【BL】エロ無しコメディの腐バロ集 作:腐エロのひと。
side モモンガ
『……ウルベルトさんと、二人きり……』
ユグドラシルの最終日、最後に来てくれたウルベルトさん。ヘロヘロさんが最後だと思っていたから、本当に嬉しくて。玉座の間に来てくれたウルベルトさんとカウントダウンをしていて……転移したのだと気付いた、その瞬間。
"絶対、この人を逃がしちゃいけない"
そう、強く思った。
自由なこの人は、放っておいたらきっとどこかに消えてしまう。そんな思いが、俺を強く支配して。俺は密かに、彼をナザリックへ縛り付けるための策を巡らせる。時間にして、ほんの数瞬のそれは、ウルベルトさんには気付かれていないようだった。
「モモンガさん、これからどうしましょうね?」
困惑したようにそう言うウルベルトさんを見て、俺は意識を切り替える。
「そうですね、まずは……」
side ウルベルト
……マジ、慣れない。一般庶民……と言うか、下層民にも等しいド底辺の俺なのに、こうしてメイド達に傅かれるとか……あり得なさ過ぎて。魔王ロールのモモンガさんを見習って、俺も悪魔の支配者として相応しい振る舞いを心掛けているが……正直、息が詰まる。モモンガさんの前でだけしか素を出せない、ってのは思ったよりしんどい。
デミウルゴスの前でも、上位者として振る舞っているけれど……デミウルゴスの前でもモモンガさんとは話しているし、その時は素を出しているので、まぁ俺の本性なんざ知ってるとは思うんだが。……それでも、崇拝した視線は変わらねぇんだよなぁ……。
ふぅ、と小さく溜息を吐くと、デミウルゴスが心配したように俺を見る。
「ウルベルト様、どこかお加減でも?」
「あぁ、いや……そうじゃない。一寸、昔の事を思い出してな」
嘘ではないのでそう口に出来るが、デミウルゴスは少し心配そうだ。
「お前達が居るとは言え……アインズ・ウール・ゴウンのメンバーは今や私とモモンガさんだけだ。そう思うと、ほんの少しだけ淋しくてな」
苦笑しながら内心を吐露すると、デミウルゴスは安心したような顔になる。
「左様でございましたか。確かに我々僕では、至高の御方の穴を埋めることは出来ませんが……誠心誠意お仕え致します。それに……ギルドマスターで在らせられるモモンガ様もいらっしゃいます。知恵と武勇に優れるお二方がいらっしゃれば、ナザリックは安泰です」
「武勇は兎も角……私に知恵は期待するな。アインズ・ウール・ゴウンの軍師であるぷにっと萌えさんとは違うのだからな」
デミウルゴスの言葉をそう否定するが、過大評価されまくっているので、多分俺の否定は謙遜と取られていそうだ。
「またその様な……」
……ほらな。笑いながらそう言うデミウルゴスは全然俺の言葉を真に受けて無い。
(……どうなんだろうな……今のこの状況……)
「デミウルゴス。モモンガさんの所に行って来る。供は不要だ」
そう言い置いて、俺は部屋を出た。
side モモンガ
「モモンガさん、失礼します」
ノックの後に、ウルベルトさんが入って来る。この時間帯はメイド達が居ないと知っていて。
「いらっしゃい、ウルベルトさん。どうしました?」
そう訊くと、ウルベルトさんは途端にソファに倒れ込む。……相当お疲れのようだ。
「……モモンガさん……。マジで俺、ロール回しっぱなしっての、しんどいです……」
そう言うウルベルトさんは、心底参っているようだった。
「別に、素を出してもいいんじゃないですか?デミウルゴスだって、俺とウルベルトさんの会話を見てても態度を変えたりしないじゃないですか?」
「そーですけどぉ……。モモンガさんがロール回してるのにに、俺だけ素って訳にもいかないでしょう?一応俺だって、悪魔の支配者なんですから」
ソファに突っ伏したまま、上目遣いで俺を見るウルベルトさん。ワールド・ディザスターと呼ばれるヒトとは思えない姿が可愛らしい。
「じゃあ、俺と過ごす時間を増やしたら良いじゃないですか?そうしたら、素を出してても問題無いですし」
俺がそう言うと、ウルベルトさんはソファに座り直して俺を見る。
「今だって、結構な時間モモンガさんと過ごしてると思うんですけどね……。これ以上、って言ったら、マジで寝てる時と飯の時、風呂の時以外はずっと……みたいな感じになりますよ?モモンガさん、嫌じゃないんですか?絶対窮屈でしょ、ソレ」
「嫌じゃないですよ。むしろ、嬉しいです。……だって、ずっと独りでしたから。大好きなウルベルトさんと一緒に居られる時間が増えるのは、俺にとっては喜ばしい事ですよ。……アンデッドは、眠れませんしね。長い夜の時間を思えば、ウルベルトさんと過ごす時間が増えるのはすごく嬉しいです」
「モモンガさん……」
俺の言葉に、ウルベルトさんは切なげな顔で俺を見る。……そこに、付け込む隙がある。
「すみません、こんな事言って。……でも、眠れない夜って、本当に長くて……嫌なことばっかり考えちゃうんですよ。だから、こうしてウルベルトさんと話せる今が、とっても幸せなんです」
そう言うと、ウルベルトさんは申し訳なさそうな顔になる。
「俺こそ、すみません……。睡眠不要の指輪だってあるのに、使わずに爆睡して……モモンガさんの事、考えてませんでした。ナザリックのベッドの寝心地が良過ぎて……って、こんなの言い訳ですよね。マジ、すみません……」
ウルベルトさんは、"良い人"だ。だからこそ、罪悪感を煽って……良心の呵責を起こさせる。それに……ウルベルトさんは、ギルメンの中では多分俺の事が一番好きでいてくれると思うから。そこに、付け込ませて貰うと決めた。卑怯かもしれないけれど、彼を永遠に失ってしまうよりは、遥かにマシだ。
(ウルベルトさんを繋ぎ止められるのなら……どんな手だって使ってやる……)
俺がそんな事を考えているなんて知らず、ウルベルトさんは本当に申し訳なさそうに俺に謝罪している。
「いえ、気にしないで下さい。元々、ウルベルトさんは悪魔ですし……本来は飲食だって睡眠だって出来る種族なんですから、俺に合わせて無理に我慢なんてしないで下さい。寝る事でリラックス出来るのなら、ウルベルトさんはちゃんと寝て下さい」
「モモンガさん……」
ウルベルトさんに近付き、そっと肩に触れると、ウルベルトさんの瞳が潤んで揺れた。……俺の為に、泣いてくれるんだろうか?本当に、優しいヒトだ。
「泣かないで下さい。俺は、ウルベルトさんが一緒に居てくれるだけで嬉しいんですから。もし、独りで転移して来てたら……って思うと、心底ゾッとしますし」
「……モモンガさん……」
その刹那、涙が零れて。それを見た瞬間、衝動的に抱き締めていた。
「ウルベルトさん……俺の為に、泣かないで下さい。俺、ウルベルトさんが笑ってくれてる方が嬉しいです」
「……な、泣いて、なんか……っ!」
ウルベルトさんはそう言うけれど、言葉が詰まっている。
(あぁ……。そう言えば、悪魔のフレーバーテキストって……)
そう思い返すと、合点がいく。……元々、ウルベルトさんは俺に嘘なんか吐かなかったから、今まで気付かなかったけれど。
「俺は、ウルベルトさんが俺の傍に居てくれて……ずっと笑ってくれたら、それで満足なんです。だから……ずっと、俺の傍に居てくれませんか?」
悪魔のウルベルトさんに、そう問い掛ける。その答えが、彼を縛ると知っていて。
「勿論です。俺は、ずっとモモンガさんの傍に居ますよ」
(……言った!これで、契約は成った……!)
優しい彼は、俺の思惑など知らず、そう口にした。その言葉が、自身を縛る枷となるなんて思ってもいないんだろう。
「約束ですよ?ずっと、俺と一緒に居て下さいね、ウルベルトさん」
念を押すようにそう言うと、ウルベルトさんはまだ涙を金と紫の瞳に滲ませながら小さく微笑んでくれる。
「えぇ、約束です。ずっと、俺はモモンガさんと一緒に居ますよ」
アンデッドであり、寿命が無い俺と、同じく悪魔で寿命の無いウルベルトさんの、"ずっと"。それは、未来永劫に等しい意味を持つ。……ウルベルトさんは、そこまで理解しているんだろうか……?
(……理解、していなくてもいい。だって、もう契約は成立してしまっているんだから)
フレーバーテキストが現実になるこっちの世界。ユグドラシルのシステムで縛られている俺たち。どんなにレベルが上がっていても、職業が一致しなければ装備出来ないアイテム。そこから導き出した結論は……。
"ウルベルトさんから、契約の言葉を引き出す"こと。そうすれば、彼は永遠に俺から離れられなくなるだろうから。ウルベルトさんが悪魔であるが故に。
悪魔のフレーバーテキストには、嘘が吐けない種族であることと、彼らにとって契約は絶対であるということが記載されている。……つまり、ウルベルトさんが意識していようがいまいが、契約さえしてしまえば彼を縛り付けられるのだ。
約束、も契約の一種であるということは、ウルベルトさんと同じ悪魔のデミウルゴスに確認済みだ。彼も、ウルベルトさんを逃したくないと思っているからこそ、俺に協力してくれたのだ。
敬愛する創造主が、永遠にナザリックに君臨してくれる……それは、被創造物にとって、何と甘美な幻想か……。
俺は、そこにも付け込んだ。ウルベルトさんをナザリックへ縛り付ける為と称して、悪魔の特性の全てをデミウルゴスから聞き出して……自然な形で、ウルベルトさんと契約を結んだ。
(……ウルベルトさんは、いつ気付くんだろうな。俺から離れられなくなった事に)
実際の距離とかはまだ分からないけれど。多分俺から一定以上の距離は離れることが出来ない、とかになるんだと思う。再現性がある、悪魔との契約としては、その辺が妥当だろうか……?
「……?モモンガ、さん……?」
自分を抱き締めたままの俺を怪訝に思ったのか、ウルベルトさんがそう俺の名前を呼ぶ。
「はい、ウルベルトさん」
俺は何も気付いていないかのように振る舞う。彼を離さないままに。
「その……流石に、もう離して欲しいんですけど。誰も見ちゃいませんけど……えっと、その」
(……あぁ、やっぱり友人にしては近すぎたかな)
「ウルベルトさんが嫌なら、離しますよ」
と、俺は敢えてそう言う。優しいウルベルトさんは、嫌だなんて俺に言わないと知っていて。
「嫌ではないんですが……その。気恥ずかしい、と言いますか。野郎同士で抱き合ってるのも洋画じゃあるまいし、って感じで……」
そう言って、俺の腕の中で身を捩るウルベルトさん。それでも、俺の事を突き放さない、その優しさに甘えていたくなる。
「……もう少し、このままでいいですか?俺、もう体温ありませんから……ウルベルトさんの体温が心地良くて」
「その言い方は、ズルいですよモモンガさん……。もう少し、だけですよ?俺、他の奴らに見られるの嫌ですから。例えそれがNPCだったとしても」
ウルベルトさんはそう言いつつも、俺を突き放さないで居てくれる。その優しさが、嬉しい。
「分かりました。……あと、もう少しだけ……」
そう言いながら、俺は再びウルベルトさんの背中に手を回す。この腕の中の温もりを、手放したく無いと思いながら……。
END