転生先は何ライダーですか?   作:三柱 努

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転生先を選べと言われても

「今から貴方には転生先を平成ライダーの世界の中から選んでもらいます」

俺の名前は石森太郎。トラックに轢かれ、気付いたら目の前に天使がいた。可愛い系だ。清楚系だ。

まぁ分かる。よくある異世界転生系の小説の例に漏れず、今から異世界に転生させてもらえる流れなのは。ステータス配分をこうしてくれ。能力はこれをくれ。そういう流れは知っている。

「ちょっと待ってくれ」

「何か問題でも?」

「いや、話が唐突すぎる。あれだろ? キミは運命を司る存在的なものだけれど、手違いで俺を死なせてしまったとか、それか俺の現世での行いが良かったとか悲惨だったからそのご褒美で、来世でスローライフや無双的な。そういうサービスをしてくれるって話だろ? その経緯をだな」

そもそも目を覚ました俺への第一声が「選んでもらいます」のくだりだったからな。俺も混乱中だ。

だけどな。目の前の天使も混乱してんだよ。天使の輪っかと首をかしげて、キョトンとした顔で。

「ちょっと何言ってるかわかりません」

「・・・俺もだ」

なんだろうなこの感覚。バイトの子が慣れてきてマニュアル無視して話を進めていくけれど、こちとら初めてのお客さんだから知らない的な。

「ゴクダレかけますか?」じゃねぇんだよ。「ステーキに当店の特製ソース“極ダレ”をおかけしましょうか?」って言えよ。みたいな。世間はアンタのお店と認識共有してないから。知ってて当たり前じゃないから。

「あのさ、まず知っておきたいんだ。俺は死んだのかな? それで今から来世の人生を歩むことになるのかな?」

「・・・はい」

目を細めて俺をジトッと睨む天使の顔は、「当たり前じゃないですか」って言っていた。口には出していないけれど、絶対に思ってる顔だ。

俺は諦めた。これは聞けない。転生させてもらえる理由とか。善行だとか手違いだとかいう経緯は。

「それで、俺はその平成ライダーの世界? 仮面ライダーだよね? あのテレビの特撮ヒーローの聞いたことがある。仮面ライダーに転生するってことなんだよね?」

「・・・はい?」

天使の顔が一層曇った。え? 曇る要素ある?

「え? だから俺は仮面ライダーに転生するってこと・・・」

「そんなわけないじゃないですか」

天使が鼻で笑った。鼻で笑われた。それに今回は口に出した。態度悪すぎるだろこの天使。

「貴方が仮面ライダーに? バカも休み休み言ってください」

バカは言い過ぎなんじゃないか? それ以前の問題だけどさ。

「転生先の世界を何処にするかってお話ですよ。なにちゃっかり物語の主役になる話にすり替えているんですか?」

バカは言い過ぎなんじゃないか? やっぱり。

「だから、どの平成ライダーの世界に転生しますか? 選んでください」

天使の声がさっきまでより気怠そうだ。俺がまだショックを受けている途中でしょうが。

「あ、あの。1つだけいいかな?」

俺の口答えに天使はジロリと睨んで「何か?」と呟いた。これで可愛い顔じゃなかったら殴りたい。

「俺、仮面ライダーってよく知らないんだ。いや、聞いたことはあるよ。だけどテレビで見たことはないし。たまにクイズ番組とかのゲストで俳優さんが出た時にVTR見た事はあるけど」

「はぁ?」

天使はポカンと口を開けた。お話にならないということなんだろう。仮面ライダーくらい常識でしょと言いたげに。でもこちとら転生先を選ぶとかいうのが常識外の状況なんだよ。

「貴方、そんなんで生き残れると思っているの? 仮面ライダーを知らないとか。そんなんじゃ転生してすぐに死んで、今度は消滅よ?」

「いや、なんかすみません・・・・って、今何て言った? 今度は消滅?」

重要すぎる情報が飛び出してきた。次は消滅? いやそれよりも“すぐに死ぬ?”って?

そうだ。思い出した。仮面ライダーって悪い怪人と戦うヒーローの話だ。いや、悪い怪人とかいう表現はマイルドすぎる。人間を襲う怪物のいる世界に行くってことか! しかも殺しに来る危険度!?

「そうよ。ただでさえ貴方の転生は“モンスターが人を襲っている時に画面の端で逃げ惑う一般人”なんだから。ボケーッとしてるとすぐに死ぬわよ」

ちょっと待って。また変な情報が出て来た。何その番組のエキストラが就くポジション。

「え? その転生ってまさかだけど、どの仮面ライダーの世界に行ってもそのポジションなの?」

「そうですよ。貴方は仮面ライダーの話の“その回のセリフのあるゲストキャラ”なんかじゃなくて、“セリフのない逃げ惑う一般人”。エンディングの出演者一覧の後半の東映アカデミーみたく劇団名が載る程度の。元の世界と同じ普通ポジションに転生するんです」

うわ、地味にディスられた。善行とか手違いとかの説、立証ならずが確定だわ。

「そんな危険な世界に転生とか、どの世界を選んでも同じじゃないの?」

投げやりモードに突入した俺の一言に、天使は顔をグイと近づけてきた。

「な~に言ってるんですか! 平成ライダーの世界を舐めんな!」

天使ちょっと興奮気味。え? さっきまでの倦怠口調はどこ消えた?

「いいでしょう。平成ライダーを知らない貴方には特別出血大サービスです。どの世界に転生するかで人生が大きく左右される平成ライダーの一般人。その違いを詳しく説明してあげようじゃないですか! この私が!」

そのサービス、普通は転生するときにチート能力くれたりする流れに使うものじゃないのか?

 




こうして俺の次の人生選び。転職活動ならぬ転生活動が始まった。
だがこの時俺はまだ知らなかった。
平成の仮面ライダーの世界で一般人として暮らすことがどれだけ大変なのかを。

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