もしも炭治郎の下に義勇と実弥が来ていたら 作:レイファルクス
柱合裁判が終わった後、お館様こと『
炭治郎は男性の隠に背負われ、禰豆子は箱に入ってその箱を女性の隠が背負い、二人に負担が掛からないように運んだ。その理由が
「二人を丁重に運べよなァ…。乱暴にしたら…、分かってるよなァ…?」
実弥がドスの効いた声で言ったせいだった。その時の実弥は顔中に青筋が浮かび、目も血走っていたので相当怖かったと後に隠の隊員が語っていた。
…
……
………
そこは蟲柱・胡蝶しのぶが住む屋敷であり、鬼殺隊の"診療所"も兼用されている屋敷でもあった。
そこでは任務で怪我を負った隊員が治療を受けていた。
「ごめんくださいまし~」
女性の隠隊員が蝶屋敷の玄関で来訪を伝えるが、誰も出て来なかった。もう一度、さっきよりも大きな声で言うが、それでも来なかった。
仕方無く中庭の方へ向かった三人は、その中庭で蝶と戯れる女性隊員を見つけた。
「あの方は確か…、胡蝶様の
炭治郎は"継子"の意味が分からず質問をする。
「"継子"ってのは柱の方が直々に育てる隊員のことだ。分かりやすく言えば"柱の弟子"の総称だな」
男性の隠隊員は炭治郎の質問に答えた。そして女性の隠隊員が屋敷に入っても良いか質問をするが、カナヲは笑顔を浮かべたまま答えようとはしなかった。
そこに割烹着を着た女性『神崎アオイ』が現れ、三人を屋敷の中へと案内する。そして連れてこられた場所は、等間隔にベッドが並べられた"大病室"だった。
そこでは炭治郎の同期の一人、金髪の少年『
炭治郎は背負われたままの状態で善逸に声をかけた。すると善逸は隠の人に抱きつきながら泣いてしまった。その時に隠の人の隊服に鼻水を盛大につけてしまった。
炭治郎は善逸と同じ自分の同期の一人である頭に猪の被り物をしている『
そして炭治郎が隣のベッドに視線を向けると、ベッドに横になっていた伊之助を見つけた。炭治郎は伊之助に助けに行けれなかったことを謝るが
「イイヨ、気ニシナイデ」
と、鼓屋敷から那田蜘蛛山までに聞いた時と声が違っていた。善逸によると、伊之助は鬼に喉を握り潰されそうになっており、更にその状態で大声を上げたことが止めとなってしまい、今の声になってしまっているんだそうな。
その後炭治郎は病人服に着替え、伊之助の隣のベッドに入った。
炭治郎は筋肉痛や肉離れのせいで全身に痛みが広がり、悶絶する。善逸は薬を飲んだか飲んでないかで騒ぐ。更に意気消沈している伊之助を炭治郎と善逸が励ます毎日だった。因みに禰豆子は那田蜘蛛山及び裁判の検証のために作った怪我を治すために四六時中眠っていた。
炭治郎が蝶屋敷で療養してから数日後、炭治郎の下に任務で知り合った村田隊士が見舞いに訪れた。
村田曰く、『隊士の質が落ちてる』だの、『命令に従わない隊士の育手は誰』だの、ピリピリして柱が怖くて生きた心地はしなかったらしい。
「でも、義勇と風柱様が慰めてくれたから嬉しかったよ」
どうやら義勇と実弥が村田隊士を慰めてくれたらしい。
「よう炭治郎。怪我は大丈夫かァ?」
そこに実弥が見舞いに訪れた。手には風呂敷が握られていた。
「あ、不死川さん!」
炭治郎も実弥に気がつき、声をかけた。
「何とか大丈夫そうだなァ。これは見舞いの品のおはぎだァ、皆で食ってくれやァ」
「ありがとうございます!不死川さんっておはぎが好きなんですか?前にもこうしておはぎを頂きましたけど…」
おはぎを受け取った炭治郎は実弥に質問をする。
「まあなァ。おはぎは俺の大好物だからな。手土産となると、ついつい"コイツ"を選んじまうんだァ。」
実弥は照れ臭そうに頬を指で掻く。
「それよりも炭治郎、今日はお前に"提案"をしに来たんだ」
「"提案"…ですか?」
実弥が言った提案に炭治郎が首を傾げる。
「ああ。…炭治郎、お前、『俺と義勇の継子』になる気はないか?」
「「!?」」
「「……?」」
継子の意味を知っている炭治郎と村田隊士は驚き、意味を知らない善逸と伊之助は首を傾げていた。
「その反応を見る限り、継子の意味は知ってるみたいだな。お前は水の呼吸の他に風の呼吸も使える。しかしお館様が仰ったように鬼である禰豆子を連れているせいか、お前のことを快く思わない奴が出てくる」
「けど、継子になれば少しは炭治郎の言葉の重みが変わる。しかも柱が二人も認めていれば尚更だ。もちろんこの提案は断っても構わない。俺も義勇も継子にならないことに文句は言わない」
炭治郎は実弥の言葉を聞いて炭治郎は考え込んだ。そして
「不死川さん、継子の件…、お受けします」
炭治郎は実弥の提案を受け入れることにした。
「!!、そうかァ、ありがとなァ炭治郎」
実弥は炭治郎に頭を下げた。
「実弥さん、お話は終わりましたか?」
実弥の後ろにしのぶが現れた。その瞬間、村田隊士はそそくさと逃げ帰った。
「ああ、丁度今終わった所だァ。炭治郎は受け入れてくれたぜェ。それじゃそろそろ俺はお暇するぜェ」
実弥は椅子から立ち上がり、大病室から退室した。
「体調の方は大丈夫そうですか?」
しのぶが炭治郎たちに質問をし、炭治郎たちは『かなり良くなってきた』と答えた。
「それは良かったです。ではそろそろ
しのぶは笑顔でそう言った。
…
……
………
それは怪我を負い長期入院した隊員たちが任務に復帰するための訓練である。
まず炭治郎と伊之助がこれを受けたが、意気消沈した感じで病室に戻るや即座にベッドに潜り、善逸の質問に答える気力すら無くなっていた。
その翌日、蝶屋敷の道場に集まった炭治郎と伊之助、それに善逸が加わり、機能回復訓練が始まろうとしていた。
「善逸さんは今日から訓練参加ですので、ご説明させていただきます」
善逸が訓練初参加と言うことで、アオイが訓練に関しての説明を開始した。
「まずはあちら。寝たきりになった硬くなった体をあの子たちがほぐします」
アオイが指差した所には布団があり、そこに三人の少女がいた。
「それから"
次にアオイが指差した所には、ちゃぶ台があり、その上に湯飲みが幾つも置かれていた。
「湯飲みの中には薬湯が入っています。お互いに薬湯かけ合うのですが、湯飲みを持ち上げる前に相手から湯飲みを押さえられた場合は湯飲みを動かせません」
「最後は
アオイは自分とちゃぶ台の向こう側に座っているカナヲを指差した。説明を聞いていた炭治郎と伊之助は落ち込んでいた。
「すみませんちょっといいですか?」
そこで善逸が待ったをかける。アオイは質問があると思い善逸に質問をする。しかし善逸は質問はせず、炭治郎と伊之助を連れて行こうとする。だが伊之助はそれを拒否する。
「いいから来いって言ってんだろうがァァァ!!」
しかし善逸は顔に青筋を浮かべ、大声をあげる。これには炭治郎に伊之助、アオイもびっくりした。
そして善逸は炭治郎と伊之助を引き摺り、道場の裏へ来た。善逸は『そこで正座しろ』と命令する。しかし命令されるのが嫌いな伊之助が反発をした。その瞬間、善逸が伊之助を殴り、伊之助は切りもみ回転しながら壁にぶつかった。
炭治郎は伊之助を介護しながら善逸に謝るように言うが
「お前が謝れ!お前らが詫びれ!!天国にいたのに地獄にいたような顔してんじゃねぇえええ!!」
逆に善逸が謝れと言い出した。
「女の子とキャッキャキャッキャしてただけのくせに何をやつれた顔してみせたんだよ!!土下座して謝れよ切腹しろ!!」
炭治郎は善逸の暴言に対して反論を申し立てる。
「黙れこの堅物デコ真面目が!!黙って聞け!いいか!?女の子に触れるんだぞ体揉んでもらえて!湯飲みで遊んでる時は手を!鬼ごっこの時は体触れるだろうがアア!!」
「女の子一人につきおっぱい二つお尻二つ太もも二つついてんだよ!!すれ違えばいい匂いがするし見てるだけでも楽しいじゃろがい!!」
しかし善逸の煩悩には『馬の耳に念仏』であり、更に大声で捲し立てる。
そして(炭治郎除く)士気が上がった善逸たちが戻り、機能回復訓練が始まった。
まずは体をほぐす柔軟から始まった。炭治郎は愚か普段は体が柔らかい伊之助も悲鳴をあげる。しかし善逸は途中でプロレス技を三人がかりでかけられるも、終始笑顔でいた。これには伊之助も唸っていた。
続く反射訓練では善逸はアオイの手を握りながら他の湯飲みを持ち上げたが
「俺は女の子にお茶をぶっかけたりしないぜ」
とカッコつける。しかし道場の裏でのやり取りはアオイたちにも聞こえており、アオイたちの善逸を見る目は冷たかった。
全身訓練では善逸はアオイに抱きつき、ボコボコにされた。しかし善逸は
「勝負に勝ち戦いに負けた!」
と満足げになっていた。
伊之助も善逸に続き反射訓練、全身訓練でアオイに勝った。炭治郎だけはアオイに負けていた。そして善逸と伊之助の快進撃はここまでであった。
アオイに代わりカナヲが相手になると、善逸は愚か伊之助でさえも勝てなかった。
そしてそれから五日間、炭治郎、伊之助、善逸は誰もカナヲに勝つことは出来ず、伊之助はふて腐れてへそを曲げ、善逸も早々に諦め、道場に来るのが炭治郎だけとなってしまった。
事情を聞いたアオイは当然怒り、見放した。それから十日、炭治郎はめげずにカナヲに挑むが、負け続けていた。炭治郎はカナヲとの違いを探すために考え込んでいた。
その時、不意に袖を引っ張られ顔をそちらに向ける。すると道場で炭治郎たちの体をほぐしていた三人の少女がいた。炭治郎は気づかなかったことに謝りながらどうしたのか聞くと
「手拭いを……」
震えながら炭治郎に手拭いを差し出した。炭治郎は笑顔でお礼を言った。すると三人の少女はそれで緊張や警戒心が若干解けたのか
「あの炭治郎さんは全集中の呼吸を四六時中やっておられますか?」
と話せるようになった。炭治郎は少女の一人が言ったことに首を傾げると
「朝も昼も夜も、寝ている間もずっと全集中の呼吸をしてますか?」
もう一人の少女が分かりやすく質問の説明をすると、炭治郎は『やってない』と答えた。更に『そんなことできるの?』と質問をすると
「はい。それができるのとできないのとでは天地程差が出るそうです」
「できる方々はすでにいらっしゃいます。柱の方々やカナヲさんです。頑張ってください」
と返答された。炭治郎は少女たちにお礼を言ってその日の翌日から全集中の呼吸を四六時中する特訓を開始するのだった。