私、N F Fサービス社長付き秘書をしています 作:妖精絶対許さんマン
この作品には時系列とかは特にありません。
「・・・・・・?」
朝六時三〇分。私はいつもこの時間にコヤンスカヤさんより早く起きて、二人分の朝食と昼食用のお弁当を用意します。ですが、今日はどうにも頭が痛くて、視界がぼやけています。ひとまずコヤンスカヤさんを起こさないようにベッドから出てリビングに向かいます。ふらふらして足元がおばつきませんがどうにかリビングにたどり着きました。
「確か薬箱に・・・・・・」
薬箱から体温計を出して熱を測ります。しばらくしてピピッ!と音がしたので脇から取り出して画面を見ると、三十九℃でした。完全に風邪を引いてしまったようです。
「・・・・・・お弁当だけは作らないと」
ふらふらになりながらキッチンに向かいますが、足元がおぼつかないせいでゆっくりとしか歩いていけません。これは困ります。コヤンスカヤさんは私がお弁当を作るようになってから店屋物を食べなくなってしまいましたので。
「おっはようございまーす♪社さん、今日の朝食はって社さん!?」
時間をかけ過ぎたのか寝間着のコヤンスカヤさんがリビングに入ったきました。これは大変です。まだ、何も用意出来ていません。
「社さん!顔が真っ赤じゃないですか!」
「すいません・・・・・・どうも風邪を引いたみたいで。でも、お弁当だけはちゃんと作りますから・・・・・・」
「そんな物は良いですからベッドに行きますよ!」
いつかのようにコヤンスカヤさんに担がれてベッドに連行されます。抵抗する力も無いので大人しくするしかありません。
「まったく!体調管理は社会人として当然のことですよ!」
「すいません・・・・・・」
コヤンスカヤさんは手際良く冷えピタや氷枕を用意して看病の用意をしていました。秘書としては情け無い限りです。
「それで?何か風邪を引くような心当たりはあります?」
「・・・・・・ありません」
「ふぅ・・・・・・仕方ありませんねぇ。社さんは私と違って弱くて脆い存在、風邪の一つも引いてしまうでしょう」
コヤンスカヤさんは呆れた顔をしながら私の横に腰掛けて頭を撫でてきます。コヤンスカヤさんの手は冷んやりとしてとても気持ちが良いです。
「社さん、貴方は今日は休みです。これは社長命令です」
「・・・・・・わかりました」
確かに今の私は秘書業にも支障を来してしまいます。コヤンスカヤさんの秘書として情け無い限りですがお言葉に甘えさせていただきます。
「私は出社しますがくれぐれも大人しく寝ておくように。お昼には一度戻って来ますので」
「ケホッ・・・・・・わかりました。でも、大丈夫ですか?」
「何がですか?社さんがされていた仕事程度なら私でも問題無くこなせますが?」
「そうでは無くて・・・・・・お茶の淹れ方や三時のオヤツとその時に出す紅茶の場所、あとは各部署との連絡に資料の整理にお風呂の時の下着を入れている場所・・・・・・」
「貴方は私のお母さんですか!?いえ、厳密にいうと私に親はいないのですが!私を誰だと思っているのです!」
コヤンスカヤさんは仕事の面では超が付くほど有能ですがズボラな部分がありますので心配です。
「それでは社さん、行って来ますねー」
「はい、いってらっしゃい」
いつもはコヤンスカヤさんより先に出社するのでこうやってコヤンスカヤさんを見送るのは初めてです。こうやって誰かを送り出すのは何というか・・・・・・すごく良いです。前は一人暮らしでしたので、夜遅くに帰ってくると誰も居ませんでしたから少し寂しかったのです。
「・・・・・・社さんが居ないとこの部屋も静かですねぇ」
社長室には私のタイピングの音だけが響いています。PCの画面には各戦地に派遣した傭兵達からの戦況報告が上がってきたいます。ふむふむ・・・・・・中東圏からの依頼は一通り片付いたみたいですねぇ。でしたら即座に帰投、報告書を提出ののち一週間の休暇をあげましょう。あとは・・・・・・おや、早速戦術車両の発注が来ていますね。さすが某大国。四〇台も買っていただけるなんて・・・・・・愚かですねぇ。
「この先も自分たち人類の歴史が継続・存続出来ると信じて、『星』の外に目を向けずに隣国・敵国ばかりを意識して『
––––––そんなのだから近い未来、貴方達の歴史は、
「そろそろお昼ですね。社さんはしっかり眠っているでしょうか?あの方、たまに私の言いつけを守らない時がありますし・・・・・・特別の特別ですが、一度『わからせる』必要があるかも知れませんねぇ」
社長室の鍵をかけて受付の人間・・・・・・ダメですね。社さん以外の人間の名前をなかなか覚えられませんわ。
「受付の方。私は一時間ほど外出しますので依頼のメールが来たら私のパソコンに転送しておいてください」
「「わ、わかりました!」」
風邪を引いた時といえばお粥でしょうか?キッチン周りは社さんが管理しているので食材の有無がわからないんですよねぇ。あとで怒られそうですけど食材を買って帰らないといけませんね。普段は社長室から人類悪のみが使えるスキル『単独顕現』を使って家に帰るのですが今日はそうも言ってられません。
「・・・・・・私、初めて社長に話しかけられたかも」
「私も!社長っていつのまにか会社に来てるし、ほとんど秘書の狐屋さんが私たちとやりとりしてるし」
「狐屋さんと社長は付き合ってるって噂あるしね」
・・・・・・そんな噂が流れているとは。ええ、確かに私は社さんのことを『愛』しています。私の可愛い可愛い特別の特別な愛玩
「えー、でも噂でしょ?私、狐屋さんって結構タイプなの」
「止めときなって!狐屋さんに手を出したら社長に何されるかわからないわよ!?」
「大丈夫だって!別に本当に社長と狐屋さんが付き合ってるって証拠があるわけじゃ無いし。それに狐屋さんって独り身だからチョロそうだし、何よりお金貯め込んでそう!」
「うわっ!あんたって酷い女!」
どうやらあの
「社さん、お粥を作りましたよー」
食材を買いにスーパーに寄ってから帰り、手早くお粥を作ってちゃんと寝ているであろう社さんの様子を見に行きます。
「すぅ・・・・・・すぅ・・・・・・」
「あらあら・・・・・・これはまた、無防備な寝顔を晒して」
掛け布団を少し捲ると可愛らしい寝顔で社さんが眠っていました。起こすのも可哀想ですけど、食べないと治りませんし起こしましょう。
「社さーん、起きてくださーい」
「んぅ・・・・・・コヤンスカヤさん?」
「はい♪貴方の上司のコヤンスカヤです♪お粥を作りましたので少しでも食べてください」
「ふぁい・・・・・・」
どうやら少し寝ぼけているみたいですね。普段の社さんならこんな気の抜けた返事はしませんから。とても・・・・・・愛らしいですわ。今なら何をしても気づきそうになさそうですし、少しからかってあげましょうか。お粥をスプーンで掬って社さんの口元に持っていきます。
「はい、あーん」
「あー・・・・・・」
社さんは口を小さく開けて差し出されたスプーンを咥えます。社さんはもそもそと食べて飲み込んで、再び口を小さく開けて次のお粥を待っています。雛鳥に餌をあげている親鳥の気分ですわ。
「はい、あーん♪」
ああ、とても楽しいですわ!会社経営も楽しいですけど、こうやって『支配』と『管理』こそが私の生き甲斐!
「・・・・・・・・・・・・」
おや?社さんの視線がスプーンから私の尻尾に注がれていますわね。尻尾を左に揺らすと左に、右に揺らすと右に顔が移動しています。・・・・・・何故でしょう、とても嫌な予感がします。
「もふもふ・・・・・・」
「んぴゃぁっ!?」
風邪を引いて寝込んでいる病人とは思えない動きで私の尻尾が掴まれて抱きしめられてしまいました!し、尻尾は、尻尾はダメですぅ!椅子じゃなくてベッドに腰掛けていたのが仇となりましたわっ!
「んぅ・・・・・・」
社さんは私の尻尾を抱きしめたまま横になって再び眠ってしまいました。前々から社さんは私の尻尾に興味があるようでしたが、熱で思考力と自制心が低下してしまったのでしょう。
「あ、あら・・・・・・?」
尻尾を引き抜こうとしても引き抜けません。私が痛くない程度の力加減で尚且つ尻尾を逃がさないようにして抱きしめています。こ、ここまで私の尻尾に夢中だなんて予想外でしたわ。
「はぁ・・・・・・仕方ありませんねぇ。今日だけは特別に格安料金で私の尻尾を抱きしめて寝るのを許してあげます」
懐から携帯端末を取り出して会社に連絡を入れて今日は帰宅する旨を伝えます。その時に受付の二人に後日左遷するので今日中に引き継ぎの準備と代わりの受付の手配をするように傭兵統括部の人間に伝えて携帯端末の電源を落としました。もちろん、監視の雀蜂の方々もつけるように伝えて。
「おやすみなさい、私の可愛い可愛い社さん。明日からはみっちりと働いてもらいますので♡」
雛鳥のようにお粥を食べさせられたり、尻尾を抱きしめて寝ていたことで弄るのを楽しみにしながら、社さんの髪を撫でながら鼻歌を歌うのでした。
・狐屋社②
風邪を引いて寝込んだ秘書。風邪が治った翌日にコヤンスカヤにお粥を食べさせられた事をネタに散々弄られた。アルパカや羊といったもふもふな動物が好き。でも、一番好きなのはコヤンスカヤの尻尾。仮にロシア異聞帯のヤガを見たらゴミを見る目で見ていそう。理由は毛がボサボサして硬そうだから。
元ブラック企業社員。定時?何それ?の道を爆走していた企業。二十七時間労働当たり前、仕事させていただきありがとうございますだろうがぁ!がモットー。他部署に二足歩行して喋るペンギン、パンダ、シャチが居たとか居ないとか。
心を殺さなければ仕事出来なかったので、心を殺しすぎて感情表現が苦手になった。そのため、ヘッドハンティングしてくれたコヤンスカヤには感謝している。
・タマモヴィッチ・コヤンスカヤ②
みんなご存知一夜にしてバスター環境を作り上げたレディ・ラビット。社が風邪を引いて一番慌てたのはもちろんコヤンスカヤ本人。なんだかんだ言いつつ看病もした。コヤンスカヤ的には『愛』はあるけど、どちらかといえば病気をした飼い犬飼い猫の看病しているつもりだった。
社に手を出そうとした生命体には容赦無し。どこぞのドグサレ生臭坊主だろうが刀鍛冶だろうが胡散臭い神父だろうが手を出したら速攻で霊核を粉々にする。
受付担当の二人は後日新設されたNFFサービス・カタトゥンボ川支部に飛ばした。一週間ぐらいは覚えていると思う・・・・・・たぶん。
本人は気づいていないが社の頭を撫でている時はとてもやさしい顔で微笑んでいた。
・ NFFサービス
社長・コヤンスカヤ=秘書・狐屋社はほぼ同じぐらいの権力を持っている。
その下に傭兵統括部、資材部、経理部、庶務部があり傘下に武器開発企業『タマモ重工』がある。
・雀蜂
亜種特異点・新宿で登場した人型エネミー。本作ではNFFサービス所属の傭兵としても雇用している。