【BL】エロ無しコメディの腐バロ集 作:腐エロのひと。
金木犀でイチャイチャが書きたくて書いたお話なので、その他の部分は後付けです。
愛を知らなかったこの俺に愛を教えてくれたのは、執着心がヤバイ死の支配者だった。
昔からモモンガさんの事は大好きだったし、悪魔になった事で同性のモモンガさんに対しても恋愛感情を持つことに違和感を覚えることは無くなった。骨相手でも気にならなかったし。やっぱり、俺が見た目で彼に惚れた訳じゃ無くて、モモンガさん自身のことを想っているからだろうか?
……けれど、俺は彼に愛を告げられなかった。愛を知らなかったから。嘘が吐けない悪魔の俺は、知らない感情を口にすることが出来なかったのだ。一線は疾っくに超えていたんだけど。
(大好き、とは言えたんだけどな……。そもそも、好きな奴以外とセックスする程終わってねぇし。悪魔になってもその辺変わってねぇんだよなぁ。悪魔って人間のモラルとは遠い種族だと思ってたんだが……)
けれど、モモンガさんは重過ぎる愛を何年も俺に向けてくれて。最初の頃はその執着とも言える強烈な感情に怖さすら感じていたのに……いつも真っ直ぐに俺を見てくれる彼に、大好きだけじゃない何かを感じ始めたのはいつからだっただろうか?
(ひょっとして、これが……?)
恋とか愛とかは、未だに良く解らないけれど。胸に芽生えたこの感情を指す言葉は、多分。
気付いたら、口にしてみたくなった。けど、タイミングが掴めないまま日が過ぎて……。
(いきなり第六階層に来てくれ、って……どうしたんだろう、モモンガさん)
急に<伝言>が入ったと思ったら、予定が無いのなら第六階層に来てくれないか?と言われて。俺は訳も解らずに第六階層へ向かっていた。
(第六階層って確か俺の好きなチーズを作ってる階層だよな。帰りに出来たてのチーズでも貰って帰ろうかな)
と、晩酌のつまみについて思いを馳せつつリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンで転移して。第六階層に足を踏み入れる。
「あ。紅葉してる木もあるな。紅葉狩りとかもしたいな」
木々の紅葉を楽しみつつ、モモンガさんを探して歩き回る。と、魔力の揺らぎを感じて。俺は歩を進める。
「モモンガさん!どうしたんですか、今日は」
そう言って歩み寄れば、上機嫌なモモンガさんの声がした。
「ウルベルトさんっ!こっち、こっちです!」
俺の名を呼びながらそう手招く恋人に、口元が緩む。……相変わらず俺のモモンガさんは世界一可愛らしい。
「……金木犀、ですか?良い香りですね」
モモンガさんの背後には、小さく愛らしい花が咲いた木がある。その独特の香りで、花に詳しくない俺でも知っているそれだと気付く。大昔は秋の風物詩として知られていたと言うその香りは、リアルでは人工の物でしか嗅いだことが無かったけれど。
(天然物って香りに棘が無くて心地いいな……)
そんな事を思いつつ、木の傍に立っているモモンガさんに近付く。すると、急に木が揺らされて。二人して降って来た金木犀塗れになった。
「やっぱり、ウルベルトさんめちゃくちゃ可愛いです!お花似合ってますよ、すっごく」
眼窩の炎を揺らしながら、恐らくは満面の笑みでそう言われて。俺も笑みを返す。
「モモンガさんだって、似合ってますよ?凄く可愛らしいです」
そう言うと、モモンガさんは俺の両手を握り締めながら力説し始める。
「俺よりも、ウルベルトさんの方が何倍も可愛らしいですっ!!漆黒の毛並みにオレンジ色の金木犀が映えて可憐だしっ……!」
「それを言うならモモンガさんだって黒のローブに金木犀が映えてますよ?とっても愛らしく見えますけどね、俺には」
モモンガさんにそう返せば、困惑した様に眼窩の炎が瞬いた。
「……ウルベルトさん。俺、骨ですよ?なんで愛らしいなんて……」
「それ言うなら、俺だって黒山羊頭の悪魔なんですけどね?可憐とはほど遠いと思うんですけど?」
笑いながらそう言うと、モモンガさんはギュッと俺を抱き締める。……途端に強くなる、金木犀の香り。
「ウルベルトさんは可憐ですよ。こんなに華奢で俺の腕の中にスッポリと収まっちゃうし……めちゃくちゃ可愛いし!!」
「それはモモンガさんが2メートルの巨躯だからじゃないですか。俺、確かに魔法詠唱者で細身ですけど……成人男性としては華奢って言われる程の体格じゃないですよ」
恋は盲目、とは良く言った物だ。モモンガさんは身長が高いから、俺が小柄に見えるようで……しきりに俺を華奢だとか言ってくる。俺はほんの少しだけ細身なだけなんだが。
「華奢ですよ。腰だって俺の手で簡単に掴めちゃうし……」
モモンガさんはそう言うと、両手で俺の腰を掴む。
「モモンガさんの手がデカイからでしょう?そんなに長い指してたら、普通の体格の人の腰だって余裕で掴めるんじゃ……」
モモンガさんを見つめて首を傾げると、再び抱き締められた。ローブ越しに感じる、硬い骨の感触。
「もうっ!ウルベルトさん可愛すぎですっ!!何でそんなに可愛いんですか!?今日は俺、ウルベルトさんと花を愛でようと思ってたのに……!」
(あ。この流れはいつもの……?)
「モモンガさん。俺、牧場見たいです!新鮮な乳製品をつまみにしたいんですよね」
躱す様にそう言ってモモンガさんを抱き返すと、少しは落ち着いてくれたみたいだ。
「あ、あぁ。ウルベルトさん、お酒好きですもんね。ぷにっと萌えさんのワインに合う乳製品、って事はスモークチーズとかですか?」
俺の事をお姫様抱っこしながらそう訊くモモンガさんに、笑顔で答える。
「それも良いですね。普通のチーズと食べ比べしながら呑みたいです」
甘える様にそう言ってモモンガさんの胸元に頭を寄せる。……デカイ角があっても、モモンガさんは骨なので刺さる心配も無いから。
「じゃあ、今から行きましょう!……その、俺もご相伴に預かっても?」
俺に訊いてくるモモンガさんは、やっぱり可愛い。
「勿論、いいですよ。……夜は長いんですから。ゆっくりと味わいましょうね」
あえて意味深にそう言えば、モモンガさんは全力で牧場目指してダッシュする。……そんなに俺と一緒に居たいって思ってくれるのか、と思うと何だか少し気恥ずかしいような。俺だってモモンガさんの事は大好きだけど。
「そんなに慌てなくっても、牧場は逃げませんよ?」
クスクスと笑いながらそう言えば、モモンガさんはダッシュしつつも答えてくれる。
「牧場は確かに逃げませんけどっ!ウルベルトさんと過ごす時間が減っちゃいますからっ!!」
「今だって二人っきりなのに?俺、こういう時間も好きですよ。モモンガさんと一緒に居られるのなら」
ローブに付いたままの金木犀を一つ摘まんで取りながらそう言うと、モモンガさんはその場に崩れ落ちた。それでも、俺を取り落とさないのは流石というか、何というか……。
「……どうしよう。ウルベルトさんが尊すぎて、俺っ……!!」
小刻みに震えているモモンガさんの頭をそっと撫でると、眼窩の炎がチカチカと点滅する。……一体どんな心情なんだろうか?
「モモンガさん?牧場、行かないんですか?」
モモンガさんに訊くと、まだ小さく震えたまま口を開く。
「行きます!……けど、少しだけウルベルトさんの尊さを堪能させて下さい……!」
「堪能、って。いつも一緒に居るのに、おかしなモモンガさんですね」
(……あぁ、マジで俺の恋人は世界一可愛い。何年経っても初々しいしなぁ……)
そう思うと、自然と笑みが浮かぶ。誰よりも大切な、俺のたった一人の最愛のヒト。その、愛らしさに。
「俺も……モモンガさんの可愛さを堪能させて貰いますから。牧場にはゆっくり向かいましょう」
その白磁の頬を撫でながら声を掛けると、モモンガさんの眼窩の炎が一瞬大きくなって揺らいだ。
「……まったく、ウルベルトさんは……!」
「こんな俺の事も愛してるんでしょう?ねぇ、モモンガさん?」
そう水を向けて、撫でた白磁の頬に唇を押し当てると、一瞬大きく躯が揺れた。
「あ、愛してますよっ!!ウルベルトさんはどうなんです?」
動揺しながらもそう言ってくれる恋人に、胸が熱くなる。だから、俺は。今まで一度も言ったことの無い言葉を口にした。
「俺だって、愛してますよ。モモンガさんの事を」
モモンガさんの目を真っ直ぐに見つめながらそう答えれば、眼窩の炎がより一層大きくなった。嘘が吐けない悪魔のこの俺の告白の重さを、正確に理解しているが故に。
「ウ、ウルベルトさん……!?い、今……!?好き、じゃなくて!?」
「……随分と待たせてしまいましたけど。嘘偽りの無い本当の気持ちですよ。俺だって、モモンガさんに負けないくらい、モモンガさんの事を想ってますよ」
そう伝えると、モモンガさんが俺を抱き上げる手の力が強くなった。
「めちゃくちゃ、嬉しいです……!ウルベルトさん……!」
「モモンガさんが俺に教えてくれたんですよ?この感情を。だから、ちゃあんと責任取って下さいね」
愛を知らなかった悪魔の俺に、繰り返し愛を囁いて。この感情を教えてくれたモモンガさん。元々モモンガさんの事は好きだったけれど、愛を知らない俺は、彼に愛してるとは言えなくて。何年も待たせてしまっていたけれど、ようやく伝えられた。その事に、安堵する。
「当たり前じゃないですかっ!!永遠に離しませんからね、ウルベルトさん……!!」
死の支配者の重過ぎる愛を嬉しく想う日が来るとは思ってなかったのに。今はこんなに嬉しくて。
「俺だって、永遠に離してあげませんからね。覚悟して下さいね、モモンガさん」
俺の言葉に、モモンガさんは嬉しそうに眼窩の炎を揺らしている。
「ウルベルトさんにそう言って貰えて、俺、すっごく嬉しいです!」
「なら、良かったです。……モモンガさん、もう牧場行けそうです?」
声を掛けると、モモンガさんは大きく頷く。
「はい。……その。ウルベルトさん、もう一回、言ってくれますか?」
「勿論。愛してますよ、モモンガさん。俺だけの、大切なヒト」
そう言って、一瞬だけ唇を重ねると、モモンガさんはすっくと立ち上がる。
「……行きましょう、牧場。でもって、早く二人でロマンチックな夜を……!!」
鼻もないのに鼻息も荒くそう言うモモンガさんが可愛くて。俺は猛然と走り出したモモンガさんに笑いながら身を任せていたのだった。
その夜。俺とモモンガさんがいつも以上に甘いひとときを過ごしたのは言うまでもない。
END