「さてお次はたった一つの真実見抜く、見た目は1人、中身は2人。その名は仮面ライダーW! の世界です」
「なんか、小さくなっても頭脳そのままの迷宮無しの名探偵っぽいな」
俺が元ネタを言い当てると、天使はプシュッと言いながら俺の首すじに指を突き当てた。地味に痛い。倒れそう。
「その通り。今回の仮面ライダーは2人で1人の探偵なんです。毎回、探偵の相棒が倒れて変身です」
その仮面ライダー、腕時計型の麻酔針射出装置使う? 薬事法違反大丈夫?
「さてWの世界ですが、特定の都市で起きる事件を相手にする仮面ライダーです。その名も風都。いい風の流れる暮らしやすい町に転生してもらいます」
へぇ、1つの町が舞台なのか。
「でも怪人や怪物が出てくるんだろ? 暮らしやすい町じゃなくないか?」
「いいえ。今回の怪人ドーパントというのはガイアメモリを使って一般人が変身した姿です。いわば怪人という凶器を使った犯罪が発生する町なんです」
怪人という凶器。うわぁ、なんか曽祖父の名前を勝手に賭ける孫が出てきそう。
「でも一般人が何でそんな危ねぇもんを持ってるんだ?」
「それはガイアメモリが闇流通してしまっているからです。一般人が劇物に手を出せるようになってしまった世界。それが風都です」
マジか犯罪都市。
「ですがご安心を。今回の怪人はあくまで一般人ですから、普通の通りすがりの一般人である石森さんを狙ってくることはあまりありません」
「そうなのか? どうして?」
「みんながみんな通り魔じゃないからですよ。人間の犯罪者ですから、何か目的があって悪に手を染めます。誰かを恨んでいたりと、対象が決まっていることが多いです」
「な、なるほど。たしかに今までと比べれば俺みたいな人間のことは食料でもなければ何でもない。見向きもされないってことか」
これは少し安全かもしれないな。まぁ今の所の説明だとアギトの時の天使みたいに殺人を目撃してトラウマは残るかもしれないが。それでも動物やらの種族全体の恨みと比べれば人間の悪意なんてもんは屁みたいなものだろうし。
「まぁ二次被害に巻き込まれる可能性は高いですけどね。暴れられたらそれだけで普通にテロですから」
駄目じゃん!
「全部が全部そういうわけじゃないので安心してくださいよ」
「安心できるか! 全部が全部じゃねぇっつって、どのくらいの割合だよ! 安心っつうのは1%とかの一桁台のことを言うんだぜ!」
俺が叫ぶと天使は腕を組んで「う~ん」と唸り、ポンと手を叩いた。
「半分くらいですね。月に1回程度、爆破テロが起こる程度だと思ってください」
駄目じゃねぇか! 月1で爆破テロ? 年に12回は覚悟しろってことだろ!
「ですが風都の人々はみんな普通に生活していますよ」
「異常なんだよ。どこの世界に月1で爆破テロが起こる町に住めるんだよ!」
「町というか都市ですよ。かなり広いので、自分の生活圏でのテロ発生率は低めです」
「だからってテロだろ? 爆発で建物とかが破壊されるんだろ?」
なんで俺の熱が天使に伝わらないんだ? なんでキョトンとしてられるんだこの天使は。
「あるじゃないですか。月1どころか毎日でも起きていないと説明がつかないくらい殺人事件が多発している町が。それでも町の人たちが平和に暮らしている町が」
「あ・・・あぁあったな。クウガの世界だったか?」
そう言うと天使はチッチッチと指を振った。
「米花町ですよ」
はいアウト。
「だって2人で1人の探偵が活躍している町ですよ」
眠ってるけどな。片方。
「定番は足で戦いますけど、たまに武器使ったり」
武器と呼ぶな、武器と。
「凶器が手に入りやすい町じゃないですか」
知ってるか? クロロホルムって吸っても眠らないらしいぞ。
「24回ですから、月に2回の頻度ですし」
劇場版な。仮面ライダーは毎週だから計算がおかしい。仮面ライダーが2話で1事件の頻度じゃねぇと計算が合わない。
「いずれにせよ、Wの世界に転生した時の危険度は、江戸川の世界に転生するのと大差ありません。それに仮面ライダーのほうが仮面ヤイバーより強そうじゃないですか」
殺人事件が起こる町に住む前提がおかしいんだよ。
「ん? そうだ。早々に引っ越しちまえばいいんじゃないか?」
俺の名案に天使は苦い顔をした。なんだ? そんなに仮面ライダーの町に定住してほしいのか? お断りだ。
「ガイアメモリは他の町に無いとは限らないんですよ? ならむしろ仮面ライダーの近くにいた方が安心じゃないですか?」
・・・その通りだな。
「それでは石森さん。貴方が転生するのは、Wの世界でよろしいですか?」
笑顔で尋ねる天使に、俺は笑顔で答えた。
「いいえ。俺は仮面ライダーWの世界に転生なんかしません!」
あと乱歩とドイルの前の世界にも転生したくないな。