

 

 

実弥は無惨をおちょくりながら、攻撃を仕掛けたり、無惨の攻撃を避けたりしていた。

 

 

「貴様~、一体どれだけ私をおちょくれば気が済むのだ!」

 

 

無惨は苛々しながら実弥に攻撃を集中させる。

 

 

「それは貴様が死ぬまでだよクソワカメ!風の呼吸 参ノ型 晴嵐風樹(せいらんふうじゅ)!」

 

 

実弥は無惨の攻撃を悉く斬り伏せる。

 

 

だが斬り伏せた攻撃は少なかった。

 

 

「(今なら行ける!鬼棒術・閃光剣!)」

 

 

なぜなら、輝鬼が無惨の背中の管を斬っていたからだった。

 

 

「!?(私の背中の管が斬られた?どうやら姿を消して攻撃しているようだな…)」

 

 

無惨は自分を攻撃した相手は分からなかったが、どうやって攻撃をしたのかを見破った。

 

 

「誰だか知らねェが、感謝するぜェ!風の呼吸 伍ノ型 木枯し颪!」

 

 

実弥は痣を発現させ、刃を赫くした状態で型を使う。すると斬られた無惨の腕の再生が若干ではあるが、遅くなった。

 

 

「ヘェ…、上弦の壱の時もそうだったが、刀が赫い状態だと再生が遅くなるみてぇだな。ホラどうした糞虫、掛かって来いやァ!それとも、この赫い刀が恐くて来れないかァ?」

 

 

実弥は無惨を嘲笑うかのように挑発をしていた。

 

 

「……貴様は余程死にたいようだな。いいだろう、その望み、叶えてやろう!」

 

 

「!?不死川さん、危ない!!」

 

 

ヒュガッ ボゴンッ

 

 

「んなっ!?」

 

 

輝鬼が実弥に危険を知らせた直後、実弥がいた所に突如クレーターができた。

 

 

実弥は輝鬼に間一髪の所で体当たりされて難を逃れた。しかしそのときに額に貼っていた札が剥がれ、輝鬼の姿が露になってしまった。

 

 

「一体、何が起きたんだ…」

 

 

「無惨は背中と腕だけでは無く、腿からも背中にある管と同じ物を出して攻撃したんです」

 

 

「そっか…って、手前ェは誰だ!?炭治郎なのか!?声が同じだが…」

 

 

「自己紹介が遅れましたね。俺は別の世界から来た"元鬼殺隊・鬼柱"、竈門炭治郎です」

 

 

輝鬼の自己紹介に、実弥は目が点になった。

 

 

「……マジ?」

 

 

「"本気"と書いてマジです。証拠はこれです」

 

 

輝鬼は顔だけ変身を解く。すると、その顔は紛れも無く"竈門炭治郎"の顔だった。

 

 

「マジかよ…、頭が全然追い付かねェ……」

 

 

実弥は混乱してしまったのか、頭を抱えてしまった。

 

 

「不死川さん、考え込むのは後です。今はあの『糞ワカメ』を何とかしないと」

 

 

炭治郎(別)こと輝鬼は再び変身し、無惨を指差す。

 

 

「そうだなァ!世界は違えど、炭治郎は炭治郎だ!炭治郎、息を合わせろ!あの糞虫に一泡吹かせてやるぞ!」

 

 

「「はい!」」

 

 

実弥は輝鬼に言ったつもりが、輝鬼と同時にこの世界の炭治郎までもが返事をした。

 

 

「いや炭治郎、実弥は恐らく輝鬼に言ったのではないか…?」

 

 

義勇の呟きは炭治郎の耳には入らなかった。なぜなら炭治郎は実弥の下へ行ってしまったからだった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「行くぜェ鬼の炭治郎!」

 

 

「俺には輝鬼と言う名があります!炭治郎だと二人いるので、区別をつけるためにこれからは輝鬼と呼んでください!」

 

 

「そりゃ悪かった!そんじゃ改めて、輝鬼!遅れんなよ!!」

 

 

「ご心配無く!行くぞ!"輝鬼・炎光"!!」

 

 

輝鬼は力強く叫ぶと、体が一回り大きくなり、手足首に炎、胸に日輪のような模様が浮かんだ。

 

 

「この世界の俺!ヒノカミ神楽は使えるか!?」

 

 

「使えますが、長時間はできません!」

 

 

「それで十分!今から"本当の"ヒノカミ神楽を見せるから、よく見ておくんだ!!」

 

 

「はい!!」

 

 

輝鬼は腰に差してある刀を抜刀し、柄を強く握る。すると元々赤かった刀身が更に赫くなった。

 

 

「猗窩座、交代だ!"日の呼吸 円舞"!」

 

 

輝鬼たちが話している間に無惨と戦っていた猗窩座と交代した輝鬼は、すれ違い様に無惨を斬った。

 

 

「続けて"碧羅の天"!"烈日紅鏡"!"灼骨炎陽"!」

 

 

「"陽華突"!"日暈の龍・頭舞い"!"斜陽転身"!"飛輪陽炎"!」

 

 

「"輝輝恩光"!"火車"!"幻日虹"!」

 

 

輝鬼は更に型を繋げていき、無惨を斬り刻む。

 

 

「"炎舞"!これがヒノカミ神楽改め、"日の呼吸 拾参ノ型 円環(えんかん)"だ!!」

 

 

輝鬼はヒノカミ神楽の型を全て繋げ、無惨を斬った。

 

 

「……凄い」

 

 

炭治郎は輝鬼が繰り出した型を見て呆然としていた。

 

 

「貴様、忌々しいその型を…!」

 

 

輝鬼の円環によって斬り刻まれた無惨は、腕や背中の管が無くなり、腿や脛、胴体からは血が流れており、息も絶え絶えになっていた。

 

 

「おやおや、随分と男前になったじゃねぇか?」

 

 

実弥は相変わらず無惨を挑発していた。

 

 

「……あれ?」

 

 

炭治郎は今の無惨にとある"違和感"を感じていた。

 

 

「どうした炭治郎?」

 

 

「いえ…、無惨は"鬼"なのに、何で『息切れをしているのかな?』って思いまして…」

 

 

炭治郎が言ったことの意味を理解した実弥は改めて無惨を見る。無惨は斬られた箇所や腕を再生させてはいるが、確かに肩を上下させながら息をしていた。

 

 

「確かに…、肩で息していやがるなァ…」

 

 

「……どうやら、"薬"が効いてきたようだな」

 

 

炭治郎たちの疑問を聞いた猗窩座が呟いた。

 

 

「"薬"…ですか?確か零余子さんが吸収させた薬は"鬼を人間に戻す薬"だったのでは?」

 

 

「それの他にも幾つか混合させていたのさ。その一つが"老化薬"なのさ。"一分で五十年"老けさせる代物さ」

 

 

炭治郎の質問に猗窩座は笑いながら答えた。

 

 

「ちょっと待ちやがれェ、無惨が薬を吸収したのは今からざっと"五時間"近くは経過しているぜェ!」

 

 

「薬の効果が出始める時間を差し引いても、最低でも"三時間"は経過しているな。だから無惨は今、"九千年"老けたことになるな。それじゃあいくら無惨でも、息切れするのは仕方ないことだ」

 

 

猗窩座は"ニヤリ"と笑うと、無惨の方を見た。

 

 

「どうだ?自分が老化する気分は?」

 

 

「……くっ」

 

 

無惨は悔しそうに炭治郎たちを見ていると

 

 

『カアァァッ!夜明ケマデ五十九分!夜明ケマデ五十九分!』

 

 

鴉が夜明けまでの時間を伝えた。

 

 

「さて、夜明けまで残り一時間を切った。それまでお前をここに留めさせてもらうぜ!覚悟しな、腐った糞ワカメ(鬼舞辻無惨)!!」

 

 

輝鬼が音撃棒・閃光を構えたと同時に、炭治郎、実弥、猗窩座が刀を構えた。

 

 

 


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