もしも炭治郎の下に義勇と実弥が来ていたら   作:レイファルクス

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第6話

 

 

三人の少女から全集中の呼吸を四六時中行うことを教えてもらった炭治郎は、修行を開始した。が、全集中の呼吸は使用するだけでも肺に負担が掛かるため、習得は熾烈を極めていた。

 

 

炭治郎は修行の度に耳を押さえていた。心臓の音が五月蝿く、耳から心臓が出たのではないかと思っていたからだった。

 

 

その様子を見ていた少女たちは炭治郎に差し入れをしようと相談をしていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

瓢箪(ひょうたん)を吹く?」

 

 

「そうです。カナヲさんに稽古をつける時、しのぶ様はよく瓢箪を吹かせていました」

 

 

差し入れを持ってきた少女たちは炭治郎にしのぶがカナヲにさせていた稽古の内容を教えていた。

 

 

「おもしろい訓練だね。音が鳴ったりするのかな?」

 

 

「いいえ、吹いて瓢箪を"破裂"させてました」

 

 

モシャリ「へぇ~、瓢箪を…(え…?破裂?)」

 

 

炭治郎は修行の内容にびっくりしていた。

 

 

「えっ?これを?この硬いのを?」

 

 

「はい。しかもこの瓢箪は特殊ですから通常の瓢箪よりも硬いです」

 

 

「だんだんと瓢箪を瓢箪を大きくしていくみたいです。今カナヲさんが破裂させているのは"この瓢箪"です」

 

 

そこには少女が座った状態の背丈と同じ高さの瓢箪が隣にあった。それを見た炭治郎は『頑張ろう!』と決心した。

 

 

それから炭治郎は屋敷の塀の上を走ったり、岩をロープで結んで木の枝に引っかけ、ロープを引っ張って岩を持ち上げたりと、狭霧山でやっていた修行を真似ていた。

 

 

それから十五日後の夜、炭治郎は屋敷の屋根の上で座禅を組んで瞑想をしていた。炭治郎は昼間に肺を酷使し、夜に肺を落ち着かせるために瞑想による深呼吸をしていたのだった。

 

 

瞑想中、自分の刀を打ってくれた火男(ひょっとこ)の面を着けた『鋼錢塚(はがねづか)』や浅草で出会った『人を喰わない医者の鬼』"珠世(たまよ)"の使い猫"茶々丸(ちゃちゃまる)"のことを思い出してしまい、集中力が弱くなってしまった。

 

 

炭治郎は再び集中しようとすると

 

 

「もしもし、頑張ってますね」

 

 

しのぶの顔が至近距離にあった。炭治郎はしのぶの美貌と危うくキスしそうな距離のせいで顔が真っ赤になっていた。

 

 

しのぶは炭治郎から少し離れた場所に座り、善逸と伊之助、訓練から逃げた二人のことを話すと、炭治郎は『自分ができるようになればやり方を教えられる』と答えた。

 

 

「あの…、すみませんが、少々変な質問をしてもいいですか?」

 

 

「変な質問…ですか?いいですよ。ですがもし、私の"体重"や"胸の大きさ"とかの話でしたら…」

 

 

しのぶはこめかみに青筋を浮かべ、鳩尾を殴るジェスチャーをする。

 

 

「ち…、違いますよ!俺が聞きたいのは『冨岡さんと不死川さんとの仲』についてですよ。何かお二人と仲がいいなぁと思っていたので…」

 

 

炭治郎は義勇と実弥、しのぶの三人の仲について質問をしたかったようだ。しのぶも質問の内容に納得して

 

 

「あらあら、それは勘違いしてごめんなさい」

 

 

と謝った。

 

 

「私と義勇さん、実弥さんとの仲でしたね。別に隠していた訳では無かったのですが、私と義勇さんは恋仲なんです。それと実弥さんに関しては私の姉と恋仲"でした"。なのでお二人とは仲良しなんですよ」

 

 

しのぶはあっさりと義勇と実弥との関係を話した。

 

 

「そうだったんですか!…あれ?今不死川さんのは"でした"って…」

 

 

炭治郎はしのぶの言葉にある違和感に気づいた。

 

 

「私の姉は"元鬼殺隊の柱"だったんです。炭治郎君と同じ鬼に同情している優しい姉でした。でも、姉は鬼に"殺された"んです」

 

 

しのぶの衝撃の事実に炭治郎は言葉を失った。

 

 

「実弥さんは姉が死んだことに涙を流し、義勇さんは悲しみに暮れた私を慰めてくれました。そのことがきっかけで私は義勇さんのことを異性として意識するようになっていました。それは義勇さんも同じだったようで、私のことを常に心配してくれました」

 

 

「それからは何かと任命が一緒になったりして、ますます意識してしまったのですが、ある日義勇さんから告白されました。私も義勇さんのことが好きになっていたので承諾し、恋仲となりました」

 

 

しのぶは照れ臭そうに話した。炭治郎もしのぶから照れてる匂いを嗅ぎ取り、真実であることを悟った。

 

 

「炭治郎君、あなたには私の、いいえ、姉の夢を託したいと思っています。『鬼と仲良くなる』と言う夢を」

 

 

しのぶの発言に炭治郎は呆気に取られた。

 

 

「あなたが私の代わりに頑張ってくれてると思うと私は安心できます。気持ちが楽になります。どうか、姉の夢を叶えてください」

 

 

そう言ってしのぶは炭治郎の側を離れた。

 

 

「……頑張ります」

 

 

炭治郎はそれだけ言って瞑想を再び始めた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「"なほ"ちゃん、"すみ"ちゃん、"きよ"ちゃん。俺の修行の手伝いをしてほしい。俺が寝ている間、全集中の呼吸をやめたら布団叩きでぶん殴ってくれないか?」

 

 

その翌日、炭治郎は仲良くなった三人の少女に協力を仰いだ。

 

 

因みに三つ編みの髪型で蝶の髪飾りをしているのが『なほ』、アオイと同じ髪型にしているのが『きよ』、きよと似ている髪型をしているのが『すみ』である。

 

 

「「「いいですよ!」」」

 

 

なほ、すみ、きよの三人娘は炭治郎のお願いを承諾した。

 

 

そしてその日の夜、炭治郎が寝ている時、全集中の呼吸が途切れた時を見計らい、三人娘は遠慮無く炭治郎を布団叩きで叩いた。

 

 

それから十日後、炭治郎は目標の瓢箪を持ち、鼻から息を吸う。そして瓢箪に口を付けて息を勢いよく吹いた。

 

 

三人娘が応援している中、炭治郎は遂に瓢箪を息だけで破裂させた。目標を達成したことに炭治郎は三人娘と一緒に喜んだ。

 

 

そして全身訓練ではカナヲ相手に互角の勝負をし、遂にカナヲの手首を掴み、勝利した。

 

 

続く反射訓練でも、カナヲと互角の勝負を繰り広げ、遂に湯飲みを持ち上げることができた。そしていざかけようとすると

 

 

『その薬湯、臭いよ?かけたら可哀想だよ』

 

 

炭治郎の理性が語りかけ、湯飲みをカナヲの頭の上に置いた。

 

 

炭治郎は初めてカナヲに勝ったことについて三人娘と一緒に喜んだ。その様子を見ていた善逸と伊之助は置いてけぼりを喰らったかのように焦っていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

それから翌日、炭治郎は善逸と伊之助にどうやって勝ったのか、教えていたが、炭治郎は人に教えるのが爆裂的に下手くそなので、擬音だらけの説明をしていた。

 

 

当然善逸と伊之助が分かるはずも無く、二人は炭治郎の説明に首を横に振っていた。

 

 

「炭治郎君が会得したのは『全集中・常中(じょうちゅう)』と言う技です。全集中の呼吸を四六時中やり続けることにより、基礎体力が飛躍的に上がります」

 

 

これを見かねたしのぶが炭治郎に代わり炭治郎の後ろから説明を開始する。

 

 

「これはまぁ基本の技というか初歩的な技術なのでできて当然ですけれども。会得するには相当な努力が必要ですよね」

 

 

「まぁできて当然(・・・・・)ですけれども。仕方ないですできないから。しょうがないしょうがない」

 

 

しのぶは伊之助の肩をポンポンと叩いた。

 

 

「はあ"ーん!?できてやるっつーの当然に!!舐めんじゃねぇよ乳もぎ取るぞコラ」

 

 

伊之助はしのぶに馬鹿にされた怒りでやる気に満ちた。

 

 

「頑張ってください善逸君。一番(・・)応援してますよ」

 

 

更にしのぶは善逸の手を握り、心にも思っていないことを言った。しかし善逸は顔が真っ赤になり、やる気に満ちた。

 

 

しのぶは相手のやる気を引き出すことが得意の『魔蝶の女』であった。

 

 

その様子を道場の影から覗いている者がいた。

 

 

「しのぶ…、やる気を出させるためとは言え、他の男の手を握るなんて…。それからあの猪…、一体"誰"の"何"をもぎ取るって言ったんだ…!」

 

 

覗いている者とは義勇だった。しかも側には実弥もいた。

 

 

「義勇…、お前、こんなに嫉妬深かったかァ…?」

 

 

実弥は義勇の嫉妬深さに若干引いていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

それから九日後、善逸と伊之助は常中の会得に成功した。

 

 

その数日後、炭治郎の下に鴉がやって来て、刀が打ち終わり、こちらに来ていることが分かった。炭治郎は伊之助を呼び、蝶屋敷の前まで来る。すると屋敷に向かってくる二人の影があった。

 

 

炭治郎はその影に向かって大きく手を振る。すると影の一つがだんだんと近づいて来た。そして影が鮮明になると、それは"包丁を持って突進している鋼錢塚"の姿だった。

 

 

炭治郎は鋼錢塚の刺突をかわす。振り向いた鋼錢塚は怒りに満ちており、自分が打った刀を折った炭治郎を一時間もの間、追いかけ回した。

 

 

「まぁ鋼錢塚さんの刀への愛情は人一倍ですからね。あっ、私は鉄穴森(かなもり)と申します。この度伊之助殿の刀を打たせて頂きました」

 

 

鋼錢塚と一緒に来た鉄穴森は自己紹介をした。鉄穴森が伊之助に刀を渡し、伊之助が刀の柄を握ると、刀身に色が着いた。

 

 

日輪刀

 

 

別名『色変わりの刀』とも呼ばれている鬼殺隊員が用いる刀である。

 

 

この刀の原材料は『陽光山(ようこうざん)』と呼ばれる年中太陽の光が降り注ぐ山で採掘される『猩々緋砂鉄(しょうじょうひさてつ)』と『猩々緋鉱石(しょうじょうひこうせき)』と呼ばれる陽光を吸収する鉄で造られているのだ。

 

 

また、全集中の呼吸の適正者がこの鉄で造られた刀を握ると、刀身にその人に合った呼吸の"色"が浮かぶ。更に一度着いた色は変わらず、他の人が握っても色は変わらないのだ。

 

 

(例:水→青、風→緑など)

 

 

「ああ綺麗ですね。藍鼠色(あいねずいろ)が鈍く光る。渋い色だ、刀らしい良い色だ」

 

 

鉄穴森は伊之助の刀の色にうっとりしていた。

 

 

すると伊之助は刀を持って中庭に行き、敷き詰められている石を吟味し始めた。その行動に三人は首を傾げると、一つの石を持った伊之助はその石を刀に"振り下ろした"。

 

 

そして何度も石を叩きつけ、綺麗な刃は以前使用していたボロボロの刃と同様になってしまった。

 

 

これには温厚な鉄穴森も流石に怒り心頭になり、伊之助に突っ掛かろうとする。しかしそれを炭治郎が身を呈して止めた。

 

 

屋敷から帰る時も鉄穴森は怒りが収まらず、炭治郎は何度も頭を下げていた。その様子を伊之助は炭治郎の裾を掴んで見ており、鋼錢塚も自分以上に怒った鉄穴森に引いていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

その夜、琵琶の音が鳴り響くと、左目に"下陸"と刻まれた鬼がとある屋敷の中に現れた。

 

 

その屋敷の中は廊下や壁、襖に障子、はたまた階段に部屋などが様々な方向を向いており、統一性が無かった。

 

 

更に琵琶の音が鳴り響くと、次々に鬼が姿を現した。集まった鬼は容姿や性別はバラバラだが、一つだけ共通点があった。

 

 

それは『左目に数字が刻まれた"十二鬼月"の"下弦の鬼"』であることだった。

 

 

十二鬼月

 

 

それは"鬼の始祖"である鬼舞辻無惨が選抜した"十二体の鬼"の総称である。

 

 

十二鬼月は全部で十二体おり、それぞれ"上弦"と"下弦"に、それぞれ六体のグループに別れている。

 

 

十二鬼月の特徴は"目に数字が刻まれている"ことだが、その数字によって強さが決まっている。

 

 

上弦の鬼には両目に文字と数字が刻まれているが、下弦の鬼は片目にしか文字と数字が刻まれていなかった。

 

 

バラバラに集まった鬼たちは今自分が何処にいるのか分からなかった。しかしもう一度琵琶の音が鳴り響くと、下弦の鬼たちは一ヶ所に集められ、目の前には女性が立っていた。

 

 

(こうべ)を垂れて(つくば)え。平伏せよ」

 

 

その"声"を聞いた瞬間、下弦の鬼たちは一斉に平伏した。その声こそ、鬼の始祖である無惨の声だったのだ。

 

 

だが炭治郎が以前浅草で出会った姿とは姿形、性別も違っていた。しかしその体から発せられる狂気こそ、目の前の女が無惨である証拠であった。

 

 

「累が殺された、下弦の伍だ。私が問いたいのは一つのみ。『何故に下弦の鬼はそれ程まで弱いのか』。十二鬼月に数えられたからと言ってそこで終わりでは無い。そこから始まりだ」

 

 

「より人を喰らい、より強くなり私の役に立つための始まり」

 

 

「ここ百年余り十二鬼月の上弦は顔ぶれが変わらない。鬼狩りの柱共を葬ってきたのは常に上弦の鬼たちだ。しかし下弦はどうだ?何度入れ替わった?」

 

 

無惨の質問に下弦の鬼の一体が『そんなこと言われても…』と思った。しかし無惨は"鬼の思考が読める"ため、その鬼の思ったことを口にした。

 

 

そして左腕を変形させ、その鬼を"喰った"。更に無惨はもう一体の鬼の思考を読み、質問をする。

 

 

その鬼は無惨の質問に対して否定の言葉を述べる。しかし無惨には通じる手では無く、無惨に喰われてしまった。

 

 

残り三体となった下弦の鬼の内の一体はその場から逃げ出した。何とか逃げ切ろうとするが

 

 

「もはや十二鬼月は上弦のみで良いと思っている。下弦の鬼は解体する」

 

 

無惨はその逃げ出した鬼の頚をいつの間にか持っていた。

 

 

残り二体の下弦の鬼の一体は命乞いを無惨にする。そして『血を分けて欲しい』と言うが、それは無惨にとっては"指図をした"ことと同義だった。

 

 

無惨は持っていた鬼の頚を放り投げ捨て、怒り心頭で指図した鬼に向かって『指図するな』と言う。無論その鬼は指図したとは思ってもいなかったが、無惨は『自分に決定権がある』と言って指図したことにし、その鬼を殺した。

 

 

そして最後に残った下弦の鬼、『下弦の壱・魘夢(えんむ)』に最後の話を振る。

 

 

「そうですねぇ…」

 

 

魘夢は少し考えると

 

 

「私は夢見心地で御座いました。貴方様直々に手を下して戴けること、他の鬼たちの断末魔を聞けて楽しかった。幸せでした。人の不幸や苦しみを見るのが大好きなので、夢に見る程好きなので。私を最後まで残してくださってありがとう」

 

 

とうっとりした顔で喋った。すると無惨は自分の右腕を鋭く変形させ、それを魘夢の頚に刺した。

 

 

「気に入った、私の血をふんだんに分けてやろう。ただしお前は血の量に耐えきれず死ぬかもしれない。だが"順応"できたならばさらなる強さを手に入れるだろう」

 

 

無惨は魘夢に自分の血を流し込んだのだ。魘夢は血を吐き、その場でのたうち回る。

 

 

「耳に花札のような飾りをつけた鬼狩りを殺せばもっと血を分けてやる」

 

 

無惨はそう言って後ろに現れた障子から出て行った。そして魘夢も町中に落とされた。その間、魘夢は無惨の血から得た情報を見る。そこには炭治郎の姿があった。

 

 

「うふ、うふふ。柱と、この子供を殺せばもっと血を戴ける…。夢心地だ……!!」

 

 

 

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