「さてお次は仮面ライダーキバの世界。今回はちょっとだけファンタジーですよ」
おっ? なんか異世界転生っぽい世界だな。
「世界観はいつものように石森さんの元の世界とほとんど同じですけどね」
「ファンタジーのファの字が早速泣いたな。どこに幻想要素あんだよ」
「この世界には魔族がいるんです」
ドラゴンボールの世界だな、と一番最初に思った人は他にもいそう。
「魔族は13種がいました。人狼のウルフェン族や人造人間のフランケン族、あと吸血鬼のファンガイア族や・・・」
そう言って怪物の絵を描き始める天使。いや、画力がさぁ、仮面ライダーの説明っつよりも。
「怪物くんの世界だったか」
等身だな。等身さえポップから抜け出せば仮面ライダーの説明だ。
「でも“いました”ってのはどういうことだ?」
「ほとんどの種族が絶滅しているんです。数多く残っているのはファンガイア族と人間族だけです」
人間も魔族カウント!? これだから天使の価値観ってやつは。
「なるほど。それで俺の転生先は人間族で、仮面ライダーの敵がファンガイア族ってわけか」
「残念。そうとは限りません」
残念? 答え一択じゃね? どゆこと?
「この世界の魔族の定義は『他者のライフエナジーを捕食して生きる、知性を持つ生物』です。なので人間も動植物を食べて生きているので魔族にカウントされます」
なるほど。
「ん? ってことは・・・」
「はい。今度の転生先は怪人が現れた時に画面の端に映る一般魔族。一般人か一般ファンガイアという可能性があります」
一般魔族・・・何それ。
「ってことは今度の転生、俺は怪物の姿になるかもしれねぇっつうことか? それはやだなぁ」
「いいえそこは御心配なく。ファンガイアは普段、人間の姿で人間として人間社会に溶け込んで生きています。普通の食事を取る他に、人間のライフエナジーを吸収して生きているだけです」
そのライフエナジーを吸収するために人間を襲っているのか。
「・・・ってことは俺が人間を襲う怪物になるのか?」
「ライフエナジー摂取は必須ではありません。何十年もずっと我慢して生活しているファンガイアもいますから。普通の食事で栄養面は十分に賄うことができます」
なるへそ。つまり一般怪人として普通の範疇で生活することになるってわけか。
「でもさ。一番肝心なところ聞いていい? ファンガイアって仮面ライダーの敵?」
「そうですねぇ・・・そうですねぇ・・・」
天使の歯切れが悪い! 悪い予感しかしない。
「そのあたり複雑なんですよ。ざっくり言うと『悪いファンガイア殺すマン』と『裏切り者のファンガイア殺すマン』と『ファンガイア以外殺すマン』みたいな仮面ライダーが出てきます」
はい? 殺すマン多くない? まぁ仮面ライダーって怪人殺すマンなイメージだけどさ。
「立場の違いや考え方の違い、あとは装着者の違いで仮面ライダーの考え方が違うんですが、今回は下手なことをすると石森ファンガイアが仮面ライダーに殺されてしまうパターンが存在してしまいます」
「うん。ツッコんでいい? 石森人間がファンガイアに殺されるパターンもあるんでしょ?」
俺がそう尋ねると、天使は当たり前のように頷いた。
「ですがどちらの場合も事前の行動次第で回避が可能です。ファンガイアになってしまっても、悪いことをしなかったり、人間の進化に貢献しないようにしたりすれば、少なくとも仮面ライダーには狙われません。比較的、楽ですよ」
「人類の進化に貢献・・・したら仮面ライダーの敵になっちゃうのか。ん? どゆこと? まるで仮面ライダーにとって人類の進化が不都合みたいじゃないか?」
「その通り。今回は人間を守る仮面ライダーの他に、人間を成長させたくないファンガイアの仮面ライダー、ファンガイア以外を淘汰したい仮面ライダーがいます」
「うわ出たよ。怪人が変身する仮面ライダー。ん? だけど前の555の時のオルフェノクだっけ? あれってオルフェノクになると自動的に仮面ライダーになる素質を手に入れちゃうから、俺は転生できないんじゃなかったか?」
「ファンガイアの仮面ライダーは王様の素質がないと装着できないんです」
王様・・・なんかファンタジーに引き戻されたなぁ。
「そういや人間族に転生した場合にはどう行動するとファンガイアに殺されなずに済むんだ?」
「逃げの一択です」
あ、そ。逃げられるわけないのに。
「逃げられるわけないのに。って顔してますね。ですがファンガイアは頑張れば逃げられる場合が多いんです」
「へぇ。足が遅いんだ」
そんな俺の至極まっとうな推理に、天使はチッチッチと指を振った。
「先ほどお話したようにファンガイアにとって人間を襲うことはライフエナジーの吸収のための行為。つまり食事です。他の仮面ライダーの世界にも人間を食べる怪人がいますが、その行為とは明らかな違いがあります」
「ん? 何が違うんだ? 人を喰うことには変わりないんだろ?」
「いえいえ。人を喰らう怪人は野生動物のように狙った獲物を諦めることはありません。ですがファンガイアの場合はあくまで食事。よほど空腹でない限りは食べたいものを食べて、食べられないものは諦める余裕があります」
「食べるのを諦める。逃げられたら、追いかけるほどの価値のない食べ物は諦めるってことか」
俺の言葉に天使は指をパチンと鳴らして「その通り」と言った。
「特に石森さんはごく普通の一般人として転生します。その魅力も普通レベル。コンビニ弁当レベルだと思ってください」
あぁ・・・そうか。嬉しいような嬉しくないような。たしかにコンビニ弁当レベルなら、もし売り切れだったり、店に行列ができたら『他の商品・店でいいや』ってなるな。
「ですがもちろん偏食な個体もいますし、どうしてもお腹が減っていたり、そもそも人間を逃がすほど間抜けじゃないってファンガイアもいます」
「だろうな。安全なんてもんが無いことは最初から知ってた。でも話を聞く限り、色んな性格があるんだな」
「そうですよ。ファンガイアは他の世界の怪人と比べて比較的、温和な性質の個体が多いんです。なので人間との共存の未来もあります」
へ? 人間と怪人が共存する仮面ライダー? それなら話が変わって・・・こねぇな。
「あのさ。怪人の人生ってどうなん? 普通の人間として暮らしていけるの?」
「そうですね。普通の人間と同じ暮らし方ができますよ。主人公も人間とファンガイアのハーフですけど、普通に隠遁生活しています」
それはいいかもしれないな。普通に人間として生活できればいいな。
・・・・ん?
「人間とファンガイアのハーフ? え? 子供できるの?」
「はい。体の構造が似ているので交配可能です」
お! マジか。
いやすこしゲスい話、怪人に転生したら人生の伴侶まで怪人になるから嫌だなぁって思っていたけど。なんだ人間とも結婚できるのか。
「ですが、人間と結ばれたファンガイアは粛清対象になります」
駄目じゃん!
「それでは石森さん。貴方が転生するのは、キバの世界でよろしいですか?」
笑顔で尋ねる天使に、俺は笑顔で答えた。
「いいえ。俺は仮面ライダーキバの世界に転生しません!」
さすがに怪人転生は想定外だわ。