私、N F Fサービス社長付き秘書をしています 作:妖精絶対許さんマン
––––––N F Fサービス。
その会社はニ〇一七年に起業すると同時に頭角を現し、一ヶ月の内に世界有数の
「それで・・・・・・社さん?お話というのは何でしょう?」
「はい、社長。こちらの資料をご覧ください」
そんな私は今、社長室でN F Fサービスの最高経営者であるコヤンスカヤ社長にとある資料を差し出しています。社長は資料を上から下まで見て、ある部分で視線が止まると額に汗が滲み出している。
「あの、社さん?この赤い文字は何でしょう?私、とても聞いてはいけない気がするのですが?」
「社長がおっしゃられている赤い文字は今月の我が社の売り上げです。もっと分かりやすくいうと、今月は赤字です。真っ赤です。火の車です」
「い、いいえ!赤字な訳ありません!!そ、それにほら、先月は黒字でしたし!?」
「はい、その通りです。ですが、その黒字分の売り上げは一瞬で吹き飛びました。理由?私から言わずともわかりますよね?」
私がそういうと社長は私から顔を逸らしました。ええ、言えませんよね。赤字の多くは社長の個人的なことに使われていたのです。やたら大きくて頑丈な檻、何を捕まえるのか分からない大きな首輪、我が社の社長は使用用途がよく分からない物を大量に作り出していました。
「あー、今月をどう乗り越えましょう。戦地に派遣した社員の給料、怪我をした社員への補償、悲しいことに亡くなってしまった社員の家族に支払う補償金。それをどうやって捻出したものでしょう。社長、何か案はありますか?」
社長は顔どころか椅子ごと回って背を向けてきました。これは何も解決案が浮かんでいませんね。
「そ、そうですわ!直にタマモ重工でNFー79式制圧戦術車両が完成するはず!ええ、あの戦術車両を売り出せば今月の赤字どころか黒字に出来ます!」
「ふぅ・・・・・・そうですね。あの車両ならば多大な売り上げは見込めるでしょう。それで?他に案は無いんですか、社長?」
今の私はとても冷たい目をしているのでしょう。でも、仕方無いことだと思うのです。
「他に案は無いようですね。でしたら・・・・・・社長、向こう半年はお小遣い無しです」
「そ、そんな御無体な!?私、社長ですよ!?」
社長が私に泣きついて来ますが、そんなことでは私の決意は揺るぎません。私は社長の秘書。私としても心苦しいですが、ここは心を鬼にします。
「社さん!そもそも私が社長、貴方は私の秘書であると同時に従業員です!そんな貴方が私の金銭の使い方に口を出すのは烏滸がましいのではなくて!?」
「でしたら、お年玉を貰ってすぐに散財する小学生のようなことをするのはやめて下さい」
「んなぁっ!?私を小学生と同等の扱いをされるのは遺憾です!私はナイスバディな大人の女!金銭の管理など余裕の余裕です!」
社長がガァーッ!と吠えるようにして捲し立てて来ます。ですが、そんなものは慣れっこです。前の会社でも自分のミスを部下のせいにして当たり散らす上司がいましたので。そんな時、ピピッ!ピピッ!と腕時計からアラームが鳴ります。定時です。我が社は
「それでは社長。私は定時ですので帰らせてもらいます」
「お待ちなさい!話は終わってませんよ!?」
「続きはまた
私はそう言って社長室を後にします。今日は家の近くのスーパーでタイムセールがあるので急がないといけません。なにせ、我が家には健啖家な同居人がいますので。
「これで良し。あとは帰ってくるのを待つだけですね」
社長に連れ去られるのと同時に私が今まで住んでいた賃貸を解約され、新しい戸建てを貰いました。晩御飯の支度を済まして、テレビを点けます。テレビではニュースが映っており、内容は世界中で暦が一年近く進んでいた事を紹介されています。とある大国の新兵器によって引き起こされたことだの、神罰だのと騒がれています。
「まだこのニュースを取り上げられているのですか?相変わらず人類の皆様は暇ですねぇ」
「あ、社長。お帰りなさい」
「もうっ、家では『社長』では無くて『コヤンスカヤ』と呼ぶようにと何度も言っているでしょう?」
いつのまにか帰って来ていた社長––––––コヤンスカヤさんに背後から抱きしめられました。コヤンスカヤさんの頭には会社では無かった狐のような耳、腰にはもふもふの尻尾が生えています。服装はよく見えませんが背中が大きく露出しているセーター、SNSで一時期賑わっていた『童貞を殺すセーター』という服を着て、下はチャックを上まで上げて留め具を外しているホットパンツを履いています。正直なところとてもエッチです。
「それではやり直しです♪はい、もう一度♪」
「はぁ・・・・・・お帰りなさい、コヤンスカヤさん」
「はい♪ただいま戻りましたよ、社さん♪」
コヤンスカヤさんは私の頭の上に顎を乗せて私と同じようにニュースを見ている。ニュースを三〇分程見ているがずっと同じコーナーばかりで飽きて来ました。コヤンスカヤさんは早い段階で飽きていたのか私に尻尾を絡ませています。
「ささっ、つまらないニュースをこれまでにして晩御飯に致しましょう。社さん、お願いします♪」
「そうですね。それではすぐに用意しますので座っていてください」
コヤンスカヤさんはテレビを消すとさっさとキッチンの椅子に座りました。
「コヤンスカヤさん、今日はいいお魚がスーパーで手に入りましたので煮魚です。お代わりはありますのでたくさん食べてくださいね」
「それはもちろん!社さんの手料理はとても美味しいのでどれだけ食べても飽きません!」
そう言ってもらえると作った私としても嬉しい限りです。コヤンスカヤさんは本当は食事の必要は無いとの事ですが本人曰く、『食べる必要はありません。ですが、私にとって食事は娯楽の一つ。娯楽が面白ければ面白いほど楽しいのと同じ様に、食事が美味しければ美味しいほど娯楽として成立するのです』とのこと。
「んぅ〜!煮魚に味が染み込んでいてとても美味しいです!さすが社さん!私が見込んで秘書にした甲斐があります!」
コヤンスカヤさんは煮魚を食べ終えるとすぐにお代わりを要求してきます。我が家の食費の大部分はコヤンスカヤさんの食事に消えます。まあ、食費はコヤンスカヤさんと私で半分づつ出しているのでたいした問題ではありません。
「ご馳走様でした。今日も社さんの作る手料理は美味しかったですよ?」
「ありがとうございます。そう言ってもらえると私も作り甲斐があります」
お代わりのために用意していた煮魚はコヤンスカヤさんの胃袋に消えて、余すことなく作った料理は完食されました。
「それでは私はお風呂に入ってきますので、いつものお願いしますね」
「わかりました」
毎日の日課としてコヤンスカヤさんのお風呂上がりに尻尾をブッラシングしています。自分でも出来るそうなのですが、やりにくいそうです。そしてなにより、合法的にコヤンスカヤさんのもふもふの尻尾に触れるチャンスでもあります。コヤンスカヤさんがお風呂から上がるまでの間に使った食器を片付けて、時間を見計らってコヤンスカヤさんのためにワインとチーズの用意もしておきます。
「上がりましたよ、社さん」
お風呂上がりのコヤンスカヤさんは毎日のことながら色気がすごいです。長い髪を結い上げていて、うなじも見えているので余計にです。
「それでは社さん。ブラッシングよろしくお願いしますねー」
「わかりました。それでは・・・・・・失礼します」
コヤンスカヤさんはソファーに寝転がります。私はコヤンスカヤさんの伸ばした染みもアザも無い綺麗な足を私の膝に乗せて、コヤンスカヤさん愛用の超高級ブラシでもふもふの尻尾の毛をとかします。
「んふぅ〜♪今日一日の疲れがとれますねぇ〜」
「それはなによりです」
コヤンスカヤさんの尻尾の先がふりふり、ふりふりと左右に揺れている。
「・・・・・・社さん。貴方は私が怖くはないのですか?」
「また・・・・・・その話ですか?」
コヤンスカヤさん・・・・・・タマモヴィッチ・コヤンスカヤさんに私は連れ去られた後にいろいろな事を話されました。何でもコヤンスカヤさんは七つの人類悪?の一つだそうです。人類悪とは『人類を脅かし、人類を滅ぼす災害』だそうです。まあ、私にはそんな事は関係ありませんが。私とコヤンスカヤさんの関係は社長と秘書、同居人という関係です。
「私はコヤンスカヤさんが言っていた人類悪?とか人理焼却?とかは分かりませんが、私が知っているのは人類悪の幼体?のコヤンスカヤさんだけですから。怖がる理由は無いと思いますが?」
「もう、貴方という人は・・・・・・。そんなだから貴方は私のお気に入りの人間なんです」
コヤンスカヤさんは起き上がって私をさっきまで自分が寝転んでいた場所に押し倒してきて、馬乗りになりました。
「ええ、本当に貴方という人間はどれほど私を昂らせる気なのです?・・・・・・食べたくなってしまうじゃないですか」
背中に冷たい汗が流れてきました。コヤンスカヤさんの瞳は妖しく輝き、ペロリと舌が唇を舐めています。これは・・・・・・どちらの意味で私は食べられてしまうのでしょう?
「えーと、コヤンスカヤさん?」
「はっ!私としたことが思わず理性が飛びかけていましたわ」
「そ、それはよかったです」
いろんな意味で危ないところでした。流石に社長と秘書とで『そんな関係』は外聞も悪いですから。
「そ、それでは私もお風呂に入ってきます」
「はい、どうぞごゆっくり〜♪」
コヤンスカヤさんの馬乗りから解放された私はそそくさとお風呂場に向かうことにしました。・・・・・・少しドキドキしたのは内緒です。
「危うく一番最初の私の『霊長類圏』の
社さんは気づかれていないと思っていたのでしょうが、私のこの愛らしい耳にはバッチリキッカリと社さんが私に馬乗りされて鼓動が速くなっていた音は聞こえていましたので。
「社さん、貴方からの信頼は本物。それは疑う余地はありません。ですから、私も貴方の信頼にお応えしましょう。貴方は私の『霊長類圏』の中でも特別の特別、他の人類のように『愛玩の檻』ではなく私の手元で大事に大事に管理して、愛してさしあげますわ。それが人類の皆様方がしてきたこと・・・・・・構いませんわよね?」
机に置いていたワインのコルクを開けて、一緒に用意されていたグラスに注いで一口飲んでからチーズ一切れをパクリと食べる。
「あら、美味しい。社さんってば秘書業だけでなくて食材の目利きも上手ですね。ますます手放せなくなりましたわ」
・狐屋社
NFFサービス社長付き秘書としてコヤンスカヤにヘッドハンティングされた一般人。魔術とかは一切関係ない家庭の出身。変わったところといえば実家が狐を祀った神社の神主なことぐらい。コヤンスカヤとの関係は良好。気がついたらコヤンスカヤと同居していた。魔術とか人理焼却とか人類悪とかの意味を半分も理解してないが『まあ、そんなこともあるか』と落ち着いて聞いていた。コヤンスカヤの体で好きな部分はもふもふの尻尾と耳。
コヤンスカヤに向けて恋愛感情は無い・・・・・・はず。同じ家で暮らして晩御飯を食べて同じベッドで寝ているが別にナニか起きたことは無い。一度、コヤンスカヤが風呂に入っているのを知らずに風呂場の扉を開けたことがあるぐらい。
・タマモヴィッチ・コヤンスカヤ
NFFサービス最高経営責任者にして七つの人類悪の一画『愛玩』の獣。狐屋社をヘッドハンティングした張本人。ヘッドハンティングした理由は『一目見た時にビビビッ!と感じたんですわ。あとは名前ですかね?』とは本人談。どこに行くにも秘書の社を連れて行く。アマゾンの奥地だろう富士山の頂上だろうがカタトゥンボ川だろうが連れて歩く。
休日に社が出かけていると本人は気づいていないが耳がペタンと垂れている。社が作った料理ならなんでも食べる。
狐屋社に向けて恋愛感情は無いが、愛はある。人理焼却がもう一度行われようが人理漂白が近い未来に実行されようが社のみは無事でいられるように準備している。なんなら社の死後、その魂すら自分のモノにする気満々である。
最近は人類悪としての目的は先延ばしにして社のみに対象を絞るのもアリかと考えている。・・・・・・とある一線を越えればコヤンスカヤは人類悪として狐屋社に敗北、人類悪としての力と権能を失う。