もしも炭治郎の下に義勇と実弥が来ていたら   作:レイファルクス

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第25話

 

 

「炎の呼吸 伍ノ型 炎虎・二連!」

 

 

「水の呼吸 参ノ型 流流舞い!」

 

 

「日の呼吸 日暈の龍・頭舞い!」

 

 

「風の呼吸 弐ノ型 爪々(そうそう)科戸風(しなとかぜ)!」

 

 

「鬼幻術・鬼火!」

 

 

猗窩座、炭治郎、実弥、輝鬼の四名が無惨に攻撃を仕掛ける。回復しきっていない無惨は避けつつも、その攻撃を幾つか喰らっていた。

 

 

すると、無惨の体に"無数の傷痕"が浮かび上がった。

 

 

「急に無惨の体から無数の傷痕が!?どうなってんだ!?」

 

 

無惨の傷痕を見た実弥は驚き、攻撃の手を止める。

 

 

「あの傷痕は"始まりの呼吸の剣士"である"継国縁壱(つぎくによりいち)"さんがつけた傷痕です!無惨(やつ)は胃や腸などの臓器を"脳"と"心臓"に造り変えているんです!今無惨の体内には"七つの心臓"と"五つの脳"があります!」

 

 

そこに輝鬼が傷痕の正体と無惨の秘密を暴露した。

 

 

「何だと!?んなの本物の化け物じゃねぇか!?」

 

 

「無惨は元々化け物なので問題無いです!」

 

 

輝鬼はさりげなく無惨をディスった。

 

 

「それとすみません!しのぶさんに渡したい物があるので、一旦離脱します!」

 

 

輝鬼はそう言って、戦線を一時離脱した。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「しのぶさん、少々よろしいでしょうか!?」

 

 

「ひゃい!?」

 

 

輝鬼に突然声を掛けられたしのぶは驚いて変な声を出してしまった。

 

 

「すみません、これを渡したくて…」

 

 

輝鬼は何処から出したのか、手に透明な液体が入った瓶を持っていた。

 

 

「これを痣が出た人に投与してください。寿命を"ある程度"延ばす効果があります。でも、一回投与してしまうとそれ以降投与しても効果はありませんので」

 

 

輝鬼は瓶をしのぶに渡して再び無惨の所へ向かった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「お待たせしました!」

 

 

実弥たちの下に輝鬼が戻ってきた。

 

 

「輝鬼殿、先程胡蝶殿に何かを渡していたようだが…?」

 

 

「あれは一回限定の"寿命を延ばす薬"だ。痣が出た人に投与すれば、ある程度ではあるが寿命を延ばすことができるんだ」

 

 

猗窩座の質問に輝鬼は丁寧に答えた。

 

 

「そうなのか。因みに延びる寿命は大体どれ位だ?」

 

 

「人にもよるけど、約三年くらい…かな?」

 

 

「……微妙だな」

 

 

輝鬼の解答に、猗窩座は少しだけ呆れていた。

 

 

「仕方ないよ。何だかよく分からない成分や材料を使っているんだから。珠世さんでも、これが精一杯だったんだから」

 

 

「ウェイ!?あの薬、珠世様が生成された物だったのか!?」

 

 

輝鬼が渡した薬は珠世が生成した物だと知った猗窩座は驚いて一部言葉がオンドゥル語になってしまった。

 

 

「…そんなに驚くことか?」

 

 

「「「驚くわ!!」」」

 

 

輝鬼の疑問に猗窩座だけでは無く、炭治郎と実弥までもがツッコミを入れた。

 

 

「この私を前に談笑とは、随分と余裕だな!!」

 

 

「「「「あっ…、忘れてた…」」」」

 

 

輝鬼、猗窩座、炭治郎、実弥の四名に存在を忘れられていた無惨は怒りに震えていた。

 

 

『カアァァッ!夜明ケマデ四十分!四十分!』

 

 

その時、鴉が夜明けまでの時間を伝えた。すると無惨は輝鬼たちがいる方向とは"逆方向"に向かって走り出した。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「あっ!無惨が逃げる!」

 

 

「逃がすかァ!待てビチクソ野郎!!」

 

 

無惨が逃げたことに気づいた炭治郎が声を発し、実弥が無惨を追いかける。

 

 

「逃がさんぞビチクソ野郎!!」

 

 

「「止まれビチクソ野郎!!」」

 

 

実弥の『ビチクソ野郎』が感染(うつ)ったのか、猗窩座に炭治郎、輝鬼までもが無惨を『ビチクソ野郎』と呼びながら追いかけた。

 

 

「ビチクソビチクソ五月蝿いわ!!」

 

 

無惨は逃げながら文句を言う。

 

 

「大人しく死ねビチクソ野郎!!」

 

 

「待ちなさいビチクソ野郎!!」

 

 

「「殺してやるビチクソ野郎!!」」

 

 

『死に晒せビチクソ野郎!!』

 

 

輝鬼たちに続くかのように、行冥、蜜璃、小芭内、義勇。更には生き残った隊員たちまでもが無惨を『ビチクソ野郎』と呼びながら追いかけた。

 

 

「私が…、私が一体何をしたと言うのだ~!!(泣)」

 

 

無惨は泣きながら鬼殺隊員から逃げていた。

 

 

「見つけたぞビチクソ野郎!!」

 

 

『こっちにビチクソ野郎がいるぞ~!!』

 

 

『待て~!ビチクソ野郎!!』

 

 

無惨が逃げる先には他の鬼殺隊員がおり、その者たちも無惨のことを『ビチクソ野郎』と呼んでいた。

 

 

鬼殺隊の『口撃(誤字に非ず)』を受け続けた無惨の精神は少しずつではあるが磨り減り、無惨のストレスがマッハに溜まっていった。

 

 

そして無惨の走るスピードが徐々に遅くなり、炭治郎たちが無惨に追い付いた。

 

「追い付いたぞビチクソ野郎!!」

 

 

「観念しろビチクソ野郎!!」

 

 

実弥と猗窩座は未だに無惨を『ビチクソ野郎』と罵る。

 

 

「……あれ?」

 

 

そんな中、炭治郎は無惨が言い返してこないことに疑問を感じ、無惨の顔を覗いて見ると、しわくちゃの皺だらけの顔に、頭髪が殆んど抜け落ち、頭頂部に一本残っているだけの状態だった。

 

 

「ヒェッ」

 

 

無惨の顔を見た炭治郎は、思わず悲鳴を上げた。炭治郎の悲鳴を聞いた実弥たちが炭治郎の側まで寄って無惨の顔を覗き見る。

 

 

「ダッヒャッヒャッヒャッヒャッ!!何つー顔してんだよ無惨!」

 

 

実弥は大声で笑い出し

 

 

「プッ クククッ いい顔になったじゃないか無惨… クククッ」

 

 

猗窩座は笑いを堪え

 

 

「………」

 

 

輝鬼は言葉を失って放心していた。

 

 

『カアァァ!夜明ケマデ二十五分!夜明ケマデ二十五分!早クビチクソ野郎ヲ倒スノダ!』

 

 

鴉が夜明けまでの時間を伝えながら無惨の精神を更に摩耗させる。

 

 

「ハッ! 止めは俺がやります!」

 

 

輝鬼は我を取り戻し、腹に着けていた『音撃鼓・輝光』を無惨に取り付ける。すると音撃鼓・輝光が大きくなり、和太鼓程の大きさになった。

 

 

「音撃強打・爆炎陽光ノ型!オラァ!」

 

 

ドンッ

 

 

輝鬼は音撃鼓・輝光を両手に持った音撃棒・閃光で叩く。

 

 

「オラ、オラ、オラオラオラオラオラオラオラオラ……」

 

 

ドンッ、ドンッ、ドドドドドドドドドドドドド……。

 

 

輝鬼は何度も、何度も、力強く太鼓を叩く。

 

 

「オ~ラァ!!」

 

 

ドンッ!!

 

 

そして最後に、最大の一撃を叩き込むと、無惨は爆散し、それと同時に夜明けが訪れ、無惨の肉片は陽光に晒され、塵となった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「勝っ…た……」

 

 

「ああ、勝ったんだ。そして、終わったんだ。悲しみの連鎖が」

 

 

『うおおぉぉぉおお~~~!!!』

 

 

最初は呆然としていた隊員たちだが、戦いに勝ったことを自覚した途端、盛大な勝ち(どき)が上がった。

 

 

「義勇さん、勝ちました!勝ちましたよ!!」

 

 

「わ、分かった!分かったから落ち着けしのぶ!」

 

 

しのぶは嬉しさの余り義勇に抱きつき、義勇はしのぶを落ち着かせようとする。

 

 

「伊黒さん、やりましたね!」

 

 

「ああ、そうだな甘露寺」

 

 

蜜璃は小芭内に寄り添い、小芭内は蜜璃に向かって微笑んでいた。

 

 

「やったな猗窩座!…あれ?猗窩座?」

 

 

輝鬼は猗窩座と一緒に喜ぼうとしていたが、そこに猗窩座はいなかった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

炭治郎たちから離れた日が当たらない場所では、愈史郎が陽光に当たらないようにしながら座っていた。

 

 

「終わったな…。終わりましたよ珠世様…」

 

 

愈史郎は感傷に浸っていた。

 

 

「確かに大きな戦いは終わった。だが、俺たちの戦いは今、これから始まったんだ」

 

 

そこに猗窩座が現れた。

 

 

「猗窩座か。あいつらの所に行かなくていいのか?」

 

 

愈史郎は猗窩座に質問をする。

 

 

「俺はまだ太陽を克服した訳では無いからな。行きたくても行けないのさ」

 

 

猗窩座は肩をすくめながら言った。

 

 

「……そうか。…猗窩座、お前、人間に戻るつもりはあるか?」

 

 

「何だ?藪から棒に」

 

 

「いいから答えろ」

 

 

愈史郎は猗窩座に質問の答えを急かす。

 

 

「……そうだな。俺は杏寿郎、そして輝鬼に"命の尊さ"を学んだ。だから俺は人間に"戻る"。そして一人でも多くの命を救ってみせる」

 

 

猗窩座は自分の"決意"を愈史郎に話した。

 

 

「……そうか。できるといいな」

 

 

「"できる"、"できない"じゃ無い。"やる"か"やらない"かだ」

 

 

猗窩座は愈史郎に向かって笑い、愈史郎もまた笑みを浮かべた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

最終決戦から三日後、産屋敷の別邸の中庭に人影が集まっていた。

 

 

『風柱・不死川実弥』

 

 

『水柱・冨岡義勇』

 

 

『蟲柱・胡蝶しのぶ』

 

 

『岩柱・悲鳴嶼行冥』

 

 

『蛇柱・伊黒小芭内』

 

 

『恋柱・甘露寺蜜璃』

 

 

『炎柱・煉獄杏寿郎』

 

 

『霞柱・時透無一郎』

 

 

『元音柱・宇随天元』

 

 

『竈門炭治郎』

 

 

『我妻善逸』

 

 

『嘴平伊之助』

 

 

『栗花落カナヲ』

 

 

『不死川玄弥』

 

 

そして『元鬼殺隊・鬼柱 竈門炭治郎こと音撃の戦士・輝鬼』の総勢十五名がいた。

 

 

「「「「お館様のお成りです」」」」

 

 

そこに耀哉の娘のにちか、くいな、ひなた、かなたの四名が耀哉が来たことを告げる。

 

 

「おはよう皆。今日もいい天気だね」

 

 

屋敷の奥から現れた耀哉は無惨の呪いが解けたお陰で視力が戻り、中庭から見える空を仰ぐ。その横には妻のあまねと息子の輝利哉が寄り添っており、座敷の日陰には珠世、愈史郎、猗窩座、零余子が座っていた。

 

 

「今日の空は雲一つ無い快晴、まるで私たちの心を表してしるみたいだね」

 

 

空を見た耀哉はまるで詩人のように語った。

 

 

「お館様におかれましても御壮健で何よりです。益々の御多幸を切にお祈り申し上げます」

 

 

今回の耀哉への挨拶は輝鬼がした。

 

 

「ありがとう。君は確か別の世界の炭治郎だったね」

 

 

「はい、"元鬼殺隊・鬼柱"竈門炭治郎です。この場には俺が二人おりますので、区別をつけるために輝鬼とお呼びください」

 

 

「分かったよ。輝鬼、私たちのために別の世界から来てくれてありがとう」

 

 

「勿体無いお言葉です」

 

 

「さて皆、鬼舞辻無惨の討伐、お疲れ様。これで我々産屋敷一族の悲願を達成することができた。一族を代表してお礼を言うよ。本当にありがとう」

 

 

耀哉を含めた産屋敷一家は全員に向けて頭を下げる。

 

 

「あっ…、頭をお上げくださいお館様!」

 

 

「そうです。我々が鬼殺隊として戦えたのはお館様方産屋敷一族のお力添えのお陰です」

 

 

頭を下げた耀哉たちに実弥は驚き、義勇は礼を言う。

 

 

「…ありがとう。今日で鬼殺隊は解散とする。皆、今まで本当にありがとう」

 

 

耀哉は改めてお礼を言った。

 

 

「それと義勇、君から皆に報告があるんだってね?」

 

 

「御意。私冨岡義勇は、胡蝶しのぶと結婚しましたことをお伝え致します」

 

 

耀哉に促された義勇は、しのぶと結婚したことを報告した。

 

 

「そうなのか!そりゃ派手にめでたいな!」

 

 

天元は義勇としのぶが結婚したことを喜んだ。

 

 

「宇随さんありがとうございます。それと、私のお腹には新しい命…、私と義勇さんの"子供"がもう宿っています」

 

 

『えええぇぇぇ~~~っ!!!?』

 

 

しのぶの爆弾発言に皆が驚いた。

 

 

「しのぶちゃん、いつから子供ができたの!?」

 

 

「柱稽古が始まる前ですね。このことを知っていたのは私と義勇さん、担当医である珠世さんと、助手の愈史郎さんに猗窩座さんに零余子さん、それからカナヲですね」

 

 

「えぇっ!?カナヲ、しのぶさんが妊娠していたのを知っていたのか!?」

 

 

「うん。柱稽古が始まる時に、師範が教えてくれたの」

 

 

カナヲの解答に炭治郎は呆気に取られてしまった。

 

 

その後義勇は男性陣にもみくちゃにされながらも祝福され、しのぶも女性陣に囲まれながら祝福されていた。

 

 

そして夜になり、産屋敷邸で勝利の晩餐会が開かれた。

 

 

ある者は騒ぎ

 

 

ある者は豪勢な食べ物に舌鼓を打ち

 

 

ある者は酒に酔い

 

 

皆思い思いの一時を楽しんでいた。しかし、その中に輝鬼は"いなかった"。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

産屋敷邸の一室でどんちゃん騒ぎをしている最中、輝鬼こと別の世界の炭治郎は一人、夜空に浮かぶ月を見ていた。

 

 

「この世界の戦いは終わった。部外者である俺は静かに去るさ」

 

 

炭治郎は暗闇に身を隠そうとしていた。

 

 

「待ってくれ」

 

 

しかし、炭治郎を呼び止める者がいた。

 

 

「……猗窩座か」

 

 

炭治郎を呼び止めたのは猗窩座だった。

 

 

「輝鬼…、いや、炭治郎。お前、一体何処に行こうとしていたんだ?」

 

 

「俺はこの世界では完全な部外者だ。目的を終わらせれば、"世界"から弾き出される。それだけさ」

 

 

「…炭治郎、俺はお前に礼を言いたい。あの時、俺を救ってくれてありがとう。お前が救ってくれたから俺はこの世界で再び生を受け、生きることができた。本当に、ありがとう」

 

 

猗窩座は炭治郎に頭を下げた。

 

 

「俺は何もしてはいないさ。けど、再び貰ったその命、無駄にしないようにな」

 

 

「もちろんだ」

 

 

炭治郎は猗窩座に拳を突き付け、猗窩座はその拳に自分の拳を重ねた。

 

 

「炭治郎、待たせた。迎えに来たぞ」

 

 

そこに現れたのは、『外史管理局否定派』の左慈だった。

 

 

「そんなに待ってはないさ。時間ぴったりだな」

 

 

「賛辞はいい。これよりお前を"元の世界"に送る。用意はいいか?」

 

 

「いつでも」

 

 

左慈の質問に炭治郎は頷き、左慈は炭治郎の側まで寄って印を結ぶ。すると炭治郎と左慈の二人を中心に光が登った。

 

 

「じゃあな猗窩座。幸せになれよ」

 

 

炭治郎はそう言った途端、光が強くなり辺りを白く塗り潰す。猗窩座はその光の眩しさから目を守るために腕で視界を被う。そして光が止み、猗窩座は腕を退けると、そこに炭治郎たちはいなかった。

 

 

「お兄様」

 

 

「…零余子か」

 

 

猗窩座の後ろに零余子がいた。

 

 

「……彼は?」

 

 

「この世界の役目を終えて、自分の世界へ帰ったよ」

 

 

猗窩座は夜空を見上げ、零余子も猗窩座に連られて一緒に夜空を見上げる。

 

 

「…彼は一体、何者なんでしょうか?」

 

 

零余子は猗窩座に質問をする。

 

 

「彼は俺を救ってくれた"恩人"であり、世界を守る"鬼"…かもな」

 

 

猗窩座は夜空を見上げたまま、零余子の質問に答えた。

 

 

猗窩座たちの頭上には、満月と無数の星が光っており、満月の側を一筋の流れ星が走った。

 

 

 

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