「さて続きましては仮面ライダーオーズの世界! ハッピーバースデー!」
命日だろ、俺の。いや、転生するなら同時にバースデーでもあるか。
でもって、今までの人生で一番ハイテンションな誕生日祝いの言葉を聞いた。
「で、そのオーズの世界はどんな世界なんだ? 誕生日をみんなでお祝いしまくる世界か?」
俺の問いに天使は『素晴らしい!』と歓喜しながら答えた。
「オーズの世界はまさに資本主義万歳の欲望の世界です」
うわぁ、嫌な世界。
「さてこの世界ですが・・・」
「ちょっと待った。俺、その世界には行かない」
話しを遮るのは失礼だが、俺は今回の天使の世界説明を途中で止めた。
当然、天使はムスッとした顔になった。
「だって欲望の世界なんだろ? なんか嫌」
「・・・はい。たしかに仮面ライダーも怪人も、みんな欲望まみれです」
天使が何故、そんなに真顔で言っているのか理解できない。
「たしかに仮面ライダーオーズ、火野映司は裕福な政治家一族の出身で無職です」
今までで最悪の主人公だな。
「学生時代から世界中を旅して、困っている人を助けたり寄付をしていました。ですがその寄付金が内戦の資金源になってしまい目の前で内戦に巻き込まれた女の子を失って、自分の存在は美談に仕立て上げられてしまいました。そんなトラウマもあって自分の命すら顧みないで全ての人を救いたいという壮大な欲望を内に秘めた存在になった若者です」
前言撤回。何その聖人。ちょっと待って俺の罪悪感がスパーキングした。
「あとは怪人グリードは『足りないが故に満たしたい』という欲望を持ち、人間と同じ感情を持つ人工生命体として生み出されました。ですが欲を満たすために必要な体の機能が失われています。例えば味覚が無いので何を食べても美味しさを感じることができず、見えている景色に色がなかったり、愛情を理解したくてもできなかったりと」
「な・・・なんでそんな存在に?」
「欲望をエネルギーに変えるためです。この世界には欲望をセルメダルというものに変換する技術がありますが、そのためには際限なく欲を満たそうとする構造のほうが都合がいいですからね。それがグリードを作り出した者たちの意図したものかは分かりませんが、そのせいでグリードが苦しんでいることは確かです」
か・・・可哀想すぎるだろ。それを欲望にまみれた怪人だとかで嫌った俺・・・
「そのグリードが生み出すのがヤミーです。目を付けた人間に寄生させて、その人間が欲を満たすことでセルメダルが生まれます。その際に人間には怪我もありませんし後遺症もほとんどありません。あとは人間の欲の範囲でしか悪事を働きません」
「え? 害ないの?」
「無くはないですが、今までの仮面ライダーの怪人と比べれば害は少な目ですね。悪意ではなく欲望なので」
なるほど、確かに言われてみれば今までは人間を襲おうとする怪人ばっかりだったな。それと比べれば・・・
「その欲望の悪事ってどんなんだ?」
「お金が欲しい、宝石が欲しい、美味しいものを食べたい」
「俗っぽ! オーズやグリードの壮絶な背景と比べて俗っぽすぎない!?」
「そうですね。まぁ所詮は人間の欲望なので。周りへの被害としてはイマジンとどっこいどっこいくらいでしょうか・・・中にはテロを起こしたいという欲望のパターンもありますが」
それ何処の劇場版ドイルくん!? ってWの時にも言ったけど!
「そんな欲望で、本当にエネルギーなんかが生まれるのか?」
「もちろんですよ。人間の欲望は進化のエネルギー。欲望があるから人間はここまで進化してきたのです!」
たしかにそう考えると・・・壮大だけどそうだな。
「欲しい=正義、です」
そうだな。仮面ライダーも欲望だもんな今回。欲しい=悪でもあるけどな。
「あと最終回の方になると、世界の終末という欲望もあるので、巻き込まれないように気を付けてくださいね。がっつり無差別殺人やらを欲しています」
出たよ世界の終わり。どんなクレイジーマンがそこに欲を感じて生きてんだよ!
「それでは石森さん。貴方が転生するのは、オーズの世界でよろしいですか?」
笑顔で尋ねる天使に、俺は笑顔で答えた。
「いいえ。俺は仮面ライダーオーズの世界に転生しません!」
さすがに世界レベルの終わりが訪れない世界に行きたいさ。