【BL】エロ無しコメディの腐バロ集 作:腐エロのひと。
本当は黒地に真紅の薔薇&骸骨のアロハにしようと思っていたのですが、厨二度<夏らしさを取りました。
「やっぱり夏はアロハだよなー!」
と、唐突にウルベルトはそう言ってハーフマスクを取り去った。普段は封印している魅了の魔眼であるが、よくよく考えてみたらナザリックではギルメン全員が耐性の装備品を身に着けているし、NPCたちのギルメンへの好感度は常にMAXなので隠す意味が無いと気付いたからだ。
「おぉ。やっぱりマスクが無いと風通しがいいな!」
悪魔としての種族特性で炎熱への完全耐性があるウルベルトがわざわざ夏服に着替える意味など無いのだが、人間だった時の感性が夏は薄着になるべし!とウルベルトの本能に訴えていたのだ。装備品にも拘りを持ちまくりの現役厨二病患者でもあるウルベルトは、私服にも気合いが入りまくっている。日本ではラフな格好の代表格であるアロハシャツだが、元来は正装であるのでナザリックにいる間に居室以外で着用していても問題は無い、というのがウルベルトの認識だ。……その柄は夏の清涼感を表しているつもりなのか、ベースは白だが真紅の薔薇に髑髏という、どこで買った!?と突っ込みを入れたくなるような物だったが。
「ウルベルト様、とてもお似合いです。ウルベルト様は軽装でも麗しいのですね」
クローゼットから夏装備であるアロハシャツを用意したデミウルゴスは、尻尾をブンブンと激しく左右に振りながらそう褒め称える。
「そうか?これは一点物なんだが、まぁ、着こなせるのは私くらいだろうな」
そう言うウルベルトも上機嫌である。下半身は、薄手の白いチノパンに白い革製のグラディエーターサンダルである。漆黒の毛並みに白なのでやたらと目立つが、一応清涼感だけは感じさせるような夏コーデであった。普段は隠されている、魅了の魔眼である紫色の瞳も相俟って、ほんの少しだけ涼しげに見える。
「折角の夏装備だしな、他の皆にも見せて来るか」
ウルベルトはそう言うと、ギルメンが集まっているであろう談話室へ向かった。……それが悲劇の始まりだとも知らずに。
厨二病バリバリのコーデで談話室に向かったウルベルトだったが、やたらと賑やかなそこに違和感を覚える。
(……何か……。談話、っつーか呑み会独特の雰囲気なような……?)
そこまで察していたのに自室にUターンしなかったウルベルトの危機管理能力の欠如は、平和ボケしてしまったが故なのか……。
「ちわー。どうしたんです?皆さんお揃いで……って、酒臭!?真っ昼間っから呑み会ですか!?しかも談話室で!?」
扉を開けて真っ先に目にしたのは、樽を抱えた異形二人。そして、その周囲で二人を煽っているこれまた異形のギルメンたちだった。樽を抱えているのは、武人建御雷とたっち・みーだ。
「うっわ……。似合わねぇ、武人さんとワイン!武人さんってイメージ和風だから日本酒派だと思ってたんですけど……何でワイン?」
室内に入りつつそう突っ込めば、二人を見守っていたギルメンのうち一人がウルベルトに声を掛けてくる。
「あ、ウルベルトさん-!何か陽気な格好ですねぇ」
「こんにちは、ぷにっと萌えさん。夏ですので衣替えを、と思いましてね。……で。この惨状、どうなってるんです?」
そう訊けば、ぷにっと萌えは蔦を揺らしながら説明してくれる。
「何か、勝負だ!って武人さんが言い出してですね。平和的な勝負、飲み比べが始まった感じですかね。耐性あると意味が無いので、二人とも耐性を切って呑みまくってますよ。……最初は私の酒を提供してたんですけどね、流石に味わうより量ってのを見てたら馬鹿らしくなっちゃいましてね。今呑ませてるのは量産品、ナザリックの普及品ですね」
大きく溜息を吐きながらそう言うぷにっと萌えは、呆れたように二人を見ている。
「ぷにっとさんのお酒、めちゃくちゃ美味いですし……確かに単なる飲み比べなんかに使われるのは癪ですよね。いつも美味い酒をありがとうございます。赤も白もロゼも、全部美味いんで毎日何を呑もうかと悩むくらいですよ」
ウルベルトは目を輝かせてそうぷにっと萌えに礼を言う。酒好きの彼は個人的にぷにっと萌えに酒を融通して貰っているのもあり、晩酌は彼の酒と決めているのだった。
「毎日って……。ウルベルトさん、呑みすぎですよ?まぁ、悪魔なら肝硬変とかとは無縁なんでしょうけど」
苦笑しながらも、自分が造った酒を褒められて悪い気はしないのか、ぷにっと萌えは嬉しそうにそう答える。
「……に、しても。あの二人だと種族的に見た目で判断出来ない分、酔い加減が解りませんよね。誰がジャッジするんです?単純に酒量でですか?」
「そうですね。酒量と……あと、ぶっ倒れた方が負けらしいので。多く呑んでても先に潰れたらアウトらしいですよ」
ぷにっと萌えのその言葉に、ウルベルトはギラリ、と瞳を妖しく光らせた。
「だったら、俺は俄然!武人さんを応援しますね!!たっちさんみたいな完璧超人、一度くらい派手に負けたらいいんですよ!!」
と、ウルベルトはそう言うと武人建御雷の応援に回った。すると、ペロロンチーノがウルベルトに声を掛けた。
「あ、ウルベルトさん!どっちに賭ける?今倍率半々なんだけどさー」
「武人さんに決まってるだろ?何があってもたっちさんにだけは賭けねぇよ!」
そう言い放つウルベルトを見て、今度はピンク色の肉棒……もとい、粘体が全身をくねらせながら近寄ってくる。
「ブレないねー、ウルベルトさんも。じゃあ、幾ら賭けるー?最低1万からねー」
ぶくぶく茶釜の手には、賭けリストがある。ギルマスのモモンガはたっち贔屓なこともあり、たっち・みーに賭けていたが、他のギルメンはほぼ半々に別れている。
「倍率ほぼ同じじゃあどっちが勝っても儲からないでしょうけど……気持ち的には大金を賭けてたっちさんが負けるところを拝みたい、ってのが本音です。なので、100万賭けます。勿論武人さんに」
気味が悪いくらいの満面の笑みを浮かべながら、ウルベルトはアイテムボックスからユグドラシル金貨を取り出して茶釜に渡す。
「毎度~♪武人さん!ウルベルトさんが100万武人さんに課金したよ!こりゃ、漢なら負けられないよねぇ~?」
茶釜がそう煽るように言うと、一気に武人建御雷のペースが上がった。酒樽の半分が無くなっている状態だったが、柄杓を掴む手に力が戻った。その腕は一気にワインを掬っては流し込むように呑む。
「当たり前ですよ!酒でくらいたっちさんを負かさないとですね!」
「……私だって、負けませんよ。例え飲み比べだって、私は……!」
口調を聞いた感じでは、建御雷の方が優勢に思える。たっちの方は呂律が少し怪しい。その様子を見て、ウルベルトは愉しげに口元を歪める。
「イイざまですねぇ、たっちさん?酔っ払いの聖騎士ってのも中々レアで見ていて愉快ですよ」
金と紫の瞳をギラリと輝かせてそう言うウルベルトは、如何にも悪魔と言った邪悪な表情で。周りのギルメンも苦笑いである。またウルベルトさんのいつもの煽りが始まった、と。だが。
「……」
キッとウルベルトを睨み返したたっちが、固まった。
「……たっちさん?もうダウンなんですか?だったら、サッサと武人さんに降参だ、って言わないと。ちゃんと負けを認めて下さいよ?」
動きの止まったたっちを怪訝そうに見つつも、ウルベルトはそう煽るのを止めない。が。たっちは、柄杓を酒樽にそっと戻すと、ウルベルトに近付いた。そして……。
「愛しています、ウルベルトさん」
そう言って、ウルベルトを抱き締めたのだった。
「!?」
「!?!?」
その瞬間、抱き締められたウルベルトも、周囲のギルメンも、全員がフリーズした。目の前の聖騎士の異常行動に。
「……貴方が、こんなに可愛らしいヒトだったなんて、何で今までの私は気付かなかったんでしょうね。艶やかな毛並みも美しくて……いつまでも撫でていたいと思ってしまいます」
たっちの手がウルベルトの項をそっと撫でた瞬間、ウルベルトの硬直が解ける。
「なッ……!テメェ!!何勝手に俺に触ってんだよ!!離せ、クソ聖騎士ッ!!」
ジタバタと暴れるが、バリバリの前衛職である聖騎士の腕力に、非力な後衛の魔法詠唱者が敵う筈もなく。為す術無く撫で回されてしまう。
「……あー。たっちさん、多分、<魅了>に掛かってますね。状態異常になってるっぽいです」
暢気にギルマスのモモンガがそう言うと、その場の全員(たっち以外)が?を浮かべる。
「いや、モモンガさん……。だって、<魅了>ってフツー80レベルもあれば無効化出来ちゃうでしょう?なのに何で……」
と、タブラがそう訊けば。
「だって、たっちさん状態異常無効化全部切ってますし……。<魅了>無効化の指輪もしてませんよね?そりゃ、掛かりますって。俺は種族的に全然影響受けませんけど……ウルベルトさん、何でそんなにヤバイ魔眼晒してるんです?」
さらり、とモモンガがそう答え。その言葉に、ギルメンたちは愕然とした。
「は!?たっちさん、何で毒以外の耐性まで切ってるんです!?」
「てか、ウルベルトさんのソレ、魔眼!?厨二病なオッド・アイなだけかと思ってたのに!!」
と、様々な声が上がる中、当の本人はそれどころではなく。渾身の力でたっちから逃れようとするが、それも出来ず。拳を作って全力でたっちの頭部を殴りまくる。
「どうしたんですか?ウルベルトさん。照れているんですか?擽ったいですよ」
「クッソ、この脳筋聖騎士ィ!!どんだけ物理防御に振ってんだよ!!多少はダメージ食らいやがれってんだ!!」
ウルベルトのその叫びに、モモンガは冷静に突っ込む。
「いや……無理でしょう。武器持ちならともかく、素手じゃ。ウルベルトさんよりも筋力ある俺でも一桁ダメージくらいしか与えられないと思いますし」
「ちょっ……!解ってるんなら助けて下さいよ!!見て下さいよ、この鳥肌!!気色悪くて最悪なんですけどっ……!!」
そう叫ぶウルベルトの腕には、一目で分かる程にびっしりと鳥肌が立っていた。半袖のアロハシャツから覗く腕に隙間無く浮かんでいるソレに、周囲のギルメンは同情の目を向ける。
「助けたいのは山々なんですけど、俺も魔法詠唱者なのでたっちさんには敵いませんし……敵いそうな武人さんは今使い物にならないですからねぇ……。樽酒であれだけ呑んでりゃそりゃ酔いますよね」
可愛らしく小首を傾げてそう困ったアピールをするモモンガに、流石のウルベルトも苛立ちを隠せないが、モモンガの言っていることは確かなので何ともしがたい。
「じゃあ、もう誰でも良いので!!コイツをとっとと俺から引き剥がして下さいよッ!!<魅了>の効果時間が解らないんで、マジ困ってるんですからっ……!!」
「……ウルベルトさん悪魔だし、ひょっとしたら永続効果なんじゃ……?」
ポツリとそう零した茶釜に、ウルベルトは再び硬直した。
「……ヤメロ。怖ぇ事言うんじゃねぇよ……ッ……!!!!!!!!!」
一応は女性である茶釜に対しては敬語を崩していなかったウルベルトだったが、その言葉の内容の恐ろしさに、思わず素で叫んでいた。
「え~?だって、種族加算あるじゃん?レベル加算で100分だけどー、ウルベルトさん悪魔だし、悪魔の支配者だし、ダブル加算でしょ?魔眼見せてる限り、多分効果切れないと思うよ?」
「!?じゃ、じゃあ、いつものマスクっ……!」
そう聞いて、慌ててウルベルトはアイテムボックスからいつもの眼帯を取り出そうとするが、たっちに腕を掴まれる。
「なっ……!」
「駄目ですよ、ウルベルトさん。こんなに綺麗な瞳なんですから……隠すのなんて、勿体ないです」
たっちはそう言うと、ウルベルトの手首を掴んでそっと唇を落とす。その瞬間、ウルベルトの何かがプツリ、と切れた。
「燃え尽きやがれ、クソ聖騎士ッ!!」
叫ぶと同時に、迸る漆黒の炎。<大災厄>では無いが、かなり高位の攻撃魔法を放つと、流石のたっち・みーの手も緩む。その隙を見逃さず、ウルベルトは即座に<転移>を発動させるとその場から逃げ出したのだった。
「だ、大丈夫ですかたっちさん!!」
全ての耐性を切っているたっちだからこそダメージは大きいだろう、と心配してモモンガが駆け寄るが。
「本当にウルベルトさんは恥ずかしがり屋さんなんですね。ハグだけであんなに照れてしまうなんて」
と、微笑ましげな表情でそう言い放つたっちにドン引きしてしまった。
「……たっちさん、半分焦げてますけど痛くないんですか?」
「え?まぁ痛いですけど、ウルベルトさんの照れ隠しだと思えば耐えられますよ。ポーションで治る程度の傷ですし」
一番低位のユグドラシル製ポーションを取り出すと、たっちは一気に飲み干す。すると、あっという間にウルベルトに攻撃された傷は消える。
「ね?大丈夫だったでしょう?……さて。私はウルベルトさんを捕まえに行かないといけないので、勝負はこれでおしまい、ってことで。あのまま続けていても多分私の負けだったと思うので、武人さんの勝ちですね」
「え、ちょ、たっちさん!?そんなの無いですよ!!ちゃんと最後までですねっ……!!」
そう引き留める建御雷を振り切って、たっちはダッシュで談話室を出て行った。
「……最強の男の状態異常とか、怖すぎません?」
ぽつりとそう呟くぷにっと萌えの言葉に、その場の全員が大きく頷いたのだった。その後の二人がどうなったのかは、また別の話である。
終わっちゃう。