もしも炭治郎の下に義勇と実弥が来ていたら   作:レイファルクス

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第7話

 

 

炭治郎はこの日、しのぶの診察を受けていた。

 

 

「はい、もういいですよ。怪我も治り、体力も回復しました。それに日輪刀も戻って来て、いつでも任務に復帰できますね」

 

 

炭治郎が全快になったことをしのぶは伝えた。

 

 

「ありがとうございます!あっ、そうだしのぶさん、一つお尋ねしてもいいですか?」

 

 

炭治郎は診察を終えたしのぶに質問をする。

 

 

「"ヒノカミ神楽"って聞いたことはありますか?」

 

 

「ありません」ズバッ

 

 

「えっ!?じゃあ"火の呼吸"は…」

 

 

「ありません」ズバッ

 

 

炭治郎の質問にしのぶは笑顔で"知らない"と答えた。そこで炭治郎はなるべく分かりやすくしのぶに説明をする。

 

 

「なるほど…。なぜか炭治郎君のお父さんは火の呼吸を使っていた。火の呼吸の使い手に聞けば何かわかるかもしれない…と。ふむふむ」

 

 

炭治郎の説明を聞いたしのぶは納得した。

 

 

「『火の呼吸』はありませんが、『炎の呼吸』ならあります」

 

 

しのぶの返答に炭治郎は首を傾げた。

 

 

「私も仔細はわからなくて…、ごめんなさいね。ただその辺り、呼び方についてが厳しいのですよ。『炎の呼吸』を『火の呼吸』とは呼んではならない。詳しいことは炎柱の煉獄さんに尋ねてみるといいかもしれません」

 

 

炭治郎は杏寿郎が誰なのか今一思い出せなかった。

 

 

「ほら裁判の時に真っ先に炭治郎君のことを否定していた目がギョロっとした人ですよ」

 

 

しのぶに杏寿郎の特徴を言われ、やっと思い出し、納得した。

 

 

「今は任務に出掛けているので、鴉に手紙を届けてもらいましょう。返事が来るまで少し時間がかかりますが」

 

 

しのぶは早速杏寿郎宛てに手紙を書き、自分の鴉『(えん)』に届けさせた。

 

 

その後炭治郎は診察室を後にした。すると先にある角から誰かが来る匂いがしたので、壁際に寄る。そして角を曲がって来た人物は意外な人だった。

 

 

「あれ?玄弥じゃないか」

 

 

「んぁ?炭治郎か」

 

 

そう、角を曲がって来たのは実弥の弟の玄弥だった。

 

 

「どうしてここに?」

 

 

炭治郎は玄弥に質問をする。

 

 

「実は俺の体は"特異体質"でな。定期的にここで診察を受けているんだ」

 

 

玄弥は炭治郎の質問に答えた。そこで二~三話しをして二人は別れた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「そうですか、もう行かれるんですね。短い間でしたが同じ刻を共有できて良かったです」

 

 

炭治郎は玄弥と話した後、世話になったアオイの下に来ていた。

 

 

「忙しい中俺たちの面倒をみてくれて本当にありがとう。おかげでまた戦いに行けるよ」

 

 

「あなたたちに比べたら私なんて大したことはないのでお礼は結構です」

 

 

「選別でも運良く生き残っただけ。その後は恐ろしくて戦いに行けなかった腰抜けなので」

 

 

炭治郎がお礼を言うと、アオイは自分自身を蔑む言い方をした。

 

 

「そんなの関係ないよ。俺を手助けしてくれたアオイさんはもう俺の一部だから。アオイさんの想いは俺が戦いの場に持って行くし」

 

 

炭治郎の言葉にアオイの頭の中は真っ白になった。

 

 

「また怪我したら頼むね~」

 

 

炭治郎はそう言って手を振りながらその場を去る。その場に残されたアオイは呆然としたまま立っていた。

 

 

その日からアオイは炭治郎のことを意識するようになり、夜自室のベッドの中で炭治郎の言葉を思い出しては顔を真っ赤にする日々が続いた。

 

 

しかしアオイは気づかなかった。同じ日に、同じ人に、自分と一緒の気持ちになった人のことを。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「あっ、いたいた。カナヲ」

 

 

炭治郎が次に訪れたのは、カナヲがいる縁側だった。

 

 

「俺たち出発するよ。色々ありがとう」

 

 

炭治郎はカナヲにお礼を言う。するとカナヲはコインを取り出し、それを指で弾いた。空中でクルクル回り落ちるコインをカナヲは右手の甲で受け止め左手で隠した。そして左手をどけるとコインは『裏』と書かれた面が上になっていた。

 

 

「師範の指示に従っただけなので、お礼を言われる筋合いは無いから。さようなら」

 

 

するとカナヲは炭治郎に向かって喋ったのだった。炭治郎は蝶屋敷に滞在している間、カナヲとは一度も話しをしたことが無かったので嬉しく思っていた。

 

 

炭治郎はコインのことを聞くためにカナヲの側に座った。

 

 

「指示されてないことはコイン(これ)を投げて決める。今あなたと話すか話さないか決めた。"話さない"が表、"話す"が裏。裏が出たから話した」

 

 

炭治郎は『何故自分で決めないのか?』をカナヲに聞く。カナヲは『全部どうでもいいから自分で決められない』と答えた。

 

 

「この世にどうでもいいことなんて無いと思うよ?きっとカナヲは心の声が小さいんだろうな」

 

 

炭治郎はどうすればカナヲが素直になれるか考える。

 

 

「そうだ!ねぇそれ、貸してくれる?」

 

 

炭治郎は妙案を思い付いたのか、カナヲからコインを借りた。

 

 

「よし!投げて決めよう!カナヲがこれから、自分の心の声をよく聞くこと!」

 

 

炭治郎はそう言って、カナヲのコインを思い切り上に弾いた。

 

 

「よし表にしよう!表が出たらカナヲは心のままに生きる!」

 

 

コインは風に煽られながら炭治郎の近くに落ち、炭治郎は先程カナヲがやったように右手の甲で受け止め、左手で隠した。

 

 

そしてそのままカナヲの側に寄り、カナヲと一緒にコインを確認すると、そこには"表"と書かれていた。

 

 

「表だー!!」

 

 

炭治郎は喜びの余りその場で跳び跳ねた。そして炭治郎はカナヲにコインを返すと

 

 

「カナヲ、頑張れ!!人は心が原動力だから!心はどこまでも強くなる!!」

 

 

カナヲの手を握った。そして炭治郎はアオイの時と同じように手を上げてその場を去ろうとした。

 

 

「まっ…待って!何で…、何で表を出せたの?(あの時、投げる手元は見ていた。小細工はしてなかったのに…)」

 

 

カナヲは何故炭治郎が表を出せたことに疑問を持ち、炭治郎を呼び止める。

 

 

「偶然だよ。それに裏が出ても表が出るまで何度でも投げ続けようと思ってたから」

 

 

炭治郎の返答にカナヲは心を射たれた。

 

 

「元気でね~~」

 

 

炭治郎はそのまま去り、カナヲは炭治郎から返されたコインを見つめ、自分の胸に押し当てる。それは無意識の行動だったのか、気づいた時には顔が真っ赤になっていた。

 

 

その日からカナヲは炭治郎のことを意識してしまい、炭治郎のことを思い出しては顔を真っ赤にする日々が続いた。

 

 

しかしカナヲは気づかなかった。同じ日、同じ人に、自分と一緒の気持ちになった人のことを。

 

 

そう、アオイとカナヲは炭治郎に『恋心』を抱くようになったのだ。しかし二人がそれに気づくのはまだ先の話しである。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

その後炭治郎は禰豆子、善逸、伊之助の三人を連れて蝶屋敷を出立し、人の往来が多い駅へと着いた。その理由は蝶屋敷を出立した炭治郎の下に彼の鴉である『天王寺松右衛門(てんのうじまつえもん)』がしのぶからの手紙を届けに来て、その手紙の内容が『杏寿郎は駅にいて、列車に乗っている』と書かれていたからだった。

 

 

駅に到着した炭治郎、善逸、伊之助の三人は目的のものを探すことにした。伊之助は人が多くいることにビビって炭治郎の背中に隠れる。そして伊之助は"ある物"を見つけた。

 

 

それは『漆黒の(くろがね)の塊』であった。

 

 

(要するに列車のことです)by作者

 

 

伊之助は列車を『土地の主』や『土地を統べる者』と勘違いをしており、炭治郎もまた、列車のことを『土地の守り神』と勘違いしていた。唯一真面(まとも)だったのは善逸だけであった。

 

 

しかも伊之助は客車に向かって頭突きをしてしまう。その騒ぎを聞いて駆けつけた駅の職員に刀を持っていることがバレてしまい、炭治郎一行は一度その場から離れ、身を隠すことにした。

 

 

「鬼殺隊は政府公認の組織じゃないからな、本当は堂々と刀を持って歩けないんだよ。鬼がどうのこうの言っても信じてはもらえんし混乱するだろ」

 

 

炭治郎は『なぜ刀を持っているだけで騒がれた』のかその疑問を口にすると、善逸がその理由を説明した。炭治郎は『一生懸命頑張っているのに…』と涙を流す。そして善逸の提案で刀を隊服と羽織の間に隠すことにした。

 

 

が、そこで問題が、正確には伊之助にのみ、問題が発生した。

 

 

伊之助は通常の人よりも『触覚』が鋭く、手をかざした"だけ"で目標を捉えたり、気配を感じ取ることができるのだ。

 

 

従って服を着ているとその触覚が鈍ってしまうため、伊之助は常に上半身が裸なのだ。

 

 

つまり、伊之助は羽織を持っておらず、背中に刀を隠そうとしても羽織が無いため"丸見え"なのである。

 

 

それを打破するためなのか、炭治郎がどこから取り出したのか、布を持っており、その両端を伊之助の首の前で縛った。その間、善逸は人数分の切符を買いに窓口まで向かっていた。

 

 

そしていよいよ列車に乗車しようとすると、列車が汽笛を鳴らし、出発してしまった。三人は急いで走り、伊之助と炭治郎は客車の最後尾に飛び乗った。善逸は二人より距離があったためこのままでは乗れなかった。

 

 

しかし炭治郎と伊之助が手を差し伸べ、善逸がその手を掴む。そして二人が善逸を引き上げ、三人は無事に『無限列車』に乗車することが出来た。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

三人は客車を移動しながら杏寿郎を探す。しかし善逸と伊之助は杏寿郎に会ったことが無いので唯一会った炭治郎に特徴を聞こうとすると、丁度今いる車輌から『うまい!』を連呼する人がいた。

 

 

恐る恐る覗くと、そこには焼肉弁当(駅弁)を幾つも平らげる杏寿郎の姿があった。

 

 

「あの人が炎柱?」

 

 

「うん…」

 

 

「ただの食いしん坊じゃなくて?」

 

 

「うん…」

 

 

その姿を見た善逸は思わず炭治郎に何度も確認をしていた。

 

 

炭治郎は杏寿郎に断りをもらって杏寿郎の隣(窓側)に座る。そして善逸と伊之助は通路を挟んだ反対側に座った。そして炭治郎は杏寿郎に『ヒノカミ神楽』のことについて質問をする。

 

 

「うむ!そういうことか!だが知らん!『ヒノカミ神楽』という言葉も初耳だ!君の父がやっていた神楽が戦いに応用できたのは実にめでたいが、この話はこれでお終いだな!」

 

 

炭治郎の話しを聞いた杏寿郎はこの話しは終わりと言わんばかりに打ち切る。更には炭治郎が聞いてもいないことをベラベラと喋る。

 

 

「俺の所で鍛えてあげよう!もう安心だ!」

 

 

杏寿郎の面倒見が良い所を知った炭治郎は感心していた。

 

 

「うおおおお!すげぇすげぇ速ぇええ!」

 

 

スピードに乗った列車の速さに伊之助は窓から身を乗り出して興奮していた。しかも列車から降りて競争しようとしていた。

 

 

(走ってる列車の窓から身を乗り出すのは大変危険ですので、絶対に真似しないで下さい)by作者

 

 

「危険だぞ!いつ鬼が出てくるがわからないんだ!」

 

 

杏寿郎の注意に善逸と伊之助は杏寿郎の方を向く。

 

 

「短期間の内にこの汽車で四十人以上の人が行方不明となっている!数名の隊士を送り込んだが、全員連絡が取れず消息を絶っている!だから柱である俺が来たんだ!」

 

 

杏寿郎は今回の任務の詳細を言うと、善逸は『降りる!』と騒ぎ出した。

 

 

「切符…、拝見…、致します…」

 

 

そこに車掌が到着して切符を拝見しようとする。

 

 

「車掌さんが切符を確認して切り込みを入れてくれるんだ!さあ車掌さんに切符を渡すんだ!」

 

 

杏寿郎が車掌の仕事を説明して一人先に切符を差し出す。三人も杏寿郎の真似をして車掌に切符を差し出す。車掌はそれぞれの切符に切り込みを入れる。その時、炭治郎は微かに"嫌な匂い"を嗅ぎ取った。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

すると杏寿郎は不意に立ち上がり、隠していた刀を手に持つ。するといつの間にか客車の後方に鬼がいた。

 

 

「その巨躯を隠していたのは血鬼術か。気配も探りづらかった。しかし!罪なき人に牙を剥こうものならば、この煉獄の赫き炎刀がお前を骨まで焼き尽くす!!」

 

 

『炎の呼吸 壱ノ型 不知火(しらぬい)

 

 

杏寿郎は抜刀しながら鬼に突進しながら鬼の頚を斬った。

 

 

それに感動した炭治郎は杏寿郎に弟子入りを申し出る。杏寿郎がそれを承諾すると、善逸と伊之助も弟子入りを志願し、それも受け入れた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

しかしそれは杏寿郎が見ていた"夢"だった。

 

 

そして先頭車輌、機関車の上には『下弦の壱・魘夢』が立っていた。

 

 

「夢を見ながら死ねるなんて幸せだよね」

 

 

 

煉獄杏寿郎は生存させるか

  • させる!
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