【BL】エロ無しコメディの腐バロ集   作:腐エロのひと。

4 / 7
モモンガさんとウルベルトさんが花火を見るだけの話です。モモンガさんの帯は浪人結びです。続きのエロシーンは皆様の脳内で再生お願い致します!!


夏の風物詩【モモウル】

sideモモンガ

 

「花火が見たいなー、夏だし」

 ある夏の日の朝、突然ウルベルトさんがそう呟いた。確かに、こっちでも暦の上では夏で。日々暑くなってきている。まぁ、アンデッドの俺からしたら多少の温度の増減は誤差の範囲だし、あんまり季節の違いなんて感じないんだけど。こっちには桜もないし、四季という概念自体が薄そうだから。けど、俺たちからしたらカレンダーを見ればその時期のイベントが懐かしくなる訳で。ウルベルトさんの発言も十分に理解出来る訳なんだけど。

「じゃあ、打ち上げましょうか。何万発くらい上げますか?」

 そう答えると、ウルベルトさんは慌てたように口を開く。

「えっ!?何万発!?それって個人的にやる花火じゃ無くて大会レベルなんじゃないですか!?」

「そうかもですけど……ウルベルトさんが見たいって言うのなら、魔導国の総力を挙げて花火大会でもしようかと」

「……モモンガさん、俺の事甘やかし過ぎじゃないですか?そもそも、こっちの世界で花火とか作れるんですか?」

 ほんの少し照れたようにそう言うウルベルトさんの耳はピコピコと動いていて、すごく可愛らしい。

「うーん。物理法則が違うから、作れないかもですけど……ほら、ガチャのハズレアイテムが結構あるので。打ち上げと、小規模なの両方、俺結構持ってますよ?」

 そう答えると、ウルベルトさんは小さく笑いながら俺を見る。

「じゃあ、個人用の花火で遊んでから、締めで打ち上げを何発か使いませんか?魔導国として、だと来賓とか来て面倒なので、あくまでも個人的な遊戯扱いでお願いしたいんですけど」

 愛しいヒトの可愛らしいお願いにキュンとしながらも、俺は頷く。

「ウルベルトさんがそう望むのなら。……デミウルゴス、ナザリックの地上部に花火を観覧出来るような休憩所を作成してくれ。今晩にでも実行したいから、最優先でな」

 ウルベルトさんの背後に控えていたデミウルゴスにそう声を掛けると、深々と一礼して応えてくれる。彼も創造主であるウルベルトさんの願いであれば何であろうと叶えようとするタイプなので、間違いなく完璧に仕上げてくれるだろう。

「今夜!?えっ、そんな無茶振りしちゃうんですか!?」

 ウルベルトさんは驚いているけれど、このくらい無茶振りでも何でもない。

「ウルベルト様。花火の調達はモモンガ様がされるので、全く問題ありません。夜までにはご満足頂ける観覧席を作成させていただきますので、ご安心下さい」

 デミウルゴスのその言葉に、ウルベルトさんは

「ご安心とかそういうんじゃなくて……」

 と言っていたが、デミウルゴスは俺たちに一礼してから退出して行った。早々に準備に向かったのだろう。

「楽しみですね、ウルベルトさん」

「……えぇ。けど、今度からは少し日程に余裕を持たせましょうか。デミウルゴスは問題無いと言っていましたけど……当日に、じゃ何か風情が無い感じがしませんか?」

 可愛らしく小首を傾げてそう言うウルベルトさんの言葉ももっともだ。

「そうですね、次からは気をつけますね。……で、ウルベルトさん、浴衣は持ってましたっけ?せっかく花火を見るんですから、浴衣を着た方が夏っぽくていいと思いますよ」

 何気なくそう言うけれど、俺は内心ウルベルトさんの浴衣姿をもの凄く楽しみにしていた。野郎の浴衣なんて紺とかばっかりで地味だけど、お洒落なウルベルトさんの事だから、きっと派手な浴衣を持ってるに違いない。……それに、恋人の浴衣姿にときめかない男はいない。なので、絶対ウルベルトさんには浴衣を着て貰いたい……!!そう思いながらウルベルトさんを見つめると、一瞬驚いたように俺を見たかと思うと、次の瞬間可愛らしく微笑みながら頷いた。

「浴衣ですか?何着か持ってますよ。ユグドラシルのイベント報酬のと、自作のが。勿論、モモンガさんも着てくれるんですよね?」

「はい!ウルベルトさんとお揃いにしたいですから。……あ。でも、俺自作のは持ってないですね。九階層のブティックちょっと見てきます。その……夜までどんな浴衣を着るのかはお互い内緒って事で」

 俺がそう言うと、ウルベルトさんは笑いながら頷いてくれた。

「じゃあ、夜まで別行動って事で。モモンガさん、準備が出来たら俺の部屋に迎えに来て下さいね。夕食後くらいで如何ですか?」

「そうですね。じゃあ、その頃に迎えに行きますから!」

 そう言って、俺はウルベルトさんと別れると九階層のブティックへと向かった。

 

 

sideウルベルト

 

(……モモンガさん、マジで俺の前だと解りやすいよなぁ……)

 浴衣のことを言い出した時には、滅茶苦茶眼窩の炎が激しく揺れてたし、興奮してるのがバレバレだ。アンデッドは表情が変わらないから、本来なら感情を読み取るのに苦労する種族だって言うのに。

(まぁ、そんな所も可愛らしくて好きなんだけどな)

 格好いい系の造型の俺を可愛いと言うのは納得出来ないけど、まぁ慣れた。俺からしたら、モモンガさんの方が余っ程可愛らしいんだけれど、それを告げたら拗ねてしまうので口には出さないでおく。

「……さて。浴衣か……。どうするかな。本来なら野郎はごつめの固い帯らしいが……」

 兵児帯のアレンジの方が、此の浴衣には合っている気がする。確か昔のメンズ浴衣の広告でもそんな着方をしてた筈だから、問題無いと思う。

「やっぱり緋色の帯が一番格好いいかな……。浴衣自体は黒地で地味だし」

 クローゼットを眺めつつ、何着か持っているうちの一着を手に取って眺める。自作の浴衣で、デザインもかなり気に入っている物だ。シックな黒地に赤い血飛沫が鮮やかな、黄金の骸骨模様のハイセンスな一着だ。大人っぽくて良い。

「じゃあ下駄は濃い紫がいいかな……?見る角度によっては黒に見えなくも無いヤツ。サイドに黄金で模様も入ってて結構オシャレだったんだよな。確か鼻緒が紫の奴持ってたっけか」

 浴衣は光沢の無い生地だし、足元は少しは柄に合わせて華やかにしたい。そんな事を考えながら、クローゼットを漁ると目当ての品物が出て来る。記憶にあった通り、下駄のサイドには黄金の唐草模様が入っている。

(……どうせならこれも骸骨模様にしておけば良かったかな。後で作り直してみよう。今日は間に合いそうに無いけど)

 とりあえず、着る物は決まったので夕食を少し早めにして、夕食後に着替えることにした。その頃にはデミウルゴスも戻って来るだろうし、着付けもついでにやって貰おう。自分でも出来なくも無いが、どうせならモモンガさんには一番格好いい姿を見て貰いたい。

「……花火、楽しみだな」

 思い返してみれば、イベントは大抵ギルメン全員でやってたから、こうしてモモンガさんと二人きりで、っていうのは初めてで。ちょっと、ドキドキした。

 

 

 

 

 いつもよりも早めの夕食を済ませてから、デミウルゴスに着付けをして貰う。古代図書館から借りてきた資料を見せながら、帯を締めて貰ったら完成だ。

「ウルベルト様。本日のウルベルト様はいつも以上にお美しいです」

 尻尾をブンブンと振りながらそう俺を褒め称えるデミウルゴスは、やりきった感で俺を見つめている。蹄に下駄とか上手く履けるか謎だったが、魔法の装備だからかきちんとフィットする。意外と歩き易い。

「モモンガさんもそろそろ来るかな。一体どんな浴衣を選んだんだろう?」

 そう言いながら前室のソファに腰掛けて待っていると、少ししてノックの音がした。

 

 

sideモモンガ

 

 九階層のブティックに向かって、浴衣を見繕ってから、急いで部屋に戻る。何だかんだで、結局仕立てて貰えることになったので、出来上がるまでちょっと暇だ。

(ウルベルトさんの瞳に合いそうな、紫色の生地があってよかったなー。お揃いと言えばお互いの色を身に纏うってヤツだし!誰が見てもウルベルトさんは俺の物だって分かるようにしたかったから、丁度良い生地があって良かったよ……)

 ウルベルトさんの濃い紫とは違うけれど、グラデーションになっている紫色の生地には金糸で天の川が刺繍されている。ウルベルトさんの左右の瞳の色をふんだんに使った浴衣だ。下駄は漆黒で鼻緒は濃い紫色、これもウルベルトさんの毛並みと瞳をイメージして選んだ。

(……ちょっと、クドすぎるかな?引かれちゃったらどうしよう)

 と、そう思わないでもなかったけど、俺の気持ちを伝えるにはこれくらいしないとウルベルトさんには伝わらないだろうから。

(まぁ、いいか。もし引かれちゃっても、もう逃がすつもりはないし)

 そう結論付けて、俺はソワソワしながら浴衣の仕上がりを待っていた。

 

 

 

「モモンガ様。ご注文の品をお届けに参りました」

 暫くして、ブティックから仕立て上がった浴衣が届いた。

「あぁ、済まなかったな。結局仕立てることになってしまって」

「いえ、浴衣でしたら直線が殆どですので。さぁ、仕上がりを御確認下さい」

 店員がそう言ってテーブルの上に浴衣を広げる。スキルを持っている者が作成した品なので、勿論問題なんかは起こりようが無い。布地の品質も素晴らしい物だから、仕立て上がりはもの凄く格好良くなっていた。

「うむ、素晴らしいな。ウルベルトさんに釣り合うような華やかな出で立ちになりそうだ」

 俺は綺麗に仕上がっている浴衣を目の前に大満足していた。これならお洒落なウルベルトさんの隣に居ても恥ずかしくない。

 アイテムボックスから懐中時計を取り出して時間を見ると、もう時間だった。

「そろそろ準備をせねばな……。ウルベルトさんを待たせる訳にはいかない」

 そう言うと、メイドたちが音も無く近付いて来て俺をドレスルームへ誘う。俺は大人しく着替えに向かった。浴衣自体は簡単な作りだから、あっという間に着替え終わった。山吹色の細めの帯を締めてもらうと、より浴衣の色に映えるように思えた。

 カラン、と下駄の音を鳴らしながらドレスルームを出ると、俺はメイドたちに声を掛ける。

「では、行ってくる。留守を頼んだ」

 扉を開けたと同時に、<転移>でウルベルトさんの部屋の前に向かう。ウルベルトさんはどんな浴衣なんだろう?そう思うとウキウキしてしまってスキップでもしてしまいそうだったけど、必死に堪える。せっかく格好いい浴衣を着てるんだから、少しでも大人っぽくしたい。

「ウルベルトさん。俺です。入って良いですか?」

 ノックをしてからそう訊けば、すぐにデミウルゴスが扉を開けてくれる。

「モモンガ様。ウルベルト様がお待ちです。どうぞ」

 優雅に俺に一礼したデミウルゴスが迎えてくれる。視線を部屋の奥に向けると、蠱惑的な笑みを浮かべたウルベルトさんが俺を見つめていた。

「待ってましたよ、モモンガさん。……今のモモンガさん、すごく格好いいです。惚れ直しちゃいそうなくらいに。上は濃い紫で、下に行くにつれて淡くなってるのが夕闇を表しているみたいで素敵ですね。帯もお祭りっぽい結び方で粋な感じがします。……ひょっとして、俺の色を纏ってくれてたりします?だったら、俺と一緒ですね」

「ウルベルトさん……!」

 そんな風に可愛らしい事を言われて、もう心臓なんて無いのに胸が高鳴るような気がした。ウルベルトさんが可愛すぎて、我慢出来ない。ウルベルトさんを抱き締めると、小さく笑いながら囁かれる。

「駄目ですよ。まだ花火を見てないんですから。……花火を見てからなら、幾らでもハグされてあげますから、ね?」

 めちゃくちゃ色っぽくそう言われて、理性が飛びそうになるけど、ウルベルトさんが花火を楽しみにしてたのを知っているから一生懸命我慢する。理性を総動員してウルベルトさんから手を離すと、改めて浴衣姿のウルベルトさんを見つめる。細いウェストを締め付けている帯は、俺の固いタイプとは違って柔らかそうな帯だった。それを、右端で結んでいるのがすごく愛らしい。浴衣自体は格好いいのに、帯は可愛くて。そのアンバランスさにときめいてしまう。

「ウルベルトさんの浴衣も、すごく華やかで格好いいですね。帯もふわふわしててめちゃくちゃ可愛らしいですし、まるで金魚みたいで夏っぽいです!

 ……その。骸骨柄とか、俺の事想ってくれてたのかな、とか考えちゃって、ドキドキします」

 思った事を素直に口に出せば、ウルベルトさんははにかんだように笑ってくれる。

「……バレちゃいました?モモンガさんが格好いいから、モチーフにさせて貰ったんです。モモンガさんなら黒とか紫の方がそれっぽいとは思ったんですけど、華やかさが欲しいな、って思って」

「ウルベルトさんっ……!!」

 なんて可愛いんだろう、俺の恋人は。そう思うとまた我慢出来なくなりそうだったので、そっとウルベルトさんの手を握る。

「そ、その。花火の準備が出来たので、行きましょう。代表的なやつは大体取り揃えてますから、色々と楽しめますよ」

「そうですか!楽しみです。行きましょう、モモンガさん」

 俺の言葉に嬉しそうにしているウルベルトさんが可愛い。俺はキュンキュンした気持ちのまま、ウルベルトさんを地上までエスコートしたのだった。

 

 

 

 

「わぁ……!すごくレトロでいいですね、これ」

 俺がアイテムボックスから取り出した花火セットを見て、ウルベルトさんはすごく喜んでくれている。それが、とっても嬉しい。

(あぁ……マジで俺のウルベルトさん可愛すぎない!?)

 百年くらい前の一般家庭ではよく購入されていたらしい、花火セット一式。それをウルベルトさんに手渡す。消火用の水が入ったバケツも、既にセット済みだ。

「モモンガさん、一緒にやりましょうよ!最初はどれにします?俺はこれにしようと思ってるんです」

 そう言ったウルベルトさんが手にしたのは、持ち手が付いたタイプの花火だった。先端には色鮮やかな紙がヒラヒラと揺れている。そこに火を点けるんだろう。

「じゃあ、俺はそれの色違いにしてみますね。見た目が違うと花火の色も違ったりするんですかね?」

 ウルベルトさんが手にしていたのは、先端がピンク色の花火だった。なので、俺は先端が緑色の物を選んでみる。

「そうだったら面白いですね。早速始めましょうか」

 楽しそうなウルベルトさんを見ていると、俺まで楽しくなってくる。

「はい!じゃあ、魔法じゃなくこの蝋燭で火を点けましょうか。その方が風情があるでしょう?」

 アイテムボックスから蝋燭とそれを固定する土台を取り出して、蝋燭へはあえてマッチで火を点ける。

「モモンガさん、本格的ですね。そこからもう魔法使わないなんて」

「そりゃあ……せっかくウルベルトさんとの花火なんですから、ちゃんとしないと!」

 そう言うと、ウルベルトさんは俺が点けた蝋燭の炎に花火を翳す。すると、あっという間に引火して。その先端から、勢い良く火花が飛び散った。

「うわぁ!思ってた以上に本物の花火って凄いですね」

 無邪気にそう言うウルベルトさんが可愛い。

「本当にすごいですね。っと、俺も点けますね」

 ウルベルトさんの花火が燃え尽きる前に、と慌てて火を点けて。ウルベルトさんの隣でその花火を眺める。

「……ちょっとタイミングがずれちゃったから、色違いかどうか分かりませんね」

 俺とウルベルトさんの花火は、違う色を見せている。けれど、それが元々の色違いだったのか、燃えるタイミングによる物かが判別出来ない。少しずつ燃えながらその色を変える花火は、とても綺麗だったけれど。

「確かに、そうですね。でも凄く綺麗です……」

 ウルベルトさんは、うっとりと花火を見つめている。その横顔が、すごく綺麗で。一瞬、見蕩れた。

「……あ。もう終わっちゃいましたね。結構あっという間に終わっちゃうんですね、花火って。ほら、モモンガさんのもそろそろ終わっちゃいますよ?」

 そう言われて、慌てて視線を花火に戻すと、最後の光を放つ瞬間が見えた。

「あ、本当だ!次は、どれにします?」

「じゃあ、今度は設置型試してみたいです!噴水みたいに吹き上がるんですよね、確か」

 はしゃいでいるウルベルトさんは本当に可愛いから、花火を用意して良かったって心底思う。こんなにささやかな事でこんなに喜んで貰えるんならもっと早く気付けたら良かったんだけど。

「そうですね。じゃあ、今度は同時に火を点けましょうか?そうしたら色の違いとかも分かりやすいでしょうし」

 俺の言葉に、ウルベルトさんは笑顔で頷いてくれた。

 

 

 

 

 設置型の後はまた手持ちタイプを楽しんで、ネズミ花火の動きに逃げ惑ったりしつつ、最後にはお約束の線香花火でちょっとだけしんみりとしたり。何種類もある花火を堪能し尽くして。とうとう、打ち上げ花火の出番がやってきた。デミウルゴスが用意してくれた休憩所の長椅子に二人並んで腰掛けると、物影に控えていたデミウルゴスが俺たちに冷えた飲み物を渡してくれた。夏にはお約束の麦茶らしい。

「モモンガ様、ウルベルト様。打ち上げ花火の準備が出来ました。いつでも打ち上げ可能ですので、御声を掛けて頂ければ即座に対応致します」

 その言葉に、ウルベルトさんを見る。すると、ウルベルトさんも俺を見ていてくれたのか、視線が絡む。

「モモンガさん。始めて貰ってもいいですか?」

「勿論ですっ!デミウルゴス、開始しろ」

 可愛らしく小首を傾げてそう言われて。俺はすぐにそう答えていた。デミウルゴスに命じれば、優雅に一礼してから右手を翳す。すると、待機していた配下が打ち上げ花火の導火線に火を点けたのが見えた。結構な距離があったが、遮る物が何も無かったため、良く見える。火が燃え進む度に導火線が徐々に短くなって。打ち上げの筒に点火して数瞬の後。大きな音が聞こえた。

「すごい……!モモンガさん、見て下さいよ!!音が馬鹿デカくて耳がヤバイですけど……滅茶苦茶綺麗ですっ!!」

 興奮するウルベルトさんを照らす、花火の光。その光の元を見上げると、巨大な花火が連続して何発も打ち上げられていた。確かに、音がかなり大きかったけど、まるで超位魔法を放った時のような巨大な光が次々と現れるのは、かなりの迫力で。花火を見上げながらウルベルトさんの手をそっと握ると、ウルベルトさんも俺の手を握り返してくれる。それが、すごく嬉しくて。俺は幸せな気持ちのまま、ウルベルトさんとずっと花火を見ていた。

「綺麗、ですね……」

 花火も、それを見ているウルベルトさんも。そう思って口にすれば。

「えぇ、本当に、綺麗です……」

 ウルベルトさんは、俺の気持ちも知らずにサラリと答える。花火も勿論綺麗だったけど、それ以上にその光に照らされているウルベルトさんが本当に綺麗だったから、俺はそんなウルベルトさんを忘れないように、と目に焼き付ける。もう目なんて無いんだけど。

(まぁ、毎年の恒例行事にすれば忘れるなんて事無いんだろうけど……この一瞬一瞬がすごく貴重なんだよな……。毎年やったとしても、今のウルベルトさんはこの瞬間しか見られないんだから)

 ……そんな事を思いつつ花火とウルベルトさんをジッと見つめていたら、麦茶の氷はすっかりと溶けていた。

 最後に、何発も連続して派手な花火が打ち上げられたかと思ったら、いきなり俺とウルベルトさんのエンブレムが闇夜に浮かび上がった。これも花火だなんて、一瞬気付かなかった。スケールがデカすぎて。

「モモンガさん……今の」

「いや、俺も知りませんよ!?何も聞いてませんしっ!!」

 最後の花火がそれで。インパクトは抜群だったけど、ちょっとロマンチックな雰囲気とはかけ離れてしまった。俺たちは二人揃って顔を見合わせて笑う。

「締めがこれって……何か、気恥ずかしいですね」

 恥ずかしがるウルベルトさんも、とても可愛らしい。

「そうですね。来年は変えて貰いましょうか」

「来年、も?」

「えぇ。夏の恒例行事にしましょう。今日だけじゃ無くて、これからも、夏が来る度に花火をして二人で見ましょう」

 握った手をより強く掴むと、ウルベルトさんはフッと笑う。

「そうですね。これからもずっと、二人で思い出を作っていきましょう」

「ウルベルトさん……!!」

 感極まって、ギュッと抱き締める。今度はウルベルトさんも抵抗しなかった。

「じゃあ、今度は夏祭りもしましょうよ。俺、一度屋台で買い食いとかしてみたかったんです」

 そんな風に可愛らしくおねだりされて。俺は大きく頷いていた。

「勿論です!古代図書館で文献を調べますから、完璧に再現した屋台でデートしましょう!!」

「えぇ、本当に楽しみです。……モモンガさん、今夜はありがとうございました。すごく素敵な思い出が出来ました。嬉しいです」

 ウルベルトさんはそう言って、俺に一瞬触れるだけのキスをした。その瞬間、俺の理性はあっという間に消え去っていた。腕の中のウルベルトさんを抱き上げると、デミウルゴスに片付けを頼んでその場から<転移>で立ち去る。

「えっ……ちょ、モモンガさん!?」

「あんな風に可愛らしく誘われたら、俺、我慢なんて出来ませんよっ!!誘ってないとか言わせませんからねっ、ウルベルトさん!!」

 戸惑っているようなウルベルトさんにそう告げれば、一瞬目を丸くしたかと思うと、次の瞬間妖艶に笑う。

「あぁ……本当にモモンガさんは可愛らしいですね。良いですよ。でも、今日はいつもより優しくシて下さいね?折角綺麗な浴衣を着てるんですから、浴衣も込みで愉しまないと」

 いつもよりも数段艶っぽいウルベルトさんにドギマギしながらも、俺は何度も頷いた。そんな俺を、ウルベルトさんは愉しそうに見つめていたのだった。

 

END

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。