「さてお次はある意味で石森さんの先輩、仮面ライダーディケイドの・・・世界です」
先輩? どういうことだ? 俺の出身校でも調べ上げたのか?
でも俺の学校から出た有名芸能人なんかいたら話題になるはずだ。どういうことだ?
「で、その仮面ライダーディケイドの世界にはどんな怪人が現れるんだ?」
「色々出ますよ。グロンギにミラーモンスター、ファンガイア、アンデッド、オルフェノク、アンノウンにイマジン、ワームに魔化魍に、仮面ライダー、フォーティーン、外道衆、クライシス帝国、大ショッカー」
「全部てんこ盛りじゃないか。あと後半聞いたことない」
天使の列挙した脅威に、俺は指折り数えながら聞いていたが、両手の指が足りなくなったことでパニックになった。
「どゆことだよ」
「ディケイドは9つの並行世界、A.R.WORLDを破壊して、世界が滅びる未来を変えるために旅をする仮面ライダーなんです」
破壊して滅びる未来を変える。意味不明だ。あと、絶対に9つじゃない。
そう言って俺が怪人を数えた時の指を9以上にカウントして見せると、天使は苦笑いして俺から視線を逸らした。
「世界を移動するたびに、ディケイドはその世界で何かしらの役割のある存在に自動的に配分されるんです。いわば仮面ライダー転生です」
なるほど。だから俺の先輩ってことか。
俺が仮面ライダーの画面の端の一般人転生。ディケイドが仮面ライダー転生。
うらやましいような、うらやましくないような。
「まぁ俺よりかはマシか。そのディケイドってのは9回以上も転生するんだろ?」
「なので石森さんの転生は、ディケイドの巡るどこかの世界にランダムで配置されることになります」
うわ、その世界の危険度がどうか聞く前からギャンブルの匂いがプンプンしますな。
「で、俺として一番大事なのは、その9つ以上の世界がどのくらい危ないのか。なんだが」
「そうですね・・・A.R.WORLDは今まで紹介した各仮面ライダーの世界の並行世界。ですが危険度にはバラつきがあるので一概には言えません」
各仮面ライダーの並行世界!? なるほどだから怪人も全部出てくるのか。そういう大事な情報は最初に言って欲しいものだ。
「例えば夏海の世界。そこは転生20分以内に崩壊します」
「・・・・・はぁ?」
「そういう物語なんです。その世界は仮面ライダーが存在しない世界なので、世界として存在できなくなった世界のようなもの」
つまり番組的に存在価値が無い世界、的なものか。にしても酷いな。
「クウガの世界ではグロンギがゲゲルをせずに、同時進行で儀式的な殺人をします。それにグロンギには人間をグロンギに変える力があるので、もう地獄絵図です」
さ、最悪に最悪が掛け算してきた。
「キバの世界は人間とファンガイアが共存していますよ。表面上は」
うん、最後の一言余計。だけど俺は一般人に転生するなら、その表面上の部分にしか関わらないはずだから、その世界いいな。
「まぁしばらくしたら他の世界と融合して混沌としますけどね」
「混沌?」
「仮面ライダーが他の仮面ライダーと殺し合います」
龍騎になったのか。それは終わりだな。
「龍騎の世界は仮面ライダー裁判制度の世界です。基本的には仮面ライダー同士の殺し合いもないので平和ですよ」
基本的に、仮面ライダー同士の殺し合いってのが無いのが正常なんだろうけどな。
あれか? キバがその要素吸い取ってくれたのか?
「剣の世界ではアンデッドが人を襲っています。ちなみに仮面ライダーが政府直結の企業の社員で、変身ベルトが会社の備品ですよ」
いやなんか、さっきの龍騎の世界からすごく斬新な設定が飛び交ってない?
ライダー裁判制度とか、備品ベルトとか。そこんところ詳しく聞きたくなってくるほどの。
「555の世界はあまり変化ありません。アギトの世界はグロンギとアンノウンがどっちも人間の脅威になっています。多分ですが、今までで最悪の世界かもしれないですね」
うん。最悪定期。
「電王の世界からはかーなーり崩壊しています。カブトの世界、響鬼の世界。まぁ物語的な都合ですね」
「物語的な都合?」
「ディケイドは世界の破壊者って言ったじゃないですか。ディケイドが存在している段階で、徐々に全ての世界は崩壊の一途を辿っているんです。そして石森さんは、そのディケイドの移動のタイミングで転生がスタートするので、自動的に説明の後半になるほど世界も荒廃していっています」
俺の転生が仮面ライダーの転生都合になるのか。でもって世界が崩壊するとか。
「世界が崩壊したらどうなるんだ?」
「崩壊自体は将来的にディケイドが全ての世界を破壊することで、仮面ライダーが共存する世界に生まれ変わるので大丈夫です。ただ、石森さんはテレビシリーズの世界にしか転生できないので・・・・」
??? テレビシリーズの世界にしか転生できない? いや、あれだろ? 映画版があるからその比較としてテレビシリーズとか言ってんだろうけどさ。テレビシリーズだから口が濁るってどういうこと?
「ディケイドのテレビシリーズ、未完のまま最終回するんです。最後に世界消滅進行形のまま」
「未完のまま!? 打ち切りエンド!?」
「続きは冬の映画でねエンドです」
商法!?
「あと他の世界ですが」
「いや説明はもういい。崩壊するんだろ?」
もう投げやりモードな俺に、天使は首を横に振った。
「崩壊しない世界もあるのか?」
「はい! その名もシンケンジャーの世界です!」
しんけんじゃー? か・め・ん・ら・い・だ・―。最後の伸ばし棒しか名前に共通点が無いな。
「他の世界は人間ほぼ絶滅のネガの世界、人間総洗脳のディエンドの世界、世界征服系のRX、BLACK、アマゾンの世界。どれも怪人の魔の手が侵攻しているので大ピンチですが、シンケンジャーの世界はシンケンジャーが戦ってくれているので大丈夫ですし、仮面ライダーの世界じゃないので崩壊もしませ・・・あっ」
なんかすごく良さそうな世界に聞こえたんだけど、天使の「あっ」には悪い予感しかない。
「ごめんなさい。石森さん、その世界には転生できませんでした。だって仮面ライダーの世界ではないので」
「まぁいいさ。今気づいたけど、そのシンケンジャーって松坂桃李の出てた戦隊だろ? 戦隊ってことは怪人がガッツリ出てくるじゃん。しかも巨大ロボまで。死ぬって普通に」
「そうですね。町が壊滅的なダメージを受けますね。週1ペースで。あと先程失念しましたが、夏海の世界も転生不可の世界でした」
まぁどのみち崩壊するから問題外だけどな。
「それでは石森さん。貴方が転生するのは、ディケイドの世界でよろしいですか?」
笑顔で尋ねる天使に、俺は笑顔で答えた。
「いいえ。俺は仮面ライダーディケイドの世界に転生なんかしません!」
むしろどこに転生の余地があったんだ? あれか? 怪人に殺されずに崩壊で死んだほうが楽とか?