「さて次は人気トップクラスの仮面ライダー、電王の世界です!」
「人気と転生適正は関係ないよな」
俺の真っ当な意見に天使は『分かっていませんねぇ』とばかりにチッチと指を振った。
「今回の電王の世界はガチャです。転生ガチャの世界なんです」
ん? どゆこと?
「それはですね・・・・・・・・」
天使は気まずそうな顔をしながら急に言葉を止めた。
「今回はどういう怪人・イマジンがどう暴れている場面に転生するかで石森さんの次の人生が大きく左右されるんです」
多分。多分だが、“人気と転生適正は関係ない”っていった俺の指摘に反論しようと思ったけど、結局は関係なかったんだな。
「で、今回の怪人はイマジンっつうのか? それがどう俺の転生に関係するんだ?」
「その説明の前に、まずはいつもみたいにこの世界の怪人についての解説が先ですよ」
そうだな。毎度よろしく天使。
「イマジンとは未来から現代、過去に移動していく未来人の精神体です」
何SFチックなワード出してんだ?
「未来からタイムスリップした怪人ってことか?」
「近いですが遠いです。イマジンは電王のいる時代に現れて、そこで不特定の人間と接触して、その人の願いを叶えます。願いを叶えたらその人の人格形成に最も影響を与えた出来事の起きた時代にタイムスリップしていきます。そうやってどんどんと過去に移動していくんです」
「ん? 人間の記憶的なものをハシゴにして時間をさかのぼりしてるのか?」
どうやら正解のようで、天使は拍手してくれた。
「よ、よっしゃだな。ん? でもそれのどこが仮面ライダーや人類の敵なんだ? ただタイムスリップしてるだけだし。それに願いを叶えるって、むしろ人間にとってありがたい存在じゃないか」
俺がそう言うと、天使は「ところがどっこい」と俺の胸元に向かって両手を合わせて突きを放ってきた。ついでに服を開くように引っ張ってきた。
「願いを叶える。そこにイマジンのやり方があります。例えば石森さんに質問です」
そう言うと天使は床にしゃがんで腕を組んで俺に聞いてきた。
「お前の望みを言え。どんな望みも叶えてやる。お前の払う代償はたった一つ」
何してんのこの天使。俺の願い? そんなん1つしかない。
「いい世界に転生させてくれ」
「成程。分かった。ではクウガの世界に転生させてやろう。あそこは主役のオダギリジョーがカッコいい世界だぞ」
クウガクウガクウガ・・・グロンギの世界じゃねぇか!
「ふざけんな! それ最初に踏んだ地雷の世界じゃねぇか! しかも“カッコいい”世界ってどういう曲解だよ!」
「と、このようにイマジンは願いを自分なりに都合よく解釈して強引に願いを叶えてきます。他にも例えば『試合に勝ちたい』だったら『対戦相手を出場できなくしてやる』というように、腕ずくで解決してきます」
やはり暴力! 暴力は全てを解決する! を地で行く奴が来たな。
「あとはタイムスリップしたら基本的にはテロ活動しかしません。戦隊の敵が町で暴れるように、とりあえず手当たり次第に破壊活動ばっかりします」
「あ、悪質すぎるだろ。それに聞いてりゃ、俺の転生を左右するも何も、どういうパターンで転生しようがアウトなんじゃねぇか?」
俺の真っ当な意見に天使は『分かっていませんねぇ』とばかりにチッチと指を振った。
「順を追ってイマジンの行動と石森さんの転生タイミングを説明しましょう。まずはイマジンの契約タイミングです。『願いを叶えてやる』のタイミングですね。実はこの時のイマジンは砂みたいな体なので、簡単に崩れてしまい全くの無害です。通行人がうっかり蹴飛ばしてしまうくらいに」
え? うっかり蹴飛ばせるの?
「一応このタイミングもイマジンが人間の前に現れて、襲う意思を持っているとカウントされます。この時にイマジンを蹴飛ばしてしまう一般人として転生すれば、石森さんは無傷で生還余裕です。逆に怪我の1つでもするほうが難しいです」
お、おお! なんだよ今までで一番楽な転生じゃないか!
「次に契約実行の段階です。先に説明したように願いの内容次第で周りにいくらでも迷惑が巻き起こります。金が欲しいという願いなら強盗。勝ちたいという願いなら暴行。その被害者の場所に転生してしまうパターンです。ほとんどのイマジンは時短ばっかりしたがるので、殺されたりはしないでしょうが、かなり痛い目に遭う可能性が高いですね」
う、そうか。でもまぁそれでも怪我で済むなら。
「そしてタイムスリップ先の世界に転生した場合です。問答無用の大規模テロ。ビルの1つや2つ簡単に崩れ落ちます。そんな場所にいたら大怪我じゃ済まない可能性がありますね」
サラッと言ってくれるが、大怪我じゃ済まないってのは大怪我よりも酷い状態になるって話。つまり死ぬってことじゃねぇか。
「ん? 待てよ。タイムスリップ先の世界っつうことは、俺も過去の人間になるってことか?」
「そうです。なので運よくそこで生き延びたとしても、そのタイムスリップ先が何年前になるかも考えなくてはなりません。数年単位でしたら元の時代がいつものような世界なので、まだ石森さんも社会に適応できるでしょうが、下手すると数十年単位でタイムスリップするので、その場合はレトロな世界で生きていくことになるでしょうね」
うわ。それ嫌。
そりゃタイムスリップで過去の世界で情報チートでウハウハってのも悪くは無い。だけどそれはあくまで元の時代の歴史を知っているからこその戦法であって、知らない世界の知らない過去の、普通に古いだけの社会でセカンドライフしてくのはキツイ。
「うわ・・・ってことはパターン次第で最悪な目に遭うのか」
「そうですね。割合としては1パターン目はレアケース。2パターン目は50%以下、願い事で破壊行動を伴わないものもありますし、特定の誰かが狙われることもあるので。なので半分以上の確率で最後のテロ活動に巻き込まれることになります」
最初に天使、転生ガチャとか言っていたけど、デメリットの排出率酷いな。
「ですがここでSSRのパターンを1つ紹介です」
「ん? 何だ?」
そう言うと天使はクレヨンと画用紙を取り出して何やら絵を描き始めた。
サラサラとクレヨンが走り、赤と青、黄色と紫と、緑と黒が混ざったような人影が描かれた。
「実は今回、主人公の仮面ライダー側にもイマジンがいるんです。なので彼らの前に転生するパターンも存在するんです」
「え? でも怪人が人を襲っている時に画面の端のエキストラ一般人に転生なんだろ?」
「はい。特にモモタロスなんですが、暴れん坊なのでちょくちょくデンライナーの中で喧嘩をして、形としてはハナちゃんと戦闘しているパターンがあるんです」
桃太郎と花が、なんだって?
「デンライナーは一般客を乗せた時を駆ける列車。その中で他のお客さんがいる前でも構わず暴れるイマジン。そんな時に居合わせた一般のタイムトラベラーとして転生というパターンが、超レアケースですが存在します。もちろんモモタロスは暴れるといっても食器や机が多少散乱する程度ですし、子供同士の喧嘩に巻き込まれる程度の危険しかありません」
なんだか聞いてると、むしろ面白そうな転生の仕方だな。
「ただ1つだけ問題が」
問題?
「石森さんの人生を左右すると言ったように、この時間旅行者への転生は他の異世界と違って全くのSF。しかも作中でもデンライナーへの乗客がどんな人物たちなのかが描写されていません。なのでどんなセカンドライフになるか、天使である私にもまったく分からないんです」
は、え、は、え、は?
タイムトラベラーとして転生? 何も情報なしで? ドラえもんですらパニック起こしそうな転生先だなおい。
「それでは石森さん。貴方が転生するのは、電王の世界でよろしいですか?」
笑顔で尋ねる天使に、俺は笑顔で答えた。
「いいえ。俺は仮面ライダー電王の世界に転生なんかしません!」
ちょっとギャンブルが過ぎるな。いやちょっとどころじゃねぇ。