私、N F Fサービス社長付き秘書をしています 作:妖精絶対許さんマン
「ああ、そうでした。社さん、来週からハワイに行きますので準備をしておいてください」
ある夏の日.NFFサービス本社の社長室で社長からハワイに行くことを告げられました。
「はぁ・・・・・・社長、ハワイに行くのは構いませんがそういうことはもう少し早く言ってください。航空チケットの手配に休み明けの仕事の準備、宿泊するホテルの手配をしないといけないのに」
「ご安心を。航空チケットとホテルの手配はすでに済んでいますので♡」
用意がいいですね。
「ハワイに行くのもバカンス半分、仕事の打ち合わせが半分ですので。来週からは我が社も二週間の夏休みに入りますので、ちょうどいいでしょう?」
「仕事の打ち合わせですか?今回の依頼主はメールではなく直接お会いになるんですか?」
NFFサービスは基本的にメールで仕事を受けているのでこうやって直接顔を合わせることは少ないです。顔を合わせるとしたらそれは社長が直接仕事を取ってきて且つ、表の紛争地域への派遣ではなく裏の世界––––––『魔術』や『人類悪』といったことが関係しているのでしょう。
「ええ、今回の依頼主は時計塔の魔術師、ゴルドルフ・ムジーク様です。依頼内容としては近い将来、形だけの査問が行われて七つの部門に分売される予定のカルデアの一括購入の協力と邪魔になるであろう各部門の購入予定者達の排除と言ったところでしょうか」
「カルデア・・・・・・人理焼却?を解決したあのカルデアですか?」
「はい。一度世界を救ったことがある組織ですわ」
人理継続保障機関カルデア。社長から何度か聞かされたことがあります。私には縁も無い話だと思っていました。
「商談自体は決まったもの同然ですので、それが終われば短い時間ですが気ままにバカンスとしましょう!」
「わかりました。でしたら、書類の用意もしないといけませんね」
休み前の駆け込み業務は慣れたものです。前の職場は休みなんて存在しませんでしたから、社会人になって初めての大型連休です。
「青い空!青い海!白い砂浜!さすが南国の島ハワイですね!ゴミ一つ落ちてませんね!」
「コヤンスカヤさん、あまりはしゃがないでくださいね」
商談も無事に終わり本日の業務は終了。私とコヤンスカヤさんはハワイでバケーションとなりました。
「おっと、忘れるところでした」
パラソルを地面に突き刺して地面にシートを敷いていると海辺ではしゃいでいたコヤンスカヤさんが戻ってきました。その顔は何か思い付いたのかニヤニヤと笑っています。こういう風に笑っている時のコヤンスカヤさんは良からぬことを考えている時です。
「社さーん♪日焼け止め・・・・・・塗っていただけます?」
「・・・・・・はい?」
コヤンスカヤさんに手提げ鞄から日焼け止めのオイルで満ちている小瓶を取り出して渡されました。私は小瓶とコヤンスカヤさんを交互に見て、コヤンスカヤさんが本気だとわかりました。
「社さーん?まだですかー?」
「えっ!?わ、わかりました?」
コヤンスカヤさんは羽織っていたシャツを脱いで水着の紐を解いてシートに寝転んだいます。いやっ、えっ?本当に私が塗るんですか?コヤンスカヤさんは足をパタパタと動かして私の葛藤など気にしていないようです。私も男です。ここは覚悟を決めてやるしかありません・・・・・・っ!
「そ、それでは失礼します・・・・・・っ!」
「どうぞ〜♪」
日焼け止めのオイルで満ちている小瓶の蓋を開けてコヤンスカヤの真っ白な背中に垂らしていきます。
「ひゃんっ!」
コヤンスカヤさんが小さく悲鳴を上げて背中を反らして、私のことを睨んできました。
「社さん!日焼け止めを直接垂らしたら冷たいじゃないですか!日焼け止めを塗るときは手で少し温めて塗ってくださいまし!」
「は、はいっ!」
コヤンスカヤさんに怒られてしまいました。日焼け止めなんか塗るのなんて初めてなのでやり方なんてわかりません。
「足の裏までしっかりとお願いしますね」
「わかりました」
今度はちゃんと手で温めてから塗っていく。コヤンスカヤさんの背中側を塗り終わり一安心です。
「何をやり遂げた感を出しているんです?前もお願いしますね♪」
「え”っ!?」
コヤンスカヤさんは体を逆に向けて日焼け止めを塗るように言ってきました。胸は手で隠していますが色々見えています。
「せ、せめて水着をちゃんと着てもらえませんか?」
「どうしてですか〜?一度私の裸を見てるんですから今更どっうてことは無いと思いますけど?それに今水着をつけようとしたら・・・・・・」
コヤンスカヤさんは胸を隠して体を少しだけ上げて私の耳元で囁きました。
「・・・・・・私の裸が周りの人間に見られてしまいますわよ?」
そ、それは困ります。少ないですが周りには人がいます。目を瞑れば大丈夫・・・・・・ですよね?
「わ、わかりました・・・・・・」
目を固く瞑って出来るだけコヤンスカヤさんの体の感触を意識しないようにしながら塗っていきます。こ、これは余計に不味いです!視覚を封じたせいで余計にコヤンスカヤさんの肌の感触を意識してしまいます!
「ひゃんっ!社さん・・・・・・どさくさ紛れに私の胸に触るなんてエッチな人ですねぇ」
「す、すいませんっっっっっっ!!」
コヤンスカヤさんから飛び退くようにして離れます。まさかコヤンスカヤさんの胸に触ってしまうなんてっ!
「ぷっ、冗談ですよ。もう、目を開けても結構です」
ゆっくりと目を開けるとコヤンスカヤさんは水着を着てニヤニヤと笑っています。だ、騙されました!
「まあ、私には日焼け止めなんて必要無いんですけど」
「何で日焼け止め塗らせたんですか・・・・・・」
「私の瑞々しい体の感触を堪能できたでしょう?」
それは・・・・・・言い訳できません。一言だけ言うならとてもすべすべしてました。
「さ、社さんも隣に座ってお酌でもしてください」
「はぁ・・・・・・わかりました」
コヤンスカヤさんの隣に座ってホテルから持ってきたワインのコルクを開けてワイングラスに注いでコヤンスカヤさんに渡します。
「社さんもどうぞ」
「ありがとうございます」
私の分をコヤンスカヤさんが注いでくれました。
「それでは本年度の上半期の業務、お疲れ様です。かんぱーい♪」
「お疲れ様です。乾杯」
グラス同士を軽くぶつける。浜辺にカツンっ!という音が響きました。
「これは・・・・・・コヤンスカヤさんに似合いそうです」
ハワイ旅行も終わりに近づいたある日。ハワイの街中を散策しているとテレビや雑誌で取り上げられていた高級ジュエリーショップの前を通り掛かると店先にネックレスが飾ってありました。値段は・・・・・・さ、さすが高級ジュエリーショップ。買えないことはありませんが・・・・・・。
「よし・・・・・・っ!」
私は意を決してジュエリーショップの扉を潜りました。いろいろと手続きと支払いを済ませて、商品を受け取って店を出ます。た、高い買い物になりましたがコヤンスカヤさんが喜んでくれと良いんですが・・・・・・。
「おや、社さん。こんな所に居たんですか」
「コ、コヤンスカヤさん?コヤンスカヤさんもこの辺りを散歩されていたんですか?」
「散歩というほどでもありませんが街を見て回っていたんです。それより・・・・・・いま何を隠されたのですか?」
コヤンスカヤさんに声をかけられた時に咄嗟に隠してしまったのを見られていました。買ってすぐに渡すのはなんだか恥ずかしいので、誤魔化すことにします。
「し、知り合いに渡すお土産を買ってたんです」
「へー、知り合いに渡すお土産にしてはかなりの高級なアクセサリーをお買いになったみたいですねー。まるで『とても大切な異性に渡すプレゼン』を買ったように見えましたけど?」
コ、コヤンスカヤさんが目を細めて私を睨んできます。あの目は以前、某国からの依頼を受けた時、支払いを踏み倒された時の目です。その国は後日経済破綻しました。
「そ、そうです。私にとって『とても大切な人』に渡そうと思っています」
「ふーん、そうですかー」
コヤンスカヤさんは踵を返して歩いていきます。お、怒っているんでしょうか?
「コヤンスカヤさん・・・・・・?」
「どうぞ社さんはそのまま『とても大切な人』のためのお買い物を続けてください。私はホテルに帰りますので」
「あっ・・・・・・コヤンスカヤさん!」
コヤンスカヤさんは鼻を鳴らして私たちが宿泊しているホテルに向かって歩いて行きます。私も急いでついて行きますがコヤンスカヤさんは見向きもしてくれません。ホテルに帰ってからもコヤンスカヤさんは黙ったままで、夕食時も一言も発していませんでした。
「あ、あの・・・・・・コヤンスカヤさん。部屋に戻る前に散歩しませんか?」
夕食を食べ終わり、部屋に戻ろうとするコヤンスカヤさんを呼び止めて散歩に誘いました。
「はぁ・・・・・・」
コヤンスカヤさんはため息を吐いた後、立ち上がって砂浜に繋がる扉まで歩いていきます。
「何をしてるんですか?散歩に誘ってきたのは社さんでしょ?」
「は、はいっ!すぐに行きます!」
懐に忍ばせた『贈り物』の存在を確認してコヤンスカヤさんを追いかけます。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
私もコヤンスカヤさんも一言も発さずに砂浜を歩きます。街の喧騒は遠く、潮騒が響いています。
「・・・・・・それで?社さんから珍しく散歩に誘ってきたのですから、何か大切な話があるんですよね?」
「その・・・・・・これを渡したくて」
私は懐から『贈り物』が入った細長い箱を取り出してコヤンスカヤさんに渡します。
「これは・・・・・・昼間に買っていたアクセサリーですね?それをどうして私に?」
「私にとって『とても大切な人』がコヤンスカヤさんだからです。私をヘッドハンティングしてくれたから、今の私がいます。これはそのお礼と言いますか・・・・・・私からの感謝の気持ちです。受け取ってもらえますか?」
受け取ってもらえなかったら・・・・・・一週間は寝込んで暫く旅に出ることになると思います。
「くすっ・・・・・・私が社さんからの贈り物を拒むわけないじゃありませんか。開けてもよろしいですか?」
「はい。コヤンスカヤさんに似合うと思うんですけど・・・・・・」
コヤンスカヤさんは箱を開けて中のネックレスを取り出します。ネックレスに使われている宝石は『パパラチアサファイア』と呼ばれるピンク色の中に赤色やオレンジ色が混ざったとても綺麗な宝石です。コヤンスカヤさんの髪の色とあっていると思ってこの宝石が装飾されたネックレスにしました。
「パパラチアサファイア・・・・・・社さん、この宝石の石言葉をご存知ですか?」
「いえ、知りません。な、何か悪い意味の石言葉なんですか?」
「そうですか。社さん、せっかくですからこのネックレス、私に着けていただけます?」
「わ、わかりました」
コヤンスカヤさんからネックレスを渡されました。コヤンスカヤさんは髪を上げて私に背を向けます。白い頸が月の光に照らされてとても綺麗です。
「し、失礼します・・・・・・」
後ろからコヤンスカヤさんにネックレスを着けます。
「どうですか社さん。似合っていますか?」
「はい・・・・・・とても似合っています」
振り向いたコヤンスカヤさんの首には私が贈ったネックレスが月の光を浴びてキラリと光ます。その姿は私が今まで見てきた景色や人より美しく見えました。
「そうです!社さん、せっかく砂浜に来たのですしこのまま夜の街まで行きませんこと?いえ、行きますよ♪」
コヤンスカヤさんが私の腕にコヤンスカヤさんの腕を絡めてきます。その度にコヤンスカヤさんのその・・・・・・膨よかな胸が当たります。
「コ、コヤンスカヤさんっ!その、胸が当たってます」
「当たってるんじゃありません♪当ててるんです♪」
コヤンスカヤさんが楽しそう笑っています。・・・・・・コヤンスカヤさんが楽しそうにしているのなら良しとしましょう。
・狐屋社③
コヤンスカヤを怒らせたと思って慌てた秘書。コヤンスカヤとのハワイのバケーションを堪能した。帰国後、コヤンスカヤに贈った宝石の石言葉の意味を調べて顔を真っ赤にして悶絶していた。
コヤンスカヤに対する絆レベルは9。
・タマモヴィッチ・コヤンスカヤ③
本当は怒ってないけど社が慌てるのを見るのが楽しいから黙っていたレディ・ラビット。年末の大仕事が決まり、社とのハワイ旅行を楽しんだ。社からの贈り物の宝石の石言葉を知っていた。実はすごい喜んでいる。帰国後も常に肌に離さず着けている。石言葉を調べで悶絶している社を陰から見てニヤニヤと笑っていた。
社に対する絆レベルは8と半分ぐらい。
・パパラチアサファイアの装飾されたネックレス
パパラチアサファイアの石言葉は信頼関係、一途な愛、運命的な恋。
コヤンスカヤはこの宝石の石言葉を知らずに買った社からの信頼と『愛』を確かに感じた。
––––––あとの星見の天文台との決戦の時、ビースト■としてのタマモヴィッチ・コヤンスカヤの最大の弱点と同時に逆鱗となる代物。
––––––『愛玩の獣』は一人の人間が無自覚に込めた『愛』の贈り物によって敗れ去るだろう。