転生先は何ライダーですか?   作:三柱 努

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響鬼

「では次の仮面ライダーは、響く鬼と書いて響鬼です!」

そう言うと天使はどこかからラッパを取り出してプップーと鳴らした。

「あれ待って。天使がラッパを吹くと災害が起こるんじゃなかったっけ? 黙示録的な。終末的な」

「はい? どこの教えですか?」

「キリスト教だよ。っつうか天使の本家だろ。たしか大量の虫が出て来たり、大量の人間が殺されたりするんだろ」

「はい? どこのバトルファイトですか?」

そう言うと天使はギターをかき鳴らし始めた。おい、お前は本当に天使なのか? まぁ俺は信心深くねぇからどうでもいいけど。

 

「話が脱線しました。響鬼の世界ですが、今回だけちょっと転生先が辺境の地になります」

「ん? いきなりファンタジー異世界なのか?」

「いえ。田舎に移住してもらうんです。いいですねスローライフ」

スローじゃない気配こそが仮面ライダーの怪人じゃないのか?

「この世界の怪人は魔化魍という妖怪のような存在。森や山に発生するんです」

「おい。俺の転生先は怪人都合かよ」

田舎に出る敵と出会うために田舎に転生させられる奴なんて俺が初なんじゃないか?

「ん? その魔化魍って都会には出て来ないのか?」

「出て来なくはないですが、基本的には石森さんポジションが遭遇するような魔化魍は、森や山からしか出て来ないと思ってください」

そう言って天使が取り出したのは妖怪絵巻。なんか森の中で鬼っぽいのが妖怪と戦っている。

「そうか。なら俺って地元の人間に転生するの確定なのか?」

「田舎暮らしは嫌ですか?」

天使が「楽しそうなのに」と手をワキワキさせている。いや俺も別に田舎が嫌いとかはない。むしろ憧れる。

「いやそうじゃなくて。例えばさ、俺がその魔化魍から逃げのびたら、さっさと田舎からおさらばしたいんだ」

今までの仮面ライダーの世界は逃げ場のない感じだったけど、この世界は田舎にしか怪人が現れないなら、都会は安全圏ってことだ。

「ただ田舎から都会に移住ってなると大変そうだろ?」

「そうですね。基本的には地元民として転生しますから、怪人に襲われたから引っ越したいと言いだしたら、それはそれで転生先の御家族との一悶着がありますね」

そうだよな。ドラマとかアニメでも田舎から引っ越さなきゃいけないってなると、なんかそれだけで1話分あるもんな。しかも心がキュってなるやつ。

「旅行客として転生する可能性は無いのか? ハイキングしていて魔化魍と遭遇する、みたいな。それならそんな一悶着もなさそうだけど」

「忘れたんですか? 石森さんはセリフのない一般人ですよ? 旅行客で怪人に襲われるとなると大体がセリフありです」

もっとアウトドアが気軽に楽しめる世界になってくれ。って発想はクズ人間だな。俺以外に被害者増えてほしいっつう話になっちまう。

「だいいち、その田舎から離れようというお話にはもっと重大な問題が付いてきます。仮面ライダーと会えなくなってしまうんですよ?」

うん。どうでもいい問題だな。

「ちなみに響鬼は歴代でも珍しく仮面ライダーがちゃんとした組織になっているんですよ」

「ちゃんとした組織って? いやむしろ今までちゃんとした組織が無かったのか?」

「そうですね。ちゃんとしたという言い方には語弊がありました。ですが今までの仮面ライダーは警察への協力者だったり、ただの一般市民だったり。ブレイドは組織構成員ですが仮面ライダーの人数は少ない状態でした」

「少ない? というと今回の響鬼は・・・」

そう尋ねると天使は急に声を低くして語り始めた。

「猛士。所属する仮面ライダー・鬼の数およそ百数十名。政府から正式に認められていない組織。だが古より存在していて今日も魔化魍を狩る」

おい、なんか説明がちょっと鬼を殺す方の隊っぽい。

「指揮官や技術開発者、管理者、伝令係、サポート要員、協力者といった非戦闘員を含めると数千人以上の大所帯。また鬼の多くは弟子を持って後進育成に励んでいます」

数千人!?

「全国を網羅しているので、関東だけだと仮面ライダーは11人しか配置されていません。それでも他の仮面ライダーが数人で活動しているのと比べれば、組織力の大きさが分かると思います」

逆にその数人しか仲間がいない仮面ライダー、すごいな。

「あとこの世界の仮面ライダー、勤務形態がシフト制です」

「勤労形態! そうか、仮面ライダーって怪人都合で働くから勤務時間がブラック企業なのか」

「そうです。そういう充実した職場形態だからこそ、猛士は最初から最後までちゃんと“人を助けるための正義の組織”なんです」

いいな、この世界の仮面ライダー。

「ちょっと待って。なんか嫌な解釈かもだけど、最初か最後で正義じゃない組織ってのもあったの?」

「・・・・・ネタバレ厳禁なので」

あるんかい。

「あと重要なことを聞き忘れた。魔化魍ってどのくらい危ねぇんだ?」

「普通に危険ですよ。人間喰いまくって、大きくなると10mとかのサイズになります」

危っねぇ。一瞬心が転生方向に傾いてた。

メリットばっかりに目が行って、肝心のデメリット面を見過ごすところだった。

人間、喰われまくっとるやないかい。仮面ライダー、そんなに数いるのに間に合っとらんやないかい! どこぞの進撃ですかい!?

 

 

「それでは石森さん。貴方が転生するのは、響鬼の世界でよろしいですか?」

笑顔で尋ねる天使に、俺は笑顔で答えた。

「いいえ。俺は仮面ライダー響鬼の世界に転生しません!」

罠だ。これは罠だ。

 

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