「さてお次は仮面ライダー40周年記念作、仮面ライダーフォーゼの世界です!」
「40? そんなに紹介されたっけか? いや、間違えた。そういやぁ平成仮面ライダーだったな俺の転生先。昭和から数えて40か」
俺が指折り数えていると、天使は苦笑いしながら俺の指折りに手を添えて止めた。
「昭和ライダーにも空白の時期はありましたし、平成最初の仮面ライダークウガも平成12年。40作品目というわけではありません」
そうか。ちょっと事情があるんだな。
「さてそんなフォーゼの世界に転生というわけですが、今回は高校生転生になります」
え? 高校生?
「どういうこと? 舞台が高校とか? 学園もの?」
「その通り! フォーゼは天ノ川学園高校を舞台に繰り広げられる学園青春仮面ライダーになります!」
ちょっと楽しそうだな。
いやいや待て待て。甘い話には裏がある。甘い仮面ライダーにも相当の裏があるはず・・・
「ちなみに生徒が死ぬ展開はないのでご安心を」
お!? おおお!? 死なない世界に行けたのか!?
「ん? “生徒”が・・・ってことは、まさか先生が死んだりとかは?」
「そうですね。理事長と校長と別の大学の教授と、理事長のボディーガードが死にます」
学校運営どうなっちゃうのよソレ。にしても独特な死にメンバーだな。
「ひょっとして、敵は先生とか?」
いやまさかな。仮面ライダーの敵だぜ? 怪人だぜ? そこまで来たら怪人学校じゃん。ショッカーが運営してんのか?
「その通り! 今回の仮面ライダーの敵はゾディアーツ。人間が怪人に変身してしまう恐ろしい道具を使う、理事長と校長と教師が敵です!」
当たった。しかもうわぁ・・・教育現場崩壊。
「そんな学園の愛と平和を守るために戦う仮面ライダーもまた高校生。石森さんもそんな高校生の一員になって、日々繰り広げられる異能バトルを見守ってください!」
週刊誌? 少年漫画? 学園バトルものじゃねぇか! いや、仮面ライダーなんだから最初からバトルは確定だったけどさ。
「でも所詮、理事長と校長と先生しか敵じゃねぇんだろ? 数少ないから仮面ライダーも楽そうだな」
そんな俺の気楽そうなムードに、天使はチッチと指を振った。
「人間を怪物・ゾディアーツに変えるスイッチ。それが生徒たちに闇取引されてしまっているんです。なので大半の怪人は同じ生徒ですよ」
駄目じゃん。
「といっても悪意の程度は高校生にありがちな鬱憤の延長線上。それが増強されたものですので、具体的に何かの目的欲求があります。ですので無差別テロを望んだりするパターンはあまりありません。結果がそうなっただけで」
結果が無差別テロなら、それはもう無差別テロだよ。
「さぁ、そんな高校ですが・・・石森さんの命は保証されますので本当にご安心を!」
たしかに今までなかったな、命の保証。アギトくらいか?
「天ノ川学園高校はいいですよぉ。ミスコンもありますし、卒業式の後にはダンスパーティーがあります。将来的に宇宙飛行士を目指す生徒のための特別奨学生もありますし、何より部活が充実しています」
「へぇ、部活が充実っていうところ以外は、たしかに面白そうな要素だな」
「ふふふ。では聞きますが、他の部活が充実した高校に“仮面ライダー部”は存在しますか?」
か・・仮面ライダー・・・部?
「な、無い。というか仮面ライダーって部活なのか?」
「はい。フォーゼの武器は部活で作っています。顧問の先生はアンガールズの田中さんです」
凄いのか凄くないのかわからなくなってきたな。
「でも今んところ、たしかに高校生転生っつうのは魅力的だな。俺、高校の時ってパッとしなかったから、楽しい高校生生活をもう一度って言われるとなぁ・・・」
俺のこの呟きで表情を暗くした天使。うん、嫌な予感しかねぇな。
「学生生活、楽しくないの?」
「いえいえ。楽しめる層もいますよ」
「層?」
ヒエラルキーの予感。
「この学園はちょっと・・・スクールカースト強めでして」
「だいぶ強いってことだな。あれ? アメリカの映画でよく見る生徒同士の苛めが凄惨な」
「そうですね、まぁ。日本のウェーイ系やオタク系の子たちの関係を複雑化して誇張したような感じです。支配層や取り巻き、不良、がり勉、チャラ系、オタク、オカルト、筋肉、そして最下層のトラッシュ」
うわちょっと、自信ないな。
「あれか? そういう格差社会があるから余計に怪人になるスイッチってやつに手を出しやすくなるのか? 鬱憤が貯まりやすい環境にして」
天使は無言で肯定した。うわ、ストレスフルだな。
「ですがそれは、考えてみれば少年漫画の世界みたいなものじゃないですか。格差構造の中で揉まれた主人公がクラスに1人はいる異能の生徒たちと戦うストーリー。それでも他の生徒たちは元気に通っていますよ? 姿が人間か怪物かの違いがあるだけです」
「大きい。その差は大きい。そもそもその漫画の世界もやっぱ嫌」
「それでは石森さん。貴方が転生するのは、フォーゼの世界でよろしいですか?」
笑顔で尋ねる天使に、俺は悩みながら答えた。
「う~ん・・・いったん保留でも大丈夫か?」
「保留ですか?」
「ああ。身の安全は魅力的だけどな、俺は心の平穏を願っていきたい。激しい喜びはいらない、その代わり深い絶望も無い、植物の心のような人生・・・とまではいかなくていいが、静かに暮らしたい」
「・・・つまり、あんまり乗り気じゃないけど、まだマシだから他が酷かったら・・・と。まぁいいでしょう」