「続きましては仮面ライダー555です。語らせると最も長くなります」
うん、色々と語らせちゃいけないな。
「この世界も基本的には貴方の元の世界と同じです。ただ人類が少しだけ特異体質で、稀に死んだ後に蘇ります」
ゾンビ? ゾンビの世界なの? バイオハザード的な?
「その死んだ後に復活した人間がこの世界の怪人、オルフェノクです」
「ゾンビが出てくる世界か。ますます嫌だなぁ」
「あ゛?」
俺の嫌悪感に天使が嫌悪感で合わせてきた。
「何を失礼なことを言っているんですか? オルフェノクの自我は元の人間と同じなんですよ? 偏見はやめてください」
え? なんで天使、仮面ライダーの敵を庇ってんの?
「この作品は歴代の中でも特別で、主役は怪人側なんです。心は人間のまま、ある日突然怪物に変身してしまって苦悩する“人間”の物語なんです! それをゾンビだとか、失礼にもほどがあるでしょ?」
ちょっと待って話が追い付かない。
「何? 今回の敵は人間なの?」
「正確には敵ではありません。そういう種族だと思ってください。そもそも主人公もオルフェノクです」
「は、はぁ!?」
目玉が飛び出るほど驚いた。
「主人公が怪人!? 仮面ライダーが!?」
「え、そこに驚きます? 仮面ライダーは歴代ほとんどが怪人ですよ?」
「え? そうなの!?」
生きてきて一番の衝撃だ。ヒーローが怪物なの?
「最初の仮面ライダー、本郷猛さんの仮面ライダー1号だって、元はと言えばショッカーの改造人間。敵も同じ改造人間です。力の根源が同じだと言いましょうか。むしろ怪人と別系統出身の仮面ライダーのほうが少ないくらいですよ」
そうだったのかぁ。まぁ異世界行ったら魔法や異能同士でバトルみたいなのがあるんだから、そのくらい逆に普通か。
「でもそれが失礼ってのは?」
「そのまんまです。ある日突然、自分が怪物になってしまったと想像してください」
今、ちょうど俺の置かれている状況も突然の異世界転生・・・パニックしか湧かない。
「想像していただいたように『迫害されないか』や『これからどう生きていこう』と考えてしまいます。これからの人生に絶望しかない。そんな可哀想な境遇なんです」
うん。俺の想像力貧弱だ。
たしかにそうだな。ある日突然に怪物、しかも仮面ライダーの敵になっちゃうのは辛い。
「それはたしかに俺が悪かった」
俺が素直に謝ると、天使は「分かっていただけましたか」と安心した表情を見せた。
「でもさ、その可哀想な奴らが人間を襲うのか? それってどうなの?」
「そこが悩ましいところなんです。オルフェノクと人間が仲良く暮らすことができれば何よりですが、現実問題としてそういうわけにはいきません。だって人間同士でも肌の色の違い、力の違いだけで不幸な歴史が刻まれてきたくらいです。オルフェノクが淘汰されるか、人間が淘汰されるか。その歴史が今作でも刻まれています」
「そうなのか・・・それは辛いな」
「もちろん作中でも共存を目指すオルフェノクや人間もいました。ですが完全な和平には至らず。多くの犠牲を経て最後には主人公を含めて、人間として生きていく道を選ぶに至っています」
天使がすごくしんみりとしている。その感傷的な気持ちを、少しでも俺への説明に反映してほしい。
「じゃあ俺も555の世界に行ったら、死んでオルフェノクになって、結局は人間として生きていく流れになるのか」
「ここで残念なお知らせです」
天使のテンションが急にいつもの調子に戻った。俺、何か変なこと言った?
「先ほど説明したように、オルフェノクはこの世界で死んだ人間です。ですが、死んだら必ずオルフェノクになれるわけではありません」
「え? そうなの? 確率論的な話なの?」
「はい。普通に死んだ場合は、0.1%程度だと言われています」
うわ。ちょっと聞き捨てならない単語が出て来た。
「普通に死んだら? 普通じゃない死に方ってのもあるの?」
「はい。オルフェノクに心臓を刺されて殺された場合です。使徒再生と言います。こうやってオルフェノクは人間を殺して同族を増やしています。ちなみにオルフェノクの組織の目標として、オルフェノクだけの世界を作ろうとしています」
「なるほど。で、その使途再生でオルフェノクになれる確率は?」
「5%くらい。ですが石森さんの場合は0%です」
5%の「少なッ」と叫ぶ声にかき消されかけた。0%?
「はい? 0? 零?」
「はいゼロ」
「ちょっと意味不明。俺、オルフェノクになれないの?」
「そうですね。ちなみに怪人が表立って行動したらすぐに人間との全面戦争に至ってしまうので、オルフェノクは基本的に暗躍タイプ。目撃者は絶対逃さない。なので石森さんは怪人が出現した時に画面の端にいるので、普通に標的になりますね。グロンギやミラーモンスターと違って殺害対象まっしぐらほぼ100%」
「ちょっと待って俺の質問とキミの答えがミスマッチ。俺がオルフェノクにならずに死んじゃう確率が変って話」
俺の指摘に天使は「あれ? 言いませんでしたっけ?」って顔をした。
「仮面ライダーはオルフェノクです。この世界の仮面ライダーはオルフェノクしかなれません。オルフェノクだけが仮面ライダーになることができるんです」
うん、言ってない。いや知識の応用が強引じゃないと、その理解には追い付かん。
「まぁオルフェノクだけが、というのは少し言い過ぎなんですけど。ようはオルフェノクになると自動的に仮面ライダーになる素質が生まれちゃうんです」
「・・・そうか、俺ってば仮面ライダーにはなれない運命だったな」
俺の理解が追い付くと、天使は「Exactly(そのとおりでございます)」と言ってお辞儀した。
「でもあまり悪く思わないでくださいね。オルフェノクとしては良かれと思って、勧誘する感覚で石森さんの心臓を刺してきているようなものなんです」
「良かれと思って、って言えば何でも許されるわけじゃないけどな」
「ちなみにもしオルフェノクになれたとしても、パワハラ無理強いマシマシのブラック企業に入社内定。それにいずれは滅びる運命。むしろ死んだ方が苦しみが少なくてマシかもしれませんよ」
あっそ。
「それでは石森さん。貴方が転生するのは、555の世界でよろしいですか?」
笑顔で尋ねる天使に、俺は笑顔で答えた。
「いいえ。俺は仮面ライダー555の世界に転生しません!」
天使も『だろうね』って顔してた。